プロローグ
信じられない出来事って世の中一杯あると思う。
叔父が実はオカマだったとか担任教師が生徒に手を出したとか猫が泳いでたとか等々色いろあると思う。
そう色々あるのじゃ…だがさすがに転生するとは思っても見なかったのぉ。
しかもここは…原作はゲームでアニメにもなった『恋姫†無双』の世界っぽいというどっかの出来の悪い二次小説みたいな展開なのじゃ。
更におまけがここにつく、話し方で気付くものもおるかもしれんが…それは…
「袁術様、お勉強の時間ですよー」
「今ゆくのじゃ」
そう、つまり原作キャラに転生してしまった…憑依になるのかの?
ただなぜか身体は男、原因は不明だけど中の人的には前と同じ性別で助かるが原作では幼女仕様の袁術、なら男なら…ショタ仕様?まさか…まさか…。
そして何より…
しかもなぜか一人称は『俺』『僕』でもなく『吾』と教育されて来たので今では慣れてるが最初の頃は悶絶死しそうだったぞ。
正史ならばともかく恋姫†無双の世界だと色々わからないところだらけで困るのじゃ、正史では晋を築いた司馬家の存在の有無などを確認せねばなるまい。
「美羽〜久しぶりじゃのぉ」
吾の真名は原作変わらず美羽でそれを呼んでいるのは吾の母『
「これは母上、本当に久しぶりなのじゃ、前にあったのは…4ヶ月前ほどじゃったか」
「すまんのじゃ、妾とて本当は美羽と一緒に居たいんじゃよ、でもの〜…あの腐れ外道の畜生種無し阿呆根暗共のせいで大変なのじゃよ」
母上はなかなか過激な性格での、しかもたまに本人に向かって言い放つ事があるのじゃが…よくこれで政治家が務まると感心するのじゃ。
「ところで後ろに居る幼女は誰ぞや」
「おお、この子は姉様の娘、つまり美羽の従姉妹で姓は袁、名は紹、字は本初という。これからここに住むようになったのじゃ」
なるほど、彼女が袁紹…母上の後ろに隠れてこちらを覗いておるところから察するにまだオーホッホッホッホしてないのじゃな、髪の毛もクルクルしておらず普通の可愛い幼女なのじゃ…誰じゃ吾に言われたくないと言ったやつは。
まだ見た目7歳程度の字を持ち、これからここに住むという事は…
「伯母様はお亡くなりになったのかや…」
本来『字』は成人まで付けぬのが通例、それを持つ者は早く成人する理由がある、それは養子に出される時や極稀に成人する前に旅に出るなどじゃが一番多いのは家長が死ぬことが一番多いのじゃ。
養子という可能性もあったのじゃが…母上が何処か空元気であるところから察するにそういうことなんじゃと思う。
「その通りじゃ。それで美羽、よければ袁紹ちゃんと友達になってやってくれんかの」
「もちろんなのじゃ、吾は姓は袁、名は術、まだ字は無いがよろしくなのじゃ」
「よ、よろしくですわ」
謙虚な袁紹幼女萌え。
借りてきた猫のようにおっかなびっくりなところが萌え…これがそのうちあの傲慢でお馬鹿な袁紹になるのか、もしかして今から調教…ゲフンゲフン、躾をすればなんとかなるかもなのじゃ。
これはヤル気が漲ってきたのじゃー。
「叔母様…袁術ちゃんから黒い何かが沸いてるのですけど」
「なんで4歳児があんな黒いものが出せるのか謎何じゃが…袁紹ちゃん、叔母様って誰のことじゃ」
母上からドス黒いオーラが感じたのじゃ…吾の事を言えた義理ではないと思うのじゃが。
「わ、私の妄言でしたわお姉様」
「それでいいのじゃ」
後で聞いたんだけど袁紹ちゃんの母上、つまり伯母様もお嬢様言葉だそうじゃ。
血筋じゃなくて親のせいなだけじゃないかと思うぞ。
ま、何にしても袁紹ちゃんを清く正しく美しい大和撫子に育ててみせるのじゃ。
うむ、無理じゃったorz
袁紹ちゃんが我が家にきてから二年。
袁紹ちゃんが袁紹さまですらなく、袁紹ざまぁになったのじゃ。
経緯は吾と共に私塾に入ったのじゃが…それまでは出来の悪い姉という感じで何だかんだ言って仲良くやってたのじゃがまさか周りの者が袁紹ちゃんを持ち上げるに持ち上げて昇華されて袁紹ざまぁへと進化するとは…頭がいたいのじゃ〜。
しかも袁紹ざまぁの取り巻きが知らぬ間に離間の計らしきものを吾と袁紹ざまぁに仕掛けよって、おかげで吾とは険悪とは言わぬが前のように仲良くとはいかなくなったのじゃ…ちょっと寂しいのじゃ。
顔良と文醜が来ればもう少しマシになるかもしれぬのじゃが、まだ生憎会うて居らんのでどうしようもない。
母上も袁紹ざまぁの事で頭を悩ましているらしい。
吾は大丈夫じゃぞ?くだらん取り巻きなんぞおらんからの…誰じゃ友達がいないだけだろなんて言った奴は?!
