九峪は闇の中にいた。
「なぜこんな事に!!」
周りには夥(おびただ)しい数のの死体…そしてよく見ると…
「伊万里!!清瑞!!…伊雅!!」
仲間達の死体があちらこちらに…
そして、いつの間にか現れた狗根国兵が剣を振り上げ、命を絶とうと振り下ろした。
「わあああああ!!!……ハァハァハァ……」
九峪は目を覚ました。
「ゆ、夢か…」
悪夢を振り払うように頭を振り、汗を近くにあった布で拭いた。
窓があったので外を見るともう夜だった。
月や星が綺麗に出ていた。
「…人を殺したんだ…これぐらいの罰があって当然か…これから先もっと人が死ぬのか…」
九峪は俯き呟いた。
その呟きが終わるか終わるまいかと言う所に、何者かが天井から姿を現した。
「く、九峪!!なにかあったのか?!」
それは顔を青くした清瑞だった。よっぽど驚いたのか苦無を片手に持っていた。
どうやら、何者かに襲われたと思ったらしい。
「いや、なんでもないよ」
暗い顔を無理やり隠し、笑顔で答えた九峪だったが、隠し切れなかったようだ。清瑞は心配そうな顔をして
「そ、そうですか…本当に大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」
さすがに隠し通せるほど甘い相手ではなかった。だが、気にされるほどの事ではなかったので、ごまかす事にした。
「ところで、ここは何処だ?」
とりあえずは、もっともな質問をしてみた。
大体見当がついているのだが話題を変えるには手頃の話題だ。
「ここは私と伊雅様が隠れていた里です」
それ以上追求せず、苦無を懐に戻しながら、聞かれたことに簡素に答える清瑞だった。
九峪の予想通りの答えが返ってきた。
(長い時間寝たな…それにしても…腹が痛いがなぜだ?)
衣緒からすれば幸いな事で九峪は衣緒の胸を触った事を覚えていなかった。
「これからの事は決まったのか?」
少しお腹をさすりながら言った。
「いえ、もう少しで会議が始まりますので来ていただけますか?」
清瑞が丁寧に答えた。いつもならこれほど丁寧に言わないが、今の九峪は機嫌が悪いというか怖いというか…とりあえず虫の居所が悪いようだった。
あまり気に触れないような言い方を無意識のうちにしていたのだ。
「ああ、わかった。後どれぐらいで始まるんだ?」
「後50分ほどです…」
「わかった。ところで、伊雅は何処に居る?」
「伊雅様は自宅におられると思いますが…呼んで参りましょうか?」
清瑞の察しの良さに微笑を浮かべながら頷いた。
「ああ、お願いしたい。俺は今から準備があるから…あ、その前に…」
「何でございましょう?」
「清瑞…字は書けるか?」
意外な問いかけに一瞬思考が止まった。
「え、あ、はい。書けます」
「じゃあ『あいうえお』と書いてくれ、次は漢字で『清瑞』…自分の名前を書いてくれ」
都合よくあった竹簡と筆を渡した。
清瑞はよく分からないといった感じの顔だったが文句を言わずに書いた。
「中々の達筆だな…うん、俺の国と同じ文字だ」
清瑞は今九峪が何を確かめているのかわかった。九峪は神の国から来たのだ、自分の国の文字と違うか確認をしていたのだ。
「ありがとう…じゃあ、早速伊雅を呼んで来てくれるかな?」
「はっ!!」
清瑞は会釈をしてから伊雅の家へ向かった。
九峪はまだ本調子ではなかったがとりあえず部屋にあった机へと移動した。
「字が同じでよかった…一から覚え直しってのは勘弁して欲しいからな」
苦笑をしながら書きなれない竹簡にスラスラと文字を書き始めた。
そこへ…
「お〜に〜い〜ちゃ〜ん〜!!!」
後ろから飛びつき九峪の首に腕を巻くつけチョークスリーパーをしたような感じになっていた。
「ぐ、ぐるぢぃ〜だずげで〜」
「キャハハハハ〜」
天使のような顔をして喜んでいるが、やっている事は悪魔の…『おにいちゃん』と呼ぶのは今のところ一人しかいない。
「羽江〜ギブ…ギブ」
羽江の手を叩きながら言ったが当然外すはずがない…なぜなら…
