こちらに着てから約2時間、獣道を歩いているので普通の道より距離は稼げていないのは確かだと思うけど…それにしても遠い…
「キョウ!まだなのか?その神社は!!」
「もうすぐだよ〜喋る暇があったら歩く歩く」
「わかったよ、野宿は嫌だからな」
黙々と獣道を歩いて30分ぐらい経っただろうか。やっと石段が見えた。
階段の両脇には森があった。
「後は階段を上がるだけだよ!」
「軽くいってくれるね…」
ふと九峪は気づいたのでキョウに聞いてみる。
「キョウ…ここに敵がいないのか?」
「居たなら連れてこないよ〜…けど、確認したほうがいいね。じゃあボク先に行ってく
るね」
九峪は意外と慎重なんだと思いながらキョウは神社に向かった。
九峪はとりあえず階段を上がり始めた。別に疲れているわけじゃなかったから結構なスピードで上がっていった。
あがっている途中でキョウが帰ってきた。
「誰もいなかったよ〜それと九峪おみやげ〜」
キョウは手に一杯…自分が隠れるぐらい一杯にキノコを拾ってきていた。
「……キョウ…それって毒キノコじゃないか?」
あまりに毒々しい色だった為ついいってしまった。
「そんなことないよ、だってボクが採ってきたんだもん」
「偉い自信だな…自画自賛は感心しないぞ」
苦笑いしながら言うとキョウはしょんぼりしていい加減小さい体をさらに小さくして地面になにやら書いている。
「悪かった。ありがとうな」
九峪はキョウが採ってきたキノコを拾いながら笑顔で言った。
キョウはすぐに機嫌をとり直した。
「じゃあ、早く神社行って食べよ〜」
そして、神社に着き、まずは神社に余計な荷物を置き、周りの散策して色々な事をしていた。キョウは九峪を呼んだ謝罪の気持ちで山からキノコや野菜、兎など…を何回も往復しながらとっていた。
九峪が帰ってくるまで1時間掛かった。キョウはもう既に大量の食料を確保して待ちくたびれていた。
「すまん、遅くなったな、とりあえず外で火を起こしてるからそっちで食べよう」
「わかった。ところで何を作るの??」
何処からか取り出したるは鉄鍋であった。
「まあ、見てたらわかるよ」
そして、外に出てまず鍋に水を張り適当にキノコや野菜をスライスして兎を綺麗に切って兎の皮だけは残った。
ちなみにお米も持参でもう既に炊く準備はできている。
「この世界なら多少の金になるよな?」
九峪はそんな事をぼやきながら順調に鍋に放り込んでいった。
「そしてここに取り出したるはカレーのルー!!」
「なるほどカレーか〜…わ〜い…って何でルーなんか持ってるんだよ!!」
ルーを割って鍋に放り込んでいる九峪に突っ込んだ。
「鞄に入れてたんだよ。いざという時のために…」
「どんな時なんだよ!」
漫才をしているような感じだった。
「こんな時の為だよ」
「……」
九峪はキョウにメデューサに匹敵するほどの視線を発した。漫才は終わりキョウは石化していた。
「冗談は置いといて、とりあえず何たら玉ってのは今何処ぐらいまで来ている?」
九峪は、いつもの調子で話しかけたことによって、やっと石化から開放されキョウは答えた。
「後1時間くらいで着くみたい」
「早いな…なら多少は安全だろう。少数で移動しているみたいだしな」
キョウは気づかなかったみたいで驚いていた。確かに夜に団体で移動するには時間が掛かる。
「じゃあ、そいつらを待ってそいつらと食事でもするか…この世界にカレーって普及しているのか?」
多分ないだろうな、と思ったが一応確認してみた。
「まだこの国には存在しないよ」
キョウも九峪は確認しているだけなのはわかっていたので簡素に答えた。
「じゃあとりあえず休みから神社に入ろう」
カレーは、ほとんどできているので火から外してあるし火も薪があまり多く置いてないので自然に消えるだろう。
「わかった。じゃあボクは鏡に戻るね」
九峪は、神社に入り鞄から寝袋を取り出し、そしてそれに入って睡眠をとった。
、蒼龍玉を持つ者達は天魔鏡を誰が持っているかを突き止めるべく途中でスピードを上げて進んでいた。
スピードを上げたのはもう一つ理由があった。夜は魔獣が活発化しているからだ。
狗根国
もう既に神社の階段の手前まで来ていた。キョウが1時間と予想してからまだ20分しか経っていなかった。
人影は二人…二人は階段を使わず脇の森の木々を伝って上がって行く事にした。
そして二人の戦いは始まった。二人は階段の脇を左右に分かれて上がっていた。読んでいる人は大体検討はついてると思いますが、片方は女で片方は男です。
女の方は木を登って枝から枝へ忍者のように飛んで移動していく。
ボキッ!!