袁紹ざまぁの取り巻きの代表は逢紀、許攸、張の三人で張は至ってまともな人で曹操ちゃんとも仲が良い事から真っ当な部類…だと思うのじゃ、多分…百合百合しい匂いが若干香ってくる事が不安ではあるのじゃが、他の二人に比べれば月とゴキブリぐらいの差があるのじゃ。
袁紹ざまぁよりちょっと年上とはいえ悪知恵が働きすぎるのじゃ、この前だって袁紹ざまぁはまだ酒が飲めないお子ちゃまな事を良い事に散々酒を二人して飲んで酒代を袁家のツケにするぐらいじゃからな。
その後母上にみっちり叱られて酒がある場所には立入禁止になったのじゃ、これで終わればよいがあやつらはその先があっての、それで落ち込んだ袁紹ざまぁを励ましてより親密に…とまぁ悪劣極まりない奴等なのじゃ。
スッポンと例えることすらおこがましいぞ。
しかもきっちり吾を牽制して袁紹ざまぁに寄せ付けよぬようにしておるからの、何ともしがたい。
もう吾よりあやつらの方が袁紹ざまぁの信頼度は高いじゃろうしの…どうにも出来ぬのじゃろうか…救いがあるとすれば原作では顔良と文醜以外の描写がなかったことかの、ひょっとするとこれから離別するのかもしれぬ、それからが勝負かの。
「それにしても美羽よ」
「なんじゃ母上」
「漢文を覚えるのにあれほど苦労しておったのになぜそれほど知恵が働くのじゃ」
前世で漢文が苦手だったからじゃ、なんて口に出来んのう。
さて、どう言い訳をしたものか…
「あれじゃパーッと光ってズババッて感じなのじゃ」
最高のニュータイプさんをイメージしてリメイクしてみたのじゃ。
こんなことで誤魔化せれる母上では——
「…あくまで誤魔化すと言うんじゃな、というか誤魔化すにしてももう少し何かあるじゃろ」
ないんじゃよ、予想通り。
「ふむ、ならばあれじゃ、天命であまり目立つなと」
「美羽、それでは自分が目立っていないと思っておるのじゃな」
「当然であろう、吾ほど謙虚で物静かな者は居らんぞ」
「確かにそうじゃな」
「そうであろう、ハーッハッハッハ」
「お願いじゃからこれ以上私塾で問題を増やさんでくれ」
いやいや母上、吾には言ってることがよく分からぬぞ。
この前酒屋のお姉さんに教えてもらった必殺の『幼女の首傾げる』を喰らうのじゃ!
「そんなに可愛く首を傾げても駄目じゃ、この前許攸派と逢紀派の大喧嘩は美羽の仕業じゃろ」
なん…じゃと…吾の必殺技が効かぬじゃと、やはり幼女(偽)では通じぬのか?!
