ワルドさんのお話の続きです。
挿話6
「ワルま!第一巻風使いの新人子爵先生現る。」
ごくり…
なんと言う心踊るタイトルだ。
まさかこの僕が物語の登場人物になるなんて!
幾ら固定化の魔法を掛けていても、先ずは手を洗わねば大切な本が汚れてしまうではないか。
いかんいかん!
では早速……
ガチャ「隊長今度の合同訓練の件で相談がぁウボラァー?」
大切な時間を邪魔しおって……吹き飛べ。
そして暫く大人しくしていろ。
しかし興が削がれてしまったな。
よし場所を変えよう。
大切な本とは読む場所も大切なのだ。
しかし…
宮仕え故に自分の部屋以外と言うと後は……
そうだ!
お洒落なカッフェで知的な午後の一時を堪能しようではないか。
では最近トリスタニアに出来たと言う噂の店に行くとするか。
給仕め混んでるからと30分も待たせおって!
さてカッフェで紅茶も来た事だし、いざ読むぞ。
僕は今新しく出来たトリステイン学園都市に向かっている。
昨夜は母上が泣きついて大変だったなぁ……
いい加減子離れをしてもらわないと何時まで経っても子供みたいに可愛い人だから心配だ。
しかし彼女はアカデミーで働く才女だ。
僕の教師を目指したのも母上の影響が大きい。
父親は家督を僕に譲ってから悠々自適に暮らしている。
くっ物語の中では両親は生きているのか……
そうだな。
生きていたらこんな感じだったかも知れないな。
くっ母上……僕は……
SIDE他のお客
あらあのお髭の素敵なお方。
本を読んで涙ぐむとは巷で流行りのあの本でも呼んでるのかしら?
知的で立派な方ですね。
絵になるわぁ……
さて続きを読もう。
この学園都市は新規で造られた城塞都市なので東西南北の門までしか外からの交通機関は入れない様になっている。
中には専用の交通機関が有りそこから先は迎えが来ているそうだ。
さて降りてはみたが迎えとは……
「貴様がワル先生か?
迎えに来てやったぞ」
「「きてやったですー!」」
ムッハッハー!
なにこのツンデレロリと双子ロリは?
挿し絵を見ながらワルドは興奮しまくりだ!
さて続きだ……
「ほらこの私が迎えに来てやったのだ。
もっと感激して欲しい物だな」
「「そうだそうだー!」」
「失礼リトルレディ達。
お名前をお聞かせ願えるかな。」
「ふん。
私の事はキティと呼ぶが良い。」
「僕が姉のフタゴノー・イチゴーだよ」
「僕が妹のフタゴノー・ニゴーだよ」
「僕はジャン…ジャン・ジャック・ワル・ドー!
ワルと呼んでくれ」
「ふん。
ワル先生か……
良いだろう呼んでやろう」
「「呼ぶですー!」」
ナイスだ!
ツアイツ殿、これではまるで僕その物ではないか!
さて続きだ…
「では案内するがここは人が多い。
迷子なならないように……てっ手を繋いでやる」
「僕はかたぐるまー!」
「あーずるーい!
じゃ腕にぶらさがるー!」
挿し絵は彼女達パンチラがこれでもかと……
グハッ!ガタガタ……
思わず机に突っ伏す。
こっこれは萌え尽きてしまう……
このキツめなチッパイロリ少女と双子のぽやぽやロリ少女の挿し絵は、前にモット伯が自慢していた絵柄と一緒だ!
この絵師は本当に良い仕事をしている。
誰なんだ?
ん?右下隅にサインが有るが……なんだと!
こっこの絵もツアイツ殿が描いているだと?
何て鬼才なのだ。
SIDE他のお客
何か机に突っ伏してから痙攣してるけど平気なのかしら?
お医者様を呼んだ方が良いかしら?
さっさと落ち着いて続きを読むぞ。
紅茶を飲んで落ち着くぞ。
僕らは歩きながら学院長室に向かっている。
キティの手は少し汗ばんでいるようだ……
ふふっ緊張してるのかな?
