第百五十三話
とうとう12月に突入。
寒さが本格化してきた今日このごろ……ニューギニア特別地区は今日も暑いけどな!
「これで少し気温が下がってるってんだから嫌になる」
「でも今のロシアよりはいいんじゃないですか、砲弾の雨とか当たったら痛そうですし」
まぁな。
いまだに連邦のモスクワへの飽和砲撃は止まずにいるし、有効的な対策が立てられないでいる。
サイコタイプ寒冷地仕様が完成してからは死神の衣が過労死するほど出撃させられ、撃退はできても撃破はできない。
タンクタイプに接触する前に前衛部隊が足止めをしてタンクタイプは後退するからな。
昔俺達もやられたが有効な反撃手段は射程の問題でないんだよなぁ。
しかもスナイパー部隊が乱戦中狙ってくるもんだから3人もやられてるし……まぁ無駄に出撃させられてるおかげで手当てがかなりついてウッハウハなんだけどさ。
そして戦争の恩恵を1番受けているのはオーストラリアだろう。
ニューギニア特別地区内のブルーパプワ工場は戦争特需の対応に追われて日用品の生産が低下しているが、その分とドップブースターのライセンス生産をオーストラリアに振り分けているので戦後復興に役に立っている。
今熱いのはやっぱり朝鮮半島の戦いだよな。
モビルスーツ単体で増援に行けるムラサメ、じゃなかったフジの存在は俺の予想を裏切って活躍しているようだ。
何がって旋回が早いんだよ。巡航はウェイブライダー、旋回時はモビルスーツで行い、また巡航はウェイブライダーという方法だと戦闘機では行えない旋回が可能になる。
まぁバルカン武装が売れるようになって俺達的には美味しいけど。
ロシアと韓国は日本の九州まで占領したいと思っているらしく、攻撃の手は緩めていないが釜山すらまだ落としせていない現状取らぬ狸の皮算用だ。
日本→釜山はほとんど海なんだからズゴックIIが大活躍……
「と思ってたんだけどねぇ」
「連邦水泳部参上!」
そう、連邦がしゃしゃり出てきて激戦を繰り広げている真っ最中だ。
連邦の水泳部が弱いのは結構有名なため、汚名返上すべく意気込んでいたんだが西戦線では水泳部の活躍できる場がない。ならばと東戦線に援軍として駆けつけることになったようだ。
「しかも強くなってるし」
モビルスーツこそアクアジムIIと変わりないが、パイロットの腕は格段に良くなっていてむしろ不慣れなロシアの水泳部を次々撃破している。
こうしてエゥーゴと日本のシーレーンは確保されたわけだが……
「エゥーゴは連邦に助けられた形になったわけだ」
「悔しがってるでしょうねー、ティターンズは活躍してるのに自分達は惨敗した上に親に尻拭いさせてしまったんですから」
軍閥である関係上、戦場の失点はかなり痛いよな。
このままだと戦後の影響力が心配されるが……まぁアナハイムがスポンサーだからどうにかするだろう。
実際、ガンダリウムγ製ネモが大量にエゥーゴへ売られたのはわかっている。
それにしてもその生産力、羨ましいぞ。
「そういえば以前言っていたマリオンズブートキャンプ士官コースの卒業率が低かった問題ですが、いきなり士官コースにすることでかなり卒業率が高くなりました。でもニュータイプレベルは育成コースほどの質は保てません」
指揮能力を取るか、ニュータイプ能力を取るか選択しないといけないわけか。
「問題は指揮官にする人の選考ですね。覚醒前から強い人を選んで万能タイプにするのか戦闘能力を求めず指揮官として重視するのか」
つまり落ちこぼれを指揮官に専念させるか戦って踊れる養殖ニュータイプ(劣)を指揮官にするかということ。
難しいところだ。
「とりあえずそれぞれ育ててみてくれ、失敗してもどうにか使い道はあるだろうしな」
「昔なら厳しいスケジュールが必要でしたけど、マリオンズの数も充実して、更にもうすぐ増えますから人数的に余裕がありますからね。チャレンジするのはいいことです」
そうか、もう今年も終わりが近いのか。
マリオンズがまた増えるんだな、デートの回数が増えるぜ。
ちなみに火星へ送り出すのは来年の夏頃を目処にしている。
「大変なことになったよ!」
慌ただしく入ってきたのはシーマ様だ。
「女の子はエレガントに」
「ジオンが内乱を始めるようなんだよ!」
マリオンちゃんのネタをスルーするとはいい根性だ……って。
「マジか、なんでこのタイミングで内乱?もちろん眉なしと紫ババァが、だよな?」
「ああ、どうやら連邦の苦戦を見るとしばらく戦争が続きそうだと読んで、この隙に国内の膿を出そうって腹らしいね」
「更に言いますとジオンが平穏にしていると連邦が安心できないため、アナハイムを通して内乱をするよう圧力を掛けたようです」
どっかの似非主人公が「また戦争がしたいのかよ!アンタ達は!!」とか言ってそうな戦乱の世だねぇ。
カオス過ぎる。
「切っ掛けはギレン閣下がキシリア様の本拠地であるグラナダを家宅捜索するように指示を出したことです」
「それはまたなんというか……」
露骨だな。
叩けば埃が出るのはお互い様だろうに……
「グラナダで行方不明者が多数出ていて、犯人が一向に捕まらないという点から紫ババァがそれに関与してるんじゃないかと言うのが捜査理由だね」
ああ、ニュータイプ研究関連のことか。
自業自得と言えなくもないけど、これがなかったところで別の口実になるだけだろうがな。
「それに抵抗した結果が内乱か……衝突は?」
「まだ本格的にはしていません。目立つのはグラナダ内部にいるギレン閣下の派の者が狩られているようです」
「それとアナハイムから紫ババァへ少なくとも2000ほどドムIIが売られていることは掴んだ。ご丁寧にも例の新装甲材でね」
ガンダリウムγ製のドムIIか、しかしノイエ・ジールを保有している眉なしに勝てるの……か……おや、そういえばララァの乗っていたニュータイプ専用ノイエ・ジールは紫ババァのところにあるのか?
