華琳ちゃんから手紙が来た。
何気に気を使っておるのか上質な紙で送ってくるとは…ちょっと嬉しいぞ。
いつもは黄ばんだ紙が多いからの。
それで肝心の内容を要約すると
①貴方は元気?私は元気よ。
②洛陽北部尉になったのは当然知ってるわね?それでこの前禁令を破った宦官の親戚しばいたのよ。
③そしたら宦官共が怒り狂ってたざまぁwなにか言いたそうだったけど私には隙がないから更に怒ってたわ。
④でも気に入らないから仕返しに栄転と言う名の左遷させられちゃった。
⑤任地は陳留ですって、確かに栄転と言えなくはないわね。
⑥そのうち挨拶に行くから用意しておくように。
さすが華琳ちゃん、平気で宦官と敵対するとはそこに痺れる憧れるー(棒読み)…何やっとるんじゃ、シバくなんてもっての外じゃ。斬首こそ相応じゃ!
「それは違うと思いますよ?」
そうかの?宦官が減れば世のためになると思うのじゃが…まぁ華琳ちゃんがこの段階で全面対決しても勝ち目はなかろうけど。
そして本命の内容、華琳ちゃんが遊びに来るのか。また何か目新しい物を用意しておけという事じゃな。
幼馴染の宿命というか小さい頃から…
「お嬢様は今でも小さくて可愛いですよ!」
………まだ今より小さい頃から!!色々華琳ちゃんに見せてきたせいでネタ作りに苦労するのじゃ。
中途半端な物を作ってもあの辛口な華琳ちゃんじゃからダメ出しが怖すぎる。実際いくつか未完成品を出して説教されたのはいい思い出じゃ。
何を用意するか…というか華琳ちゃんが陳留に?あれ、もしかして原作開始が近いのではないか?やばいのじゃ、史実と原作とどちらのパターンか分からんが史実だとやばいのじゃ。
史実パターンでは黄巾の乱で
原作の流れならば問題ないが、史実だと吾が討たれてしまう可能性があるんじゃがだからと言って逃げるという選択肢は存在せぬし…困った事じゃがどうしようもないのぉ、一応影達に調べさせておくか。宝くじ買うぐらいの気持ちで。
ただ張曼成って偽名の可能性が高いんじゃよなぁ…中国に張姓がいくら多いとは言っても張角の扇動で呼応した奴が同じ姓とは出来すぎな気がするのじゃ。
まぁでも原作とは違い紀霊、魯粛、関羽が吾の配下に加わっておるからそうは負けるとかありえんじゃろ。ん?これが俗に言うフラグ立てか?
見つけられたら暗殺でも考えるか、そういえば張三姉妹を暗殺すれば黄巾の乱は発生せんのじゃろうか?二次小説なんかでは張三姉妹が偶々引き金となっただけで別の切っ掛けでも起こるなんていう話もあったからのぉ。
確かに言われてみれば高々アイドルの一言で暴動程度ならともかく乱が起こるなんて事は念入りに下地を作らねば不可能じゃろうからやはり張三姉妹を始末しても変わらんじゃろうなー。
さて、本題に戻して何を用意しよう。
新しい商品としてけん玉を作ったがどう考えても子供用遊具じゃからなぁ華琳ちゃんの見た目だけなら合わんでもないがそんな事すればきっと死神の鎌こと絶が始解どころか卍解するじゃろうし、新作料理などは御持て成しをするには宴会は必須じゃから当たり前であるし…どうしたもんか。
「袁術様、絵なんてどうですか。挨拶に来てあまり高価な物を贈っては曹操様もお困りになるでしょうし」
