第八十六話
0080も終わる。
今年は色々あったなー、ニューギニア特別地区をもらったり、終戦したり、アナハイムと宇宙引越公社と最近加わったコロニー公社と骨肉の争いをしたり、オリジナルモビルスーツができたり、マリオンちゃんの誕生日をニューギニア特別地区全体で祝ったりした……なぜかあまり細かく覚えてないけどな。(誕生日やろうと思ってましたが書いてると5話ぐらいになりそうだから止めました)
コロニー公社は連邦の100%出資なんだから目の敵にされる理由はない……と言いたいがやっぱりコロニー開発の利権を脅かしたからかね?
それはともかく、クーンの試験はそろそろ終わる。
試験運転ではマリオンズ同士によるクーンvsズゴックDで勝利を収めたのでスペック的には負けないのは間違いない。
もっともクーン本体自体の試験は終了していて、初期装備はバイス・クローとその腕に内蔵され、頭部にも備え付けられた魚雷だけと貧弱なので今はオプション装備の開発が主となっているので実質完成と言っても差支えはない。
武装が少ないのは水中ではミノ粉が無効化されて従来通りの戦闘が行えるため、センサーや静音性を高めないとならず、そのスペースで武装が付けられなかったのだ。
もっともジオンは奇襲の際にミノ粉を散布することである程度駆逐艦や護衛艦を無効化することで戦果をあげていたが、クーンは水中専用機なのでミノ粉の有無に影響されない仕様にしたわけだ。
そもそも奇襲の際にミノ粉散布って敵に今から攻撃するよ。と教えているようなもんだろ。
なんにしてもクーン本体は仕上がり、年明けにはオプション装備抜きで日本でプレゼンをする予定。
「日本に派遣したマリオンズと死神の陽炎達の様子はどうだ」
「自衛隊、改め、日本軍の教導はそこそこ順調です。戦時にならなければ長い間平和だった彼らが人を殺せるかどうかはわかりませんけど」
「んー、あのアメリカすら平和ボケしてたんだから日本はそれ以上だと考えるべきか……」
「日本製モビルスーツヤマトは教導では使わず、ジムクゥエルをコクピットのみ入れ替えて演習で使うなどその存在は秘匿されてます」
ヤマトがどの程度のスペックを持っているかは知らないけど少なくともジムクゥエルより高性能だと自信があるんだろうな。
それとも未完成とか?
「そういえばコクピットがオリジナルで死神の陽炎の人達もですけど私も戸惑いましたよ。OS立ち上げがまさか音声入力とは思いませんでした」
……色々やっちゃってるな日本人。
音声入力って風邪になった時とかどうする気だよ。
「体調が悪い時は顔認証システムになるそうです」
それなら最初からそっちでいいじゃん。けど、ヘルメット被ってると半分ぐらい隠れてるけど大丈夫なんかね?
「専用のヘルメットでカメラを通すと透けて見えるそうです」
これでジュドーに盗まれることもないね!
「問題は全パイロットのデータを入力しているので情報漏洩が怖いことと、コクピットの単価があがる上に精密機器が増え、メンテナンスが面倒ということですね」
いや、どうなんだそれ。
「噂では富士三の横槍でこうなったようです」
この世界の富○通か……利権確保するにしてももう少しどうにかならんかったのか。
「アプサラスIVが空軍との連携訓練のために参加したんですが……」
「何か懸念が?」
「空軍はアプサラスIVを守るように必死になって訓練してくれているのはわかるんですが、正直味方が居ない方が安全な気がします。変に味方にタゲを取られるとこちらの攻撃が当たらなかったり、味方を攻撃しそうになったり、気を遣うことが多いんですよね」
……ああ、そういえばブルーパプワのテストでは単機運用だったから気付かなかったが、味方が周りにいるとなるとちょっと面倒臭いかもしれないな。
だからといってお前ら邪魔、なんて士気を下げそう……と言うより俺達の評判ガタ落ち。
「アムロくんが調整してくれたサポート型ハロのおかげで敵味方の機種が違えば苦にならなくなりましたけどね」
なら今回に限れば問題ないか、将来的にはエゥーゴvsティターンズ、ギレンvsキシリアがあるかもしれないから解決作は考えておかないとな。
「ヴィエーチルの生産状況は?」
「7機目完成しました。でもこれ以上の生産は旧式化の可能性を考慮すると得策ではないと思います」
「わかった。ヴィエーチルの生産は中止してエース次世代機の開発のチームを作ろう」
「ギニアスさんに伝えておきます。あ、ギニアスさんといえばアプサラスVとは別なんですけど水中型アプサラスの開発をしているようなんですけど——」
「絶対作らんと念を押しとけ」
「了解です」
と言うか主力武装であるビーム兵器が使えない水中であんな大型モビルアーマーなんてただの的だからな。
いい加減アプサラスIVも兵器としては微妙だというのに……それにガンダムは重さ的に海には沈まな——うわ、何をす——
年始に突然の報が入った。
中国にアナハイム登場。
いやー見事な奇襲だわ。
日本とは違って中国は自国開発のモビルスーツなんて製造せず、あくまで既成品を製造していただけだったことに商機を見出したようで、アナハイム製新型モビルスーツドムIIをプレゼンして契約を勝ち取った。
魔改造ドムで系譜は絶たれたかと思ったけど、まさかアナハイムに拾われるとはね。
