謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第19話
昼と夜の顔を持つ、困った姫様アンリエッタ……
昼の顔しか知らない僕は、彼女を甘く見ていた。
この被虐心と保護欲を掻き立てる、弱々しい態度。
何でも言う事をきくと言い、僕を見上げている。
今気付いたのだが、舞踏会のドレス同様に着替えたドレスも肩を大胆に露出している……
つまり、見下ろせばオッパイが……
ギリギリ見えそうな……
思わず抱き締める手に力を入れようとした時、視界の隅に何か動く物が?
注意を其方に向けると……
ジャネットが、凄い笑顔で部屋の隅に立っている。
アンリエッタ姫の死角に居る彼女は、凄腕の覗き屋さん?
親指を人差し指と中指の間に差し込む、下品なジェスチャーをしてから右手を上に上げる。
多分、ヤッちまえゴーゴー!
と言っているのだろう。
そして、ベランダを指差す。
何気なく其方を見ると、窓の外に浮かぶ三人の女性が見えた……
思わず手に力が入り、キス待ちだったアンリエッタ姫を僕の胸に掻き抱いてしまった。
「あっ、ツアイツ様……」
とか、艶っぽく呟きながら身じろぎをしている彼女……
確かに、ジャネットが気を逸らしてくれなければヤバかった。
僕は、フライで浮いているカリーヌ様を見る。
額に井形を浮かべているが、辛うじて許容範囲内なのだろう。
口をパクパクして、何かを伝えている。
多分だが
「早くヤル事ヤッて、言質を取れ!」
だと思う。
既にアンリエッタ姫からは、無条件の協力を……
僕の言う事を何でもきくと言われている。
だから、後一押し……
甘い言葉を囁いてキスすれば完璧だった。
ただキスなんかしたら、最後まで突っ走りそうだった!
気を逸らせたジャネットの功績は大きい。
次に、右隣に居るエレオノール様を見る。
嗚呼、かなりお怒りだ……
能面の様な表情で僕を見詰めている。
目が合うと、無理やり感が漂う笑顔を僕に向けて……
目がね、全然笑って無いんだ。
そして、何かジェスチャーを……
何だろう?
何かを掴んで……
力一杯、モギル?
エエッ?
何かって、ナニをモギルんですか……
思わず目を逸らすと、左側に浮いているカトレア様と目が合った。
此方は……
何時ものポヤポヤとした笑顔だ。
但し、背中に何かどす黒い物が渦巻いて見える気がします。
ははは、幻覚かな?
彼女も、何かジェスチャーを……
何だろう?
何かを捧げ持って……
力一杯、握り潰す?
エエッ?
何かって、ナニを握り潰すんですか……
タマですか?
血の気が、滝の様に音を立てて引いて行くのが分かる……
エレオノール様とカトレア様が、何の間違いか僕に好意を抱いてくれてるのかな?
って漠然と思っていた。
そんな彼女達に、彼女達の実家で他の女を口説いて?
いれば怒るのは当たり前田のクラッカー?
本気で僕の去勢を考えてませんか……
アンリエッタ姫と、これ以上のスキンシップは僕のオスとしての機能に多大なダメージを与えられそうだ!
だが、アンリエッタ姫には、駄目押しをしておかなければ……
ずっと僕の胸の中で、大人しくしている。
昼の顔の彼女なら、此処で暴走して自爆だろう!
しかし夜の顔の彼女は、大人しくされるがままだ……
彼女の耳元で囁く。
「アンリエッタ姫……
僕は貴女を嫌いになりませんよ。
僕は貴女の為に脚本を書き続けます。
貴女だけの為に……」
そう言って、彼女のオデコにキスをして、もう一度強く抱き締める……
「嗚呼……ツアイツ様……
嬉しい……」
とか、小声で囁く姫様。
僕の視線の先には、ヤレヤレだぜ!