「ふむ、言いたいことは分かったが絵とは…ちょっと幼稚すぎやせんか?」
確かに手作りじゃから金は掛からんが…前世では学校の授業でしか描いたことはなく、今世では描こうと思ったこともない。
強いて言えば地図は描いたが、あれは絵とは違う。
「こういうのは気持ちの問題ですわ」
ふむ、そういうならばそのようにするとしよう。
下書きして駄目なようならばまた別に考えればよいか…ぶっちゃけ高価な物は色々贈っておるから値段は気にせんと思うが、初心に返るのもいいじゃろう。
「では早速道具を用意します」
ふむ、絵か…もしうまく描けた暁には漫画でも出版するのも良いな…。
いや、ちょっと待つのじゃ、全て手描きか?…無しじゃな。
版画家の育成を推進するのも良いが最近色々手を出し過ぎて人手不足になっておるからしばらく自重が必要じゃ。
まさか人口だけなら州に匹敵する南陽郡で人手不足になるとは思いもせんかった。
移民防止策などが上手く作用しておるのも理由の一つじゃな。
黄巾の乱が起こり次第移民推進策に切り替えるべく食糧増産も始めておかねばならんな。黄巾の乱以降であれば周りの諸侯との関係悪化があったとしても実力行使でどうとでもできるじゃろう。
さて、蛇足はここまでとして、何を描くかの〜…吾の自画像、なんて贈った日には絶が始解する事になるのは火を見るより明らかじゃ
んー…風景画は今からでは難しいじゃろうな。何処を描くか決めるのにも時間がかかるじゃろうし、何より吾の行動範囲も限られておる。
やはりここはオーソドックスに華琳ちゃんと夏侯姉妹が並んでおるところでも描くとするか。
原作の立ち絵姿を並べただけになりそうな予感もするがな。
「準備は夕方には終わらせておきますので、今のうちに仕事を終わらしておきましょう。張勲さんも」
「うぅ、結局仕事は減らないんですか—」
「袁術様、聞きましたか張勲さんは袁術様が頑張ってるのに一人仕事をしないつも——「さあ、仕事頑張りましょ—!」——ハァ、張勲さんは仕事が出来ないわけじゃないんですけどもう少しまじめにやって欲しいです」
「そんなの無理に決まっておろう。吾でも説得は無理じゃし、吾も無理じゃ」
「袁術様はいいんです。可愛いですから」
「差別ですーしかも私は可愛くないと言外に言ってますよね?!」
華琳ちゃんの絵を描くのは問題ないが吾が今知って昔の華琳ちゃんな訳で…うん、別に昔のままでも問題ないかの。どうせろくに成長——のわ?!背中がゾクッとしたのじゃ、ゾクッと。
まさか華琳ちゃんのコンプレックスセンサーはこの距離(何処におるか知らんが)でも感知内というのか。そして何という威圧スキルじゃ。
「お、お嬢様、何か私背中がゾクッとしたんですけど」
「わ、私もです」
しかも範囲スキルのようじゃな。
<華琳>
「か、華琳様、な、何か粗相をしたでしょうか」
「なんでもないわ秋蘭、なんか美羽が私を馬鹿にしていた気がして」
「ハハハ、袁術様ならありえますね」
今度会った時覚えてなさい。
<魯粛>
私達の悪寒は収まりましたけど袁術様は未だに悪寒に苛まれていらっしゃるようでピクッ、ブルブルッと顔を青ざめさせ震えている様子が可愛い…可哀想に。風邪ではありませんよね?
