どうも皆様半年振りです861です。
今回は特に変わった事のない回です。
それでは、どうぞ。
・・・・・・
それからしばらく経ち、季節は六月、初夏の候。私にとっては久々の暇な日曜日である。
はっきり言ってこの2週間は詰まりすぎた。
やれクラス対抗戦(結局うやむやになり箝口令まで敷かれ、一夏、鈴、私は誓約書まで書かされる始末である)だの、機体のデータ取りだの、一夏の特訓(我ながらやり過ぎた気がする)だの、ともかくそんな感じであった。
さて、今日は立花技研からの帰り(土曜の午後から実質泊まり込みだった)である。
「・・・ふむ、五反田食堂・・・、か」
昼時になろうかという頃、私は丁度前を通りかかった食堂に入った。
適当に席に座り、適当に注文をする。
「・・・頼んでアレだが、業火野菜炒めとは物騒な名前だな・・・」
しばらく待っていると、後ろの席に複数人座ったようだ。その際約一名、知った声が聞こえたが。
その間に私の注文の品が出来上がったようなので、いただくことにする。
後ろでは合間合間に雑談中のようである。
・・・あぁ、混ざりたい。
そんなこんなで私は昼食終了。
後ろの女子から、
「・・・私、来年IS学園を受験します」
という台詞が飛び出した時、余りの脈絡の無さにお茶(市販の500ミリペットボトルのアレを一々食堂のコップに注いでいた)でむせる羽目になった。
そのせいで、知った声の主には気付かれたようなので仕方なく話しかける。
「・・・ゼェ、ゼェ・・・、いやなに、みっともない所を見せたな織斑」
「あれ、璃瀬もいたんだ。ちっとも気がつかなかった」
「・・・普通、頭の後ろが見える訳ないだろうて」
「それもそうだな」
このやりとりを見て、妙な顔になった赤毛兄妹。
兄君は早合点、妹君はやや嫉妬混じりに見えた。
「・・・なぁ一夏、」
「・・・あの、一夏さん、」
タイミングが被る二人。
「待った、二人は早合点をしている」
それを制止する一夏。
「全くだ。・・・誤解される前に言うべきだったのだろうな。
私は松原璃瀬、彼とは同じクラスなのだよ。ついでに言えば、先程の話に出てきた箒・・・、篠ノ之箒も同じクラスだな、鈴は二組だが。もう一つついでに言えば、私は呼び捨てで結構」
一気に喋り切り、コップの中身を呷る。
すると、別の意味で妙な顔になった赤毛兄妹。
「・・・その|表情《カオ》は、何か言いたいことがあるというのだけはわかるな」
遠回しに、さっさと言えと言う。
「・・・あー、弾。 こいつの口調は前からだからな。なんでだったっけ? 」
「・・・ふむ、大雑把に言えば・・・、」
「「言えば? 」」
また同時に返す五反田兄妹。
「・・・人様に言うまでもない事を態々言うのは性に合わんちゅうか苦手なんやけど、まぁしゃあないわ。
まぁなんちゅうか、これがウチの本来の喋り方で、あんな気取った喋り方しとったのはアレや。 大した理由じゃないんやけど・・・、」
「・・・璃瀬だったか? お前、もしかしなくても関西人か? 」
よろよろと立ち上がりながら途中で割り込んできた五反田兄。
「ん、出身は京都やな」
「・・・アレか? 地元の訛りが性に合わないとか、そういうのか? 」
「・・・正解や。 ウチからしてみれば、あの妙な感じが気に食わんのよ。
・・・さて、脈絡なくIS学園受験するとか言ってたな、五反田妹
「蘭です。えっと・・・璃瀬、さん?」そうか、蘭か」
「それが、なにか? ・・・私の成績なら筆記は余裕ですし、 あとお兄、これ」
「・・・ん? げぇっ!? 」
蘭から渡された紙を見てたまげる五反田兄。
「なんだ、どうした? 某髭の軍神でもいたか? 」
そして、平常運転でボケる織斑。
「・・・・・・IS簡易適性試験、・・・判定A・・・」