枝が折れてバランスを崩しそうになるが何とか着地しようとした所に木の丸太が目の前に飛んできた
「くっ」
その丸太に足蹴にし後方へ飛んだ。着地したら今度は上から毬栗が落ちてきた。子供騙しではあるが痛いものは痛い。
「ちっ」
舌打ちをつきながら毬栗が落ちてくる前に全力疾走し回避する。
(罠自体は凄い精密だが相手に被害を与えるような罠がな…い?!)
そんな事を走りながら考えていると女の足元が急に沈み始める。踏み出していない足を軸にして跳躍した。落とし穴のそこには木でできた槍が飛び出ていた。
(前言撤回)
一方、男の方も同じような罠が多数あった。いつもだったら軽々回避もできるだろうが長距離走ったせいで足腰に疲労がたまっている。しかもこの先に天魔鏡があるという事も焦らせる原因でもある。
足に何か引っかかった。そう思った瞬間、男の左右から丸太…しかも木で作った棘が複数ついた物が男に襲い掛かるように挟んで来ている。
「うっ」
慌ててジャンプして逃げて棘のついた丸太同士が接触した。
その丸太の上に着地をした。
(最初は子供騙しだったが、だんだん危険な物になってきている…)
二人は何とか神社の前までたどり着いた。二人は肩で息をしながらお互いに何があったのか…既に語り合う必要がなかった。怪我がないのはさすがではある。
「「……酷い目にあった」」
小声でお互いの結果報告をとりあえずしてみた…がやはり結果は同じであった。
「おぬしはここで待機をしておれ、ワシが中の様子を見てくる」
「いえ、私が中に入ります」
男は何か言いたそうだったが女はもう神社の中に入ろうとしていたので何も言わなかった。
奥には九峪の寝袋がある、女は気配を消して足音もなく寝袋の近くまで行った。その
瞬間…
ドガン!!ガラガラガラ!!ドン!バラバラバラ!!!
女が振り返ると
「「ああ!」」
男は外側から女は内側から叫んだ。
瞬間、背後にから男の首筋にナイフが突きつけられていた。
伊雅も武人だ。そう簡単に背後をとられはしない。
だが、罠を掻い潜ってきた疲れと女を閉じ込めた罠により注意力が落ちていた。
もちろん全て九峪が仕組んだ事だった。
「おじさん…名前は伊雅だったりする?」
「?!なぜワシの名前を!!」
驚きの表情で九峪を睨んでいた。
「キョウ、間違いないか?」
「うん、間違いないよ、久しぶりだね、伊雅」
九峪の質問を答えを返して、伊雅の前で浮かびながら挨拶した。
「キョウ様!!」
伊雅は驚きのあまりに動きそうになった。ナイフを突きつけられた事すら忘れて。
「伊雅さん、いきなりすまない。こちらも味方かどうか確認ができなかったのでこんな形の挨拶になっちまったな」
九峪はナイフを内ポケットに納めながら言った。
「そなたは?」
九峪と向かいあった伊雅は訝しげな顔で質問した。そこにキョウが九峪の肩ぐらいで浮かびながら
「耶麻台国八柱神が一人、天の火矛より耶麻台国復興の命を受けた神の使いの九峪だよ」
キョウが胸(?)を張って言った。
「神の使い?!」
平伏しようとした伊雅を九峪はとめた。
「伊雅さん、今はそれより神社の中の女性を出してあげないと」
九峪が苦笑しながら言った。伊雅は女の事を忘れていた。慌てて救い出そうと押してみるものの重くて全く動かない。
「伊雅さん、ちょっと離れていてください」
「は、はい」
「ところで中にいる女性の名は?」
「清瑞といいます。」
九峪は頷いて中にいる清瑞に話しかけた。
「清瑞さん!この岩の左右のどちらかに隠れてください」
「誰だお前は!!」
かなり棘のある声が聞こえてきた。
