第二百三十四話
「ふふーん♪ふんふん♪」
テンションアゲアゲじゃぞ〜。
いやー、自分で生み出した地獄であったが官僚が増えて仕事が随分楽になったぞ。これぞ損して得取れというやつじゃな。まぁ本当は損して徳取れという意味なんじゃが細かいことは気にしたら負けじゃろ。
「……袁術……いったい何をしておるのだ」
「お、帝か。見てわからんか?絵を描いておるんじゃよ?」
久しぶりに絵を描こうと思ったんじゃよ。
最近は忙しかったし、何よりいつも筆を握っておるから空いた時間ぐらい握りたくないというのもある。
まぁなにも思い浮かばなかったというのもあるがの。
「それはわかるのですが……その……なんで壁に描いているんですか?」
「いや、実はこの壁、近々取り壊し予定なんじゃが、せっかく真っ白な壁をただ取り壊すのももったいないかと思っての」
ちょっとゴツゴツして描き難いが、それはそれで乙というものじゃ。
彫刻なんぞもしてみたいとは思うのじゃが筋力と体力を使うので仕事に支障が出る可能性が高いから見送っておる。もし隠居できたなら手を出してみても良いかもしれん。もちろん、第一は養蜂であるがな。
「袁術は自由ですね」
「そんなわけなかろう」
もし自由だったなら既に養蜂を手がけておるわ!!戦争なんて不毛なことなどせんわ!!欲しくもない権力を振り回すこともないし、自分で自分の首を締めるような政策なぞするわけないじゃろ。
「そういう意味じゃないんですけど……それにしても、上手いものですね。これは袁術……袁術ですか?あまりにも……その……太り過ぎではないですか?それに曹操孟徳が随分と表情が柔らかい、なのにプルプルと震えているし、どこか微笑みにも硬さがあるのですけど。それとこちらの檻に入って無様に泣いている幼子は誰ですか?見たことないですけど、あまりにも酷いですね」
「これは今の中華の情勢を表しておるんじゃよ。順調に肥え太る吾、それを眺めるしかなくて我慢する華琳ちゃん、そして自分勝手の理想を掲げてどうにもならなくなって困り果てて泣いておる劉備というところじゃな」
所謂風刺画というやつじゃな。まぁものすごく萌え絵チックじゃが。
そういえば、帝は劉備とあったことなかったか。史実と違って黄巾の乱が終わった時に南荊州を任されたから中央におる時間は短かったしの。
「ところでこれを曹操に見られると怒られるのではないか?」
「だから撤去される壁に描いたんじゃよ」
まぁ知られたところで華琳ちゃんがなにかできるとは思えんがな。