「ギブってなに??」
手を叩く意味も知らなければギブなんて言葉も知るはずがない。
「こ、降参……ブハァ…ハァハァハァ…」
「勝者!!羽江ちゃん!!」
羽江は腕を上げて高らかに勝利を宣言した。
「いつ…の間に…戦いに…なってたんだ?」
息絶え絶えながら聞いた。
「えっと〜……猿轡を外してくれてからかな?」
(えらい前から戦いになってたんだな…)
これ以上深く追求するのはやめた。
羽江のペースに流されると話が先に進まないからである。
「羽江ちゃん…できれば普通に話しかけてくれるかな?」
「は〜い」
素直な返事を聞いて九峪は微笑み、羽江の頭を撫でながら言った。
「ところで、何か用事??」
「あ!!そうそう!!私達の飛空挺壊しちゃったから、また造っていい?」
「壊しちゃったのあれ?!」
伊万里から聞いていた空を飛ぶ物の事だとすぐ推察がついた。
あれはこの時代では驚異的な発明の賜物である。それを失うのは軍事的にも文明発展的にも致命傷である。
「うん、亜衣お姉ちゃんが『敵に奪われたりした時にいつでも破壊できるよう札を貼っておけ!』って言われてたの!酷いでしょ!せっかくの発明を…」
羽江は言い終わるぐらいには涙目になっていた。
羽江を膝の上に乗せて、頭を撫でながら優しく言った。
「…酷いお姉ちゃんだね、でも飛空挺を狗根国に奪われて俺達に襲ってきたら嫌でしょ?」
「う、うん」
「それに造り直せるんでしょ?また、頑張ればいいじゃないか」
「わかった!!じゃあ頑張る!!…と言う事は造っていいの?!」
「ああ、材料とか時間があまり無いけど、それに許される程度ならいいよ」
「やった〜おにいちゃんありがと〜〜」
元気よく跳びだしていった羽江に手を振りながら見送りながら思った。
(羽江ちゃん…どうやって俺の部屋に入ってきた?しかも俺に気配を覚られずに…)
誰もそんな疑問に答えてくれなかった…答えられるのは一人しかいないけど。
(それよりも…羽江ちゃんが造り直すって言ってたから…羽江ちゃんが造ったのか?!…それに亜衣さんも中々頭が回るようだ…飛空挺は強力な武器になると言う事を知らなかったら自爆をする準備をするようには言わないだろう…となると、あの奇襲作戦も亜衣さんが立てたのも亜衣さんだろう)
現在の九峪が会った事のある仲間の中では一番の切れ者だと判断した。
(おっと…とりあえず、これを仕上げないと…)
中断していた作業を再開した。
しばらくして伊雅が来た。
「遅くなり申し訳ありません。準備に少々手間取っていましたもので…」
伊雅は、他の耶麻台国縁の者や近辺の村に協力を求める書状を書いていたのだ。
「いや、俺が無理に呼んだんだ気にしないで」
いつもの九峪スマイルが炸裂する。
「で、話っていうのは…清瑞も入ってきてくれるかな?」
音も無く何処からとも無く姿を現した清瑞だった。
「まずこれを見て欲しい」
九峪は手に大き目の紙を丸めて持っていた。それを伸ばして伊雅達に見せた。
その内容は…察しのいい方は大体見当がつくでしょう。
『ヒントは作戦を立てるのに必要な物』
「「こ、これは!!」」
まず、紙である事を知って二人は目玉が飛び出んばかりに目を見開いた。
この時代では紙はまだ流通していない。
紙の製造法は、天界の遺産と言う形で残されている。
今残されている紙は製造された物は無く、遥か昔に天空人によって造られた物しか存在しないのである。
「ここ…つまり九洲の全体地図だ…恐らく9割以上に正確だと思う」
「「………え?!」」
ちなみにこの地図は…九峪の鞄に入っていた地図を引っ張り出してきたのだ、現代とさほど地形に代わりが無い事はキョウから聞いていた。
「この地図を元に作戦を立ててくれ、これは伊雅に預けておく。無くすなよ」
冗談を言ったのだが伊雅は平伏して
「はは!!」
「これからもっと重要な任務があるのに、それほど硬くなられたら言いづらいよ」
あまりの大袈裟ぶりに九峪は苦笑しつつ言った。
伊雅は、さらに重要な任務があると聞いて唖然とした。
