第三百八十四話
世界遺産といえば、兵馬俑が気になったんじゃよ。
いやー、改めて考えると始皇帝の墓に入っておるんじゃろ?掘り起こされた時期から比べると最近の出来事(400年ぐらい前)じゃからまだある程度綺麗な状態を保たれておるのではと思うのは自然なことじゃろ?
でものー。さすがに始皇帝の墓を荒らすのは世間体が悪いんじゃよなぁー。中華を創り上げた存在じゃからのー。
実質最高権力を握って好き勝手してきた吾じゃが、これは無理じゃろうなぁ。残念じゃ。この時代は金があっても解決ができんことがあるんじゃよ。
むぅ、残念じゃのぉ。
この時代に存在する世界文化遺産となると他には万里の長城ぐらいしかないんじゃなかろうか。紫禁城……ん?朱禁城じゃったか?どっちだったかの?どちらかがコードギアスだったのは覚えておるんじゃが……まぁどちらでもいいが、それも無いしのぉ。
「んー、いっそ作るかのぉ。紫禁城か朱禁城かわからん城を……うん、やめておくのじゃ」
そもそもどんな作りをしておるかもわからんから再現できん上に、間違いなくまた仕事が山積みになるからの。
しばらくは鈍行で行くと決めたんじゃ。うん、やめておこう。
「そういえばお嬢様はお城というか宮殿とか作りませんねー。欲しくはないですか?」
この時代、権力を持った者はだいたい自分の宮殿なり城なり、なんだったら都を作ったりすることが多い。これは中国に限らず日本やヨーロッパでも変わらんの。
「一日のほとんどを部屋にこもっておるから必要性を感じんのぉ。それに……また仕事が増えるじゃろ」
……最近気づいたんじゃが、なにか話す度に語尾が「~また仕事が~」や「~書類が~」になっておるようじゃ。これはかなり不健全なのではないかや?(凄く今更感)
「でもたまにはお嬢様自身の我儘もいいと思うんですけどねー。お嬢様は意外と自分のやりたいことが利がないと口にしないですよねー」
「む?そうか?結構好き放題言って実行してきたつもりじゃが?」
「勢いで言っているように思っていると思いますけど、実は無意識に考えているんですよ?考えずにおっしゃる時は喋る前にちょっと目を見開いて、考えてからの場合ですとほんのちょっとだけ顎を引きますね」
「…………本当かや?」
「私がお嬢様に関して嘘をつくわけがないじゃないですか」
そうじゃな。七乃は黙っておることはあっても嘘は言わんの。日頃から大陸一や中華一などと吾を褒めておるが、七乃自身は本気でそう思って言っておることじゃ。
……しかし、主の癖を覚えておくのは側近として当然かもしれぬが、その見分けができるレベルが変態的過ぎる気がするんじゃが…………これも今更か。
もっとも吾も七乃のことは立ち姿だけである程度考えておることがわかる段階で変態度はどっこいどっこいじゃけどな。聞こえよくすると以心伝心というやつかの。
「それで欲しいならちゃんと言ってくださいね?頑張りますから」
「いや、必要ないぞ。そんな時間があるなら七乃とゆっくりする時間にするからの」
「お嬢様ったらお上手なんですからっ!」