「なんという言いがかりを…吾はあやつらには何もしておらんぞ」
なぜ母上がそんな事を疑うか分からぬ、吾はあやつらには何もしておらんのに…
「美羽、あなた袁紹ちゃんに『許攸と逢紀どちらが袁紹ちゃんに相応しいじゃろうか』と問うたそうじゃな」
「そんなこともあったのう」
「許攸派と逢紀派の紛失物がお互いの荷から出てきたそうじゃが」
「吾は何もやっとらんぞ」
じゃが吾はあやつらには何もやっておらんし挑発もしとらんよ。
ただ許攸派にも逢紀派にも吾のスパイが居るだけじゃ
「…美羽が黒くなってもうた」
「肌は白い方じゃと思うんじゃが」
孫策とか周瑜は孫権は色黒じゃったな、イイ、とってもイイと思うのじゃ。
死亡フラグが無ければの。
肌が白いといえば陸遜が無駄に白かったような気がするのじゃ、やはり引き篭もりじゃからか?でも武術は出来たんじゃよな…謎じゃ。
「はぁ、まぁ良いわ。今のところ気づいたのは妾だけじゃからな。それにしても美羽は将来三公になってもやっていけそうじゃな」
「そんなめんど…そのような大役、吾にはちと荷が重いじゃろうて、せいぜい光禄勲がいいとこじゃろう」
「そういうことにしておくかの」
吾は平和にのんびり暮らせれたらいいのじゃ、原作通り張勲が忠臣でいてくれるなら二人で漫遊するのも悪くないかものー護衛が欲しいがいないと危ないかの、正史通りなら紀霊を連れて行く事にするかのKO○Iでは上位というほどではなかったが雑兵などよりは強かろう…字か真名が言峰でない事を切に願うのじゃ。
「おお、曹操ちゃんではないか」
「…貴方ね、もういい歳なんだから『ちゃん』はやめなさいって言ってるでしょ」
「せっかくの友人を無碍にするのはどうかと思うのじゃ、そもそもまだ10歳じゃろ」
クルクル髪も胸も背も小さい事が有名な曹操孟徳、知り合ったのは私塾でひたすら一人で勉強してるところを釣り上げたのじゃ。
「今不当なこと考えてなかった?」
「そんな事はないのじゃ。それより今日は一人なんじゃな、珍しいの」
いつもは曹操ちゃんの従姉妹である夏侯姉妹が連れ添っておるのに珍しいの、ちなみにリアルの二人は二人共美人さんじゃった…曹操ちゃんも想像通りロリっ子じゃな、まだ幼いという事を差し引いても。
もっとも吾も人のこと言えぬのじゃ、吾もパッと見は原作の袁術のままなのでリアル男の娘ショタ仕様なのじゃ。
「今日は一人でいたい気分だったのよ…無駄だったみたいだけど」
「む、吾が邪魔と申すか、だが断るのじゃ」
「分かってるわよ、もう一年…と半年ぐらいの付き合いでしょ」
「さすが曹操ちゃんなのじゃ」
そうか、曹操ちゃんと出会ってもうそんなに経つのじゃな。
あの頃はお互い友達がいない者同士仲良くやって行こうという話に…ならなかったんじゃが「私に話しかけるな」「勉強の邪魔」「男には興味ない…男よね?」などと言われ続けても無視してストーカーしてたらとうとう曹操ちゃんが折れてそれから仲良くなったのじゃ。
宦官の孫娘というレッテルは何気に大変そうなのじゃ、一人で勉強してたのもその辺りが起因なのじゃろう。
吾は全く気にせんぞ、その程度で友達止めるつもりはないのじゃ。
打算で考えれば将来を考えれば仲良くなっておくに越したことはないしの。
決して寂しかったとか漢文がまだ分からない所があって誰にも聞けないとかじゃないぞ、本当じゃからな。
「例のアレで私塾を出ても推挙に苦労するようなら吾も手伝うからいつでも言ってくるといいのじゃ」
「ふん、貴方に借りを作るなんて後が怖いじゃない」
