ここで会った方へははじめまして、〈小説家になろう〉で会っている方へはお久し振りです、861です。
まだ執筆暦半年の若輩者ですが、よろしくお願いいたします。
では、どうぞ。
「……、以上です」
そう言って椅子に座る。その際、睨むような二人ぶんの視線を感じた。
片方は我がクラスの主担任をしている『織斑』千冬教諭。
それともう一人は……、
「(確か、『篠ノ之箒』、だったか……。成る程、このクラスには『ISの歴史の生き字引』とも言える人物の縁者が二人もいるということか。……ま、私から言わせれば、だからなんだという話だが……)」
そうこうしているうちに、SHR終了のチャイムが鳴った……。
◆◇◆◇◆◇
SHR終了後、わたくし、セシリア・オルコットは、とある生徒に話し掛けた。
「……貴女、ちょっとよろしいかしら?」
声を掛けられ、思い出すかの様な仕草をしてから、
「……確か、君は…『セシリア・オルコット』だったか?
」……と。
「えぇ、そうですわ。それで、貴女が……、」
そう尋ね、此方も改めて相手の容姿を見る。
……黒髪のボブカット、そして、何処か冷めた様な三白眼。背格好は自分より若干高めで、出る所は平均より出ているといった所。
「松原。松原璃瀬だ。それで……、何の用だ?」
「……ずいぶんと変わった口調ですのね?
」
「何分、家が武家由来なのでな……、どうしてもこうなるんだ、すまないね」
「別に、口調の事を言いに来たのではありませんわ」
「なら……、一体なんの用だ?
」
不審に感じてか、眉根を寄せる松原さん。
「先程の自己紹介の件ですわ」
「……あぁ、アレ。それで、どの辺りに違和感を感じた?
」
合点がいったものの、何が変なのかわからないと言わんばかりに首を傾げる。
「……こう言ってはなんですけれど……、貴女、年齢より老けてると言われた経験、ありません?
」
「……言われて見れば、あったな、そんな事」
此方の趣旨を理解したのか、〝ポン〟と手を叩く。
「やっぱりなんですのね……」
予想通り(外れて欲しかった)の反応に、思わず苦笑いが出る。
「それで、それがどうだと言うのかね?
」
「……」
開き直り染みた返しに、わたくしが黙りこくっていると、
「……ふむ、何も無いのなら、そろそろ席に戻るべきではないか?
」
「……むむ、仕方ありませんわね」
忠告の形で煙に巻かれたような気もしましたが、やむなくわたくしは席に戻ることに致しました。
すると、彼女は何かを思い出したのか、
「……あぁ、そうだ、先に言っておこうか」
「……なんですの?
」
唐突に声を掛けられ、今度はこちらが眉根を寄せる。
「君が私に感じた違和感の正体は、『世間の注目を集めている対象への無関心』……、これではないか?
」
「……ご名答、ですわ」
「……種明かしをすると、私は基本的に青田刈りはしない主義でね。……あぁ、青田刈りというのは、平たく言えば先物取引のような物なのだがね。
ともかく、私に言わせれば、ネームバリュー+αで過剰反応している連中が、滑稽で堪らないのだよ……」
言い終わると肩を竦め、まるで悪戯に引っ掛かった相手を嘲るかのように彼女はニヤリと笑う。
「……貴女、ドS姫ってあだ名がついてそうですわね……」
「……そう呼ばれた事もあったな。まぁ……、些末な事だが」
「……おもいっきり、自覚あったんですのね……」
「無いわけが無かろう」
「タチ悪すぎですわね……」
「悪かったね、外道万歳で」
「……そこまで言ってませんわ」
「そうか」
「……はぁ」
いつの間にやら例の『彼』は戻って来ていて、少し経ったら授業開始のチャイムが鳴った。
……正直、彼女との会話は疲れましたわ。
◇◆◇◆◇◆
「……(やれやれ、暇なんだな、彼女は……)」
授業一時間挟んだ休み時間、件の『彼』が、さっきの『彼女』に絡まれていた。
「なぁ、代表候補生って……、なんだ?
」
私があくまで傍観していると、脈絡もなく此方を向いてきた。
「(……そこで、何故私に振るのだ!?
