第百四十五話
平壌以北からエゥーゴは撤退を開始。
何度か平壌を取り返そうと攻防を繰り広げたが軍配はロシア……というかはにゃーん様達に上がったわけだ。
そして養殖ニュータイプ達が自称していた死神の衣という呼称はエゥーゴとロシアを中心に広がっている。
マリオンちゃんはまだまだ名乗らせるには不十分とプリプリ怒っていたが、膨らませた頬をプニプニしてたらいつの間にか機嫌が治ってた。マリオンちゃんって意外とチョロインだよな。
このままじゃはにゃーん様にパトレイバーを作らないといけなくなる……まぁ未成年のうちは作らないって約束だからどんなに活躍してもダメなんだけどね。多分はにゃーん様は忘れてるんだろうなぁ。
ガンダリウムγをGETしたのはいいがちょっと問題が発生。
エメラルドから報告があったんだが解析は進んでいるが製造方法がさっぱりわからないらしい。
さもあらん、前から言っている通りブルーパプワの基礎技術は低い。つまり冶金技術も低いわけだ。
機構的なものや代替部品の用意程度ならなんとでもなるが新素材となるとお手上げ。
サイコタイプをガンダリウムγにするからまた先か〜……と思っていたがそれ以前の問題だったなんて……恥ずかしい。
「しばらくガンダリウムγが装甲材の主役になるのはわかってるんだから早く製造したいところなんだけど」
「製造元であるアナハイムからだとライセンス生産になっちゃいますから……」
「そうだなぁ……ん?製造元がアナハイム?」
ちょっと待てよ。
ガンダリウムγって元々アクシズの技術だよな。
マハラジャは何か知らないか?
「いえ、知りません。そのような開発はされていなかったと思います。ノイエジールの初期型はドズル様の命で開発いたしましたが」
ゼロ・ジ・アールのことですね。わかります。
Iフィールド発生装置の設計図とか……
「持っていたら既に渡しています」
ですよねー。
と、話を戻すが繰り返すがガンダリウムγはアクシズ、ひいてはジオンの技術なはず。つまりアナハイムがその技術を手に入れた経緯は2つ考えられる。
1つはシャアがエゥーゴに渡し、エゥーゴがアナハイムに渡した。
もう1つは眉なしか紫ババァかは知らないがジオンがアナハイムに売った。
後者の派生でジオンとアナハイムが共同開発という可能性も考えられるが、この場合数年は軍機として連邦系組織への売買は制限されると思う。さすがにジオンが本格導入する前にエゥーゴに売っちゃったらマズイと思うんだ。
「という訳でどっちにしても聞くのが早いってことで連絡入れたわけよ」
『どういう経緯で私に辿り着いたかは知らないが、ガンダリウムγは私が研究させていた』
ドヤ顔うざす。
それは置いとくとして……なるほどねぇ、原作も元々は紫ババァが研究しててオデッサの遺産と一緒にアクシズに送ったのかもね。
多分ネオ・ジオンはオデッサの遺産を活動資金にしてたんじゃないかと勝手に思ってる。
「それを質として持って行かれた、と」
『……その通りだ』
しょんぼりざまぁw
「それでなんだけど製造方法を俺達に教えてくんない?」
『良かろう……なんていうと思っているのか。そもそも権利はアナハイムに——』
「エゥーゴからリック・ディアスというアナハイムが製造したであろうガンダリウムγが使われたモビルスーツをほぼ完全な状態で鹵獲することができている」
1機は腕がなかったけどコクピットが貫かれたもう1機から取れば完全な1機になったからな。
マリオンちゃんとはにゃーん様に感謝。
『……対価は』
「αタイプの設計図とロシアからの依頼であるαタイプ700機を」
連邦の下部組織からとはいえ北朝鮮を奪えたことにロシア甚(いた)く喜んでいて、その勢いでモビルスーツの追加発注がされそうなのだ。
まだ70%ほどしか納入してないのに更に追加注文とか勘弁してくれって感じなんだけどな。
『……いいだろう。しかし漏洩元が私であることは——』
「もちろん漏らさないさ」
『ではデータはサイド5に送ればいいな』
「ああ、頼む」
これでガンダリウムγが手に入った。
軍機っていいよなぁ。
正式にライセンス生産を申し込まない限りは無断製造しても特許に申請されてないから合法だからな。
と言うか軍機の技術はかなり旧式化しないと特許申請しない。つまり盗み放題なのだ。
……ぶっちゃけリック・ディアスは新しい技術なんてほとんどなく、既存の技術ばかりだからガンダリウムγの価値でしかない。
多分原作のリック・ディアスよりスペックは低いだろう。ネモもそうっぽいし。
ネモといえば、エゥーゴが今前線で使っているのはガンダリウムγが使用されていないものだけどもしかしてもうすぐ改修されて出てくるかも。
