第十四話
『不束者ではありますが、これからよろしくお願いします』
「何となくですけど私であって私ではないですね。彼女」
「俺と一緒に居た時間だけ変化があったんだろうけど…うん、なんか悪いね」
「いえ、気にしてませんよ。むしろ色々知ることができたので嬉しいです」
『そちらの私は楽しそうで何よりです』
スーパーマリオンシスターズ、うちのマリオンちゃんがマリオであっちのマリオンがルイージ…なんか色々やばいから伏せ字にすべきだったか?
ただ一言言わせてもらえれば……タヌキマリオンちゃんが見たいです!拝みたいです!頬ずりしたいです!むしろモフモフしたいです!
一言じゃないって?いやいや全部合わせての一言だから。
「さて、俺達がモビルスーツを食べるって事は理解できたと思うが…心構えは完了した?」
『あの…その……初めてなので痛くしないでくださいね?』
…
……
………
ぜっっっっっっっっったいマリオンシスターズって天然だろ。じゃなかったら腹黒だ。
モビルスーツが食われるの初めてなのは当然だろ!というかモビルスーツがモビルスーツを喰うってのも前代未聞だってのに!
なんだろう、マリオンちゃんは凄く可愛い、可愛いんだけど…マリオンちゃんって一人じゃないとすっごく疲れそう。
「な、なんだか私も緊張してきた」
うん、やっぱり一人でいいと思う。
よく二次小説とかラノベとかでハーレムとかやってるけどさ、俺には無理。
三人寄れば雑音器だっけ?…まぁいいや、とりあえず女性が三人集まれば男はハブられるのが関の山だと思うわけよ。
「何にしても…いただきます」
『ど、どうぞ』
…食べづれーな、おい。
相手に意思があるとこれほど食べづらいものなのか…いや、やっぱり相手がマリオンちゃんと同じ存在だからか…とは言え据え膳食わぬは男の恥(二重の意味で)
では、一口——
『ヒャア?!…ンァッ…ンン!…』
凄く食べづらいです…てか艶かしい声出さねぇでもらえますか?俺得ではあるけどなんだがその反面とっても罪悪感が…
身体は不能だけど精神は盛り真っ盛りだかんな!誰だよ身体に精神が引っ張られるなんて嘘考えたの!
壮絶な虚しさだけどな。
しかもBDの味は『かき氷』のブルーハワイの原液っぽいけどな!
何でよりにもよって原液、せめてかき氷込みにしてくれよ。甘さを通り越して苦いよ。
女の子は甘くて苦いと割り切ろう。
「わ、私エッチな声出すなぁ!」
『そんな事言われ——ああっ!ちょっと待っ——やめ——ッ!』
俺、生身だったら絶対前屈みで動けなくなってた自信がある。
痛みで泣き叫ばれるのは精神的に堪えるけど、これはこれで堪えるぞ…身体も答えれたら良かったんだけど。
『ちょ、ちょっと休憩を——』
「だが断る」
『アッーーーー』
色々ありましたがマリオンを吸収(喰うってなんか言い辛い)しました。
「ブルーニーさんの変態、鬼畜、家畜、下僕」
「後半なんか違わね?変態なのも鬼畜なのもロリコンなのも紳士なのも間違いないけどさ」
「…いくつか言ってないのが混ざってる」
「まぁそれはいいとして…なんでマリオンちゃんは実体化してるのかな?」
「もう一人の私を吸収してできるようになったみたいです。ちなみに身体はミノフスキー粒子で構成されてます」
「ええぇー」
ミノ粒って確かに不思議粒子だけども、なんで実体化してんのよ!俺って前例があるけど実体化って…
「でも感覚的に分かるんですけどブルーニーさんからあまり離れる事ができないみたいですね。後、私は不死身みたいですよ。妙なところで人類の夢を達成しちゃいました」
マリオンちゃん脳天気すぎる件について。
別に問題があるわけじゃないんだけど…俺もそのうち実体化できるのかなぁ…なんか感覚的に無理な気がするな。
「ところでマリオンちゃんはいつまで裸なのかな?俺的には役得だけど」
「え?———ブルーニーさんのエッチィィィ!!」
モニターを叩かれるけどあんま痛くないぞ。
と言うか今まで一緒に居たけどその間ずっと裸だったんだから今更な気がする。
そう、今までマリオンちゃんは裸でずっと俺と一緒に行動してたんだ。裸で…繰り返す、は・だ・か・で!
最近俺、下ネタ多くね?だが後悔はしてない。
「それでその服もやっぱり」
「うん、ミノフスキー粒子でできてるよ。オシャレし放題です」
ああ、うん。ブルマとかスク水とか巫女とか……いかんいかん、煩悩が止まらないとかどっかの丁稚か俺は。
それにしてもマリオンちゃんもやっぱり女の子だなぁ、オシャレがしたいなんて。
「そういやBDは後1機あんだっけ、そっちも吸収したらどうなるんだろ」
「実体化の次ですか、んー……巨大化とか?」
一瞬新世紀なエヴァンの零号機パイロットが思い浮かんだ。さすがにあのサイズはモビルスーツの俺でも無理だわー何がとは言わないけど。
「でも実体化って便利ですね。ユウさんやシローさんを拘束できましたし、これからは人と取引できますよ」
「それは嬉しいんだけど——いやなんでもない」
むう、マリオンちゃん独占したかったけど…これからのことを考えると良いんだけど…実体化したってことはうちの嫁盗られる可能性ができたってことか?!
