第一話
二次創作ってアニメやマンガを基礎として素人が好き勝手書いて、もしくは描いている小説やマンガ(正確には同人誌だっけ?)などの事を指す。
うん、それは間違いないと思う。
しかし…実体験することは二次創作になるんかね?
今、俺は機動戦士ガンダムの世界にいる。
普通に考えたら精神病院で軟禁されるような内容だけどそれは無いと断言できる。
正しく言えば入る事が出来ないんだけどな。
「今日のテストはどうか」
「駄目ですね。なぜか分かりませんがこちらからのアクセスを拒否しています。女性パイロットならアクセス出来る場合があるようですが…」
「モビルスーツが女好きでほとんど動きませんと上に報告してみるか」
「そんなことしたら俺達クビですよクビ」
むさいオッサンとヒョロいオッサンの二人が何やら喋っている。
もっとも原因は分かっている。二人が研究しているモビルスーツが起動しないのだ。
そのモビルスーツは何だか俺も知っている。
セガサターンで発売されたばかりにマイナー…なのかは知らないが一応Gジェネにも登場するが所詮マイナーなそのモビルスーツ。
その名をブルーディスティニーという。
恐らくゲームオリジナルで一番マイナーな機体だろうその体は名前の通りブルーで彩られている。
そして………
俺であったりする。
そう、俺はブルーディスティニーに憑依してしまったのだ。
これこそ!
「俺がガンダムだ!!」
まさかあの迷台詞をリアルで言う日が来るとは思いもしなかったぜ。
「そして俺の相棒マリオンちゃんです」
「え、えっと、よろしくお願いします?」
突然話を振られて戸惑ってるけどそこら辺はスルー。
多分神様が与えてくれたヒロイン枠なんだろうね。こんな身体だと恋愛なんて不可能だろうし。
そしてめっちゃ林原さんボイス、是非ドラグスレイブを唱えてもらいたいものだ…え?古いって?大丈夫、ガンダムよりは新しい!
「さて、ここで問題です。俺達はこれからどうすべきでしょう。
1.このまま流されて実験や実戦へ
2.戦いなんて嫌じゃーと逃走
どれがいいと思う?」
「わ、私が決めるの?!じゃあ…2番で」
「了解、では大脱走劇と逝きますか」
核融合炉活性化、システム起動、OSの書き換え…SEEDじゃないから必要なし、システムチェックはオールグリーン…いつもメンテありがとーでーす。
「ではブルーディスティニー2号機、略してブルーニー出るぞ!」
「確か大昔の野球選手にいたような…」
なんでマリオンさんそんなこと知ってんの?!
どうも、絶賛run for live逃走中のブルーニーです。
ハンターが洒落にならない件について。
「またミサイル来ます!」
「あいよッ」
クソ、フライマンタ超ウゼェ。
ギレンの野望では連邦編ではかなりお世話になったけどマジウゼェ、こっちから攻撃できない+あっちは超高度から一方的に攻撃できる=タコ殴り。
ミノ粉が散布出来ないから高性能ミサイルが山のように降ってくるのは地獄だっての、ちょいちょいカラコン挿入(EXAMシステム)してなかったら俺死んでたね。
しかも偶に61式かガンタンクかガンキャノンか知らないけどが遠距離から砲撃してくるし、マチルダさんが飛んでるうるさいし(ミデアの事)、ウッディが出てきた時(ファンファンの事ね)は舐めてんのかと思ったね。
ちなみに俺の武装は標準装備されている頭部バルカン、胸部バルカン、両手にビームライフルとシールド、シールド裏にはマシンガンとカートリッジ、腹部有線ミサイルと言うシールド裏以外は原作通りである。
「それにしても高々モビルスーツ1機に頑張りすぎだろ常考」
「最近ではEXAMシステムは対ニュータイプ用サポートシステムという触れ込みですけど元を辿れば火器管制システムを進化させた戦闘サポートシステムですからそのデータは国家機密です」
「つまりこのしつこさはマリオンちゃんのせいということでFA?」
「フルアーマー?」
「ちげーよ、めっちゃちげーよ。確かにギレンの野望ではFAガンダムって略されてるけど!」
「ギレンの野望ですか、昔黄金の国と言われる国の戦国時代を題材にしたゲームのタイトルに似ているような…」
なんでそんな事まで知ってんの?!マリオンさん絶対転生者だよね?!
