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拙作に過剰な評価を頂きありがとうございます。
皆さんのお陰で、作者は頑張れます。本当にありがとうございます。
55話
「よし、長谷川さんの部屋は……」
朝から子供先生たるネギ・スプリングフィールドは活動を始めていた。
幸い、昨晩の新田学年主任からの事情説明を求める声は、時間が時間と言うこともあったし、事が学園長の指示によるものとネギ先生から……某げっ歯類の助言によって……口に出された事により、矛先が変えられた。
就寝時間を過ぎて以降の班への接触はさすがに問題があると思い、子供先生はそのまま就寝へと移り、起床時間になってから直ぐに活動を開始したのだ。
ともあれ、やる気のある子供先生はきっちり睡眠を取り、早めに目覚めると身嗜みを整え。
まず訪れるべきは1班、何よりも、正すべき長谷川千雨が所属する班で、勢いよく扉を押し開けた。
「長谷川さん、今日は一緒に木乃香さんを……」
けれど、そこに望む姿は無かった。
有るのは、着替えの途中で下着姿の柿崎と釘宮。椎名は未だに夢の中、大河内はそんな椎名の髪を寝かせたまま梳かしてる最中で……
「着替え中だよ、ネギ先生、それとも見たかった?」「……のぞき?」
「ご、ごめんなさいー」
慌てて部屋から飛び出て行く子供先生。
部屋からは笑い声が聞こえてきたので一安心し、長谷川千雨の姿を求めて歩き出す。
何とかして近衛木乃香を護る立場を同調させ、親書の受け渡しにも参加させると言う決心が子供先生の中で形になっている。それは、一晩考えた上での結論だ。
子供先生にとって、長谷川千雨は選択肢が少なすぎる……相手を殺傷すると言うことがどれだけ大変なことか理解していないのだ……
戦い方にだって順番がある、まずは、ちゃんと倒して言うことを聞かせる。これが大切な事なんだと、子供先生は結論付ける。
ネギ・スプリングフィールドは最初、吸血鬼に襲われ、倒され血を吸われた。
その後、紆余曲折の後に吸血鬼……それも、封印解除状態の最強の吸血鬼を
それは自信となった。同じように長谷川千雨にも進むべき道をきちんと示せば、ちゃんと道は拓かれる筈だ。
相手を極力傷つけないやり方でも目的が達成できることを実感させてあげればやり方を見直すことが出来るだろう。
「ちゃんとした、立派な魔法使い、偉大な魔法使いになれるよう……うん、頑張ろう、長谷川さんも一緒に」
だが……その後、子供先生は各班を周るも千雨に出会うことはできず、朝食の時間になっても姿を見せることはなかった。
「あ、あれあれ、長谷川さんは?」
「なんか、調子が悪いってメ……ホテルの人に薬をもらいに行ったよ〜。新田先生には連絡してあるけど」
1班の班長である椎名に確認すると、子供先生が他の班を周っているうちに部屋に戻った千雨は調子が優れないため薬をもらいに行くことを告げた後、安全な場所に避難……もとい、休める場所へ行ったらしく。
「ネギ先生、朝食の挨拶を」
「あ、はい」
新田先生に呼ばれ教師の食事が並べられた席に移動する子供先生、それを見計らったかのように1班の席に千雨は戻り。
「あ、千雨ちゃん、もう良くなったの?」
「大丈夫?」
「少し頭は痛いがな」
心配する桜子とアキラに苦笑いしながら用意された食事の膳の前に座る千雨、じっと視線を向ける子供先生の視線を感じると尚更に頭が痛くなる様子で。
「それでは、麻帆良中の皆さん、いただきます」
「「「いただきまーす」」」
姦しくも朝食を食べ始める麻帆良中の面々。
その中で、食事が始まって早々に席を立つ者も居る……膳を手に3-A 1班へと近付くのは、無論子供先生で。
「おはようございます、長谷川さん、調子が悪いそうですが大丈夫ですか?」
「……少し頭が痛いのを除けば」
溜息を漏らしながら応答するが、あからさまに顔を顰める。
「長谷川さんは今日は何処を見て周るんですか?」
「それは私じゃなくて班長の椎名に聞いてください」