「そんなこと気にせんでもいいのじゃ、純粋な善意じゃ、吾も曹操ちゃんと一緒で友達が少ないからの、それにこんなご時世じゃ偶には純然たる善意を行なってもいいじゃろ」
ほとんど本音だ。
今の御時世、やれ金を寄越せ、やれ女(男)寄越せ、やれ地位寄越せ、やれ命寄越せと言われる時代なのじゃ、本当に偶には善意もいいじゃろ…相手にとってはちと重いかもしれぬがの。
「貴方ねぇ今の話誰かに聞かれでもしたら軽く騒ぎになるわよ、身分を考えて発言しなさい」
確かに遠まわしに漢王朝を批判したように聞こえるかもしれんの。
「大丈夫じゃ曹操ちゃんしか居らんし曹操ちゃんも告げ口なぞせんじゃろ?」
「一体その信頼は何処から来るのかしら」
「友達がいない同士の友情なのじゃ」
「…自分で言ってて寂しくない?」
「ちょっと寂しいのじゃ」
そういえば袁紹ざまぁと曹操はそれなりに縁があったはずなのじゃが…吾の知る所では接触は今のところないの、なんでじゃろ?もう少し後なのじゃろうか。
「ま、確かに推挙には苦労しそうだけど…その時は貴方の力を借りるかもしれないわね」
「うむ、遠慮無く頼って良いぞ。なんだったら真名に誓っても良いぞ?」
今までどこか胡散臭げな表情をしていた曹操ちゃんが表情を引き締め、カッコイイ曹操ちゃんになっておる。
この世界では真名に誓うとは命を持って誓うより重いものとされておる、それに誓うという事がどれほど大きい事なのかは推して知るべし。
もちろん現代から転生したとはいえ、もうバリバリの中国っ子の吾もそれに則り真名は大事な人にしか教えていない、もっとも大事な人が母上以外いない始末じゃがな。
袁紹ざまぁにも許そうとしたんじゃが…あの屑共が現れてタイミングを逃したのじゃ。
「袁術、冗談で言ってるんではないでしょうね」
「まさか、いくら幼子の吾とてその意味を軽く扱うわけがないじゃろ、少しは吾の思いは届いたかの?」
別に愛の告白という訳じゃないぞ?吾は曹操ちゃんともっと親密になりたかったのじゃ。
何せ曹操ちゃんから話しかけてくれないし夏侯姉妹は冷たいし外で遊ぶのも無理やり連れ出してやっとじゃからな。
もうちょっと近寄りたいと思っても不思議ではなかろう。
他に友達になれそうな者も居らんしorz
「もう、分かったわよ。あえて自己紹介するわね、私は姓は曹、名は操、字は孟徳よ…真名はそのうち教えてあげるわ」
「では吾も、姓は袁、名は術、字はまだないじゃ、真名は曹操ちゃんが教えてくれたら教えるのじゃ」
真名は預けたら預け返す事が礼儀とされておるからの、一方的に預けることはせんというのも礼儀の一つなのじゃ。
「それにしても曹操ちゃんは字があるんじゃな」
「成人になってからつけると違和感があるじゃない、だから早くつけてもらったの」
さすがこの世界の曹操、違和感がある程度で成人の儀を一つを省きよったぞ。
「ではこれから友人じゃの、曹操ちゃん」
「真名まで持ち出されちゃ、ねぇ。これからよろしくね袁術」
やったー初めて名前を呼ばれたのじゃ。
「よっし、これで一桁の年齢での目標達成なのじゃ」
「…色々言いたいんだけど、とりあえずおめでとう?」
「ありがとうなのじゃ…どうしたんじゃ?顔を逸らして」
「な、なんでもないわ」
「?そうか、変な曹操ちゃんじゃな」
「変なのは袁術でしょ」
「むぅ…ってまた顔を逸らして、一体なんなのじゃ?」
「なんでもないわよ!私これから用事があるからこれで失礼するわ」
「うむ、今度は何処かにお出かけしようぞ」
「…考えとくわ」
それにしても曹操ちゃんどうしたんじゃろ?何かが眩しいように顔を逸らしてたんじゃが…はて?何もないぞ?