第七十九話
ソロモン決戦は大軍が戦ってるんで観戦は飽きないだろうと思ってたんだけど……さすがに8時間も経った今は飽きてきた。
当事者達はそれどころじゃないだろうが参加してないから飽きるっての。
『それで私になんのようだ。ドップブースターの開発に忙しいんだが』
「相変わらず頑張ってんな」
と言うかマリオンちゃんズのヒーリングなかったら多分死んでるからね?
睡眠時間2時間とか止めとけって。
「それで本題なんだけど、チベットはジオンの影響力が残せそうにないんだけどいいか」
『ブルーニー、何か勘違いしているようだが私達の基地はジオンの基地ではなく、私達サハリン家のものだから支配者が変わってもかかる税金が変わるぐらいだぞ』
…………
言われてみればそうか、ギニアスが軍人ならともかく今は民間人……一般かどうかはともかく民間人なので個人の資産を没収する権利は連邦にもないとのこと。
『しかし、軍事基地を個人で所有していると色々問題になるか……そうだ、ブルーパプワに貸し出すのもアリか』
チベットの軍事基地で何をしろと?
『アプサラスVの開発を——』
「しねぇーよ!ってかIVは?!」
『実は設計図は完成している。後はGOサインのみだ』
「そんな金ねぇよ!」
『その辺の事情はわかっている。しかし今の戦争が終わってもそのうちまた戦争があるんだろう?なら必要不可欠だと思うんだがね』
「……ハァ、わかった。後で目を通しておくからナンバーズに預けといて。それじゃチベットの軍事基地の有効な使い道は……アイナが考えてくれるだろう」
何も浮かばなかったのでアイナの丸投げ、基地の事も知ってるだろうし何かあるだろう。
ああ、でもチベット利権に入れたら戦後、サイド6でニューギニア島→インドネシア→ベトナム→チベットの観光とか流行るかもしれんな。
ほとんど暑いところってのは難点だけどさ。
刺激的な食事が多い国が多いから若干味気ないコロニーの食事事情に新しい風を!
コロニー内の食事は決して贅沢なものではないことを目で確認してきている。
確かになんでも食べれはするんだが、全てがファミレスっぽいと言えば伝わるだろうか?
全部がちょっと手間をかけた冷凍食品っぽいとは一緒にサイド6に行った乗組員さんの感想だ。
そういう意味ではサイド6より貧困なニューギニア島の食事はバラエティに富んでいるし、安くて美味いらしい。
あ、でも食事で観光といえば日本だろ。
日本食万歳、和食万歳、けど俺達は食べても砂の味orz
そのうち日本も観光ルートに入れたいな……そうなるとフィリピンもか?……まぁこの計画はまだ先かな。
それとあまり毒(腐女子文化)を流し込まれても困るし。
「じゃあ、とりあえずチベットから撤退するようにギニアスから直接ノリスに伝えてくれ。俺達から伝えると変な勘違いされても困るからな」
『面倒だが仕方あるまい……アプサラスIVのことくれぐれも頼むぞ』
「ちょ——言うだけ言って通信切りやがった」
あのサイズのモビルアーマーを作るほどの余裕は今ないって言ったろうが!
まぁ開発プラン次第か。
「マスドライバーすらまだ完成してないというのに次から次へと……」
「半分以上は自業自得だと思いますよ。色々ノリでやっちゃってますからアイナさんとシーマさんの怨嗟を感じないんですか?」
「俺はニュータイプの中でも下の下だからそんなものは感じん!」
恩恵がルーレットの的中率上昇とかスロットで目押しならぬ勘押しで当てれるとかその程度しかない現在は役立たずスキルである。
もっといえばルーレットの予測やスロットの解析ぐらいは意識すればアプリが勝手にやってくれる。
戦闘だとカラコンとマリオンちゃん共有で鬼のようなニュータイプになれるし……うん、ちょっと泣きたくなってきた。
ちなみにアプリは株取引や先物取引にも有効で、地味に資本を増やしていたりするが詳細は面倒なので省く。
「あ、シャアさんとアムロくんが相打ち——と思ったんですけど普通に生きてますね。さすがニュータイプ、しぶとい」
ゲルググMフルバーニアとNT-1フルバーニアが共に撃墜……されたんだけど、アムロはカイに、シャアは赤い詐欺に助けられている。
シャアを助けたのがララァでない理由は、ララァが手練れであるTR-1ヘイズル3機とそれに率いられるジムカスタム9機の見事な連携に拘束されているからのようだ。
「あのヘイズル2機が低レベルながらもニュータイプで更に手練れなので苦戦しているようです。それにこれだけの戦闘を繰り返されればそろそろ機体の特徴を把握されていることも要因となっていると思われます」
ノイエ・ジールの武装は既に丸裸である以上対策は立てやすい。
実際、TR-1達はノイエ・ジールの下方から攻め、後はアームのメガ粒子砲と背面から射出されるミサイルを注意すれば撃墜される可能性は低くなる。