そんな状態にも関わらずきゃんぱす?の前に立つ袁術様の何て可愛いこと。
「ぬりゃ、とりゃ、もう一つぬりゃ!」
掛け声はどうかと思いますけど見ていて微笑ましい。
始める前に「絵の具がないのぉ」と言ってましたけど絵の具とはどのようなものなんでしょう。名前と状況的に考えて絵を描くための何かというのは分かるのですが…また袁術様が新たな商品を生み出す兆しでしょうか。
「墨で絵を描くというのは難しいのぉ…描き直しじゃ。次を持て」
「はい」
袁術様の絵心は凄いの一言に尽きるますわ。
今は苦戦しているようですが墨の乗りが分かり辛いようなので描き直してますけど姿形は何とも美しいものです。
これはひょっとすると芸術家として花を咲かせる方が袁術様の幸せかもしれないわね。
「大腿骨…じゃなくて大体コツはつかめたのじゃ。今から本番と行くぞ」
分かってはいましたけど今までのものは練習なんですよね。
正直私の家にあった美術品より明らかに良い物なんですけど…失敗作は貰って家に飾っておきましょう、そうしましょう。そして紀霊さんや張勲さんに見せびらかしてあげるんです。
「むほほほーテンションあがってきたのじゃー!」
テンションとは何かなどと無粋なことを突っ込みませんが袁術様は偶に意味不明な言葉で喋られるから困りますわ…楽しそうですからいいんですけど。
先ほどまでの練習していた作品より繊細な筆さばき、そして華麗でついつい筆の動きをついつい目で追ってしまう。
墨の強弱をつける事により絵に深みが生まれ、時には間を置いて更に墨を重ねて模様を作り出す。
いったいその技術は何処で学んだんでしょうね。
「うむ、土台はこんなものかの。後は細かい所に線を足せば完成じゃ…自分の才能が怖い」
ええ、本当に。
これほどの作品が下書きなんて誰も思いませんわ。
本当に見ていて惚れ惚れしてしまう…仕上がりが楽しみですわね。
それにしても気合いが入ってますね袁術様。
「うむ、中途半端なものを渡したら華琳ちゃんに何を言われるか考えたくもないのぉ」
「友、いえ幼馴染である曹操様も公私の分別もありますでしょうし、何より袁術様の思いを無碍にはせぬかと思いますけど」
「ならば良いが…」
(蜂蜜は嫌じゃーって言われたからのぉ心配にもなるのじゃ)
これほど心配する原因がありそうですわね。
しかし
そしてその可愛い袁術様と一緒に湯浴みができないことが残念で仕方ありませんわ。
全く、袁術様には困ったものです。いくら城の中とはいえ護衛は必要ですのに湯浴みの時に限っては誰も共に入る事以前に陰ながらの護衛すらも禁止するのはどうかと思います。
例外はなく、一番付き合いが長い張勲さんと紀霊さんも当然対象です。
いったいなぜそこまで頑なに湯浴みの伴をそれほどまで拒むのか…せっかく可愛い袁術様のあれやそれやが見えないじゃないですか。
「魯粛、今卑猥な事考えんかったか?」
「いえいえ、滅相もない」
危ない危ない、どうやら自分で分からないうちに外へ色々と漏れちゃったみたいね。
気をつけませんと淑女として失格です。
「そういえば涼州との交易の件はどうなっておる?いくら脳筋家系とはいえ断れる訳がないとは思うが…」
「ええ、袁術様のご想像を凌ぐものはありませんでしたわ。あちらは私達より文官が少ないようで歯ごたえがありませんでしたわ」
殆どこちらが出した条件をそのまま飲むような形で成り立った交易の条件に上手く行きすぎて可哀想になるほどです。
涼州を実質仕切っている馬騰様はそこそこお話が出来ましたが所詮そこそこ、感情が優先される武人気質であり、歳を重ねている分だけ騙されはしないでしょうけど最適の解に辿り着く事は難しい。
そして馬騰様の盟友、韓遂様も謀り事は得意でもやはり武官に過ぎず、文官のような駆け引きは不可能、他の馬家のご息女達は脳筋…コホン、素直さが目立ち文官としてというだけでなく武官としても足を掬う事にならないか心配ですわ。
しかもいつの間にか袁術様は
「さすがに距離がありますから頻度はそれほどではありませんでしょうけど、これで涼州との繋がりも出来て馬も手に入るとは良い事です」
「うむ、今は無理じゃが財政に余裕ができたならもっと交易品を増やしても良いの〜」
「涼州は決して豊かな州ではありませんのできっと喜ばれることでしょう」
「うむうむ、吾が富、民が富、国が富めば幸せなことじゃ」
「はい」
ああ、凛々しい袁術様も可愛い。
「それと関羽じゃが華琳ちゃんと会わぬよう長めのお使いにでも出しておいて欲しいのじゃ」
「あら、焼き餅ですか?」
確か曹操様は百合な方と聞き及んでいますし、袁術様は曹操さんの事を憎からず思っておられるようですし。
「それなら我慢するがの、関羽の貞操の危機はさすがに見過ごせぬしせっかくの有力な将にやめられるのはちょっとな」
「そうですね。ではそう手配しておきます」
そういえば曹操様は同性を好む方でらしたわね。
噂では袁術様ほどではなくても可愛らしい方らしいじゃないですか…是非ワタクシガオアイテシテアゲマスヨ?