「清瑞!!説明は後だ早く隠れろ」
「は、はい。わかりました」
伊雅が怒気を含んだ声で言った。
清瑞は慌てて隠れた。
「じゃあ、いきますよ!」
九峪は深呼吸して手を岩に当てた。そして見た目には力を入れた様子はないが岩がゆっくりと移動していく。
「「な?!」」
九峪の力を見て伊雅とキョウは驚いていた。キョウはこんな力まであるとは知らなかった。九峪は岩を押し続けて半分ぐらいまで押した時清瑞は動いた。
「貴様か私を閉じ込めたのは!!」
怒りをあらわにしながら苦無を首筋に当てた。
「あぁ、そうだ。こちらもあんた達が敵か味方かわからなかったんだ。申し訳ない」
九峪は頭を深々と下げた。そうすると伊雅が青い顔をして
「清瑞!やめんか!!」
清瑞は、まだ怒りを収めていなかったが、渋々といった感じで苦無をしまった。
「そんなに怒らないでやってくれ、別に清瑞さんがとった行動には俺に責任があるんだ
から」
「は、はぁ、わかりました」
伊雅は九峪が特に気にしてないように見えたので少し安堵した。
「ところで二人は晩御飯は食べた?」
伊雅と清瑞は顔を見合わせて「あ、そういえば」といった感じの顔をしていた。
「食べてないみたいだね。じゃあ一緒に食べよう!事情は準備をしながら話すよ。俺が作ったから味は保障しないけどね」
笑いながら食事の準備をするべく外に置いてあった鉄鍋に向かって走っていった。
「伊雅様、あいつは何者です?」
「九峪様は神の使いだ」
二人の間に沈黙が訪れた…そして…奇声
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あ、あんな奴が?!」
伊雅は耳を押さえながら言った。
「清瑞!失礼だぞ!!」
「は、はぁ…申し訳ありません」
(あんな奴が神の使い?!というより神の使いって何だ?あからさまに怪しいではない
か)
清瑞はかなり疑っていたが、それ以上考えるのはとりあえずやめた。目の前で今にも角が生えてきそうなぐらいの怒りのオーラが伊雅の周りから放出されていた。
「清瑞…ワシの言う事が信用できないのか?」
少し寂しそうな顔をして清瑞に訊いた。伊雅は清瑞を小さい頃から乱破として育てた…他の子供ならともかく、清瑞にはうしろめたさがあった。
「いいえ、そんな事ございません。疑って申し訳ありませんでした」
(伊雅様は単純な所があるからつい)
と心の中で付け加えた。
「うむ、ならいいのだが…ん?何か変な匂いがするのぉ」
「そう言われてみれば…なんだか刺激的な匂いですね」
九峪が用意した料理だと気づき九峪のいる場所に行く事にした。
九峪はとりあえずカレーが入った鉄鍋に蓋をして伊雅達を待っていた。途中で変な奇声が聞こえたが、おそらく俺が神の使いである事を聴いた清瑞の疑いの声だろうと考えた。カレーに蓋をしていたのは理由があった。それは…
「お待たせしました、九峪様」
「お待たせしました、九峪………………様」
清瑞はかなり陰険な声だった。
「清瑞!!」
「いや、いいんだ。伊雅さんと清瑞さんにお願いがあるんだけど、いいかな?」
「はっ!いかなる事でも…」
「ああ、そこまでする事でもないんだ。俺に『様』なんか付けなくてもいいから好きなように呼んでくれ。もちろん呼び捨てでもいいよ」
伊雅と清瑞は驚いた。神の使いである方を呼び捨てなんかできるわけがない。
「しかし、それでは…」
「俺が言ってるんだからいいの」
「わかった…じゃあ九峪」
「き、清瑞」
伊雅は少し慌てた。あまりにも無礼に感じたからだ。
「なんだ??」
