第十五話
「ブルーニーさんブルーニーさん、人と交渉するのが思った以上に面倒です」
「知らなかったけどマリオンちゃんは人見知りだったんだなぁ」
ジオン軍基地に行くと色々文句言われたけど手土産にジム改から奪ったビームライフルを渡してやったら超ごきげんになった。
どうやらビームライフル自体は連邦軍の前線で使われるようになったらしいけどジオン軍は一方的に敗北を繰り返し、統制された後退をするだけで精一杯で鹵獲出来なかったらしい。
もしかしてこれでゲルググやアクトザクなんかのビーム兵器導入が早まるかもしれない。
…あれ?もしそうなったらア・バオア・クーじゃなくてソロモンで決戦するんじゃね?そうなるとソーラーシステムでジオン軍は原作以上の大ダメージを受けることになる。
いや、ギレンはひょっとすると連邦と同じようにソーラ・レイの使用を考えてたからア・バオア・クーで決戦したのなら原作通りの流れのままという可能性もあるか。
何にしても連邦のモビルスーツ開発は加速してるんだからジオン軍も加速させないと一方的になりすぎてデラーズ紛争とかネオ・ジオンとかが起こせないほど大差が生まれたら困る。
そういえばジム改の味はタルタルソースだった。なんでタルタルソース単品なんだよ。マリオンちゃんが微妙な顔をしていたのが今でも印象的だ。
カキフライとかアジフライとか寄越せよ!!ちなみに俺はどっちもソース派だけどな。
それにしてもしまったなぁーこんなことならジオン軍にジム改を1機ぐらいプレゼントすりゃ良かった。
「ま、何にしてもマリオンちゃんの交渉で食料とギニアスの居場所も分かったしokok」
「その代わりもう2つ基地落とすことになっちゃいましたけどね」
「俺達の補給ということもあるから問題ない。BD達との戦いで随分燃料使っちまったからな」
おかげで5000%を超えてた燃料が3400%ぐらいまで減っていた。
長期な安全策より短期な通常戦の方がよかったかな。相手がエース級ばかりだったから結果論で、同じような事があったらやっぱり同じ事するけど。
ちなみにシローさんとケンタッキーさんはいつもやってるビームサーベルで作った簡易牢獄に放り込んでいる。
いやー、便利だな簡易牢獄。課題はしばらく放置しないとビームの熱が篭って人間が入れないことぐらいだ。
もっともそれも排熱ダクトから冷気が出せると分かって解決だけどな。
どうやって冷気を出せるかは聞くな、俺はもちろんマリオンちゃんも分からないんだから。
「捕虜のお二人に早く合流しましょう。一昨日から食事してないはずですから」
そう、実は捕まえて既に2日経っている。
すぐに帰る予定だったんだがジオン軍のお偉いさんが真面目な人で苦労した。
実はビームライフル以外にも俺達の身体を分解しない程度に解析もさせてやってやっと解放されたんだが…多分ジオンの研究者は意味が分からん!と絶叫するハメになるだろうと思う。
「お二人共元気ですかー?お食事を持ってきたので受け取ってくださーい」
「食事!って嬉しいけど落とさないでくれぇ?!」
「隊長危ない!」
こらこらマリオンちゃん、缶詰を人向けて放り投げちゃいけません。いい加減落差7mぐらいあるんだから。
「あ、無重力じゃないんでした!」
やっぱりマリオンちゃんは天然だ。しかも随分投げてから気づくとか…お二人ともご愁傷様です。
「俺達はいつちゃんとした捕虜として扱われるんだ」
「えっとー…連邦軍の基——」
「後3日ほどだ。それ以降は移動が続くから1週間はゆっくりできないかな」
そう言い残し、マリオンちゃんを回収。
「マリオンちゃん、駄目でしょー連邦軍の軍人さんに連邦の基地攻撃するとか言っちゃ、脱走とか抵抗とかされたら面倒だし必要以上に恨みは買いたくないしさ」
「すいません」
あら、しょんぼりマリオンちゃんカワユス。
人間の体……っぽいものを取り戻したんだからはしゃぎたい気持ちは分かるんだけどね。
「連邦基地ってジオン基地と比べたら豪勢だよなー野営地っぽさはあるにしても格納庫の数が凄い。…あ、よく見るといくつか宿舎っぽいところもあるな」
「基盤の違いってのを見せつけて———敵意?!右へ!」
「———ッ!」
マリオンちゃんの声に反射的に反応して着地とか何も考えず右へ跳ぶ。
「ガンタンクと同射程かそれ以上の狙撃用ビームライフルだと思われます。センサーによる補足は不可、ただ弾道から逆算で方向を算出」
ガンタンクの撃破率が悪かったから遠距離戦法に切り替えたのか?やってくれる。
大した出力だな、多分ジムスナイパー…それともギレンの野望とかに出てくるジムスナイパーカスタムか?さすがにジムスナイパーIIはないと思いたい…ジオンのために。
「空に敵です、フライマンタやデブロックのようです。どうやら私達の奇襲を察知して飛んで待っていたのでしょう」
こうなると今までのような一方的な戦いは不可能か、ただデブロックとフライマンタがいる場合はなぜかフライマンタが低い軌道を飛ぶので落としやすいのは助かる。
航空機に有効な武器はバルカンなんだけど胸部バルカンは文字通り胸部に付いているせいで自分の正面にしか有効ではないので実質頭部バルカンのみだ。
「俺達の慌てようは相手にも伝わっただろうから狙撃手が有効なのを立証させてしまったな。正直マリオンちゃんがいなかったらアウトな事は間違いないし」
「ですが威力も精度共に今までのモビルスーツとは一線を画す性能ですから恐らく大量生産には向かないと思います。それに距離が開ければ開けるほど気候の影響も強く出るのでそういうデータを手に入れやすい防衛以外では使い勝手が悪いと思います」
「なるほどね」
無駄弾を出さないようにフライマンタ釣りを楽しんでいるがあまりに数が多い、入れ食い状態なのはいいとしても相手の攻撃も入れ食いだから困る。
「しっかしミノ粒散布って便利だな。追尾性があるミサイルがただのミサイルになるんだからさ」
「ですね。以前のままだったら被弾はもっと多かったでしょうね」
こりゃジオンが調子に乗るのも分かる。
「マト○ックス!もしくは某フィギュア金メダリストのイナバウアー!」
ミサイルの回避も慣れてきてこんな悪ふざけもできるようになった。
ちなみにフィギュアを再現するためにホバー移動でしている。
「フィギュア?そういえば最近日本でザクのフィギュアが販売されるようになってジオンから著作権の抗議が来たとか言ってたような…」
ちょ、そのフィギュアの意味が違うし、後半の話題は俺達の存在すら危ぶまれるって?!