僕達はたわいない話をしながら学院長室の前迄到着した。
途中すれ違う女の子達も極上のロリっ子達!
当たり前だ。
この学院は従来の魔法学院に入る前の子供達が通う言わば幼等部とも言える学院だから…
僕の理性が保つか心配だ。
「「じゃー僕達はこれでーばいばーい!」」
双子は賑やかに去っていった。
君達のこの首と腕に残る温もりは忘れないよ!
「ワル先生。
ここが学院長室だが……
驚かないでくれ。
中の生き物は歴とした人間かと……思うのだ」
キティが複雑な顔で歯切れの悪い説明をすると
「じじぃ邪魔するぞ。
新任の先生を連れてきてやったぞ。」
ノックも無しに扉を開けて中に入ってしまった。
コラコラ淑女がそんな礼儀知らずで……
「失礼します。
新任のワル……シネ亜人め、どこから侵入した?」
キティを脇に抱えエアハンマーを唱える。
「ふぉふぉふぉいきなりじゃのうワル先生」
亜人はそう言うと僕の魔法をかき消しただと?
「ワル先生……
認めたくはないのは分かるがアレが学院長だ。
それと恥ずかしいから下ろしてくれ!」
キティが僕の腕の中で真っ赤になりながらもがいている。
キター!
これでキティのハートはガッツンなんだなツアイツ殿!
はぁはぁ……萌死にそうだ……さて続きを……続きを読む前に深呼吸だ。
すぅーはぁーすぅーはぁー。
よし!落ち着いた。
「いきなり魔法を使うとは失礼じゃな。
儂はこの学院の学院長のヌラリー・ヒョーンじゃよ。
歴とした人間じゃ」
この後頭部がカボチャ三連みたいな妖怪変化が学院長だと?
驚きの余り手をワキワキしてしまっ「あん!いい加減に離せ。何処を揉んでいるんだ!」
「キティ……すまないが本当にこの物体が学院長で間違い無いのか?」
「やん!もう離して……」
「すっすまない今降ろすから」
「もう……人前で恥ずかしいだろうが!
この爺が本当に学院長で間違い無い」
「そっそれは失礼しました。
今日から赴任しましたジャン・ジャック・ワル・ドーです」
「ふむ。教師たる者常に冷静であれじゃ。
着任を認めようワル先生」
「はっ!」
「ワル先生にはひとクラスの担任になってもらう。
それとじゃ……」
「それと?」
「この学院都市は狭くてな。
手違いで君の住居を確保出来なかったのじゃ。
それで暫くはキティの部屋で暮らして欲しいのじゃ」
「「ナンダッテー!」」
「いやそれは……」
「ワル先生は私と暮らすのは嫌なのか?」
不安そうに見上げるキティの挿し絵が……
そして
「次回嬉し恥ずかし初めての同棲生活!
そして初夜を迎えるワル先生の運命は……
二巻に続く」
と書かれていた。
どっ同棲?ロリと同棲だと!
しかもしっ初夜だとー!
ツアイツ先生……
童帝(わらべのみかど)の僕にはハードルが高すぎます……
うっ鼻血が……吹き上がって止まらない。
SIDE他のお客
いきなり悶えた後に鼻血を吹き出したわ……
てっ店員さーん!
きてー大変よー!
鼻血を吹いて悶え死にそうな人がいるわよー!
誰かーお医者様を呼んでー!
ワルドは一命を取り留めた。
そしてヨロけながらも、この本をサムエルに見せるべくハーナウ領に向かった。
余程この間のコレクション自慢が悔しかったのだろう。
ツアイツの渡した「ワルま第一巻」は20Pだが挿し絵が数枚程入っている絵本形式の本だった。
ワルドさんのお話はこれにて一段落とします。
この後マチルダ&ティファニアルートに戻り残り二話で完結し本編に戻ります。