)」
いきなり振られ、ギョっとしていると、
「……なぁなぁ、代表候補生ってなんだ?
」
そして来る二回目の問い。
「……、物知らずもここまでくると、何らかの作為を感じずにはいられないな……」
「……ん? なんか言ったか?
」
「なんでもないさ。……さて、代表候補生についてだったか。
……国家代表IS操縦者、その候補生ということなのだが。
……全くもって字面のままの意味なんだが……」
知らず知らず半分呆れ混じりな口調になる。
「あ、そっか……言われてみれば確かに」
「「はぁ……」」
何故かオルコットと溜め息がシンクロした。
「悪かったな」
「ま、まぁ良いですわ。泣いて頼めば色々と教えてやらない事もなくてよ?
何せ、わたくしは入学試験で
「実技試験なら…、判定勝ちだが私も倒したが?」な、なんですってぇ!?
」
いきなり驚愕するオルコット。
「あぁ……、俺もだな、そういえば……。
……ん? アレは向こうが勝手に自滅しただけか?
」
その反面、割りと冷静な織斑。
「ちょっと、それ、どういう事ですの!? 彼はともかく、貴女もなんですの!?
」
私に詰め寄るオルコット。というか、近い。かなり近い。
「おい……、俺はともかくって、どういう事だよ?
」
気に障ったのか、若干イラつき気味になる織斑。
「貴方を引き合いに出したら、『それって、女子の中だけの話では?
』と言われるのがオチですわ」
いつの間にか余裕を取り戻したオルコット。
「そりゃそうだろうな」
「それで、どういう事ですの?
」
「……別に、自慢できる話でもないさ。制限時間終了ギリギリまで、シールドエネルギーをなんとか保たせただけで、殆ど負けたようなモノ。しかも、惜敗に近いレベル。こんな結果、私は自慢する気にはならないね」
若干自虐的に、少し嘘混じりに語る。
「逆に凄いと思うけどな……。
で、相手は?
」
「……君の姉上だよ、織斑一夏」
「「「……はぁっ?!
」」」
……どうやら、私はとんでもない爆弾を投下した様だ。
「なんというか、教員のローテーション上そうなったのか、偶々休みの教員でもいたというのか……、ともかく、何の偶然か私は織斑教諭とあたる羽目になったのだがね。
……途中から本気で来られたからなのかは知らないが、正直、あれで劣化だとは信じたくないな。よくもまぁ、生きてたなと思うよ、私は…。」
……あれは、私の人生にとって、五指に入る戦慄体験だった。
「……想像したくないな、千冬姉の本気とか……」
想像の時点で震えが来ている織斑。
「……逆に、千冬さんの本気を引き摺り出した挙げ句、最後まで付き合ったお前がすごいのか……」
いつの間にやら会話に割り込む篠ノ之。
「さあな、私には判りかねるよ。
……それはそれとして、周りに違和感を与える事なく自然に会話に混ざった君には、ある意味敬意を表するよ。
……なぁ、篠ノ之?
」
前半分は肩を竦め、最後は口角を吊り上げ、割り込み主を見る。
「……流石に気付かれていたか」
しれっとした態度の篠ノ之。
「私を甘く見ないで欲しいな」
「そうか、これからは堂々と混ざるとしよう。
……それはそれとして、ふと思ったのだが……、」
前半分がどうしても宣戦布告に聞こえる様な言い方をする篠ノ之。
後ろ半分は人差し指を立てながら。
「何かね?
」
「……その、しゃべり方が被ってないか?私とお前で」
実に言いづらそうな篠ノ之。
「特にそうは思わないが? 」
「……そうか?
」
「……ああ」
「「「………」」」
「(か、会話が止まった……)」
「(二人とも、怖いよ……)」
そうして、チャイムが鳴り、各々の席に戻った……
……
……後は、特に印象深い出来事はなく、
強いて言えば、織斑(弟)が篠ノ之と同室になり、その際、ひと悶着あったという事を記載しておこう。
いやはや、初日から苛烈苛烈。
To
be continued,
如何でしたでしょうか?
次回はこの作品の主人公たる『松原 璃瀬』の紹介と参ります。
それでは