くりすます
えーすの終わりは優しい感じでメリー
「ついに復☆活!食べて食べて食べて飲むぞーー!!」
「いいわよアリシア!!輝いてるわ!!」
「お、お姉ちゃん恥ずかしいよ……!」
「止めなくていいのかい?」
「仕方ないでしょう、やっと「生身」になれたのですから、今日ぐらいは大目に見ましょう」
両手にぶんぶん振りまわしながら絶叫する15,6歳程の姿になったアリシア。
アリシアを撮影しつづける恍惚とした表情のプレシア。
2人を見て恥ずかしそうな表情をしているフェイト。
そんな家族の微笑ましい光景を見守る2匹の使い魔達。
「じゃあ、グレアムさんは管理局に残るん?」
「ああ、そのつもりだ。まだ私にはやるべき事、やらなければいけない事がある。
もう少しこの老体に鞭打って頑張るつもりだよ」
「そうなんやー」
「君も管理局に正式に入局すると聞いたが」
「うん、リンディさんに話したら喜んでたで」
「そうか、——それならはやて君、私の家に来るかね?」
「え!?ええの?」
「ああ、今まではただ遠くから援助してきただけだが、
これからはもう少し傍で見守らせてもらってもいいかな?」
「全然おっけーや!!」
「そうか——ありがとう」
グレアムとはやてが祖父と孫のように楽しそうに話をしている。
「主、……良かった」
「ああ」
「くうう……!!よかったなはやて……!!」
「……はぁ」
「ザフィーラ、まだ落ち込んでるの?」
「……まあ、な」
「大丈夫よ!小さくなったって力は変わらないんだし、それにその姿だって需要あるわよ?」
「え?」
「えっ」
はやて達から少し離れた所で守護騎士とリインフォース達が笑顔で見守っている。
「桃子さん唐揚げ出来ました!」
「ありがとう敏彦君、恭也運んでちょうだい」
「わかった」
「お父さんこのお酒は?」
「それはプレシアさんに持っていってくれ」
「はーい」
「お、お疲れ様です敏彦さん」
「おーすずかちゃんもお疲れ様。いやー料理っていいねー、食べる?」
「あ、はいありがとうございます!」
「後で一杯料理持っていくから待っててねー」
「はい!」
敏彦となのはを除いた高町家は今日の為の料理作りをしている。
「敏彦君」
「お疲れ様です。後はスープが出来るのを待つだけっす」
「——君は自分に力が無い事を嘆いた事はないの?」
「無いですね」
「……即答だね」
「それに無いとは決まった訳じゃないんで、もしかしたらある日突然ヒーローになる変身能力とか身につけたりするかもしれませんし」
「——ポジティブだね」
「そうですか?考えた事も無かったですね」
「……そうか、それじゃあとひと踏ん張りしようか」
「ういっす!」
「ふふふふふふ……!!」
「……クロノさんどうしたの?」
「ひとまずいろいろ落ち着いたのが凄い嬉しいみたいだね」
「可哀そうな人にしか見えないわよ……」
「1週間休みが取れたからゆっくり休むんだって」
「そうね、休みが終わったらまた大変な毎日が始まるもんね……」
「あははは……」
「そういえばユーノはどうするのよ?」
「僕はこっちに居るつもりだよ、アリサさんといろいろ見てまわりたいし」
「!、う、うん……」
「よろしくねアリサさん」
「あ、当たり前でしょ!!」
クロノが虚空を見つめながら笑っている横でアリサとユーノが互いに頬を赤らめながら楽しそうに話す。
「失礼します、兄さん」
「あれ?もしかしてもう時間?」
「いえ、まだ時間はあります」
「そっか、もう少しで終わるから」
「わかりました」
イリアが背後で椅子に座った気配を感じながら俺は目の前にある「もの」をいじる。
「何をしているんですか?」
「なのはちゃんの【デバイス】の調整だよ」
「……どうですか」
「全力出されると難しいけど今回ぐらいなら問題無くいけると思うよ」
「随分と頑張っていたようですからね」
「そうだねえ」
ここ半年、なのはちゃんはただひたすらに【力】の制御を行っていた。
その結果がこの前の『闇の書』の破壊作戦だった。
出力を抑え、完全な制御で見事な攻撃を行った。
「良かったのですか?なのはなら一撃で全てを終わらせられましたが」
「今回はあくまで【魔法使い】ではなく『管理局』が100%で『闇の書』を倒さなきゃいけないからね」
【魔法使い】が前面に出て終わらせても何も解決しないからね。
「おかげではやてちゃんの扱いも悪くないみたいだし」
「管理局入りは間違いないそうです」
「本人もそれを望んでるみたいだしね」
「——とろこで【小山田顕】は家に帰したんですか?」
「いや、まだ【病院】だよ。元気だけど詳しい検査で2,3日は入院するみたいだよ」
【転生者】【小山田顕】は表向き「突発性の意識障害」と言う事で病院に運ばれた事になっている。
