第二百三十三話
「うむ、不味い」
「ですねー。野菜の乾燥粉末飲料はハズレですね。苦いです」
レーションの開発の一環で出来上がった簡単に栄養摂取ができるという飲料が李典から提出されたんじゃが……まぁ平たく言うと青汁のことじゃな。
さすが李典さん、世界観ぶち壊しに来る姿勢にしびれる憧れるのじゃ。
「うーむ……蜂蜜を入れれば飲める味になるのは間違いないが、あまり認めたくないが蜂蜜が苦手な者には難しいじゃろうな」
「砂糖は微妙そうですけど、水飴なら……蜂蜜とあまり変わらないですかね?」
おそらく青汁の味で蜂蜜にしろ水飴にしろ甘さしか感じんじゃろうな……それなら単価の安い水飴の方がいいかの。
「しかし、一部の健康志向な者達には受けが良さそうじゃな」
この時代でも現代と同じように健康志向な者達はおる。というより、もしかすると現代よりも健康志向かもしれん。
始皇帝が不老不死を求めたように、時の権力者というのはより長く生きたいと思う者が多い。その貪欲さは科学が進んで限界が見えている現代よりも強く、そういった者達には売れる可能性を秘めている。
なにせ良薬口に苦しとはこの時代でも割と浸透している話である……というか元々漢方に対して使った言葉じゃからあっても不思議ではないの。
「それに軍の携帯食としても使えそうですよ。一応は栄養があるらしいですし」
……いや、栄養があるとは言ってもこれを支給するのはちょっと可哀そうではないか?戦時において、兵士達の楽しみは戦いと食事しかないわけで、その片方にこれが加わえるのには抵抗があるぞ。
それに最低限飲める水がないと粉の状態で摂取することになるんじゃぞ?常時蜂蜜を持ち歩く吾ならともかく、粉だけとかごめんじゃ。
「次は司馬通さんが作ったものですねー」
ほう、あやつも作っておったのか……李典に対抗してのことじゃろうか?などと思っていたら目の前には……黒パンが出された。
ふむ……至って普通、よりは黒い黒パンじゃな。
「これは司馬通さんが検証した結果、十五日程は日持ちするそうですよ」
「ほほう」
十五日か、塩漬けや油漬けなど極端に保存用にしておるものには劣るが、料理としてはなかなかではないか。
「では、いただくとするかの…………あっま?!」
「保存するために砂糖と栄養面では干し果物を結構な量を入れているそうです。ちなみに焼いた後に天日干ししたりしているとかなんとかどうでも良いことを言ってましたね」
いや、どうでも良いことでは……まぁ吾等が必要な情報は大量生産ができるか、保存食として長期保存も可能か程度か。
「大量生産には製造時間が長いことが少し難があるようですけど、作り始めれば次々作っていればそれほど気にならないでしょうから問題ないと思います」
「この野菜の粉末汁物に面包(パンのこと)を浸して食べれば幾分か食べやすくなりますよ」
今まで黙っておった孫権が新たな食べ方を勧めてきたので物は試しに……確かに食べやすくなっておるな。美味いかどうかと聞かれれば微妙な顔を浮かべるしかないがの。