「私は清瑞でいい『さん』なんか付けられると寒気が走る」
「…わかったよ、清瑞」
無感情な顔をしながらそういった様子が微笑ましかった。伊雅はなにか抵抗があるのだろう…黙って何か考えていた。
「やはりワシは九峪様と呼びたいのじゃが…もちろん、ワシの事は伊雅で結構です」
「別に伊雅さんがそれでいいならそれでもいいんだよ。ただ好きに呼んでほしいだけだから。無理にこう呼べとは言わないって事だけ言いたかったんだよ」
九峪は笑顔で伊雅に言った。伊雅は自分に自由の意志を求められているのが初めて分かったのだ。
それは人の上に立つ立場としては、どうかと思うが個人としては非常に嬉しかった。
「さあ、ご飯にしよう…その前に約束がある」
「なんでしょうか?」
「今から食べるのは神の世界…の料理ではないが少なくとも伊雅や清瑞は食べた事がな
い料理なんだ。見た目上ある物に見えるけど気にしないでくれ」
「九峪様が作った物を食べない訳がありません」
「…私もできるだけ食べよう…」
「わかった…二人を信じるよ…いくぞ」
九峪が蓋を持ち上げて伊雅と清瑞は中を凝視した。
「こ、これはまるで…」
「はい、そこから先は言わない!」
九峪は、反応が分かっていたので素早くとめた。
「なるほど、先ほどの注意はそういうことでしたか」
「でわ、まず実験台にキョウに食べて貰おうか」
「へ…なんでボク??」
「なんとなく」
「まあ、いいけどね」
キョウ用に九峪が作った木製の皿にご飯とカレーを盛り付けた。そしてキョウに渡した。
「じゃあ、お先に〜いただきま〜す」
ハグハグハグ…
「九峪〜おいしいよ〜料理も上手だね」
「それはよかった」
九峪は嬉しそうに笑った。
伊雅は、ほっとしているが清瑞は
(キョウ様は天魔鏡なのに味が分かるのか?!)
そんな疑問も知らずに九峪は着々と皿に盛り付けていく。
「はい、清瑞…伊雅もどうぞ」
「ありがとうございます」
「かたじけない」
二人に配り自分の分も用意した。
「じゃあ」
「「「いただきます」」」
伊雅は、やはり自分が食べるとなったら抵抗があった…
(今から仕える相手を信頼せずして耶麻台国復興なるものか!)
そして意気込んで食べた…
モグモグモグ
「少し辛いですがおいしいです」
伊雅は素直にそう思った。独特の味ではあるが嫌いではなかった。
一方、清瑞は匂いを気にしていた。
「そうか、清瑞は忍者だったな…匂いがきついからやめておくか?」
「「にんじゃ??」」
「九峪、こっちでは忍者の事を乱破って言うんだよ」
「ああ、そうなのか。でやめておくか?」
「いいえ、せっかくですので頂きます」
(それに、これだけ匂いに当たっていたら身体にはもう匂いがついているだろう)
清瑞はそう結論をだした。
「でわ」
清瑞は食べる事には躊躇もなく口へ運んだ。
モグモグモグ
「変わった味ですが私も嫌いではありません」
清瑞は相変わらず無愛想だが多少角が取れたような気がした。
カレーはゆうに5人分ぐらいあったのだが伊雅と清瑞が予想以上に気に入ってくれたのかあっという間になくなっていた。
九峪は嬉しかった。最初は耶麻台国復興なんてやる気がなかったが。
(こういう人達と一緒だったらいいかな)
少しやる気が出てきた。
「「ごちそうさまでした」」
「お粗末さまでした」
最後に水を飲んで清瑞と伊雅は食べ終わった。
伊雅はある事に気がついた。
「すいません、九峪様の分まで食べてしまったのではありませんか?」
「そんな事気にしないでいいよ、元々俺一人じゃ食べれなかったし、何より二人とも罠を抜けてくるのに大変だったろ?」