これが一部で流行ってたNTRか?!俺、そういうの回避してたんだけど。
とか痛いことを考えてみる。
いやーマリオンちゃんがある程度自由を得れたのは良い事だ。
まだ14歳…子供だもんな、ひねくれた大人にはなって欲しくない…あ、絶賛戦争中でその真っ只中にいるんだっけ?無理かなー。
「ブルーニーさん、今度はブースターが増えてませんか」
「本当だな。これはジム改の影響かな」
ジム改の機動力自体は俺達には到底及ばなかったがブースターの数が多くて回避性能だけは上回っていた。
さすが後期量産型、ザクどころかドムでもきつくなりそうだぞ。大丈夫かジオン、主に俺達のせいだけど。
「それは置いといてまずは捕虜の処理をしないとね。マリオンちゃん話し合った通りお願い」
「了解!」
ちなみにコクピットから出す時はもう一度シェイクしたんで気を失ってたから捕縛余裕でした。
「えーっと、こんにちわ。私はマリ——ア、です。マリア、それではまず意思確認します」
なんか超不安だ。
マリオンちゃん大丈夫か?本名を名乗りかけたぞ。
俺の事はある程度バレても問題ないけどマリオンちゃんは本体が人間でまだ生きてるんだから迂闊なことしちゃいけないって念押したのに…
「では、死にたい方いますか。私が介錯しますよ」
あれ?俺、そんなこと頼んでないよ?
「侍なら潔く切腹を——」
「マリアちゃん?何を言ってるのかな?今時そういうのは流行らないと思うなー」
「この前日本に寄った時にテレビでやってました」
時代劇かよ。
切腹シーンって情操教育上悪い影響与えますね。
本当は俺の存在は隠して不意打ちに備える予定だったのに。
「いいから本題」
「了解。そこの日本人っぽい人は捕虜、後は自由なんですけどついて来たい人はいますか?あ、一応言っておきますが命の保証は最低限しますよ。最低限と言っても不測の事態が無い限
りって意味です」
マリオンちゃんに交渉は任せないほうがいいような気がしてきた。でもやっぱり直接会える分、人との交渉は俺より向いてる……はずだ。
「私達とついて来たい方は頷いて解放して欲しい方は横に顔を振ってください。それと私は南極条約を遵守するつもりですけど命を狙われたらさすがに抵抗しますよ。命は大切に、ね?
」
俺をチラ見しながら脅すとかマリオンちゃんが黒化していってる気がする。
ついでに言うとマリオンちゃんはジオン軍のパイロットスーツを着てる…んだけど、なんなんだあのミッチミチ感は?!お父さんそんな淫らに育てた覚えありません!って言ったらこ
れがジオンから配給されたスーツなんだって。
ジオン軍が公然とセクハラをしている件について、7割ぐらい〆たい気分になりました。残り3割は感謝ですがなにか?
「じゃあそこの黒人さんは付いてきて筋肉マッチョな女性は解放、微妙にナルシストっぽい人も解放でいいんですね」
真面目に考え事してたらいつの間にか終わってた。しかもケンタッキーさん付いてくるんすか、臆病者なのに忠誠心高いな。
そしてマリオンちゃん、何気に失礼だ。
「手錠の鍵はここに置いてので私達が居なくなったらご自由にお使いください」
マリオンちゃんはシローとケンタッキーを左手に、マリオンちゃんは右手に乗りコクピットへ運ぶ…フリして実体化解除。
「ただいま戻りました」
「おかえり、お疲れ様」
「疲れました。でも地球って凄いですね。空とか風とか空気とか土とか、コロニーと何もかもが違います」
俺は逆にコロニーを知らないから当たり前にしか感じないけどやっぱコロニーって窮屈なのかね。
「地球にいる人が地球に居たい気持ちがよくわかります。ギレン・ザビも実は地球を取り返したかったのかもしれませんね」
いや、ギレンがそんなこと思ってたとは思えないんだけど…コロニー落としなんて地球破壊級の作戦したんだしさ。
「それでこれからどうします。通信によると私達を抑えていたBDとその精鋭が全滅させられてジオン軍基地を攻撃していた連邦軍に退却命令が出たようですから一度顔を出しておきます
?」
「そうしようか、ただお荷物はどうしようね。人間用食料もいるし、連邦軍人だし」
「お荷物は例の場所に隠して食料は確か連邦軍基地に…あ、爆撃で吹き飛ばしたんでしたっけ」
「食べ物は粗末にしたらいけないって習わなかったのかねぇ」
「本当ですね」