第百五十二話
俺は何も見なかった。
うん、何もなかった。
「戦わなきゃ、現実と」
「もうアレほどの重度感染者はお腹いっぱいなんだけど」
「そんなこと言ってる場合じゃありませんよ。日本与党のピンチなんです。反韓市民を仲間に入れて野党の中では独走状態、次の選挙では与党が敗れる可能性が高くなっているんです」
「まずは百合とBLは同じオタク文化である点から攻めよう、オタク文化に敵無しと貴腐人の党を批難しよう」
「実際五十歩百歩ですしね。一般人からしたらどちらもキモイのに変わりありません」
そのキモイ存在が野党代表とか改めて日本の末期さが目立つ。
どうも日本人が国政に興味を抱かないのは国民性らしい、反論するのは選挙に行った奴等だけ許す。(と言いつつ作者も最近2回ほどサボってます)
「ないとは思うが軍事政権となる可能性も考えておくべきだろうな」
「フラウさんがそこまでするとは……いえ、BLのためならやりかねませんね」
実際自分の利権拡大のためにロシア解放作戦に積極的に参加するよう与党に工作を仕掛けたっぽいし。
このまま苦戦を強いられる状態が続けば現政権が批難され、勝って賞賛されるのは貴腐人の党……あれ?詰んでね?
「戦争に誘導したのは貴腐人の党であることをハッキリさせた方がいい……いや、そうなると現政権が野党に負けたことになるのか……くそ、ややこしいな」
「こういう時こそマハラジャさんとマレーネさんに相談しましょう」
そうだな。
政権が貴腐人の党に渡ると俺達に対しての締め付けが厳しくなることが予想される。
今のままなら十中八九エゥーゴと手を組むことになるだろう。
エゥーゴは今回の戦いで韓国という基盤を失って弱体化していてメリットが小さいように思えるが弱っている時に助けると効果があるのは男女関係だけじゃない。
ただし、韓国を失う切っ掛けとなったのも日本なので普通に手を組む程度になりそうな気がするけど。
「諜報部にファ・ユイリィの周囲にカミーユ・ビダンという人物がいないか調べるさせる。年齢は——」
ん?ちょっと待て、ファ・ユイリィって原作17歳だよな?ということは今、14歳……なんで政治活動してんのよ。
まぁフラウが20歳で党代表になってる段階で年齢なんて関係ない……ってさすがに14歳はマズイだろ。
それともただ支援演説していただけなのか?まぁ貴腐人の党の支援者って有名な貴腐人だから他の党と同じように考えるわけにはいかない……のか?
「カミーユ?女性ですか?」
ここにカミーユがいたら死んでたな。もちろん死ぬのはカミーユだぞ?
カミーユが殴りかかって、マリオンちゃんのカウンターで。
「男だな。原作でエゥーゴとティターンズの抗争の時に巻き込まれてエゥーゴのパイロットになったニュータイプの1人で、主人公だ」
「話の流れでいくとファさんはヒロイン枠ですか」
……どうなんだろ?個人的にはヒロインというより幼馴染兼介護士って感じで、ヒロイン枠はフォウな気がする。
まぁ説明が面倒なのでそれでいいか。
「マリオンちゃんに対抗できる可能性が微レ存……?」
「誰が微乳レベルの存在ですか!」
「そんな意味じゃねーよ!」
<フラウ>
BLを馬鹿にするなんて韓国人はどの世界でも韓国人なのね。
自分達だってオタク文化にどっぷりなのに日本のことを批難することしかできない。
それにしてもやられたわ。まさかこのタイミングで韓国がロシアにつくなんて、一時の感情に流されて取った行動は後で痛い目みることを知らないのかしら。
「それにしても私以外に転生した人がいるなんて思いもしなかったわ」
「フラウさんはファーストガンダムを知らないようだからわからなかったみたいだけど、私は全シリーズ見てるから直ぐにわかったわ」
目の前に居るのは話した通り、私と同じ転生者であるファ・ユイリィ。
よく考えれば転生してるのが私だけと考えるのはおかしな話よね。
「今回の新型モビルスーツ……ムラサメの開発に手助けしてもらったようでありがとうございます」
「いえ、今世の幼馴染がそちらの方面に強かっただけですよ」
幼馴染ということは14歳、転生者でなく、モビルスーツの設計ができたのなら天才ね。
「彼はカミーユ・ビダン、ファーストガンダムの続編であるZガンダムの主人公にして最高のニュータイプと設定されているわ」
「それじゃ貴女がヒロイン枠なのね!」
やっぱりヒロインは女の憧れ、私は違うらしいけど……悔しくなんてない。
「もうこの世界は原作と随分違う世界になっちゃってるからアテになんかならないわ。実際私が中堅どころとはいえ社長になってるんだし」
「1年前に企業して中堅と言えるまで成長したんですから誇れることだと思いますよ」
ブルーパプワが異常なだけよね。
