プロローグ
突然だが、私はチート転生者だ……
いや、申し訳ない。石を投げたり引いたり病院を紹介するのはちょっと待ってもらいたい。本当のことなのだ。
経緯についてはテンプレ通りで
① トラックに轢かれた
② 神様が土下座してた
③ チート能力を貰って漫画やゲームの世界へ
④ 足元に穴が空いて落下 ←現在地
うん、まさに厨二二次創作のテンプレ通りとしか言いようが無い。上の説明で状況が理解できない場合は『小説家に、俺はなる!』と言うHPでチートとか転生で検索してみてもらえるとありがたい、きっと理解してもらえるはずだ。
で、浮遊感は既に無く、現状としては夢見心地なわけだ。と言うか二度寝のまどろみの様な幸福感を味わっているのだが。そろそろ目を覚ます頃合だろう。
これで、目を覚ました結果が夢オチだったら会社サボって昼間から酒呑もう……三十路間近で厨二願望の夢って少し悲しい。
「……知らない天井だ」
目を開けると、そこは真っ白な天井だった。うちのアパートの天井じゃなくって、まさに病院とかそんな感じの……
「……知らない指先と……令呪だ……」
手がちっちぇえっ!
手を目の前まで持ってきてみると、明らかに自分のそれとはサイズが違う、で、手の甲には好きなゲームで見慣れた刻印……はい、チート転生者になりました。
どうやらベッドに寝させられているようなのでベッドに座って自分の身体を観察してみる。
身体のサイズ的には5.6歳くらいだろうか……ひょっとしたら転生じゃなくて憑依なのかもしれない。
身体のあちこちには包帯が巻かれいて、腕には点滴のチューブが繋がっている。
今の状態が不明なので、前世ではなくて現世……つまりはこの身体のほうの記憶が探れないかと考え込んでみる……ずっと昔のことを思い出すような感覚で……
「うげ」
これ以上思い出すのをやめた、うん、封印しよう身体の記憶。必要最低限のことは思い出せたので、鬱記憶と銘打って記憶の奥底に封印します。
正直、とても気分の悪い記憶でした。
まず思い出せたのは名前、この身体の名前は
育児放棄なんて生温いです、何度か死にそうになったけど魔法で回復させられて生き延びたって感じです。
夫婦仲がけっして良くないようで、そのとばっちりを受けていたようです。
そんな両親の職業は魔法を使って色々なところからお金を拝借してくること……うん、子供がてらにそんな認識してましたが、要は魔法犯罪者のようですね……最悪だ。
最近の記憶では、『このままではオコジョにされちまう』とか言いながら荷物を纏めて夜間飛行、身体の記憶的には両親と3人での初めての海外旅行。
……えぇ、『最悪、こいつを人質にして』とか呟いてましたが、身体の記憶的には両親との初めてのお出かけ。
海外に飛び出す辺りで邪魔になったようで、上空から捨てられて死亡しました。
はい、死にました。完璧ばっちり、間違いなく。
その遺体を神様が修復して、チート仕様にした後、私と言う存在で上書きしたようです。身体の記憶の一番上のほうにメモみたいな感じで神様からの言伝が残されてました。
「……最悪だ……何て言うか……可哀想過ぎる」
授乳プレイや羞恥プレイがしたかったとは言いませんが、現世の両親が最低の屑で殺すつもりで捨てられたというのは辛すぎる。
前世……体感時間で30分くらい前の自分の両親は良い人達だったので、命君の生涯(5年くらい)に思わず涙してしまう。
死んでしまったその場所に、自分が居座ってしまったと思うと申し訳なく心苦しい。
ですが、救いは残されています……神様も不憫に思ったのか、命君の霊体は成仏する前に神様によって拾い上げられて保管されているようです。
もし、義骸のような容れ物が用意できたら死後の人生を楽しめるかもしれません。
新たなる人生で最初の目標は決まりました……命君の笑顔を見ることです。鏡を見て笑えば達成されるような簡単な事ではなく。霊体になってしまった命君が笑って過ごせるようにするのです。
けれどまずは。
「父さん……母さん、親不孝者でごめん」
二度と会えないだろう、前世の両親を思って泣きました。
暫くすると病院関係者がやってきました、砂浜に打ち上げられていた自分は瀕死の状態で3日間も眠り続けていたらしいです。
その後、色々事情に聞かれましたが、両親が魔法使いと言うのは、頭の診察を受ける羽目になりそうなので割愛しました。