フライマンタの数が減り、デブロックは超高度によって撃墜できなかったが恐らく爆弾が無くなったようで撤退を開始。
入れ替わるようにモビルスーツの姿が…おや、ジム改さんがいっぱい。21機もいますよ。
量産体制整っちゃったみたいです。
しかも明らかに学習型コンピュータのせいで良い反応してるし…格闘はそれほ——ッ?!あぶね、狙撃超危険。
「狙撃は砲撃よりかなり厄介だな。カラコン挿入してなかったら俺だけじゃ対処できないし」
「もしかしてこれからずっと狙われ続けたり…」
「うわーそれないわー鬱だわー」
確かに有効な手段だろうとは思うけどごめん願う!もしそんな事になったら契約も何もかも捨てて海に潜るぞ。さすがに水中まで追いかけられまい。
「これで8機目っと、狙撃で枷が付いてるけどそれでもなんとかなるあたり強いんだねー俺達」
「調子に乗ると足元掬われますよ?」
「らじゃ〜」
そういや燃料補給だぜヤッターとか思ってたけどこいつらタルタルソースなんだよなー微妙な気分だ。
「………5機ほどジオンにお土産にしましょう」
どうやら俺の考えていたことがわかったらしく微妙な顔をして遠ざける方針を打ち出してきた。
まぁフライマンタがいっぱいあるから——
「あ、フライマンタがアジフライなんだからタルタルソースが合うじゃないか!」
「やっぱりジオンのお土産は2機ぐらいでいいですよね」
掌の返しが瞬速すぎる。
基地占領、人間用の食料とか俺達の食材とか結構いっぱい確保できたけどどうやって持ち運ぼうか悩んでたらマリオンちゃんが一言。
「私がミデアを運転しますよ」
と簡単に解決してくれました。
そうだよな、人間っぽい身体手に入れたんだからそういうこともできるんだよな。
そんな訳で輸送手段獲得。
不思議燃料タンクがあるんだから4次元コンテナ的なものができてもいいと思うんだけど実装は今の所ない。
何気に俺達の燃料タンクから燃料を取り出せる事がわかったから補給には困らない。メンテは別だけど。
「でも識別信号とか面倒だな。いっそ一時的にでもジオンの傘下に入れてもらうか、攻撃されたらこちらも対応しない訳にはいかないし」
「それもありかもしれませんね」
ちなみに正体不明の狙撃手は逃げられました。と言うか途中から狙撃が無くなったからそう思ってるけどまだ近くにいるかもしれないけど放置。
移動中に狙撃されたら嫌だけどミデアで移動するんだから攻撃されにくいだろうし…多分。
「結局ジオンへのお土産はジム改4機ですけど…そんなにいるんですか?」
「シロー達を引き渡すなんて言うあっちからしたら意味分からない押し付けもあることだしお土産は多いほうがいいだろ」
「それは、まぁそうですね」
ぶっちゃけギニアスがキレないだろうか?というかこんな事でシローとアイナはくっつくのか?ま、マリオンちゃんのお願いだからやってるんであって結果はどうでもいいけどね。
まだ基地を1つしか落としてないけど一旦ジオン基地に帰る。途中でシローとケンタッキーの家(笑)によって様子伺い。
二人共割りとリラックスしてピンピンしてるっぽい。
半分地中だから涼しくて過ごしやすいらしい。
食料や日用雑貨を渡して、再びジオン基地へ。
ミデアで近づいたから警戒されたけど事前に通達してたので攻撃はされなかった。
ジム改を渡したら罠じゃないか疑われたけど分析した結果本物と分かった時には司令が目を回して倒れたらしい。割と人が良さそうな司令だな。
すぐにキャリフォルニアベースに送られるらしい…あまりその名前を出して欲しくないなー、なんか罪悪感が…それに俺達がした所業を知られると面倒なことになる。
仕方ないよなーあの頃はまだ余裕がなかったんだ。
ぶっちゃけその分はもう働いて返した気もしないではないけど。