傍らで聞いていた清瑞も同じだった。
「伊雅…字が読めるよな?」
清瑞が読めるのだから伊雅も読めるとは思ったが、一応確認をしてみる。
「はぁ…読めますが…それが何か?」
「じゃあこれを読んでくれ。清瑞はこっちを」
二人にそれぞれ竹簡を渡した。
二人は竹簡を開きの内容を読みに掛かった。
「二人とも読みながらでいいから聞いてくれ、二人に渡してあるのは極秘中の極秘だ。それを教えるのは他には伊万里だけだ」
伊雅は竹簡の内容に驚いた顔を一瞬したが納得をしたように、うんうんと頷いていた。
伊雅が読んでいるのは、もうすぐ始まる会議で決める予定である今後の方針について。
そして、いつ、誰で、どの任務を行うか細かくつづられていた。
清瑞が真剣の面持ちで読んでいるのは、ローマ字である。
これからは直に会って話す機会が少なくなる、そして一つ問題が出てくる。九峪が策を立てている。と言う情報の漏洩だった。
それを防ぐ為の暗号としてローマ字を応用した。まず知っている者はいないので確実である。
清瑞は竹簡を懐に入れた。
「これは私だけではなく、伊雅様と伊万里様にも覚えてもらわなければなりませんね」
肯定の意を持って九峪は小さく頷いた。
「伊万里にも後で渡すつもりだ。伊雅にも後で渡すけど、とりあえず、それを全部暗記して欲しい。今度の会議で言ってもらうつもりだからな」
「ははっ!!」
伊雅は、また平伏して床に頭を擦り合わせるほどに頭を下げた。
それをみた九峪は苦笑いしつつ思う。
(いくら俺が神の使いでも、こんなに頭を下げてたら感づかれてしまいそうだな)
言った所で今の伊雅にそれを演じるのは難しそうなので口にしなかった。
「じゃあ、準備も色々あるし…解散」
伊雅は立ち上がり部屋を出る前に会釈をして立ち去った。
清瑞はまだ座ったままだった。
「他に用事があるの??」
「いや、特に用事はないが…私は護衛だ。近くに居るのが自然と思うが?」
「まあ、確かに…」
九峪もそう思ったが…二人の会話はそう長くは続かない。
部屋に沈黙が訪れる。
九峪は重苦しい雰囲気を打開すべく、必死で話題を考えた。
思いついた話題は最小限にまとめられた適切な回答で答えられて終わり、そしてまた沈黙が訪れ、また考える…
その繰り返しで時間は過ぎていった。
時は経って、会議室に移った九峪だった。
部屋はそれなりに広い。その部屋の中央には縦長い机が置かれ、それを挟むように十二人の人たちが左右に分かれて座っていた。左側に古株の伊雅や清瑞等が並んで座り、右側には星華や伊万里達のような新参者が座っていた。
古株組は、もう既にご存知の伊雅と清瑞、一回り大きい女性、名は音羽と言う。大きいと言うのは太っているのではなく筋肉だ。そして能天気でお調子者だが弓の名手の虎桃。清瑞と同じ乱破の真姉胡、案埜津と並んで座っていた。
新参組は、星華に始まり宗像三姉妹の長女亜衣、次女衣緒、三女羽江、そして伊万里に乳姉妹の上乃、青年と言っていい年齢だがどこか大人びた感じのある仁清といった順に座っている。
それぞれの自己紹介を終え、今は今後の方針を決めているところだった。
「とりあえず、今は基盤を造る事が必要です!なら城を落とすしかありません!狙うはここ
から一番近い国府城!!」
あちらこちらから拍手が起こった。
だが、全員が賛同したのではないようだ。
賛同をしていない一人、星華が異を唱えた。
「亜衣…それはまだ早いのではありませんか?まだ十分な兵力も整っていないと言うのに…」
「私達を捕らえた部隊を全滅させていたら、それでもよかったのです…ですが、生き残っている以上、本隊に報告され大規模な捜索が始まるのは必至なのです…」
「なら、出て来てもらったらいいじゃないか」
突然の伊雅の声に驚きを隠せない亜衣、他の者も驚きを隠せなかった。
そんな事を気にとめない伊雅は淡々とした口調で続ける。
「篭城戦となれば、こちらが不利になるのは明らじゃ。なら出てきてもらった方が良いだろう?」
