暫く振りの更新ですが861です。
今回は書き方の都合により、三人称形式となりました。
それでは、どうぞ。
———明くる日のSHR、1年1組では十代女子の情報網を掻い潜って現れた転校生二人(その内片方は男子)に騒然となっていたのだが・・・、
「・・・しまった、寝過ごした」
それを知らないのは珍しく寝坊をした松原璃瀬だけ。
ついでに言えば、彼女(?)はISスーツはその時の気分派である。
で、さっさと朝の支度を済ませ、自室を後にした。
・・・なんだかんだいって慌てていたのだろう、自機である【八咫烏】を床に落として気づかぬまま、ソレを置き去りにして。
「・・・やはりか」
案の定教室は空。
ともかく着替えねばと、教室の中に入る璃瀬。
そうして着替え終わり、何番かはともかく取り敢えずグラウンドへ向けて走った。
「さて、今の間に、・・・随分と遅かったな、理由はなんだ、松原? 」
「寝坊です、織斑教諭」
「そうか。
———グラウンド10周、さっさとやってこい。それとも、もっと増やすか? 」
「いえ、結構です・・・」
空を見上げていた織斑教諭の下に到着し、すぐに出席簿アタックを食らう松原。
頭を擦りながらランニングを開始したのであったのだが・・・、
「ところで織斑教諭? 」
「なんだ松原、さっさと行ってこい。それとも、グループリーダーも追加するか? 」
「お、織斑先生、流石にそれは・・・!? 」
「流石にこれは冗談だぞデュノア。
・・・こいつはシャルル・デュノア。
で、あっちの銀髪眼帯がラウラ・ボーデヴィッヒだ。
デュノア、こいつは松原璃瀬。かなりのひねくれ者だが、他人を見る目はあるヤツだ」
「は、はぁ・・・、そうですか」
「まぁなんだ、よろしくたのむ」
そう言って松原はランニングを始めた。
・・・10周走り終わり、戻って来る頃には、頭の上でやっていたセシリア&鈴音VS山田先生の戦闘実演はとっくに終わっていて、各専用機持ちがグループリーダーになっての実習をやっていた。
「・・・走り終わりましたが、はて? 織斑教諭、私は? 」
「そうだな・・・、距離も近いし、デュノア、お前の班に入れても構わんか? 」
「え、別に構いませんけど・・・」
「だそうだ」
「そうですか。そういう訳でよろしくたのむ」
「あ、こちらこそよろしく」
そういう訳で、璃瀬はデュノア班に入ったのであった。
・・・一部の女子が、羨ましそうにしていたが、正直璃瀬には関係なかった。というか彼女は、
(まぁ、自室に忘れてきたのはしまったと思ったが、後で取りに行けばいいか。・・・しかし、シャルル・【デュノア】、か)
とか、後から入っておきながら図々しい事は言えんからと、順番を最後にしてもらって、自分の番を待つ間、そんな事を考えていた。
「えっと、松原・・・、さん? 」
「そうか、ようやく私の番か。それとデュノア、呼び捨てで結構、別に敬称はいらんよ」
そうして璃瀬の番となった。
「じゃあ、璃瀬、だっけ? 男っぽいっていうか、変わった喋り方だよね」
「・・・ならば良し」
「な、なにかな? 」
「いやアレだ、
自分の班の、前の番の人がしゃがませていた機体を、親指で指差す璃瀬。
「・・・そういえば、それで余所見してて、織斑先生に怒られてる人いたね」
「うむ。さて、お喋りはこれまで。私の番をするとしようかね」
そう言って機体のステータス確認を始める璃瀬。因みに、デュノア班の訓練機はラファール・リヴァイブである。
「リヴァイブじゃなくて、リヴァイヴだよ璃瀬」
「成る程、某世界を暴くシステムな機体名と同じか」
「それって、ヴァとヴしか合ってないじゃん・・・」
「まぁ、私は火〇羽派だが、この場合全く関係ないな」
いきなり話を切り、乗り込む璃瀬。そのまま起動、歩行まで一気に淀みなく終わらせた。
・・・それはそうと誰か書かないのだろうか、IS×ヴァルヴレイヴなのを。
そんなこんなで本当の意味で全員の起動テストは終了し、一組二組合同班全員、行きはISの片付け、帰りはグラウンドへの引き返しで全力疾走である。
織斑教諭からの連絡曰く、午後からは訓練機の整備(専用機持ちはそれ+自機も見る事)で、格納庫に班ごとに集合との事。