そうして、呻き声にしか聞こえないような声を上げた五反田兄。
「そういうわけですので、問題はすでに解決済みです」
どうだと言わんばかりにすました顔の蘭。
・・・と思った数秒後、こほん、と咳払い一つ。
椅子に改めて座り直した。なぜだかは知らないがちょこんと。
「・・・で、ですので、い、一夏さんにはぜひ先輩としてご指導を・・・」
「ああ、いいぜ。受かったらな」
「・・・そういうのは安請け合いというのだが、私が口出しする義理もなし。卿はいつもの様に勝手に面倒事を起こしたまえ」
至極どうでもよさそうに言ったら、
「・・・璃瀬、|IS学園《向こう》でもこんなんなのか? 」
五反田兄が食いついてきた。
「そのとおり。むしろ彼は、周りが女性ばかりで男は自分独りきりの劇団に放り込まれた・・・、の方がある意味正確な例えだよ」
「・・・あー、なるほど」
「弾、今の例えでよくわかったな」
「・・・要は、どこにいても何をしていても視線を集めてしまう、そんな感じだろ? 」
「璃瀬、俺の事よく見てるなー」
感心したかのような声を出した織斑。
「同じクラスなのだから、見るなというは無理な話だよ」
「それもそっか。
それで、昨日の昼過ぎからはどこに行ってたんだ? 」
「機体の稼働データと整備、あと手続きをちょちょっとな」
「手続き? 」
「ああ。じきに一夏も似たようなのを書く事になるだろうし、原本は向こうに預けて、|謄本《コピー》を貰ってきたのをIS学園に戻ってから見るかね? 」
「ああ、参考程度に頼む」
「よかろう。
では改めて、ごちそうさまでした」
話を一旦切り、合掌にて食事を完了させ、食器を片付ける。
・・・私が席を立った途端(でもないが)、どうやら話が割り込む前に巻き戻されたようだ。
それは、私が席に戻ってきても続いていて、五反田兄が一人で孤軍奮闘で暴れ芸を披露しているという、実に珍妙かつ摩訶不思議な絵面であった。
「それってひどすぎね? 」
「なんだ、思考が口に出ていたか」
「出てたよ。お前はあれか、愉悦部員か」
「失礼な、あれらと一緒にしないでくれ」
「そうかよ。
で、それはそれとして、お前が書いたとかいうのはここで見せられないモノなのか? 」
なぜだか知らないが話を切り換えた五反田兄。
「見たいか? 」
「出来るなら、な」
「ほら、これだ」
「は? 」
足下のボストンから書類(専用機関連)のコピーを取り出す。
「どうした、見ないのか? 」
「あ、あぁ」
渡され、私に言われてようやく上から下までざっと見る五反田兄。
「どうかね」
「細かい所はともかく、この【八咫烏】ってのか? がお前の専用機だってのはわかった。ほらよ」
「そうか。帰ったら織斑教諭に提出せねばならんのでな、染みは付けてくれるなよ? 」
返され、そう言ってから鞄にもどす。
「織斑教諭って、もしかして千冬さんか? 」
「そうだよ五反田兄。ついでにいえば、IS開発者の篠ノ之束の妹が、さっき名前が出た一夏の1st幼なじみの篠ノ之箒だよ。・・・今更ながら織斑一夏の人間関係は一体なんなんだ」
「いや、今更だろ」
「今更、か。そう言えば鈴音は中国の代表候補生なんだそうな」
「へー、アイツも頑張ってたんだな。
・・・蘭が聞いたら俺に八つ当たりされそうな気がする話だなそれ」
「・・・五反田兄、君には兄としての威厳は・・・、見ての通りの様だな、お気の毒に」
「わかるか、璃瀬」
実にため息しか出ない。
「それはそうと璃瀬、さっきおかしな言い回し使わなかったか? 」
織斑に指摘され、振り返ってみる。
「・・・確かに、言葉が私らしからぬ不自然な抜け落ちだったな。なぜなったかはわからないが」
腕を組み考えるも、理由はわからない。
・・・わからないが考えている内にどうでもよくなったので、この件については考えるのを止めた。