「そ、それはそうですが…もし出てきたとして、それほどの数が出てくるとは思えないのですが…」
そうは言ってもそれ以上の策が亜衣には思いつかなかった。
(物見の報告によると城に駐留している部隊はおよそ五百だ…恐らく、明日までには千五百に兵は増えているだろう…)
亜衣が立てた策では相手は篭城をするだろう。
そうなると攻撃側は篭城側より三倍の兵力が必要である。
今でも続々と近辺の村や隠れ里などから志願兵が集まってきているのを合わせてギリギリで勝てるかどうか瀬戸際なのである。
さらに兵の質、武具、どちらをとっても、こちらの方が圧倒的に悪い。
だが、伊雅が立てた策なら勝率は7割ぐらいあるように感じる。
「なら、出てくるようエサを巻いておけばいい」
「と言いますと?」
「『火魅子の資質を持つ者』とワシ…『耶麻台国副王』さらに『神の使い』というエサを使
うのだ」
亜衣は伊雅の考えている事が分かって驚いた。
「なるほど…それなら、かなりの兵が駆り出されるでしょう…」
既に亜衣は伊雅の策にしようと決めていた。
被害が一番少なく、何より確実に感じたからである。
「策を言いますと、まずは兵を三分して、一つは狗根国軍を誘き寄せる囮部隊、次に誘き寄せた狗根国軍に奇襲をかける部隊、そして最後の部隊は…手薄になった国府城を落とす部隊だ」
「「「「「え〜〜〜〜!!!!!」」」」」
黙って聞いていた一同は驚きの声を上げる。
亜衣ですら同時に城を落とす事は考えていなかった。
出撃してくる敵部隊を撃破した後に落とす考えであった。
「それで行きましょう!!ですが問題は…」
「それは…」
皆は細かい問題の解決に入った。
九峪は自分の策に決まったのを確認して、静かに立ち上がり部屋の出口に向かって歩き出した。
すでに他の者達は興奮して九峪が出て行こうとしていることに気づかなかった。
気づいた者もいた。
清瑞と伊万里だ。
二人は九峪に声をかけようとしたが、九峪は手でそれを止めて部屋を後にした。
九峪は会議室から出て最初に居た部屋に戻ろうとしていた。
その道中、外に異様な気配を感じた。
九峪の感は告げていた。
(鞄から例の物を出すか…)
鞄を探り、その例の物を取り出した…その瞬間、気配はいつの間にか九峪の真後ろに居た。
気配は九峪の胴を斬ろうと鎌らしき物で横薙ぎにした。
それを、精一杯屈んで、それを回避した。
九峪は後ろに向かって蹴りを出す。当たる直前に身体を反らして避け、鎌らしき物を完全に振りぬく前に力でそれを止めて無防備な足を斬りつけようとする。
まだ地面に着いていた片足で蹴りを放った。蹴りは鎌のような物を持った手に当たったが軌道を変えることはできたが、それだけだった。ダメージとか武器を手放したりする事はなかった。
九峪は、相手の姿をやっと確認ができた。
「もう止めよう…貴方、魔兎族だろ?なら兎華乃ちゃんか兎奈美を知らないか?」
見覚えがある耳…兎の耳だった。
魔兎族らしき(というか魔兎族)女性の顔に動揺が走る。
「姉さん達をを知ってるのか?!…もしかして…」
(お、もしかして俺の事知ってるのか!なら話は早——)
「食べちゃったの?!」
九峪は、ガクッと肩を落とした。
「冗談だ、貴方、九峪さんだね?姉さん達から聞いてる。私は兎音だ、これからよろしく」
冗談を言った時の悪ガキのような声とは一変してクールな声色で名乗った。
(心臓に悪いよ…それにしても…乳デカ!!そういえば兎奈美もデカかったな……兎華乃ちゃんは……案埜津レベルだけど…)
「ところで…」
兎音は涎を出さんばかりに九峪の手に持っている例の物を見ていた。
「ああ…食べる?」
九峪の手に握られている例の物とは…人参だった。
人参を兎音に差し出すと兎音は受け取り食べ始めた…と言っても量が少ないのであっという間食べ終わった。
(エサをやって仲良くなる。それは動物と触れ合う基本!!と言うことで出したんだけど…裏目に出ちゃったな…やはり魔人は別なのかな?)