「魯粛、卑猥なことを考えるのはほどほどにしておけ。吾は平気でも他の誰かに見られてはいらぬ噂がたつやもしれんからな」
これは失礼しました。
「おお、華琳ちゃん。いらっしゃいなのじゃ。久しいのぉ」
「久しぶりね美羽。貴方が太守なんて務めれるのか心配だったけれど…取り越し苦労のようね。色々噂を聞いてるわよ」
よく言うわい、お主の所の者が潜り込ませておるくせに。
「何を言ってるのじゃ。吾以上の太守なぞおるわけないであろう!ハーッハッハッハ」
「はいはい、そういうのはいいから早く城に行きましょう。まさか貴方が城門まで迎えに来るなんて思ってなかったわ」
最近街へ出れなくて丁度良い口実だったなんて事は言わぬが花じゃな。
魯粛だけでも大変じゃったのに関羽まで加わって正直大変なのじゃ。
「春ちゃんも秋ちゃんも久しぶりじゃ」
「…やはりその呼び方は固定なのですか?」
「むう、確かに真名は許したがそんな呼び方をしていいとは言っておらんぞ!」
うむうむ、夏侯姉妹も元気そうで何よりじゃ。
「最近は賊が多くなってきておるようじゃがおぬしらは大丈夫であったか?南陽にはそれほど賊はおらんとは思うが他まではさすがに無理があるからの」
「言うとおり賊に何回か遭遇したわね。どれもこれも素人ばかりで大したことはなかったけど」
やはり賊が増えておるか。
黄巾の乱自体はまだ先じゃが最近になって急に賊が増えたせいで太守は初動が遅く、もう少しすれば討伐の動きが見られるじゃろうからとりあえずは鎮圧することができよう。
そして賊の行いの皺寄せは民へ向かい、不満が増大して張三姉妹が活動が起爆剤となり黄巾の乱が始まる。
南陽自体は黄巾の乱に巻き込まれる可能性は少ない…というか以前チラッと名前が出てきた中心人物であるはずの張曼成じゃがいつの間にかウチの警邏隊隊長になっておったからびっくりじゃ。
しかも割りと優秀らしいのでそのうち将として使えるかもしれぬと紀霊が言っておったから呉懿こと五位と李厳ことリゲインに続く期待の新人じゃ。
と言うか華琳ちゃん達が襲われたのは護衛が夏侯姉妹しか連れてないのも一因ではないか?普通女性だけの旅自体もありえんが三人での旅はもっとありえんぞ。
あ、でも趙雲と程昱と郭嘉はそんな感じで旅しておったな。しかも流浪とか…うん、あやつら知識はあるかもしれんが絶対馬鹿じゃろ。
華琳ちゃんは三人共武官と武官に匹敵する文武官じゃからまだいいが、武官と文官二人とか命知らずにも程がある。
「そうか…ならば宴会はどうする?今日は疲れておるじゃろうし宴会は明日にするか?」
「貴方の事だからもう準備してるでしょ?だから今日でいいわ」
「分かったのじゃ。ならば仕上げに掛かるように通達しておくのじゃ」
「御意」
陰で護衛をしていた紀霊が返事を返すと三人とも驚いたようじゃ。
ちなみに格好は吾手製喫茶風メイド服だったりする。
暇ができてついつい本気で作ってしまったのじゃが偶然紀霊に見つかって凝視するもんじゃから冗談で着るか、と問うたら某三角形の心的な神速かと思うほどのわけの分からん(視認できなかった)スピードで奪われ、次の瞬間には着用済みじゃった。
あれじゃ、スピードが足りない!と叫ぶ兄貴も真っ青のスピードというやつじゃな。
「全然気づかなかった」
「ああ、しかももういないぞ」
「…ぜひ欲し——「やらんぞ」——残念だわ、本当に残念だわ。ただあの服装…貴方の差金かしら」
大事なことじゃから2回言ったんじゃな。