説明したのは産まれてこの方、殆ど家から出たことの無い命君の生涯と、荷物を纏めて海外に飛んでいこうとした両親に海に捨てられた事です。
嘘は言ってないですね、両親は杖に跨って飛んでいったわけですから。
可哀想な目で見られた後、住んでいた場所を確認されましたが、命君の生涯にそんなものを記憶することは無かったです。まぁ、朱雀なんて珍しい名前なら勝手に探してもらえるでしょう。
ゆっくり眠りなさいと一人にしてもらった後はチート能力の確認です。
私が神様に貰ったチート能力は『型月に出てくる設定を任意に自分に付与し、魔改造可能』と言う代物です。固有結界だろうが直死の魔眼だろうが使い放題で、サービスとして『負担無し、身体への悪影響も無し』です、貰った当初はリアルEMIYAが出来ると思いましたが、今にすれば人形使いやキャスターの能力が使えるのが有難いです。命君の身体を作ることが私の第一目標なのですから。
とりあえず、任意に付与と言うのを試してみると、視界にステータス画面が表示されてその横に『Fate/side material』と『Fate/Zero material』、『月姫読本』が並びます……分かりやすい……確かに分かりやすいんですが。まるでカタログショッピング。
意識すると『月姫○究室』とか『Character material』も出てきます……インターネットの考察サイトも可って、神様GJです。
ひとまず、ステータスを確認すると。
CLASS アーチャー
筋力 E 耐久 D
敏捷 D 魔力 C
幸運 E 宝具 EX+++
クラス別能力 【対魔力】:C
【単独行動】:A
と言う状況のようです、現在のステータスは個人的に一番好きな5次アーチャーに準拠してるようですね、神様との話のときに話題にも上げましたし……ただ、幸運が低いのが気に入りません。と言うか命君の不遇もこれに起因して無いだろうか……で、子供の身体のために全体的にステータスが低下していると。
宝具はどうしようもないですね、ぶっちゃけ何でもありですから。
ひとまず、ステータスは第四次アーチャーのギルさんをチョイスします。全体的にバランスが良いですし、幸運Aは外せないですから。幸運だけなら第四次ライダーの方が上ですが、身体の成長がステータスに引っ張られるとまずいです。
彼の身長は212cmでかなり濃ゆい顔をしています……好きなキャラでは有りますが。あの容姿で今生を過ごしたくはないんです。ギルさんは慢心さえなければバランスも良いし容姿も良いですから。
で、幾つか摘み食い感覚で保有スキルと宝具を選びます、CLASSは8つの中から選べて保有スキルは5つまで。宝具は3つまで装備できるようで……ステータスの変更には集中する必要があるので、ひょいひょいと簡単には変えることはできなさそうです。
最終的に魔改造の結果はこうなりました。
CLASS セイバー
筋力 C 耐久 C
敏捷 C 魔力 B
幸運 A 宝具 EX+++
クラス別能力 【対魔力】:A
【騎乗】:A
保有スキル 【黄金律】:A
【魔術】:C-
【無窮の武錬】:A+
【精霊の加護】:A
【直感】:A
宝具 【無限の剣製】
【十二の試練】
【己が栄光の為でなく】
コンセプトはギルの身体で中身はエミヤ+ランスな感じ。チート能力を手に入れてまだ1時間程度、身体も子供、暫くはチート性能を使いこなす準備時間にしたいのです。
と言うか、最低限自分の身体を守れるようになってからでないとチート無双も難しいでしょうし。
【黄金律】で裕福な環境を構築し、【無限の剣製】と【無窮の武錬】の性能を試して使いこなすのが第一歩です。
【十二の試練】があれば突発的な……ぶっちゃけ前世のようにトラックに轢かれても平気の上、ランクの低い攻撃は完全無効。
チート性能がバレたりしないように【己が栄光の為でなく】で能力を隠します……これで記憶を覗かれたりすることも無いでしょう。
上から下までステータス表に目を通して
「……まさに、これでこそ転生チート」
突然終わった人生と、新たに始まる人生……
神様曰く、新たな今生は漫画やゲームの世界らしい……どんな世界か知らないけれど、原作介入も可能だろう……
「ま……始まってしまったものは仕方ない、精々チートを楽しませてもらうとしましょう」
そんな、気分で私の新たな人生が始まりました。