第34話
無能王ジョセフ
つまらんな。
つまらん……
この世界には余を楽しませる物が無いのか。
各国に放った諜報の報告でもどの国にもこれといった人物も出来事も無い。
僅かに引っ掛かったのがゲルマニアのハーナウ家が親子で乳の大小を争っている位だが……
余は色事には興味が薄い。
なので2つの策を弄した……
1つは我が娘にトリステインにいるハーナウ家次期当主の調査をさせる事。
もう1つはいけ好かないエロ坊主集団ロマリアの糞坊主を嗾け乳の大小に拘らぬ美乳派を作らせアルビオンから広めさせる手筈だ。
クロムウェルと言ったか……
乳の大きさや形などは所詮は女の美醜を競う位の物ではないか。
見物よの……
己が理想を賭けて争うがよいわ。
……しかし余はアレか?
彼らの括りで行けばミューズしかりモリエールしかり巨乳だな。
ふはははは!
そうか余は巨乳派か。
ならば巨乳派にも支援をしてやろう。
そうだな……
「ミューズ!ミューズよ」
「ジョセフ様なんで御座いましょうか」
「おおミューズよ!
そちはハーナウ家次期当主に接触し力を貸してやれ」
「それは……
ジョセフ様の操り人形に仕立てよ……
と言う事でしょうか?」
「そうだな……
いや純粋に力を貸してやれ。
そして良い時期に裏切ってみろ」
「時期とは?
クロムウェルを追い詰めた辺りで、宜しいでしょうか?」
「それで良い。
それと出来るだけ奴の著書を送ってくれ……
あれはあれで余の退屈を紛らわす物だ」
「お任せ下さい。
では今から向かいます」
「うむ。
そなたの乳ならば奴も喰い付くであろう……
なにせ巨乳教の教祖らしいぞ」
「お戯れを……
我が主以外にこの体を好きにはさせません」
「ふふふ……
そうか吉報を待つぞ」
コンコン「ジョセフ様、イザベラ様及び北花壇騎士団7号殿がお見えです」
ふむ?
あの2人が一緒にだと……
「よし入れ」
なんだ……
何時もとは雰囲気が違うな?
何だか2人の距離が近い気がするな。
「どうした我が娘よ。
父に何か報告か?」
「はい。
お父様……
いえジョセフ王、お求めの書籍を手に入れたのですが……」
「なんだ歯切れが悪いな?
それでどうしたのだ」
「ほらエレーヌ、渡すんだろ?」
「……ん」
「ほぅ?
お前が余に直接渡すのか……
どれ……なっ!」
こっこれは……
得意げに渡されたがエロ本ではないのか……
我が娘の前で我が姪がコレを渡すだと……
なにか意味か秘密が有るのかこの本は?
ほぅ……
ただのエロかと思えばストーリー仕立てなのか……
随所に挿絵が入っているが従来の印象派や写実派とも違うタッチだ。
何だかこう?
ライトなタッチの絵柄だな…
だがこれはこれで中々に劣情を催す図柄だな。
ふむ……
本人は巨乳派と公言しているが貧乳も抑えておるのか……
舞台は学園か……なに?
人外のゴーレムまでが攻略対象だと!
なんと節操の無い主人公なのだ。
このセリオとマルチいうゴーレムは中々余の琴線に触れるの……
エルフの技術を流用しミューズに作らせてみるか。
なんと!
ここまで心を通わせたマルチを保存の為に取り上げるだと!
フザケるな。
滅ぼすぞ貴様等……
なんと言うラスト!
しかし読後に心と下半身に残るモヤモヤはなんだろうか……
初めてだな。
この様な下賎の本に気を奪われあまつさえ続編が気になるとは……
SIDEシャルロット&イザベラ
「ねぇ?
「お父様ったら一心不乱に読み耽ってるけどそんなに面白いのあの本?」
「それがあの本の効果……
直ぐに驚く事になる」
「でも娘と姪の前でエロ本を熱読してる父親ってどうなのさ?」
「……?エロ本って?」
「あんた騙されているんだよ。
あれは唯の E・RO・HO・N なんだよ」
「しかし……
他の皆には効果が有った」
「そいつ等は全員変態なんだよ!」
「竜騎士団長まで?」
「アッチャー……
うちの連中は皆ダメダメかも知れないね」
「「あっ読み終わった」」
「その……なんだ。
ご苦労だったな2人共……
引き続き任務を続けてくれ」
「続編を手に入れたら……
お母様の病気の解毒剤が欲しい」
「なっ……
エレーヌあんた何を言ってるんだい?」
「ほう、オルレアン公夫人の病は毒と申すか……」
「貴方が飲ませた……」
「ふむ……そうか……
まぁ良い。
ならばこの著書の作者が余に協力をするなら考えても良い」
「彼は関係ない……」
「どうかな?
これからアルビオンで面白い花火が上がるぞ。
奴はそれに巻き込まれる」
「その動乱を見事押さえ余の元に来るのなら考えてやろう」
「イザベラよ。
そちも手伝ってやれ」
「お父様……
エロ本に毒されましたか?」
「なっ!
その様な事実は無い……が。
これは預かる」
「もう良い下がれ……」
SIDEジョセフ
ふむ。
余らしくない対応だったな。
しかし……
ツアイツと言ったか。
今迄にこのハルケギニアには無かったあらゆるエロを紡ぎだす男だな。
全てが斬新且つ洗練されている。
これだけの妄想を1人で紡ぎだすとは……
変態度ではシャルルよりも上かもな。
あ奴も危うい程の変態だった……
ガリア王宮を巻き込んでの女装趣味などと……
キモイわ……
賛同した貴族どもは全て粛清したが今でも思い出すと怖気が走る……
「ジョセフお兄様!
大好き(ハート)」などと呼びおって……
なまじ女顔だったので一見美女に見える為に始末が悪かった。
男も女も虜にする魔性のオカマ!
この秘密はシャルロットには教えていない。
母親も真実を知り壊れてしまったのだ……
余が薬を盛った所為と思い余を恨むが良い。
余が色事に疎くなったのもその所為だ……
ツアイツよ、期待しておるぞ。
全ての敵を下し余の性的興奮を呼び覚ますのだ!
さすれば余の全てを賭けて貴様をハルケギニア一の性の伝道者として末代まで称えよう。
ブリミルなどとカビの生えた偉人など駆逐してくれるわ!
新たなる偉人……
性の伝道者ツアイツ!
楽しみよの。
ロマリアのエロ坊主も或いはエロ故に取り込めるかも知れぬな。