あ、亀野郎(ディッシュの事)は絶対無理してでも落とす!ギレンの野望だとアレの索敵能力は半端じゃない、つまり逃げるには亀野郎の存在は邪魔だ!
「という訳で——トゥ!」
元々陸戦型ガンダムを改造してブルーディスティニー、そして陸戦型ガンダムの大本はRX-78ガンダム、つまり俺が翔べても問題ない!
「狙い撃つぜ!」
「航空機を狙うならビームライフルよりマシンガンの方が——普通に当ててますね」
「子供の頃から射的は得意だ。青猫頼りの昼寝大好きな眼鏡小学生を目指してたからな」
「なんですかそのまるで駄目な小学生は」
いや、やる時はやるんだよ。彼は。
ただ映画とかじゃないとやる気が起きないだけで、昼寝好きというだけあっていつもはやる気も寝てるのだ。
正直遊ぶ事が好きな子供は多いと思うけど昼寝が好きな子供って多くないと思う。
実際俺が子供の頃はネトゲーばっかしてたからなぁ。
「にしてもさっきから思ってたけどビームライフル撃つ度に腹が減るのはなんでだろう」
「……モビルスーツに栄養補給が必要なんですか?」
「いや、俺に聞かれても分からんって。正直俺がモビルスーツになった経緯すら分からんのに」
「そうですよね——上空を通り過ぎたミデアより落下物が見えた。多分モビルスーツです」
ゲ、マジですか、とうとう虎の子のご登場ってか。
そうか、よく考えれば俺が戦果を出せば出すほど有用な兵器である事を立証する事になるのか、なんという悪循環。
「戦うか逃げるか早く決めないとやられますよ」
「その通りだ——なっ!」
モビルスーツが降下したであろう地点に走る。
逃げることも考えたけど、相手の方が戦力、索敵能力両面で優れている現状だと逃げの一手では追い込まれる可能性が高い。
何より怖いのはモビルスーツとフライマンタの同時攻撃だ。
「それにモビルスーツ戦闘で負ける気なんてしねぇな」
「操縦じゃなくて肉体を動かしてる感じなんでしたっけ」
そう、今の俺はモビルスーツを操ってるんじゃない、身体がモビルスーツなのだ!だからウッディのミサイルが当たって痛かったんだよ!
まさか痛覚まであるとか思わんだろ。でもメンテでバラされても痛くないのはなんでだろ?モビルスーツ的麻酔状態なんだろうか?
「見えた。ザクIIが2機に陸戦型ジム1機か、なんという多国籍軍」
「ザクIIですが初期生産の無改造F型のようですから機動性、運動性が陸戦型ジムとは差があると推測されます」
そりゃそうだ、ザクアンチを目的に作ったモビルスーツがザクより低性能じゃやってらんないわー。
っと、そんな事思ってたら陸戦型ジムを主力にザクIIが支援か、マシンガンを構えて待ち構えるようだ。
「甘いわ!」
モビルスーツならできない、しかし俺だからできる。
全速力からの横っ飛び、逆に人間なら態勢が崩れてすっ転び、大怪我をするほどの勢い…だが。
「EXAMシステム、スタンバイ」
「カラコン挿入!」
「カラコン言わないでください!」
んー…この万能感は人間を駄目にしそうだ。
鋼の肉体が軽く、思い通りに動く。
見えない範囲も見えるし敵が何をしようとして何処を狙ってるかも分かる。
「これって明らかに本来のEXAMシステムの効果じゃないよな」
「恐らく私と同調しているのでしょう。私も貴方の身体を感じますから」
「なにそれ、エロいんですけど」
「エロくないです!」
それはともかく、なんというか…あれだ、エヴァのシンクロみたいなものか。
肉親ではないけど。
さて、そんな事を言っている間に、既に接近戦距離。
やはり身体ではないモビルスーツは動きがぎこちないな。まるで木偶人形だ。
「それでは1機、解体っと」
何処かの誰かみたいに不殺な訳じゃないがあまり迂闊な壊し方をすると爆発して自身もダメージを喰らうなんて真っ平なので両手と片足、頭部をビームサーベルで切断してザクIIを1機無力化完了。
本来後衛だったはずのザクだが俺が迂回してザクを狙い、陸戦型ジムもそれを阻止しようと間に入ろうとしたが付いて来れず撃墜となった。
そして今度こそ陸戦型ジム、面倒だから陸ジムな…を相手にする。
陸ジムはビームサーベルを抜き、俺と接近戦で戦う気らしい。
「が、それに俺が付き合う必要性が何処にある」
ベースが同じ陸ジムでもこのブルーニーさんは一味違う!マリオンさん分違う!