「今日? 奈良での自由行動だからね〜超りんにも誘われてるから、6班についていこっかな〜」
千雨は子供先生の気が逸れているうちにさっさと朝食を胃に収め、調子が悪いからと適当なことを言って部屋へと戻っていった……子供先生はそれを名残惜しそうに見ているが。
……子供先生は気付いていなかった、此処で重要なミスをしてしまった事に……
その後、子供先生は奈良での班行動について頭を悩ませ、佐々木まき絵や委員長と言った、面々に班行動を共にしないか誘われることとなる。
2班の双子に3班の委員長、4班の佐々木にと、日頃から子供先生を気にかけている面々がこぞって声をかけ。
「あれ、桜子は誘わないの?」
「ん〜なんか嫌な感じが……今日はいいかな」
普段は率先して楽しい事に参加する桜子が棄権する等、珍しい事象もあったが、子供先生争奪戦は半数以上の班が参加して行われ。
「あ……あの、ネギ先生!! よ、よろしければ今日の自由行動、私達と一緒に回りませんか!?」
その中に普段は控え目で、あまり主張はしない少女も進み出る。その様子に周りは一瞬眼を向け。
子供先生は悩みを抱える。
少女が居るのは5班、パートナーである神楽坂明日菜がいるし心強いのだが、狙われているだろう木乃香や、導くべき千雨の事も気になり。
一瞬、千雨や木乃香の方へ眼を向ける……6班と1班で。
「そやね、ネギ君、うち等は5班と同じとこ見て周るし、一緒にどうや?」
「そ、そうですね……えっと、そうしたら今日は僕、宮崎さんの5班と回る事にします」
決断を後押ししたのは6班の近衛木乃香。
同じ図書館探検部の一員として、早乙女や綾瀬と共に宮崎の背を押すことを決めており、幼馴染である桜咲刹那から神楽坂明日菜について不安な一言も貰っていたため、5班や子供先生と一緒に回る事に否も無く。
「それでええよな、アスナ、せっちゃんも一緒やし」
「そうね……って、もしかして桜咲さんから聞いてる?」
コクリと頷く木乃香、昨晩のうちに親友である神楽坂明日菜が子供先生のパートナーとして魔法の世界に関わっていることは聞かされた。
故に、木乃香にすれば親友が心配で。
「無理したらアカンよ」
「大丈夫よ、このかは私達が護ってあげるから」
元気に握り拳を掲げる神楽坂に、木乃香は顔を曇らせる。
『正直、裏に関わるには覚悟が不足しています……』
幼馴染から伝えられた神楽坂明日菜の戦闘評は、少々心許ないもので。
故に、木乃香は刹那に明日菜のフォローまでお願いする事になり。
「そっか……よろしくなアスナ」
彼女達は笑顔でホテルを出て行った。
そのまま、奈良県へバスで移動した後、6班と5班は奈良公園へと向かい……
「あれ、1班は一緒じゃないんですか?」
「ム、誘ってみたのだガ、椎名さんガ、面白い予感がすると言っテ、何処かに行ってしまったネ」
「え、ええぇぇぇーーっ」
目当ての一人でもあった長谷川千雨は子供先生の手から逃げおおせたのだった。
「何で朝からこんな面倒なんだ」
溜息を漏らしながらも男子中等部の班との合流場所に立つ千雨。
椎名と大河内、柿崎や釘宮といった面々も居てなかなかに華やかな感じだ。
5人と人数も多いし制服姿のため、ナンパなどはされないだろうが、スタイルの良い大河内等も居るから私服の時は割りと大変で。
「なんだか、機嫌が悪いですね千雨ちゃん」
女子中等部とほぼ同時にホテルを出発した男子中等部の班も待ち合わせ場所に現われた。ただ、その面子はおかしく。
「あれ、あの面白い三人は?」
現われたのは朱雀と新田のみ、散々騒ぎ散らしていた青髪ピアスを筆頭とする3者は姿を見せず。
「……彼等は星になりました」
「いえ、バスで課題をやらされてるだけなんですけどね」
そう、昨晩に女子中等部の風呂を覗こうとした青髪ピアスと槌帝、巻き込まれた神上は降臨した暴君によって制圧され。
有言実行を常とする月黄泉先生より自由時間中に課題を与えられるというペナルティを与えられたのだ、少なくとも午前中は潰されるだろう。
ある種の犯罪を行おうとしたわけなので、当然の事とも言えるが。