ガンダリウムγの設定からして加工がし易いらしいからドムIIやハイザックなんかも改修するのか……いや悪徳企業アナハイムのことだから改修じゃなくて俺達と同じようにリック・ディアスのデザイン変更して売りつけるかな。
ティターンズ市場を奪われないようにこちらも対応していかないと……いい加減兵器市場以外は恐ろしいほど差がある。
「そういえばアムロとメイはどうしてる?しばらく休暇のつもりでサイコミュを好きにさせてたが……」
「今はサイコミュをもっと簡略化してオールドタイプでもファンネルを動かせるようなものを開発していますね」
準サイコミュかよ。
なかなか時代の早取りしてんな。
「ナタリーさんも手伝っているようですけど、どうします?」
「予算を組んで正式企画にする。アムロ達にもそう伝えてくれ」
「わかりました」
ただねぇ、準サイコミュってニュータイプの価値を相対的に下げちゃうんだよねぇ。
国外には売らないでおくか?でもそうなるとあまり必要性を感じない……まぁ多分ティターンズ、正確にはオーガスタ研究所かジオンがそのうち開発するはずだから早いか遅いかの違いでしかないか。
連邦とロシアの睨み合いは本格的な殴り合いに変化してきた。
それは連邦が威力偵察をしてロシアの戦力が大体把握できてきたが起因している。
ただし、殴り合いは当初の予想を覆し、ロシアが優勢に戦っていた。
1番の要因はエゥーゴが抑えられたので戦線が1つなくなったに等しいため、戦力を集中させれたことが大きい。
旧北朝鮮を放棄したエゥーゴに対して韓国は盛大に批難。
一部政治家達は場合によってはロシアに味方するとまで言っている。
韓国は相変わらずブレないな。今ロシア味方発言なんかしたら後が大変なのに……まぁ宗主国・中国が一部とはいえロシアに味方している現状、どちらに味方しても韓国らしく見えてしまう部分もある。
「ロシアからハマーンさん達を今度は北京攻略作戦に使いたいと言ってきてますけど……」
「却下、さすがに北京は無理」
数も違えば距離も違う。
北中国とロシアが連携してもたぶん無理、戦線が減らせたんだから大人しくしとけ。
「それよりティターンズと接している国境に配置するように提案しておこう。ティターンズにそれを漏らせば動かないだろうさ」
「それで実質戦線は1つになるわけですね」
どこからも忘れられてる国モンゴルは北中国が出来た際に飲み込まれてるし、カザフスタンはソ連時代から続く縁で友好関係なため、所属は連邦なのに信用されていないが敵ではないので攻めるわけにもいかないという実質中立扱いになっている。
カザフスタンからロシアに結構な資源が輸出されてるんだが、それの追求は戦争が連邦に有利になってからということだろう。
現状追求しようものならカザフスタンがロシア側に参戦するのはわかってるからな。
「とはいえ、西の戦線が抜かれるようなことがあったらモスクワまで直ぐだから油断できないな」
「兵站の問題で死神の衣の派遣が少数になってるんですからロシアに兵站を負担してもらい追加派兵したらどうでしょう」
「……どう思う」
最近外交のほとんどを任せているマハラジャの意見を聞いておく。
「ロシアにどれだけ入れ込むのかが問題です。最終的には連邦が勝つことは間違いありません。それがわかっているのにこれ以上深入りは危険ではありませんか」
言いたいことはわかるが負け戦こそ面白いのよ!……なんて何処かの傾奇者みたいなセリフは言わないけど、負け戦こそ力の見せ所ではあると思う。
勝ち戦に傭兵なんて必要ないのだ。実際連邦からは参加キャンセル依頼はされているが参加依頼はされていない。
そりゃ自分達だけで勝てる相手にわざわざ傭兵を雇うわけない。
「ふむ、言われてみれば確かに」
「つまり俺達が今やるべきはロシアの独立をさせるか、できるだけ延命させること、そして何より大事なのは俺達が負けないことだな」
「私達やナンバーズではありませんから負けてもそれほど問題にならないかもしれませんが、これから仕事がやりにくくなるのは間違いありませんね」
でも死神の陽炎の収益ってそれほど高くないんだよなぁ。
実績積めばもうちょっと改善されるか?
「ならば追加派兵に賛成です。規模は100人ほどで第1陣と合流させて再編するべきかと。精鋭全てを予備戦力にしておくのはもったいないです」
「わかった。ついでにシーマ様にも行ってもらって再編と観戦してもらおう。第三者から観た戦訓もあると思うからな」
「ではそのように連絡しておきます」
このまま拮抗できればロシア独立の可能性は高まるが……今は日本は後方支援に留まってるが、エゥーゴに増援を出すべきだという勢力が出てきているのが気になる。
また韓国が売国奴に金と女をあてがったか?