で、連絡事項を伝え終ると、これにて解散と、織斑教諭は山田先生と一緒にさっさと引き上げていこうとしたが、数歩の距離で足を止め、
「・・・あぁそうだ。松原、午後からは忘れて、遅れて来るなよ? 」
と言ってきたので、
「何を言うかと思えば、当たり前じゃないですか」
と、璃瀬は返した。
「そうか、ならいい」
そう返して織斑教諭は止めていた足を再び動かした。
それを後ろで見ていたシャルルがセシリアに、
「・・・ねぇ、織斑先生がああ言っていたけど、もしかして、璃瀬ってサボりとか遅刻、多いの? 」
と聞くと、
「まさか。むしろ、前の日に何があろうともケロリとした様子で無遅刻無欠席。それが彼女のデフォルトでしてよ? 」
と返すセシリア。
「そ、そうなんだ・・・。
(・・・ならなにがあったんだろう? ・・・あれ、そういえば、璃瀬ってかなり動かすの上手かったような)」
そこまで考えたところで織斑少年に話しかけられ、シャルルは一旦思考を中断したのだが、彼(仮)の中である意味、【松原璃瀬】の印象が決まった瞬間である。
その印象をあえて表現するのであれば、
『男っぽい古風な話し方の、知れば知るだけ謎が出てくる、どこか超然としたミステリアスな雰囲気の女子』
といった感じである。
閑話休題、勝手にそう評価された璃瀬は、今日は午後もあるのに着替えるのも面倒だと、ISスーツのままタオルで体(主に肌とか頭とか)を拭いてから上から制服を着た。・・・当然、着替えたのは教室で、だが。
それから自室に一旦帰り、机の下に落ちていた待機状態の自機(形状は、色は灰色の、正面から見た翼を下向きに広げた赤眼の三足烏の姿を象ったペンダント)を拾い上げ、首に掛けた。
それから教室に戻ったのだが、探していた相手は当然、時間的にいるわけがない。
「・・・やれやれ、まぁ、仕方あるまい」
そう呟いて璃瀬は、自機を潜伏モードのまま、コア・ネットワークで
「・・・む、上、か? 」
バレると不味い為、C・Nを使用したのは一瞬だけ、まだ織斑少年ととしか許可登録しあってないため誰かは正確ではないが、反応は自分のいる階より明らかに上、むしろ屋上とかその辺りになんとなく1+3つ。
その内、3つは織斑少年、セシリア、鈴辺りだと踏んだが、残る一つがわからない。
「・・・まぁ別にいいか。こんな日和だ、屋上で各々弁当広げて交遊でも深めているのだろうな。 さて、私もそろそろ昼餉に参ろうか、ね」
そう呟き、学生食堂へ。
そこにつくと、
「よぉ、随分と遅いLunch Timeじゃねぇか、松原? 」
「私とて色々あったのだよ独眼竜姫」
メニューを選び、席につくと、声を掛けてきたのは最上真音(もとい伊達政宗)である。
「フ~ン? てか、随分変わったペンダントじゃねぇか、何だそりゃ? 八咫烏か? 」
「そうだが? 」
何食わぬ顔で麺を啜る璃瀬、因みに食べているのは・・・、
「‘Spaghetti alla Puttanesca’、か。随分とspicyなモン喰ってんのな」
「なんとなく食べたくなったのだよ。それはそうと、竜の右目はどうしたかね? 」
「あぁ、小十ろ・・・、千歳か? アイツにもcompanionshipってのがあるんだよ」
「それもそうか。・・・」
「なんだ、いきなり黙って? 」
「いやなに、私と卿がこうして同じテーブルで食事をとる事が有ろうとはな」
「そう言われてみりゃ確かに、な」
ニヤリ、と端から見ればやや薄気味悪く見える笑みを浮かべあう二人。
「東照や凶王の腹、竜の右目に武田の忍頭あたりが聞いたら、どのような顔をするやらな」
「まぁ、まずstopがかかるだろうな、信用ならんとか言って。
・・・そういや、また一年にTransfer Studentsが来たらしいな、しかも今度はお前のクラスに二人ときた」
「あぁ・・・確かにな」
「随分微妙な反応だなオイ」
「いやなに、今日は寝坊で遅刻してな、片方の名は判るが、もう一方の名は知らんのだよ」
「珍しい事が在るんだな、アンタが寝坊なんてよ。こりゃアレか、今までに無い事が起きる前触れか? 」