のポーズをするジャネットが居る。
彼女は本当に神出鬼没だ……
少し首を動かし、窓の方を見ると
カリーヌ様が、右手の親指と人差し指で丸を作っている。
ああ、これでOKなんですね?
エレオノール様は、人差し指をクィックイッと曲げているから、後で来て頂戴?
カトレア様は……
自分の唇を指差してますが?
自分も、ですか?
確かに何か有るとヤバいから、見張っている様に頼みました。
だから、夜のアンリエッタ姫に対抗出来たんだ。
しおらしい彼女をそっと立たせて、もう一度ハグしてからメイドさんを呼んで部屋に返した。
「疲れた……
本当に疲れた……
ジャネット、有難う。
夜のアンリエッタ姫は手強い。
アレは昼の困ったチャンだとは思えない……
ナニかが色々ヤバかった」
ソファーに崩れる様に座り込んで、深く息を吐き出す。
「はーぁ、疲れた……」
本当に、昼も夜も問題を抱える姫様だ……
「ツアイツ様、お疲れ様でした。
しかし、凄い変わり様でしたね。
アレは本当に、昼はアーパー夜は娼婦みたいです。
ああ、どっちも誉め言葉じゃないですね」
ジャネットが紅茶を淹れ替えてくれる。
差し出すカップを受け取り、一息で飲み干した……
ベランダの窓を開けて、覗きを終えた公爵夫人と、その御令嬢達が声を掛けながら入ってくる。
「義息子よ……
先ずは誉めておきます。
良くヤリましたね」
「ツアイツ……
話は聞いていたケド。
ナニか妖しい雰囲気でしたね?
本当に、ナニかを始めそうで……
思わずナニかをモギりたくなりました」
未だに能面の様な表情で、ナニかをモギるを強調するエレオノール様……
視線を腰回りに感じるのは何故ですか?
「ツアイツ君?
アンリエッタ姫に、エッチな事をしそうだったのかしら?
私もナニかを握り潰したくなったわ。
うふふふふ……
我慢出来なくなったら、私に言ってね」
くっ黒い、真っ黒です。
「いえ……
これでアンリエッタ姫を国政から離し、女優業に専念させる事が出来ます。
トリステイン王国の未来は見えた。
後はロマリアと教皇ヴィットーリオですね……」
長い夜の戦いは終わった。
1人切りの孤独な、しかしギャラリーは多かった戦いが……
「取り敢えず、今夜はゆっくりと休みなさい。
部屋の外に護衛を配しておきますから……」
そう言って、2人の娘を連れて出て行くカリーヌ様に、少しだけ感謝した。
寝室に護衛を配してくれるって事は、夜這い対策をしてくれたって事ですよね?
兎に角、今夜はグッスリと寝よう。
流石は原作で、三美姫とか何とか言われる事は有るな……
正直、あのままはヤバかった。
これでトリステイン王国の仕込みは完了!
明日にでも、細かい打合せと対ヴィットーリオ用の会報の準備。
それと、アンリエッタ姫に献上する脚本を書く……
忙しくなるぞ。
でも先ずはクルデンホルフ大公国で、ベアトリスちゃんの凱旋ライブの準備だ。
これに成功すれば、ロマリア包囲網が完成する!
遂にエロでハルケギニア統一まで、あと一歩だ!
◇◇◇◇◇◇◇
それから半月後、クルデンホルフ大公国でベアトリス姫殿下の凱旋ライブが大々的に成功する……
クルデンホルフ大公も、公的にツアイツの漢の浪漫本ファンクラブに参加を表明!
ベアトリスちゃんもイザベラ姫の妹分として、正式にデビューした!
その夜の晩餐会で、ツアイツは襲撃を受ける。
暴走した、「男の娘」であるジュリオによって……
遂に正面から、互いの性癖を賭けて勝負にでる!
ホモかエロか?
ハルケギニア6000年の歴史で初めてだろう、性癖による争いは最終局面を向かえた……