第百五十五話
1月下旬、とうとう眉なしと紫ババァが衝突。
当初の予想より遅く、最近の動向的には早い行動……うん、微妙。
戦場は紫ババァが守りに入っているので当然月近郊、アナハイムが嫌な顔してるのが想像できる。
いくらアナハイムが圧力掛けたところで月近郊での戦闘は避けられない、というかさすがに最初から劣勢である紫ババァもスポンサーの言うことを聞いて負けたら話にならないからな。
共にグワジン級に乗り、後方にパプワ級、脇をザンジバル級で固め、中盤にチベ級、前衛にムサイ級とアイギス級(ノイエジールの母艦でソロモン決戦で盾になってた艦ね)が並ぶ。
いくつかのアイギス級は砲塔が増えているように見える点からおそらくノイエジールの補給機能を排除して護衛艦の名前の通りになっている可能性が高い。
「連邦は護衛艦を物ともしない戦艦を、なんて息巻いてるらしいですけど」
「宇宙ではなぜか大艦巨砲主義がいまだに根強いんだよな」
まぁそれでもモビルスーツを軽視しないのは救いか……俺達が単機でボコボコにしたからだけど。
さて、戦場の戦力比は3対1、もちろん多い方が眉なしで少ない方が紫ババァだ。
主力となるモビルスーツは眉なしはガルバルディβ、エース機は新型……と言っていいのか?翼が生えたオレンジ色のグフ……何処からどう見てもグフイグナイテッド西川機ですね。ありがとうございます。
なんで今になってグフ?しかもなんでオレンジ?ジェレミアがいるとでも?いや、最後は違うか。
迎え撃つ紫ババァの主力はドムII、それは間違いない、1番数が多いからな。しかし他はよく言ってごちゃごちゃ、悪く言ってカオスしてて一言で言えない。
ゲルググNの発展型っぽい30m近い巨大ゲルググやビグロの発展型っぽいセイバーフィッシュとそう変わらないサイズの小型モビルアーマー、金太郎飴にしか見えないザクレロ、完成してるジオング、宙を漂うドラム缶など完全オリジナルな機体から原作に出てくる機体まで色とりどり。
と言うかドラム缶ことオッゴがすごい和む、保護者は開発されてないっぽいけどな。
両軍ノイエジールをまだ出撃させてないあたりノイエジールの稼働時間の改善がまだできてないのかもな。
「しっかしニュータイプ専用機だろう大型ゲルググN(仮称)の数が多いな」
「30機はいますね。全員ニュータイプとしたらブルーパプワに次ぐ数ですね。もっとも質の面ではイマイチのようですけど。強化人間も10人ほど混ざってますし」
むしろ3分の2がニュータイプなのがすごいけどな。
ニュータイプを探すのって普通は結構面倒なんだけど……見つけ方でも開発したのか?
「それと4人ほどほぼ同じような気配の存在がいますね。それにその気配は——」
「リリーナと酷似してる、か?」
「はい」
自我なしっ子はクローンの可能性が濃厚というわけか、まぁうちのは随分とはにゃーん様の影響で成長してるけどな。
「俺達とは違った形の養殖ニュータイプか、4人しかいないのはコストが掛かるからなのか成功率が低いからなのか」
成功率が低いなら問題ないがコスト的な問題だと後々厄介なことになる。
今は紫ババァだからいいが、眉なしにデータが渡されたりしたらどっかの星戦争のクローン・トルーパーのような……いや、それ以上の存在になる可能性がある。
まぁそのうちクローンを制御しきれずにジオンが乗っ取られそうだけど。
しかし、それまで死闘を繰り広げることになるから阻止したい。
実は1番渡したらヤバイのはアナハイムなんだが……そちらは大丈夫だと思う。何故かと言うとやはり社会的にイメージが悪い上に思いっきり違法だからだ。
その点でいえばジオンは法を作る側だからどうとでもできるから問題なんだよ。
社会的立場がコロニー落としをしても維持できてたんだからクローン兵とかどの程度影響出るかも不明なところが特に厄介さを醸し出す。
「いざとなったら紫ババァの研究データを奪い取るなり破壊するなりして抹殺すべきかな」
「亡命させて合法的に手に入れればいいんですよ」
亡命させたら紫ババァを俺達の部下にするってことにもなるだろ。
嫌だよ。有能そうではあるけどあんな息が詰まりそうな部下。
「お、戦闘が始まるな」
今までは艦砲合戦をしていたが連邦ほどの艦隊を構成しないとアイギス級のIフィールドを突破できない時点で艦砲はあまり意味がない。
それが確認できたのか、両軍機動兵器を前面へ押し出す。
ちなみに俺達は今、レインボーゴースト仕様で離れた位置にあるデブリに作った秘密基地の中にいる。
ノイエジールの誘惑に耐え切れず来てしまった。
