第32話
タバサさんの受難1
人目の付かない森の中で迎えの風竜を待つ。
今回の任務の成果品は2冊……
しかしコレをイザベラに渡すのは気が引ける。
昨夜の事を思い出す。
父親以外に始めて年頃の男性に抱かれた(お姫様抱っこ)
しかも彼は私を好きだと言った。
「守ってみせる、僕のタバサ」が頭の中でリフレインする。
自然と頬が熱くなり口元が緩んでしまう。
しかし上着のポケットにコンナ赤面スル本を持っているなんて……
しかも2冊も。
いいいイヤラシイ……
Hなのはいけないと思う。
試しに2冊とも読んだ。
読んでから気付いた。
洗脳はされてない。ミスタツアイツには初めからある種の尊敬と憧れが有った。
本の好きな私は彼の作品を読むのが好きだ。
しかし……
この本は……
イケナイトオモウ!
洗脳はされないが混乱はする。
はっコレは混乱する本なのでは?
既に彼の術中に嵌ってる!
なんて恐ろしい相手!
では何故ワルド様はこの本を懐に忍ばせていたのか?
彼もミスタツアイツに敬意を持って接していたハズ……
そうか!
男女か年齢か他の条件が有るのかこの本には複数の効果が有るのだ。ならばイザベラにはどの様な効果が?
ジョセフには?
お母様にはどうなのだろう……
試してみる価値は有る……
イザベラには1巻だけ渡し2巻はお母様に見せて見よう。
しかしお母様にこの様な本を見せたらイヤラシイ娘だと思われる。
でも心が壊れたお母様に僅かでも回復する見込みが……
「7号……7号殿?
待たせたな」
迎えが来てしまった。
「どうした?
真っ赤だぞ?
風邪か?
夜間飛行は冷え込むが大丈夫か?」
「……平気」
「なら良いが……
これでも羽織っとけ」
「……ん」
彼が外套を放ってくれた。
着込んで彼の後ろに乗り腰を掴む。
「では出発する」
ふわりと浮き上がる風竜……
私も欲しい。
移動に楽だ。
SIDE竜騎士
ヒャッハー役得ダゼー!
ロリっ子と合法夜のランデブー!
それも最近流行のクーデレでチッパイだぜ。
最近読んだゲルマニアからの密輸本の「エヴァさん-TV版-」のアヤナミーに似てるぜ!
あのゴーレム対ゴーレムの肉弾戦の描写も凄いが操縦者のクーデレのアヤナミーとツンデレのアスカーに萌えるのよ!
しかもこの7号も人形とあだ名されているし挿絵の髪型や体型もアヤナミーに似ているし……
帰ったらほかの連中にも自慢しよう。しかし続きが見てーなー!
作者のツアイツってホントに神だぜ……
ブリミルなんかよりよっぽど良いぜ!
何冊か読んだけどどれもヒャッハーでクールな内容だしサイコーにハイって奴だぜー!
しかし密輸本だからって足元見やがって1冊5エキューはボリ過ぎじゃね?
一度皆で金を出し合ってゲルマニアまで買いに行かせるか……
いや行く奴の好みの本だけ購入しそうで駄目だ。
やっぱり貧乳が時代の先端だよな。
でも揺れる巨乳も捨て難いんだが……
駄目だ本格的にこの案件は竜騎士会議にかけてみよう。
でも団長殿がチッパイLOVEとか言ってるからなー。
そう言えばさっきの7号って赤くなって可愛かったよなー!
まるであの作品の……
大空をタバサと操縦者の妄想を積んで力強く羽ばたく風竜!
ようやく彼の妄想が尽きた頃にガリアの国境近くまで到着した。
「さてここで俺の風竜は限界だぜ。
悪いな7号乗換えだ……
気をつけてな」
SIDEタバサ
何だろうこの竜騎士は学院でミスタツアイツの本を読んで恍惚とした顔の連中と似ている?
試しに「TO HEART」を見せて見よう。
「ありがと……
この本を少し見て」
「ん?
なんだいこの本は……」
「こっこの本はゴッドツアイツのイカス著書じゃねーか!
どうしたんだよコレ?
うわっスゲーヘブンな内容だぜ!」
ゴッド?
神?
ブリミル教信者を裏切らせる程の本なの?
やはり女性には効かず男性にだけなんだ。
「……何でもない返して」
「ちょちょっと待ってくれ何でもするからその本を見せてくれよ」
「駄目……
イザベラが欲しがっている。
早く渡さないと」
「そっそんなぁ……
ガックシ」
凄い!
やはり男性のみ読ませればその所有者に忠誠を誓う本。
「しかしイザベラ様が欲しがるなんてイザベラ様って……
そんな趣味なんだ」
「……?」
その後何回か乗り継ぎ漸くプチトロワに到着した。
全ての迎えの竜騎士に「TO HEART」
を見せたが同様の反応だった。
これはイザベラに渡すのは惜しい……
しかし1冊は渡せばなるまい。
もしコレを私が直接ジョセフに見せたら彼はどういう反応を示すのか?
素直にお母様の解毒薬を渡すだろうか?
「TO HEART2」を隠しイザベラの元に向かう。
竜舎から向かう途中で会う竜騎士たちがリアルアヤナミーモエーとかヒソヒソと話しているが何だろう?
「7号……7号殿。
少し宜しいか?」
この男はたしか竜騎士団の団長。
「その、何だ……
部下から報告を受けてな……
そのゲルマニアのツアイツ殿の著書を持っているとか?」
「……ん」
「その……
少しだけ貸していただけぬか?」
「……ん」
「こほん……
では風の奥儀をお見せしよう……
これが風の最強たる所以……
ユビキタスだ!」
団長は「TO HEART」を持ったまま遍在を4体出現させた。
「「「「「ヒャッハーサイコーにクールだぜダンチョー」」」」」
どこからか先程送ってくれた竜騎士が集まり団長を囲んで騒ぎ出した。
「7号殿お手間を取らせたな。
では本書はお返しする。
てめぇら逝くぞー!」
「「「「「ウォー」」」」」
なに?
なんなの?
タバサはプチトロワの廊下で暫し呆然としてしまった……