吾は服装に関しては強要したことないわ!全く、華琳ちゃんは人をなんじゃと思っておるんじゃ。
「華琳ちゃん達はどれぐらい滞在する予定じゃ?なんだったらそのまま吾の下へ仕官させてやっても良いぞ」
「そんなわけないでしょ。陳留に赴任するの決まったからここに来たんじゃない。大体十日ほど予定してるわ」
「ん?吾としては全然問題ないが随分ゆっくり滞在するんじゃな。華琳ちゃんの事じゃから一刻も早く仕事がしたくて仕方ないじゃろ?」
華琳ちゃんって絶対ワーカホリックじゃろ。
特に現在は華琳ちゃんを支える四軍師が一人も居らん上に今までの役職上、文官の部下はそうは居らんじゃろうから今から探すか育成せねばならんから忙しいじゃろうし。
「それが色々面倒な事になってるのよ」
「…宦官と前任者か」
「あら、よく分かったわね」
追い出したのは宦官で任地を決めたのも宦官、そして今回のことで一番気に入らぬ者は陳留の前太守じゃろう。
前太守は立て篭もると言えば大げさじゃろうが、とにかく太守の座から降りること拒否しておる…というのは表向きじゃがな。
裏には宦官がおるんじゃろうな、華琳ちゃんへの意趣返しじゃろうな。
「という感じかのう」
「ええ…その通りなのだけど美羽にそこまで言い当てられると微妙な気分になるわね」
フハハハハ、日頃の演技のおかげじゃな!…演技のおかげじゃよな?そうじゃよな?まさかこんな
ふ、深くは考えんことにするのじゃ。
「本当は気に入らないけど…本当に気に入らないけどお祖父様の手を借りたのよ。押し売り同然だったけどね。でも結構時間が掛かるらしいから暇潰しに貴方の所に来たのよ」
「まあ理由はどうでもいいがの」
バッサリ切ってやったら華琳ちゃんからビキッという音が聞こえたのじゃが気にするまい。
それにしても騰爺ちゃんの手を借りるのか、まぁ華琳ちゃんを猫可愛がりしておるお爺ちゃんの事じゃから別の意味で良い子な華琳ちゃんじゃから滅多なことで頼らぬからの、今回のことは嬉々として動いておるに違いない。
そもそもお爺ちゃんも宦官なのじゃから最初から抑えてくれても良かったのではないか…もしやわざとか?それとも華琳ちゃんが門番なんて小役人では窮屈な思いをしておるのを知ってかのぉ。どっちもありそうな話じゃな。
「それにしても…街に並んでる商品が見覚えがない物ばかりね」
そりゃそうじゃ、吾が未来知識を応用してNAISEI(笑)をしておるからの。
日本といえば食文化!という事で新しい簡単な料理は続々と広げておるぞ。
ちなみに吾と魯粛と魯家とで商業組合を作ったのじゃ。
いやー利権って怖いのぉーこりゃ利権利権と現代で騒ぐわけじゃ。
商業組合に所属するには上納金を納めなければならないが税金より安く、しかも免税されるという特典がつく。
他にも吾の開発した最新商品の販路を任せることや事業の参入なども優遇されるのじゃ。
ちなみに集められた上納金は組合母体の吾、魯粛、魯家に分割して私財とされるのじゃから笑いが止まらぬ。
それと吾や魯粛は公共事業や斡旋所の運営で出ている赤字を相殺したりしておる。
別に黒字にするのは簡単なのじゃが謀反や反乱防止策の一つであったりする。
もし何処かの誰かが欲にかられて南陽を乗っ取ろうとして吾を排斥すれば赤字を自腹で運営するか新たな政策を打ち立てなくてはならず、それなら他の郡の太守になることとそう変わらず、吾を殺したところで吾個人の私財は袁家に相続されるように魯粛や魯家の皆に頼んおるし商業組合自体が吾と魯家がバックにいるから成り立っている事は集まっておる商人達もわかっておるので自然消滅することになるじゃろう。