ニュータイプ兵器は紫ババァの専売特許なところがあるからな。
つまり、ノイエ・ジール同士の衝突がありえるのか……食いに行きてぇー。
久しぶりに宇宙海賊レインボーゴースト復活するかねぇ。
「ちなみに両軍から蒼い死神、死神の鎌は参戦依頼はありません。おそらくアナハイムが手を回したんでしょうね」
まぁアナハイムからしたら俺達がどっちについても美味しくはないからな。
俺達がどちらについても兵器を十分に売り込む前に決着させる可能性が高い、そうなると連邦の狙いであるロシア解放作戦の邪魔にならないようにしたのに、下手したら一枚岩になって盤石な体制を築かれるなど誰もが不本意なことになりかねない。
「死神の衣に関しては」
「特に何か言ってきてないけど養殖ニュータイプを派遣すると厄介なことにならないかい」
さすがにないと思うけど……戦場で死んだことにして試験体にされる可能性もあるか、特に紫ババァの方は。
「アナハイムは今回の内乱で宇宙仕様モビルスーツの信用性とノウハウを手に入れようと考えているのでしょう。宇宙で大きな戦いはソロモン決戦と宇宙海賊討伐程度しかありませんでしたから」
そういや独立戦争時はほとんどが地球で戦っていたからほ宇宙仕様のノウハウはそれほど蓄積されてないのか。
模擬戦は所詮模擬戦だしな。
「そうなると俺達も宇宙で正規の戦いをしてみたかったな」
「裏稼業を復活させて今回の内乱に乱入でもするかい?」
シーマ様も同じことを思いついたか、もっとも半分以上冗談みたいだけどね。
んー……今回はやめておこう。
ロシアの支援で手一杯だし、いくら増やせるからって養殖ニュータイプが戦死している今は無理して戦線を増やす意味は無い。
それより問題なのが……
「ジオンに回していた兵器製造は——」
「キャンセルになったね」
NOー!!
せっかく余裕が出てきたのに——
「おい、ちょっと待て、確かジオンからザンジバル級が」
「まだ1隻未納ですね」
ゲッ、今から1隻仕上げるとか無理じゃね?
どこも一杯一杯で余裕なんてないだろうし……マジで困った。
「それにブルーパプワ社員達もそろそろ限界ですよ。他国では普通の労働程度ですけどニューギニア特別地区では過労もいいところです」
どうにか、どうにか……
「なりませんね」
「なりませんな」
「ならないねぇ」
ごふ、待つしかない——ん?そういえば……
「そうだ。いい手を思いついた!」
「……嫌な予感しかしないけど一応聞こうじゃないか」
「リリ丸を売っぱら——」
「言わせねぇよぉ!」
えー、良い案だと思ったんだけどなー。
「私達の家を売ろうなんざ、誰が認めるか!」
まぁ気持ちはわかるけどさ。
シーマ様に裏切られたら困るから売らないけどね。会社の信用よりシーマ様の信頼の方が大事だから。
「ジャジャ丸はサイコミュ搭載している上に前線で活動してるし……」
リリ丸は今、公用車的な立場なんだよね。
幹部が揃って動く時に使うことがメインになってる。
近いうち現代改修する予定だからこんな扱いなんだけどね。
贅沢な公用車だな……これが独裁じゃなければ叩かれてるところだ。
「とりあえず……廃品回収部の尻を叩いて資源を多く確保、来年は今年以上の資源の高騰間違いなしだな」