【小山田顕】の記憶は完全に消失した結果、本来の9歳児らしい【小山田顕】になった。
無くした記憶は二度と戻る事はないだろう。
膨大な【魔力】に関しても『闇の書』の【彼女】に奪われてしまって一般人と殆ど変らない量だ。
二度と「彼」が「こちら」に関わる事も無いだろう。
「先生、失礼します」
そんな事を考えていたらなのはちゃんとアギトが帰ってきた。
「お帰り」
「ただいまだぜマイスター!」
「どうでしたか?」
「大丈夫だったよ、全力を出し続けると解らないけどあれくらいなら耐えられるよ」
「良かったなロード!」
「うん!」
俺の結果を聞いてなのはちゃんとアギトは手を合わせて喜んでいる。
「しかし大変なのはこれからだよ、はやてちゃんもグレアム提督も、守護騎士達もね」
「そうですね、『闇の書』を滅ぼしたとはいえ『輝天の書』は設定上『闇の書』とは繋がりがありますからね。
これからの行動で信用を勝ち取っていくしかないでしょう」
「私もはやてちゃんに力を貸したいです」
「そして八神はやてからも「さん」づけされるんですか」
「にゃああああ!!?」
「ロード!しっかりしろ!!」
あちゃあ、なのはちゃんが一番気にしてる事が……
「ううう、いまだにさん付けがとれないのおおぉぉ……」
「それどころか敬語も取れてないですよね」
「にゃあああぁぁぁぁぁ……!」
「ロードー!!」
おおう、なのはちゃんがみるみる凹んでいく……
「イリアいじめるのもそれくらいにしておきなさい」
「別にいじめた覚えが無いんですが」
「余計性質わりいよ!!」
アギトに全面的に同意だな。
「さて、兄さんそろそろ時間です。行きましょう」
「そうだね行こうかアギト、なのはちゃん」
「おう!」
「はいぃぃ……」
若干落ち込んだなのはちゃんを連れてリビングへと戻った。
「『闇の書』事件の解決、あーんど、
『輝天の書』誕生おめでとうーーー!!!
そしてメリークリスマース!!!」
「「「「「メリークリスマース!!」」」」」
アリシアの音頭で一斉にグラスがぶつかる音が室内に響く。
後はそれぞれのテーブルの上に乗った様々な食事を各々がつついていく。
「うまーー!!」
「アリシアそんなにがっついたら……!!」
「うめーー!!」
「アルフ!!貴女もですか!!」
「……!!……!!」
「……プレシアその鼻血は……いえ、いいですこっち見ないで下さい」
「はい飲み物です敏彦さん!」
「お、あんがとう」
「あ、このスープ凄い美味しいです!」
「おお、それは俺と士郎さんの力作なんだよー」
「「凄く美味しいです!!敏彦さんは凄いです!!」」
「もう……ゴールしてもいいよね……?」
「……えっと」
「ほらほらクロノ君これ凄く美味しいよ?」
「クロノさんこれも美味しいで?」
「……あ、ありがとう」
「折角だから食べさせてあげようか?」
「あ、だったら私も食べさせてあげるで?」
「……いや、それくらいは自分で……」
「「あ?」」
「……折角だからお願いしよう、かな」
「「はい、どうぞ!」」
「アリガトウ」
「あらあらクロノったらモテモテね」
「あっはっは、本当だな」
「……そうですか?」
「……なんだろう、凄くクロノっちの将来に希望が見えない」
「しかしヴィータも大きくなったな」
「ああ!これでより一層はやての為に動けるぜ!」
「……我は小さくなってしまったんだが……」
「あなたは『盾』だから大丈夫よ」
「そうだな」
「ああ、安心しろ盾の」
「……はぁ」
「少しいいかね遠坂君」
「どうかしましたか?」
1人中庭に出て【準備】していたら後ろからグレアム提督に声をかけられた。
「なに、1対1で君と話したくてね」
「いいですけど、ちょっと【準備】があるんで【準備】しながらでいいですか?」
「ああ、済まない構わないよ」
【準備】している俺の横にグレアム提督が立って他愛ない話が続く。そして——
「そう言えばクロノ君から聞いたよ、君達が知っている「未来」の話を」
「そうですか」
「ああ、最初聞いた時は信じられなかったよ」
「そうですか」
「——君は「これから何が起こるか」知っているのかい?」
「どうでしょう」
「おや、知らないのかい」
「俺達が知っているのは「俺達がいない未来」ですから」
そう、俺達が知っているのはあくまで「何の介入も無い場合の未来」のみだ。
だが最初に俺達が「混じった」時点で最早「原作」の知識など「大体の結末」を予測出来る程度のものでしかない。
「じゃあ、聞きますか?確定ではなく「もしかしたら」程度ですが」
「……いや、遠慮するよ」
グレアム提督は首を横に振る。
「意外ですね、断るとは」
「ああ、そうかもしれんな」
「またどうして?」
「確かに君に聞けば様々な悲劇が回避できるかもしれないな」
「なのに?」