「それで、璃瀬はこのあとどうするんだ? 」
「ふむ、特に予定もなし。だからといって、子烏共の継ぎはぎだらけの噂のネタになるのも癪に障る。はて、どうしたものか」
「「子烏共の噂のネタ? 」」
「勝手に継ぎ足し水増しされた噂話を更に膨らませて娯楽とする連中なぞ、ぎゃあぎゃあ喧しく騒ぐ烏共と何が違うと? 鳥共はただ煩いだけだが、こっちは意味ある言葉を吐く分更に質が悪い」
「・・・一夏、璃瀬って見た目より毒舌だな」
「それで璃瀬、その心は? 」
「風評被害を起こされるネタになるつもりはない。
私の所為で一夏が箒やら鈴音やらセシリアやらに滅多打ちにあうのはいくらなんでも流石に気の毒だからな」
「箒や鈴はともかく、・・・セシリア? 」
知らぬ名に首を傾げる五反田兄。
「追々話す。さてと、私も諸君らに混ざろうかね」
「長々言った挙げ句、結局来るのか」
「・・・どこぞの歌の歌詞にもあるではないか、
『言いたいだけいえばいい、|他人《ヒト》の噂なんて僕には意味がない』
・・・とな」
「「どこの歌だ」」
「誰かの替え歌だ」
そんな感じで私は一夏と五反田兄との三人で、五反田食堂を出た。
・・・・・・
学園へ戻り、先ず初めにしたのは書類の提出。
それから自室に戻ったのだが、戻ったことで疲れの堰が弛んだのか、私はしばらくだらけていた。
それは同居人に、
「だれてんなぁ、お前。そんなに疲れたってか? 」
とまで言われる始末。
「・・・悪いか」
「んなこたねぇけどな」
「そうか。・・・さて、夕飯にするか」
「そだな」
そんな訳で二人で自室を出て、食堂向かった。
「・・・結局なんだったんだ? 」
「曰く、・・・」
食堂の奥に固まっていた集団から聞いた話をする。
「・・・んな馬鹿な。 いとも容易く矛盾を指摘出来るレベルのおかしさじゃねぇか」
「全くだ。当人らは本気で思ってるらしいが・・・、|三次元と二次元《事実と妄想》の区別がつかないとは実に哀れな」
「・・・正直一ミリも哀れんでねぇだろ、てかぶっちゃけ馬鹿にしてねぇ? 」
「当然だ、そもそも私からすれば、少し頭を逆に回せば気がつくレベルだよ」
ずずずと味噌汁を飲む。ある意味古典的な豆腐と長葱の白味噌汁を。
「・・・ふぅん」
向こうのはほうれん草の赤味噌。どうでもいいが辛くないのか?
「関西風に慣れてたらそりゃ赤は辛いだろよ」
「それはそうだな」
「・・・それでよ璃瀬」
なぜか声を潜めた。
「なんだね」
「学年別個人トーナメントで、お前の【アレ】、使うのか? 」
【アレ】とはいわずもがな、ある意味特殊な立ち位置の私の専用機、【八咫烏】である。
「手続きは昨日今日で済ませたのでな、別に問題はない」
「そりゃそうか・・・」
そのまま会話が途切れ、私達は黙々と食事を続け、あっさり片付いた。
食後のお茶も楽しみ切り、我々は自室に引き上げた。
・・・それ以降は就寝まで特に変わった事もなく、せいぜい私が織斑の部屋に件の書類を見せに行った程度であった。
・・・to be continued.
如何でしたでしょうか?
・・・半年ずれた理由ですが、こっちが全然思い浮かばず【IS~The invocation is who's for~】の方ばかり書いてたからです。
・・・白状すれば、原作第二巻を入手出来たのが先月中旬だったからなのです。
・・・ただし、新装版ですが。内容に用があったので、絵については不問にしました。
アニメ版は第三巻(収録部分は【ボーイ・ミーツ・ボーイ】と【ルームメイトはブロンド貴公子】)
だけ見当たらずでした。
流石に分からないまま書くわけにもいきませんでしたので。
それはそれとして、IS、今秋からまたアニメやるそうですが。
それでは。