西戦線は相変わらずだし、東戦線はロシア韓国が何とか粘っているが形勢は既にエゥーゴ日本に傾いている、が1つ懸念がある。
実は旧韓国領でパルチザンが大量発生中でエゥーゴ日本は対応に追われている。
もちろん純粋反日、反エゥーゴ的なものもあるが、基本的にロシアが煽っているものがほとんどで韓国もそれを容認していることが救えない。
何にしてもしばらくは情勢が変わらないようなので安心して宇宙に来れた……マハラジャやマレーネからは反対されたが気にしたら負け。
さて、眉なしVS紫ババァの戦いはもちろん眉なしの攻撃から始まる。
多数のガルバルディβと少数のグフが攻撃を仕掛ける。
「おっと、グフはビームマシンガンじゃん」
腕部に付けられた3連装の武装は種運命のグフイグナイテッド同様の正式名は違ったと思うけどビームマシンガンだった。
ヒートロッドが装備されてるかどうかわからないがヒートサーベルは盾に内蔵しているのが見えている。
「数と練度では眉なしが上、しかし——」
「それでもニュータイプなら……ニュータイプならきっとなんとかしてくれる!」
へやー!……いや、その計略発動したら撤退するんだけどな。
そしてオンラインサービスが終了とかorz
「ま、実際どうにかなっちゃってるし……てか金太郎飴ザクレロってなんだよ」
大型ゲルググNはサイコタイプ程ではないにしても機動力が高く、火力という意味ではファンネルを搭載しているからサイコタイプを上回るだろう。
そして金太郎飴ザクレロは……超拡散メガ粒子砲、かな?拡散する分メガ粒子砲の収束率が落ちるはずなんだけど、それをメガ粒子砲並みの収束率にしてるっぽい。
ただし——
「ですよねー」
旋回性能劣悪、機動力もないので瞬く間に落とされました。
ネタ兵器……じゃなくて多分試験機なんだろうね。でもそれならなぜ鎌付けた。
実は紫ババァ、ザクレロ気に入ってるんじゃないだろうな。
「パーフェクトジオングも活躍してるねぇ」
既に撃墜機数は10機に到達している。
「でも足の意味、ありませんよね?」
「いや、一応足がある方がコントロールがし易いらしいぞ。旋回とか」
「なるほど、パッと見ではわからないものですね」
そういう設定ってだけでどの程度差があるかは知らないけどな。
まぁ原作ではろくにテストされずにシャアに渡してアムロと戦えたんだから完成すれば強いはずだよな。
「それとパーフェクトジオングに乗ってるの、アスナさんですよ」
もしかして身代わりに死んだシャリア・ブルが乗ってたジオングだからなのかな。
アスナはニュータイプの中でも特別に心が弱そうだからその辺が理由かもね。
でも心が弱いことと戦闘が弱いことは別なんだろう。
よく心が弱い人間が先に死んでいく、みたいなことを言うが関係ない。じゃないと10機も撃墜できない。
「ちなみにクスコさんの気配はアイギス級からしますからノイエジールに乗ってると思います」
ララァは今エゥーゴにいるからその代役か、ニュータイプレベルはともかく操縦センスはクスコが上回ってるようだから人選的には妥当か。
「ニュータイプ部隊は個々の戦闘能力は高いけど連携がまずいな」
「元々ニュータイプは他者と分かり合える能力を持つのに我が強い上にトラウマ持ちという扱いが難しい人間ですから統率は難しいですよ」
確かにアムロやカミーユ、ジュドーを見てたら協調性に優れているかと言われれば微妙だ。
原作のアムロは大人になれば多少落ち着くからアレが完成形なのか?
それは置いとくとして、戦況だがほぼ五分。
予備兵力を両軍残した状態でこの状況だから紫ババァはよく戦ってる方だと思う。
きっと原作の紫ババァのダメ指揮からして別の誰かが執ってるんだろうが……キシリア派って将官が少ないが誰が指揮してるんだろ。
そして敵から逃げ惑うオッゴがラブリー過ぎる件について。
「むしろ可哀想ですよ」
「助けてやりたいがさすがにそんな理由で出て行くのもなー」
まだノイエジール出てこないし。
「最初見た時は大型ゲルググNはサイコタイプをモデルにして作ったのかと思いましたけど、あの様子だと違いますね」
「だな。ただ単に大型化しただけのよう——おぉ、まさか」
今、間違いなく大型ゲルググNにビームライフルが当たるコースだったのにビームが拡散したぞ。
もしかして大型ゲルググNにはIフィールドがついてるのか?!
「録画データを参照したところどうやら間違いないようです。しかし出力が弱いんでしょうね。あまり近すぎると貫通するようで信用性は薄いものでアテにはしてないみたいです」
未完成品だし俺達的にはあまり欲しくないが、ブルーパプワ的には欲しいな。
こちらはモビルスーツの完品状態で鹵獲したいところだな。