「……我々は「神」じゃない。どんなに知った所で全てを防げるわけではない。
我々は「我々」の力で出来うる限りの悲劇を食い止めてみせる……!」
「傲慢にも聞こえますが?」
「人とは——傲慢だろう?」
そう言って笑うグレアム提督を俺は少し——眩しく感じた。
「なるほど、それこそが「人」ですね」
「だろう?」
「——クロノも「知る事」を断りましたよ」
「らしいね」
「何て言ったと思います?」
「何て言ったんだい?」
——僕達は僕達の方法で悲しみを防いでみせる!!——
「——言うと彼が泣くので秘密です」
「……それは逆に聞きたくなるな……」
グレアム提督がちょっと知りたそうにしているけど教えられません。
「しかし、どんなに見ても【何をしている】のか解らないな」
「【魔法】っていうのはそういうものです」
「あのなのはと言う少女も【魔法使い】だったね……皆あんな感じなのかい?」
「あの子はある意味ぶっ飛んでます」
なのはちゃんの【力】を基準値にしないで下さい。
「——さて、そろそろかな?」
【準備】が終わって立ち上がり凝った腰をほぐす。
「準備完了かい?」
「ええ、これから始めます」
先生に言われた通りに皆を連れて中庭に出る。
「なのは、これから何があるんだい?」
「うーん、私も聞いてないの」
お父さんに聞かれたけど私も先生に「見てからの秘密」って教えてくれなかった。
ちなみに後ろでは——
「ど、どう?」
「凄くあったかいよ、帽子ありがとうアリサさん」
「う、うん、なら良かったわ」
「外寒いから手でも繋ぐ?」
「「はい!」」
「……」
「クロノ君だいじょーぶ?」
「ほらクロノさん、私に掴まってえーで」
「いや、私の方が背が近いから私に掴まって」
「……い、いや1人でだいじょ——」
「「あ?」」
「ふ、二人とも肩を貸してくれないか……」
アリサちゃんとユーノ君がラブラブだったり
敏彦さんとフェイトちゃんとすずかちゃんが楽しそうだったり
クロノさんはフーフー言いながらはやてちゃんとエイミィさんの肩を借りて一緒に来たり、
……あれ?最後何かがおかしかった気がするの。
「——皆様、お集まりいただきありがとうございます」
中庭には先生が【魔法使い】としての格好をして立っている。近くにはグレアム提督がいる。
「ちょっとした【プレゼント】を用意しました」
そういって先生は右手を空へと上げ、
——【Weihnachten】!!——
先生が指を鳴らす。すると——
「わあっ……!!」
「これは……」
「すごい……!!」
空から小さな白い——「雪」が降って来る。
「いやー、この前なのはちゃんが頑張っちゃうから雪降る要素が無くなっちゃったねえ、急いで用意しました」
「にゃあ!?」
あれ!?私のせい!!?
「さすがはなのはさん……」
「フェイトちゃん!?」
「……」
「はやてちゃん!?なんで両手の掌をこっちに向けるの!?」
「【なのはマニュアル】6ページ、
にゃーにゃー言ってる時は掌を見せて敵意が無い事をアピールしましょう」
「アリサちゃん!?」
「雪……綺麗ねユーノ」
「そうだねアリサさん……」
か、会話に割り込めないの……!!
「なのはちゃんパネエ」
「マジで震えて来たぜ……」
「これが、【魔法使い】……!」
「あれと一緒にしないで下さい」
「イリアさあああん!?」
み、味方がいないの……!!
「あたしはいつでもロードの味方だぜ!」
アギトちゃん……!!
暫くすると皆で各々空を見上げて楽しそうにしている。
皆を笑顔にする【魔法】——
やっぱり先生は凄いなあ。
「メリークリスマス、なのはちゃん」
「あ、先生」
いつの間にか普通の服に戻った先生が横に居た。
「はいこれ」
「え?」
先生が手の上に乗るようなサイズの小さな箱をくれる。
「あの、これは……?」
「クリスマスプレゼントだよ」
「え?」
クリスマスプレゼント!?
私は急いで箱を開ける。中には——
「わあっ……!!」
「気に入ってくれるといいんだけど」
中には綺麗な藍色の「髪留め」が入っていた。
「あ、ありがとうございます!!凄く嬉しいです!!」
「それはよかった」
「——なのはは髪留めを貰っていましたか」
「あ、イリアさん」
やってきたイリアさんの首にはオレンジ色のマフラーがしてあった。
顔には出ていないけど、雰囲気が凄く嬉しそう。
「イリア、なのはちゃん」
「「はい」」
「これからもよろしく」
「無論です」
「はい!!」
先生に最大の笑顔で答える。
高町なのは——【魔法使い】続けてます!
『未来は魔法に殺され、蘇る。
聖王が目を覚まし、世界はかの法に染め上げられる。
なかつ大地の法の塔とあまたの海を守る法の船は聖王のもとへと集う。
死者たちは破滅へと集い、彼等をかの翼へと追いやろう。
星は墜ち、王は嘆き、本は閉じられる』