「ふーん、結構面白かったのに」
「まぁ、見てる分にはねぇ」
「ツッコミがかなりね」
傍から見てる分には、あの暴走っぷりも面白かったのか、面白いことが好きな3人は笑い、あのノリが少し苦手だった大河内などは胸を撫で下ろした。
「それで、今日は神社仏閣めぐり「中止で別のところに行こ〜♪」……ですよね?」
二日目から四日目までの自由行動において、基本的に行動を共にすることで合意していた新田は、あらかじめ行動予定を聞いていて。
「昨日テレビ見てたら、奈良限定のお菓子とかマスコットとか結構あって、先にそれを見て周りたいなって」
「まぁ、最初のカラオケで一日潰す案よりは良いかな」
「……一時間くらいなら良いよね?」
その行動予定が最早欠片も残ってないことを確認して新田は苦笑した。
ただ、気になるのは午後から合流する予定の
「まぁ、良いですか」
あっさり切り捨てた。
どうせまた、碌でも無いことをして月黄泉先生に目をつけられるか、何時ものフラグ体質で現地フラグを作ることだろうしと。
あの3人と中等部で3年間……真面目な少年であっても見切りをつける点が見えてくるものだ。
「と言うわけで、奈良のキティちゃん探しにいきたいと思います、みんなはそれで良い?」
「良いけど、シルバーアクセの店も見に行くの忘れないでね、こっちの掘り出し物探してほしいし」
「たまには、遠い場所でのショッピングも良いね、荷物もちも居るし」
普段からショッピングを楽しむ3人には、まったく知らない場所での買い物、土産物屋巡りだけでも充分に楽しめそうで。
特に釘宮はまったく知らない土地なので、趣味のシルバーアクセで掘り出し物を探すのが楽しみで。
「桜子の勘が頼りなんだからね、店は幾つかリストアップしてあるからそんなに時間かけないし」
「ん〜良いよ〜♪ 私は奈良限定吸血鬼キティちゃんが欲しいんだよね〜レア度高いらしいけど」
「もの凄く嫌なマスコットだな、おい」
「でも、可愛いと思うよ、猫のマスコット」
小動物好きなアキラもそういうのを見て周るのは好きらしい。
奈良公園の鹿は少し興味が有るので時間に余裕があれば頼もうと思うが、午後以降で良いだろうとし。
「……今朝の直感がまだ残ってんのか、何故か私には猫耳と猫尻尾つけたスク水セーラーの吸血鬼が思い浮かんだんだよ」
「……熱とかある?」
「無い、てか、アレが居ないだけで気分爽快だ」
子供先生からの視線から逃れられた千雨は機嫌も良く。
周りに合わせて楽しむことが好きなアキラも文句はないようだ……敢えて言うなら。
「僕達荷物もちですか」
「諦めてください……まぁ、他の班と合流しても良いですが」
「椎名さんと居れば楽しめる修学旅行になるのは小学校のときに経験済みですから、良いですよ……明日のUSJの予定までは変わりませんよね?」
「……たぶん……」
急遽付き合わされることとなった男子組が多少苦笑するくらいか。
明日の完全自由行動日に関しては、京都では楽しめないだろうと判断して大阪方面まで足を伸ばす事にしているのだ。
四日目も京都観光の予定だが、エスケープも画策している。
「朱雀さんもー、こう言うときに彼女達にアクセサリーの一つもプレゼントするのが甲斐性ってやつだからね、気合入ったの選んであげなよ」
「旅行の記念には少し早い気もしますが……まぁ、良いですが」
「最近は自分で作れるのもあるしね」
和気藹々とはしゃぎながら。
女子中等部3-A 1班+αによる、奈良限定ショッピングと言う名の観光は始まったのだった。
「ニギャー難しすぎるにゃー」
「てか高校入試問題で合格点て厳しすぎるだろ」
「月黄泉先生の個人授業言うんも乙やねぇ、バスの中言うんもバスガイドっぽくてOKやし」
「はいはい、皆さん受験の可能性もあると言うことを忘れちゃ駄目ですよー朱雀ちゃんたちに追いつきたければさっさと課題をこなすです」
「ザクヤンはどうでも良いけど、一緒に居る女の子達のためにボクはやるでー」
「……このままバスに閉じ込めておいたほうが平和なのかもしれませんねー」
まず一つ