バックダッシュで距離を取り、シールドに収納していたビームライフルを引き抜き、引き金を引く。さあ『引』って感じはいくつでたでしょう。
じゃなくてこれをさけられず陸ジムのコクピットを見事貫通。
続いて上手く旋回出来ずずっこけてるザクIIに一発、命中。
「いやー初めてのモビルスーツ戦だったけど意外と楽勝だったな」
「連邦はモビルスーツを導入してまだ時が経ってませんから訓練不足だったようです。それに連邦の十八番である物量戦で言えばまだまだ序の口だと思います」
あー、戦争は数だぜ兄貴!ですね。分かります…あれ、でもこれ言ったのジオンの人じゃ?
物量戦か、確かにそうじゃなきゃボールなんて言う動く棺桶作らないよなーやってることがソ連か中国だと思うのは俺だけだろうか。一応一部高性能だからソ連か?
「しっかしカラコン挿入で動くと身体が痛い。筋肉痛…この場合は部品痛?みたいだ」
「機体の許容を超える出力で動くことも出来ますからそれの反動かと」
あれ、もしかして俺って勢いで脱走したけど修復できる目処なんてないからずっとこのままか?!
「それにしても…美味そうだ」
「え?」
「いや、なんかモビルスーツの残骸がとても美味そうにみえてなー」
テレビ番組で焼き肉とか見ると無性に食べたくなるあの感覚がする。
ちなみに食べたくなりすぎるので基本的に料理番組は即チャンネルを変えるようにしてたりするが…蛇足か。
「じゃあ食べてみます?」
「俺さ、マリオンちゃんは絶対天然だと思うんだ」
「ブルーニーさん自体が特殊なんですから食べられるかもしれないと思ったんです」
「まぁ普通モビルスーツに痛覚なんてないよな」
試すだけならタダか、では…食材(?)に感謝をこめて、いただきます。
陸ジムの腕をちょん切って人間なら口に当たる場所へ押し付ける…と——
「美味っ?!めっちゃ美味?!焼き鳥だ!焼き鳥!しかも炭火か」
「本当に美味しいですね!食べたことない味です」
「ああ、日本食ってマイナーなんか」
「え、焼き鳥って日本食なんですか?」
「そうだぞ」
「へー…私が知ってるのは寿司すき焼きカップラーメンですね」
「前2つはともかくカップラーメンって…」
あ、いつの間にか部品痛が直ってる…いや食事して直ったんだから治るか?とりあえず痛みは感じなくなった。
こうなったら気になるのはザクの味である。
早速一口…
「何で焼いたじゃこ天?いやこれはこれで美味いけど何でじゃこ天なんだ」
「あ、これはカップそばで食べたことあります。でもこっちの方が断然美味しいですよ」
カップそば…日本食、いや和食って無形文化遺産に認定されたはずなのに何でこんなに微妙な気持ちにされねばならんのだ。
ザクIIのパイロットが無事帰還して上げたレポートにはこう書かれていた。
『ブルーディスティニーがモビルスーツの残骸を食べていたんだ。何を言っているのか(以下略』
「と言うかマリオンちゃんも味覚共有されてるんだな」
「あ、そういえばそうですね」