「ところで、兎華乃ちゃんと兎奈美は元気にしてる?」
兎華乃と別れて1日、兎奈美とは2日しか経っていないのだが、九峪は慣れない事が積み重なり、もう何週間も経っている様な感覚なのだ。
「姉さん達だったら今お出かけの準備してるよ」
「お出かけ??」
「うん、私達は阿楚山の近くに隠れ住んでたんだけど、居心地が良さそうなところ見つけたから別荘にするんだって」
「へ〜お出かけか〜何処に行くの?」
少々図々しいような気もしたが訊いてみた。
「あなたの所だってさ」
九峪は耳を疑った。そして…
「明日は晴れるかなぁ?」
「晴れるんじゃない?」
九峪の現実逃避に普通の返事が返ってきた。
兎音の声じゃなかった。
いつからそこにいたのか九峪の隣に少女がいた。
少女の正体は!!って大体の人は見当がつくでしょう。
「お久しぶりです、九峪さん…「様」の方がいいかしら?」
「いや、「さん」でいいよ、兎華乃ちゃん」
九峪は心の中では心臓がバクンバクンしていた。
さすが上級魔人だけあって九峪に全く気配を感じさせず隣に立っていたのだ。
「最初に会った時…わざと気配を消さなかったんだな、兎華乃ちゃん…それに兎奈美」
九峪は苦笑しつつ兎華乃と兎華乃と知らないうちに空いている方の隣に立っている兎奈美に話しかけた。
「だって、普通の人だったら感じ取れないし、感じ取れたとしても殺せるし」
平然と答えたのは兎奈美だった。
九峪は少し機嫌を悪くして三人に訊いた。
「…三人共、俺と一緒に来るのか?」
三人は頷いて答えた。
「…なら…無意味に人を殺すな……いいな?」
上級魔人三人相手に命令口調で言った。
凄いプレッシャーをぶつけられて兎音は思った。
(……私と戦ったの時はかなり…手加減してたのね……)
「もう無意味に殺したりしないわ…約束するわ…」
少し大きくなった兎華乃が言った。
九峪は、プレッシャーはすぐに消え、兎華乃の頭を撫でた。いつもの笑顔に戻っていた。
「約束…破るなよ」
「私は魔兎族の女王なのよ?約束は守るわ」
顔を少し赤らめた兎華乃は少し頬を膨らませた。
兎奈美は、羨ましそうに兎華乃をみていたが、自分が言った事で九峪を怒らせているので何も言えなかった。
兎音は、九峪の強さに興味を感じたらしく目が燃えていた。
「とりあえず、俺の部屋に来てくれるか?」
「いやらしい事考えてない?」
兎華乃は冗談か本気か分からない声色でいった。
「そんなことするか!!」
九峪は兎華乃達と部屋に向かって歩き出した。
(大変な事になってきたなぁ)
これからまだ波乱に満ちた日々が待ち構えている!がんばれ九峪(笑)