「そういえば、私達が来るとわかってて罠を仕掛けてあったんですよね?」
清瑞は興味があった。乱破の清瑞が罠に苦戦をする事なんて、そうそうないからである。
「ああ、すまないとは思ってるよ」
「いえ、そうではなく。あの罠は九峪一人で作ったのですか?」
「ボクも手伝ったよ」
胸を張って言った…が
「お前が手伝ったのは最後の罠だけだ」
キョウは驚いた。
「あの罠以外にまだあったの?!」
「ああ、味方なら腕試しに、敵なら数減らしに結構な数を仕掛けたな」
平然といいのける九峪だったがキョウはひとつ気になった。
「いつそんな罠作ったの??」
「カレーを作る前に散策を30分ほどしただろ?その時に仕掛けたんだ。」
「「え!!」」
あの数の罠を半刻で仕上げるのは到底無理な話だ。清瑞も伊雅も身を持って体験しているが、あれほど精密な罠は自分達が時間を掛けても作れないような品物だった。それを30分で…しかも一人でである。
(清瑞、この方は間違いなく神の使いだ…そうじゃなかったら化け物に違いない。どち
らにしても強い味方だ)
(神の使いはともかく強い味方であるのは確かのようですね)
九峪に聞こえないように小声で話した。
さすがの清瑞もみとめるしかなかった。
「よし食べたからとりあえず休憩にするか。伊雅も清瑞も神社へ行って休んでくれ、俺
が番をするから。」
またまた以外な事を言い出した。神の使いに番を任せられるはずがない。
「いえ、私が…」
清瑞が代わりに番をしようと申し出ようとしたが…
「駄目だ」
「な、なぜです?」
「もし敵が来たら清瑞なら安全だ…」
うんうんとキョウと清瑞と伊雅が頷いた。
「だが、ここは俺が仕掛けた罠でいっぱいだぞだぞ?清瑞には悪いが全てを見切ることはできないと思うよ」
「「「ああ、なるほど」」」
つい納得してしまった。すぐに否定しようとしたが、もう既に遅し。九峪は伊雅と清瑞の背中を押して神社に放り込んで扉を閉めた。
「神の使いは強引だな」
伊雅は豪快に笑いながら既に横になろうとしていた。
「伊雅様!笑い事ではありません!!」
「清瑞、九峪様の心も汲んであげなさい」
「九峪の心??」
「あんな風に言ったが実の所、ワシ達の身体を気遣っての事だ。自分が張った罠で苦労を掛けたのだ…多分そういう事だろう」
伊雅は九峪の優しさがなんとなく分かってきたような気がした。
「……わかりました。でわ、おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ」
清瑞は渋々納得しながら横になった。
「キョウ、お前も休んでいいぞ」
「そ、そう?なら戻ってるよ」
キョウは神社に向かった。
九峪は一人で縁側に座り夜空を見上げた。星でいっぱいだった。
(現代だと見られない絶景だな……ん?)
神社で扉が開いて誰かがこちらに来た。
「清瑞か…どうした?眠れないのか?」
「いや…そうじゃない…ただ話をしにきた」
清瑞は九峪の隣に立った。
「とりあえず座りなよ」
九峪は隣に座るように進めた。清瑞は隣に座るか少し迷ったが結局座った。
「で、どうかしたの?」
「い、いや、さっきは悪かった。いきなり失礼な事をして…」
「ん?あぁ苦無で脅した事?それなら俺の方が色々してるよ、罠だって大変だっただろ
?」
「ああ、いや、確かに大変だったが…」
「なら、いいじゃないか」
九峪は笑った。清瑞は心が軽くなった、神の使いである事を抜きでこの人に嫌われたら嫌だと思った。
(この人がどんな国を創りどこまで登っていくか見届けよう)
清瑞はそう思った。