「そのブルーパプワ、間違いなく転生者が絡んでいます。ブルーディスティニーというのはセガサターンで発売されたゲームに出てくるモビルスーツなんですけど——」
「セガサターン?」
なにそれ?話の流れ的にゲームの機種みたいだけど……DSとかPSPとかしか知らないわよ。
「……年齢の壁を感じるわ」
「私より若いでしょう」
少なくとも今は。
あ、そういえばセガってゲームセンターがあったような……
「その会社が出してたゲーム機がセガサターンよ。ブルーディスティニーは公式設定でもかなり強い設定だったけど師団や方面軍を全滅させるほどの強さではなかった。それにEXAMシステムは起動するとパイロットに負担が掛かるからあれほど長時間戦えるはずがないのよ」
つまりリアルチートなパイロット……ブルーニーとマリオンのどちらかか両方が転生者の可能性が高いと。
「BL規制を強いた張本人でもあるから抹殺したいところだけど、私は戦いたくないわよ。彼らと戦いになると文字通り命がいくつあっても足りないわ」
そもそも私が強くなったのは彼らのおかげであって、その恩恵を受けた程度で勝てると楽観視できない。
「私もごめんよ。あんな化け物と戦うなんて……でも私達が組もうとしているエゥーゴは彼らが組むティターンズと仮想敵にあるわ。何らかの手を打たなくてはマズイわよ」
「アムロくんも最近連絡しても出てくれないのよねー」
「それはBL素材にすれば普通はそうなるわよ」
「BLは正義!私の信念は揺るがない!」
「ヒロインの座は揺らぐどころか崩壊したけどね」
「ぐはぁっ」
なんという言葉の槍、私は刺される方より刺す方が好みなのに(イミフ)
「それでどうするの、最近ブルーパプワから私達の妨害工作がされているようだし」
そうなんですよ。
最近その妨害でBL文化が衰退の一途を辿っている。
しかもその方法がよりによって——
「BL女子は男にモテないなんて書きやがって!」
おかげで支持者が1割ほど減り、しかも『BLを辞めたら彼氏出来ました』なんて報告してくるもんだから拍車が掛かってるのよ。
「それと更に悪い知らせよ。党内でオタク文化に良し悪し無しというスローガンを掲げて新党設立するという動きも見られているわ」
「百合などという腐った思想は滅んでしまえばいいのに」
(それはブーメランでしょ)
「失礼します」
「お、アムロとメイか、そちらから来るなんて珍しいな」
基本的に開発室でヒッキーをしている2人が俺達の部屋に来る時は追加予算か開発の成果を報告のどちらかだ。
予算は十分のはず……なら期待できるな。
「白兵戦用サイコミュハロというものができました」
「……ん?つまりハロをファンネル化したのか?」
「それに近いですが厳密に言えばサイコミュで簡単なコントロールを受けるハロです」
「戦闘はハロに任せて、サイコミュで戦術の指示を出せるようにしました」
どっかのトレーズさんが味気ないと言いそうなハロだな……あ、元々か。
「ただ、受信機を簡略化して搭載したんですがハロの大型化は避けられませんでした」
「その辺は仕方ない、それよりもある程度コントロールができるようになったんだから十分だ」
前まではミノ粉が散布されてたら回収が面倒だったんだよなぁ。設定した範囲をランダムで移動するだけだったし。
「コスパも悪くなりましたけど……こちらです」
「……許容範囲内だな」
むしろ指揮専用機が必要なのが面倒だな。
有効指揮範囲も10kmか……狙撃される恐れがある。
サイコミュも随分簡略化されてるんだな。うん、コストも気にならない程度になってる。
どうやら端末に送るデータが複雑になればなるほど大型化して値段も高騰し、相応のニュータイプレベルが必要になるようで、このサイコミュは養殖ニュータイプの落ちこぼれでも操作できるそうだ。
ん?これって準サイコミュじゃね?
「このままファンネルに応用すると敵味方関係なく攻撃するものになります」
マリオンちゃんズなら問題ないかもだけどさすがにダメだな。
どうにかならない?
「まだAIだけで攻撃対象者を絞ったりするには無理ですね」
「ビットみたいなサイズにしていいならできるかもですけど、しかもセンサー性能もお察しで射程短そう」
そんなサイズだと目立つっての。
「それでサイコミュハロの指揮専用機を考えてるんですけどバイク型、車両型、そして木を隠すなら森の中ということでハロ型など——」
「ハロ型だな。指揮専用機が他のだと目立って、攻撃してくださいと言ってるようなものだ」
「やっぱりそうですよね」
「むぅ、バイク型もかっこいいと思うんですけど」
メイの意見も否定はしないけどさ。
機動力もあるだろうしし操縦もし易いのは間違いない……が、やっぱり狙い撃ちされるリスクを考えるとねぇ。