ただし、あくまでモデルがドムってだけでコンセプトは以前のような重装甲高機動ではなく、ゲルググのような汎用性を重視した機体となっているようで、随分スリムになっている。
スリムなドム……なんだかとても違和感ありあり。
それでも性能は確かなものでゲルググMに迫る高機動で装甲はゲルググMどころかゲルググを上回るらしい。
補足するとゲルググMは高機動を維持するためにゲルググより装甲が薄い。
つまり、ジオンの次世代機級と考えていいわけだ。
ガルバルディα涙目。
そんな機体を片手間で月産1000機できるってんだから力の違いを魅せつけられてるようで嫌になる。
大量生産に物を言わせて価格破壊もしていて、ゲルググとほぼ同等という価格というのも凄い。
「これはウチもライセンス生産させてもらうべきかな」
「むしろ今こそ妨害をする時ですよ。幸い生産は月という話なので裏稼業に任せればいいんです」
「それもそうか、ライセンス生産って利益が小さくなるし、こちらから持ちかけるとライセンス料で足元見られるしな」
それに中国資本が黙っているとは考えづらい。
現代中国の貧富の差は激しいが宇宙世紀は更に激しくなっていて、その金額も同じだけ差がある。
それだけに中国資本は今回のことを黙って見過ごすとは思えない。
ジオン独立戦争ではジオンが支配していたがそれは税を納める対象が変わった程度だったから動かなかったが今回は明らかに利権を脅かすものなので何らかの妨害があるだろう。
「じゃあ裏稼業に指示出しておいて、遠慮はいらないって」
「楽しみですねー、海賊同士の争いもやっと終わりですよ」
俺達やアナハイムの海賊達は国籍がわからないようにジムクゥエルやジムカスタム、ゲルググやゲルググMなどを混ぜて運用している。
それが入り乱れるんだからとてもカオスな光景となっちゃってるから美しくない、とはマリオンちゃんズ談。
「それにしても日本でのクーンの呼び名が酷いな」
「ですね。まさかヒトデなんて……酷いです。強制ニュータイプにしちゃいましょうか?」
強制ニュータイプ=トラウマ+洗脳ですけどね。
前に言った通り、養殖ニュータイプの皆さんも宇宙で海賊したり警備したり海賊したりで頑張ってます!
この前そのメンバーのリストを見てみると……クリスチーナ・マッケンジーという名前があるんだが……うん、きっと同姓同名だよね。
以前連邦で何やら開発チームに所属していたとか声がマリオンちゃんと似てるとか言ってるけど同姓同名だろう。
「まぁヒトデにしか見えないけどな」
「悲しいけどその通りです」
「そういえばアイナのやつ、いつになったら新婚旅行行くんだろうな。いつでも休暇は出すって言ってるのに」
「仕事が楽しくて仕方ない感じです。この前シローさんがお酒片手に不貞腐れてましたよ」
普通は男女逆なんだけどなぁ。
「重婚もできるようになりましたから愛人の1人や2人できたりするかもしれませんね」
「あー確かにシローモテるもんな。ブルーパプワで重役ではないとは言ってもあの誠実さで何人女を惑わせているのか……シローに浮気されても知らん——『バサバサバサ』——ぞ?」
紙が落ちる音が聞こえてそちらを向けば……
「アイナさんじゃないですか、もしかして聞いてたか?」
「……ぶつぶつぶつぶつ」
あら、なんか怖い。
もしかしてだけど〜もしかしてだけど〜アイナさんって——
「ヤンデレじゃないのぉ?」
「そういうことでしょう」
ジャン。
てか、マリオンちゃん罠にかけたな。
アイナがいるってわかった上で話を降りやがった!さすがマリオンちゃん、惚れなおすぜ。
「ブルーニーさん!結婚式がしたいです!新婚旅行に行きたいです!」
ドンッ!と机を叩いて鬼気迫るアイナが咆える。
「いや、だからいつでもいいって言ってるだろ。でも結婚式をやるとすると親戚一同——」
「親戚なんて居ません!」
考えてみりゃいるわけ無いか、シローも両親は死んでるって設定だったし、アイナは言わずもがな。
「ならブルーパプワのやつらとノリスとかだけか、それなら予定組むかな」
「大安吉日でお願いします!」
なんで日本の文化が浸透してんだろうね。
「わかった。じゃあ……今月はもう近すぎるから来月な」
「いえ、今月でお願いします!」
いや、さすがに4日後ってのは無理が……
俺がどうやって説得しようか悩んでいると隣からプレッシャーを感じた。
「アイナさん、少し頭を冷やそうか」
そのプレッシャーの持ち主はもちろんマリオンちゃんである。
アイナさんがガクブル状態になったことにより星を砕く閃光は放たれずに済んだようだ……あ、あれは神殺しの方だっけ。
「アイナさん?」
「は、はい」
「来月の大安吉日でいいですね?」
「yah!」
「ならまずはお仕事ですよ。今日はお休みでは無いですし」
「yah!」
アイナは去り、マリオンちゃんから褒めて褒めての視線。
しかし俺は知っている。
これはただのマッチポンプであることを。
アイナがいると知っていてシローの噂を聞かせて焦らせる→俺に詰め寄る→マリオンちゃんが丸く収め→俺はマリオンちゃんに感謝する。
仕掛けたのもマリオンちゃんで収めてのもマリオンちゃん。
「よしよし、マリオンちゃんは凄いぞー」
「えへへ」
うん、でも俺はわかった上で止められない!!