つまり、金のなる木を手に入れようとすれば枯れるようになっておるんじゃ。
しかもこの商業組合を作ったおかげで情報収集と操作が楽にになり影の負担も減って良い事が多いし万々歳じゃ。
そして何より孫呉への牽制となるじゃろう。
…もっとも奴らは揚州の奪還が目的なんじゃからあまり意味が無いがな。
「これ等全部貴方の仕業ね」
「な、何を言っておるんじゃ。吾が商家の真似事なぞするわけないじゃろ!」
商人の立場は漢においては不遇、下賎な者が行う職じゃぞ。
吾がそのような事する訳が———
「私は貴方が将棋の棋譜を売ってたこと知ってるのよ。それにその言い方は図星をつかれてると言っているようなものよ」
おおう、そうじゃった。
普通に洛陽で商売しておったな。いやー参った参ったゼンゼンキヅカナカッタノジャー。
むぅ、さすが華琳ちゃんじゃ。
「大体こんな変わった物を開発するのは貴方ぐらいでしょ」
「む、それは吾が変わり者と言いたいのか?」
「どう受け取るかは本人に任せるわ…美羽、これは何かしら。櫛…なわけないわよね。こんなに大きいし固定されてあるし」
「ん?それは千歯こきと言っての、稲や麦の脱穀用の道具じゃ。棒で叩くより断然早く出来るんじゃ」
これも二次小説のテンプレの一つじゃな。
これにより脱穀する時間が短縮され自由な時間か更に多くの仕事が可能になり、全体的に増えるので経済的に豊かになるはずじゃ。
現在大量生産して各村に無償配布中じゃ、他にも有料で鉄製の鎌や鍬、労働力として牛などを貸し出しておる。
貸し出しの管理は仕事斡旋所が行なっており、意図的にではなく自然と農協のような役割を果たすようになったのじゃ。
と言うか人手不足と斡旋所利用者を増やすために暇な時間を多く作るために作ったんじゃ。
もっともそれでも人が足らぬので保育園の設立を考えておる。
「今、さらっととんでもない事を言ったわね」
「何のことじゃ?」
としらばっくれてみる。
今までの開発…というか現代知識のパクリ…は売れてはおるが実のところ影響力はそれほどでもない。
将棋は遊具で上流階級の人間が遊ぶだけで特に意味は無い、算盤は確かに便利で効率を大幅に上昇させておるが数字を扱う者はやはり極一部であること、服はそれこそ贅沢品でしかない、などから考えると今回の千歯こきは農民、つまり中国どころかすべての国の殆どの人民が等しく恩恵を受けれる大発明なのじゃから、さすがにこれを吾が理解した上で開発したとなれば華琳ちゃんの警戒レベルがヘタしたら反董卓連合の後に吾をターゲットにするやもしれん。
「貴方…これがどれだけの価値があるか分かってないの?」
「もちろん分かっておるぞ。収穫が楽になるのじゃ!」
「ハァ、もういいわ」
吾の演技で騙せたようじゃ。
後ろで吾等の会話の意味が分からず?が大量に浮かばせる春ちゃん、その様子を微笑んで見守る秋ちゃん…この二人は平和じゃな。
「あれは何かしら」
「あれはクレープというお菓子じゃ」
「じゃあこれは」
「ハンバーガーじゃな。以前ハンバーグを食べさせたと思うがそれを手軽に持ち運びできて簡単に食べれるようにした物じゃ」
「なんでこんなに上質な塩が多いのかしら」
「それは揚州から密ば——ゲフン、買っておるんじゃ。品質に関してはわ、分からんの〜」
こうして久しぶりの城外を華琳ちゃんと楽しく散歩して過ごしたのじゃ。