「君、死んだから」
目が覚めたら突然そんなことを言われました。
いきなりの出来事に僕は全く対応できないが、目の前にいる男は僕の反応など気にもせずに話し続ける。
「死んだらそれまでの肉体を廃棄して魂は輪廻に戻ることになってるんだけど、君の場合ある条件に当てはまっちゃったから特典付で転生することになったよ」
僕の目の前にいる現代の日本では珍しい
正直言って、口調と格好が一致していなくてすごく違和感を感じてしまう。
「ある条件と言うのは30歳まで親族以外の異性と過度の身体的接触をしていないこと…つまり君に例えると30歳になってもファーストキスすらまだの気持ち悪い童貞君、所謂魔法使いであることだね。
というか君の場合は40過ぎになっても彼女いない暦=年齢の童貞だから大魔法使いだよね」
そう言って男は馬鹿にするかのような笑顔で僕を見下した。
突然すぎてよく理解できなかったがこれだけは分かる。
袴野郎…テメェは全ての魔法使いを敵にした!!
「まあ、そんなことはどうでも良いね。薄汚い童貞が無様に野垂れ死ぬくらいどうでも良いよ。
本題である転生については、君が死ぬ前に読んでいたゼロの使い魔という本の世界で良いよね。
…いちいち考えるのは面倒臭いし。
転生時の特典は不老で風邪や腹痛とかの軽い病気には
……といっても怪我をしたら瞬く間に再生するような不死じゃないから長生きしたければ気をつけなよ。
18歳になったら不老になるようにしておくから、それまでに色々と準備をしてね。
それと簡単に童貞卒業できないように……じゃなくて、君が長い生の中で寂しくならない様に生殖行為をした相手も問答無用で君と同じ不老になるから。
ゼロの使い魔の世界じゃ異端審問されそうな特典だけどね!!」
ちょっと!?こいつの言動に悪意を感じるんだけど!!
特に最後は本当に洒落にならないぞ!!?
「言語関係の知識はちゃんとつけとくから頑張ってね」
男がそう言うと僕の意識はだんだん薄れていった。まさか童貞のままで死ぬとこんなことになるとは…死んでも転生できるんだから一応、運が良いってことなのか?
意識が戻るとそこは暗闇の世界だった…あれ?
目が開かないんだけど?
体もうまく動かせないし、なんかちょっと体がベトベトしてる。
「奥様!ちゃんと生まれましたよ!!元気な男の子です!!!」
「ああ、私の赤ちゃん……!!」
あ、言葉がちゃんと分かる!
言語関連の知識はちゃんと頭に染み込んでいるみたいだ。
まあ、そんなことよりも…もしかして生まれたばかりなの!?
なるほど、生まれたばかりの赤ん坊なら目が開かないし体もうまく動かせないわけだ。
ていうか、納得してる場合じゃない。と、とりあえずこういう時は泣くんだよな!!?
「お、おぎゃぁ…?」
「まあ、ちゃんと声を出してくれたわ!!」
ちょっと控えめに声を出したらものすごく嬉しそうな声がして誰かに優しく抱きしめられた。なんか、この感じは安心するな。
こう、なんというか、今、僕は包み込まれてます!!という感じだ。
多分今僕を抱きしめてる人が母さんなのかな?よし、ここは気合入れて声を出そう。
「オギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャアオギャア………ハァハァハァ」
少し疲れた。なんだか早口言葉みたいになっちゃったし……赤ん坊にはきつかった。
「………なんだか早口言葉みたいでしたね、奥様。というか最後はお子様、息切れをしていらっしゃいましたよ」
やばい、メイドさんっぽい人がちょっと疑問に持ち始めたぞ!?少し調子に乗りすぎたか。
「なんてことなの!?生まれたばかりなのに早口言葉みたいに泣けるなんて……!
それに最後は息切れまでして………なんて頑張り屋さんなの!!
流石は私とあの人の息子!!!」
なんか都合の良い様に解釈してくれた。これが親馬鹿という奴か?
僕がそんなことを考えていると突然扉を開く、もとい蹴破った様な音がした。
「セイラ!!
ちゃんと子供は生まれたか!!!?」
誰かがこちらにすごい勢いで近づいてきている。これが父さんか。
「はい!!
元気で頑張り屋な男の子です!!!」
母さんはそう言って僕を誰かに渡した。視覚が無いから確信できないけど、この流れだと多分父さんに渡したんだろう。
「おお、流石は私たちの息子だ!!
私は偉大な息子を持てて幸せだ!!!
イイイィィィィィヤッッッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
おいおい、父さんテンション上がりすぎじゃないのか!?
「息子よ、お前の名前はセイラが妊娠した時から10ヶ月間、毎日8時間以上ずっと考えてたんだぞ!!
お前の名はアリストだ。
アリスト・ラズム・コネサンス・ド・デュステールだ!
デュステール侯爵家の嫡男として元気に成長するんだぞ!!」
こうしゃくけって……公爵家か侯爵家のどっちだよ!?まあ、どちらにしてもここがゼロ魔の世界ならかなり上の方だよな。
伯爵家でさえ名門とか言われてるんだし、その上の侯爵か公爵だったら家柄で言えば文句なしだな。
こうして僕、アリストことアリスト・ラズム・コネサンス・ド・デュステールの貴族生活が始まった。
プロローグを投稿したわけですが、少し短かったですかね?
次話からはそれなりに長い文を書くと思います。
とりあえずこの小説はタイトルからも分かる通り、極貧貴族の主人公が荒れ果てた領地をあの手この手で発展させていきます。
領地経営だけでなく周辺貴族との謀略戦や他国との外交戦ももしかしたら含まれるかもしれません。
もしこれからも読んでくださるのなら、よろしくお願いします。
感想はいつでも大歓迎です。