最大の武器であるビットだが、どうやらララァの疲労が溜まっているせいで使用できない状態にあるみたいだからそれも大きい。
そういや長距離用ビットは負担が大きく、短距離用に調整したって原作であったことを考えれば短距離用であっても長時間使用すれば疲労するのも当然だ。
そんなわけで、お守りであるシャアが居ない今、なれない近接戦闘もほぼ援護なしに熟さなくてはないララァに余裕がないわけだ。
シャアのゲルググMフルバーニアはゲルググMにオプションを付けているだけだからそれほど間も置かずに前線復帰するだろうが、問題はアムロの方だ。アムロの機体は完全なカスタム機であるため代替機を用意しているはずもないだろうし……
「アムロも代替機で出撃するだろうけど戦力低下は免れない。こうなると——」
「ニュータイプ部隊とノイエ・ジール達がまた活躍しますね。補給が大変なノイエ・ジールは以前ほどではないでしょうけど」
「そうだな……とか言ってるそばからサラミスが3隻沈んだか、幸いなのはペガサス級はがっちり護られててホワイトベースのパイロット達が動揺せずに済んでる点か」
無理な徴兵で戦わされているホワイトベースのパイロット達は実戦経験は豊富だが精神的な訓練が乏しいため、感情的になりやすい。
まぁニュータイプなんだから感情的だということもあるだろうけどね。
「お、アムロが出てきたか?」
TR-1にフルバーニア仕様だから多分そうだろう……てかTR-1にフルバーニア付けれたんだな。
「はい、間違いありません。ですが、やはり追従性が悪いようですね」
「動きがぎこちないな。機体を乗り換えたんだから当然といえば当然だけど」
機動性はNT-1を上回ったようだがアムロに必要なのは追従性だ。
これが原作通りのTR-1ならあるいは……だが、あいにくこの世界のTR-1はジムクゥエルからして一部に施されてるはずのムーバルフレームはなく、この決戦を見ていて気づいたんだがシールド・ブースターがないのだ。
ジムクゥエル自体、恐らく一年戦争後に接収したジオンのテクノロジーが使われているはずなので発展系であるTR-1の性能が劣っていてもしかたないのだ。
つまり何が言いたいかというと……アムロつらたんです。
今は生乳と戦っているんだが贔屓目に見て互角、といった感じか。
「これで多少は流れが変わるかな」
突然だが……ペキン陥落。
アムロの苦戦をニヤニヤ見始めてから5時間が経ち、TR-1に慣れたようでそれなりに戦えるようになって、見飽きてきた時に舞い込んだ報告だ。
「ノリスは?」
「大丈夫です。私達がいて殺されでもしたら切腹ものですよ。ヒーリングで10回ぐらい」
なに、その拷問。
そういえばニューギニア島に何人か来た暗殺者は全員、知ってる情報は聞き出せている。
いやー精神状態まで無理やり正常に治すんで死ぬことはもちろんできず、狂うこともできないって生き地獄だね。
「無事か、今何処に?」
「まだ海の上ですね。向かっているのはまだ落とされていない華南で西南の軍と合流して、防衛に力を注ぐようです」
西南にはチベットが含まれるのでギニアスはちゃんと伝えたんだな。
これでジオンの領地はかなり狭まった。
普通に考えればもう潜伏して宇宙を目指すか、ゲリラ戦を行うか程度しか選択肢がない。
俺達がいなければな。
補給は俺達が担っているおかげで工場を失ったにも関わらず、激しい戦闘が可能となっている。
まぁその代わりに支払い能力がないからインドネシアやベトナムの鉱山の権利や税優遇など利権が流れてきてるんだけどね。
戦後、どれだけそれが保てるかわからんけれども。
欲を言えば中国南部も維持したいが……ソロモン決戦がいつ終わるかな。
余裕が両軍になくなってきているからもうすぐ終戦だと思うんだけど……よし。
「ニューギニア島にある予備兵器を全てジオンに売っぱらえ、ミデアを貸出も認める」
「わかりました。ついでに溺れかけの水泳部を助けてもいいですよね」
「ああ、給水は思う存分してやれ。とは言っても弾薬類はペキンの生産が主になってたからそれほど在庫はないようだけどな」
地上のジオンがピンチなのは間違いないが、一番ピンチなのはロシアだったりする。
ジオンが劣勢のために中立の立場になりたいが現在の状況ではそれを許さない。
そして更に厄介なのが……撤退が間に合わずロシアに取り残されたジオン兵である。
ノリスも頑張ったようだが全ての兵が撤退に間に合ったわけではない。
ペキンは鮮やかな撤退だったんだけどロシアのヨーロッパ側の兵士達はそう簡単に撤退できなかった。
平和な時期になったら引き渡してもらうことにしようかね。
これからはソロモン決戦が終われば丸く収まるんだけどなぁ。
いつになったら終わるのかソロモン決戦に視線を戻すと、連邦の補給部隊が到着しているところだった。
まだ粘る気か連邦。