皮肉混じりの口振りの最上真音。
「既に今年に入って四度もあったではないか? 」
これ以上あってたまるかと、肩を竦める璃瀬。
「織斑boyがISを世界初で起動させ、で一年生絡みだと、織斑含む7人の専用機持ち、先月のクラス対抗戦は所属不明のISの襲撃により中止、転校生組の内二人は一夏か織斑教諭に因縁のある相手、そのくせDr.篠ノ之束の妹まで在籍・・・、あとあったか? 」
指折り数え羅列する真音、それを途中で璃瀬は制止した。
「待った、関係者が二人とは・・・、鈴音はわかるがもう一人は誰かね? 」
「ん? お前の言うところの、【名前の判らんもう一人】ってのがそうなんだとさ。お前ンとこの仲の良いヤツにさっき聞いたんだがな、今日来た転校生の銀髪の方なんだが」
「うむ」
「織斑教諭に促されて挨拶したはいいんだが、一夏と目が合ったと思ったら席の方にやってきて、平手打ちかましたんだとよ」
「いきなり、か? それは奇妙な・・・」
「で、話聞いたヤツが一夏の隣の席らしいんだが、そいつが平手打ち食らわした後に何やら言ったらしい」
「何かとは何かね? 」
「さぁて、ね。なんでも、
『貴様があの人の弟であるなど、認めるものか』
とかなんとか。で、どう思うよ? 」
言い終わると肩を竦め、やれやれのポーズをとる真音。
「・・・【あの人】とは、どう考えても織斑教諭の事だろうな、そうでなくては言動の文脈が繋がらん」
「そりゃそうだ」
「・・・だからか。面倒な、道理で面倒な」
やれやれとため息をつく璃瀬。ついでに皿はとっくに空である。
「お? お得意の人物鑑定か? 」
「まあ、そんな所だ。 ・・・デュノアには自尊と実存を贈るがその依存はいらん、もう一方の銀髪には依存をもらい自立を贈る、そんな所だろうな」
少し考えてから評ずる璃瀬。
「フーン、お前の見立てじゃあいつ等を紐解くkeywordは【依存】、か」
納得した風な真音。因みに、この二人の会話の内、前世絡みの話は小声である。
「ああ。さて、それでは失礼するよ独眼竜」
皿を片付けるために立ち上がった璃瀬。
「そうかい、それじゃあな」
そうして、片付けに行こうとするも、今更思い出したかの様に足を止め、
「・・・ところで、もう一人の名前はなんというのだ? 」
璃瀬はそう、問うた。
「・・・ラウラ、‘
「そうか、彼女はラウラというのか、そうかそうか」
名前を聞き、なにやら思い付いた風で今度こそその場を後にする璃瀬であった。
そうしてこうして昼休みは終わり、午後の授業となった。
璃瀬は時間通りに集合場所に行き、午後の授業は特に何か事件が起きることもなく終了した。
・・・・・・
時間は過ぎ去りそうして夜となり、夕食後。場所は織斑少年と、シャルル(自然の流れか同室となった。)の部屋。
二人が食後の一服に興じているとノック二つ。
「ん? どちら様? 」
「私だ、松原だ。入っても構わんかね? 」
「あー、別に構わないぜ」
「・・・そうか。では、失礼するよ」
そうして1025室に入って来たのは、松原璃瀬であった。
「どうしたんだよ? 多分気まぐれか何かだとは思うけどさ? 」
「まぁ、確かになんとなくではあるが、な」
「な、なんとなく・・・? 」
「うむ、なんとなくだ」
「・・・基本的にノリと勢いなんだね、意外と。
けどその割に、礼儀正しいよね」
「
シャルルの皮肉をさらりと流し、織斑少年側のベッドに座る璃瀬。
そのままたわいない話を始めた三人であったが、暫く経ち、
「ふむ、そろそろおいとまするかね。ではな、一夏、シャルル」
「あぁ、また明日」
「それじゃあね」
そうして璃瀬は1025室から出ていくのであった。
・・・余談ではあるが、その後シャルルが璃瀬の事を、
「よくわからない内に現れて、よくわからない内に去って行く、かなり昔のヒーローのような人」
と評したのであった。
・・・to be continued・・・.
如何でしたでしょうか? 今回はどうも話が浮かばず筆が進まず、だらだらと時間がかかってしまいましたが。
因みに、最後にシャルルが評したヒーローですが、疾風の様に現れて、疾風の様に去って行く彼です。
それでは。