謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第14話
マザリーニ枢機卿との会談。
互いに利の有る話に持って行けたので、当初よりも友好的になった。
僕は彼をロマリアの教皇にする事に協力する。
彼は正しきブリミル教の為に、現教皇ヴィットーリオと戦う。
此処までは、完全に利害が一致している。
残りはアンリエッタ姫とトリステイン王国についてだ。
彼は前王の友誼の為に、トリステイン王国の存続を望んでいる。
しかしヴァリエール公爵の考えはどうだろう?
「マザリーニ枢機卿……
此処迄の話し合いは有意義でした。
では、ヴァリエール公爵夫妻を交えての話し合いを始めますか?」
彼にとって、危険視しているのはヴァリエール一族。
既に軍事クーデターなら負け確実。
此処で何とかしなければ、事実上のトリステイン王国の滅亡だ!
「ツアイツ殿……
口添えはしてくれぬよな?
ヴァリエール公爵は、貴殿の義理の父上。
烈風のカリン殿は魔法の師と聞く。
そして娘達とも仲が良い。
レコン・キスタを頭脳一つで滅ぼした貴殿なら、何か折衷案を出せないか?」
えっ?
いきなりハードルが高いですよ!
「要はトリステイン王国と言う名を残す事と、前王の妻と娘の立場を何とかして欲しい……
でしょうか?」
「そうだ!
見返りは、私が教皇になった暁には貴殿に最大限の譲歩と、民衆の為の宗教活動を約束する」
……魅力的な提案だ。
僕達の幸せな未来には、封建制度は未だ必要だ。
故にブリミル教は、無くなっては困るんだよね。
そしてマザリーニ枢機卿が率いる新生ロマリアとなら、上手く行くだろう。
趣味でエロに走っているが、民衆を大切にしているのは僕らも変わりない。
「それは……
考えは無くもないのですが……
いや、しかしカリーヌ様を納得させるには。
いやいや、その要求は呑めない。
しかしアンリエッタ姫に生き残りの手段は……」
腹案は有る。
アンリエッタ姫をトリステイン王国のアイドルとしてデビューさせる!
そして国政を離れ、アイドル業に専念して貰う。
国政は、ヴァリエール公爵が摂政として行う。
要は政治に携わらすから、問題児なんだよね。
アイドルとして国民に愛されて貰う(だけ)なら、皆さんの被害は少ない。
序でに、生涯アイドル宣言とかして貰えば完璧だ!
暫くしてから、トリステイン王国に新しい巨乳神殿を造って、そこの主祭巫女になれば良い。
これならばヴァリエール公爵が国政を担い、アンリエッタ姫は実の無いアイドル活動に専念する。
だが……
アンリエッタ姫が、この案を飲むとは思えない。
彼女は情に走る女性だ……
それは己の欲望に忠実だからだ。
大勢のファンに応える為に動くとは思えない……
思考の海に沈んでいたら、目の前にカリーヌ様が居た。
「ツアイツ殿?
黙り込んで固まっていましたが、大丈夫ですか?」
アレ?
ヴァリエール公爵とカリーヌ様が、目の前のソファーに座っている。
マザリーニ枢機卿は……
僕の隣に居た。
「えっと……
そんなに固まってましたか?」
「何かブツブツと小声で言っていたな。
アイドル・アンリエッタ姫か……
なる程、良い案だな。
あの姫には夢物語の様な世界に閉じ込めておくのが良いだろう」
夢……物語……
物語……
妄想姫……女優……
「それですよ!
物語……
彼女の真価は妄想です!
アイドル、いや女優としてなら活躍出来るでしょう。
彼女は舞台の中でだけ、演劇の中でなら、その希望が叶うのです!
彼女の為なら脚本を書きますよ!」
アイドルは、イザベラ達と被るけど女優ならば目新しいから。
「「「いきなりだな。
それでツアイツ殿の考えは纏まったのだな?」」」
「ええ!
確かトリステイン王立劇場の関係者にも、迷惑をかけた筈ですよ姫様は。
此処で彼らにも謝罪の意味で、今後の活躍を約束します」
後の問題は……
誰がアンリエッタ姫を説得するか、だ。
僕は縋る様に三人を見る。
ヴァリエール公爵……
目を逸らした。
マザリーニ枢機卿……
目線すら合わせてくれない。
カリーヌ様……
あっ、ニッコリ笑ってくれた。
やはり頼りになりますよね、我が師は!
「ツアイツ。
マリアンヌ王妃の説得は任せて下さい。
幼少の頃からの付き合いです。
どの道、夫の喪に服して国政には口をださなかったのです。
貴方の邪魔はさせません」
「流石はカリーヌ様!
では、アンリエッタ姫の方も……」
ズバッと再教育して下さい!
「それはツアイツ殿の仕事ですよ。
あのアーパー姫は、懸想した男の事しか頭に有りませんから……
貴方が貴方の為にと、説得なさいな。
悲劇のヒロインの様な、そんな境遇に持って行けば……
あの妄想姫なら、私って健気とか思って納得するでしょう。
ハグとキス迄は許します。
でも、もし一線を超えたら……
あと2人、一線を超えて貰います」
凄い笑顔で、宣ったよ!
僕がアンリエッタ姫を誑し込んで、言う事を聞かせろって?
しかも悲劇のヒロインみたく?
もしアンリエッタ姫の色香に負けて手を出したら……
多分、エレオノール様とカトレア様も面倒を見ろって事なの?
「イヤイヤイヤ……
それはマズいですって?
ああ見えて、アンリエッタ姫は美少女ですし。
何か不思議な色香が有りますよね」
僕は原作キャラの、信じられない魅力を知っている。
アレは殆ど会ってなくて、迷惑しか掛けられてないから拒絶出来るんだ。
原作でも、キュルケ・タバサ・シエスタ・テファと、信じられない美女・美少女に言い寄られて……
それでいて、ルイズにベタ惚れで一線を守りきったサイトが誑かされたんだぞ!
サイトは彼女を
「アンリエッタ姫の美しさは、他の美少女達と質が違う。
まるで吸い込まれる様な魔性の美しさだ」
と評したんだ。
あのリア充モゲロな、エロエロ主人公を以てだ……
僕の漢の勘は、彼女は危険と判断している。
それは地雷女とか、痛い女とかの他に……
きっと訳の分からない彼女の魅力に、負ける可能性を見出しているのだろう。
だから危険と判断した!
「しかし……
せめて2人切りで話し合いをするとかは、無しの方向で……」
「何を言ってるのだ?
男女の密談など、2人切りが当たり前だろう。
何、次の間には控えておるよ。
安心して話し合ってくれたまえ。
私は君とアンリエッタ姫が結ばれた方が良いと思うがな」
マザリーニ枢機卿……
裏切ったな!
僕を裏切りやがったな!