第七百十三話
「迎撃開始」
移住者を乗せるコンテナは武器庫も兼ねていた。
そこから取り出し、触手が組み上げたそれは触手で操ることを前提とした対空砲台が並び、そして火を吹いた。
対象は自国の民が避難できていないというのに容赦なく降り注ぐ爆弾やミサイル。
侵略者なのに他国の人間の被害を抑えようと汚い花火を打ち上げる。
「私達が言うのもなんだけど……無慈悲が過ぎる」
一射する度、数秒遅れで爆発の光と音が鳴り響き、更に遅れて残骸が飛来する
多くの場所ではプルシリーズから爆撃から逃れるために一年戦争で学んだ市民達は建物の中へと避難することで邪魔とはならない。
しかし、例外の場所もあった。
「ちっ、予想はしてたけど、迎撃の邪魔をするなんて馬鹿じゃないの」
基地や警察署などでも迎撃も予定していたが、現実ではその予定は2割程度しか……最悪プランの1つが実行中である。
基地や警察署など戦力となる箇所には当然プルシリーズも多く投入されているので邪魔立てする敵を防ぎつつ、並行して迎撃を行っているのだが――
「この人達、自分達や一般人の命のことを考えないのか」
3つの触手で銃弾を弾き、1つの触手で銃を構える腕を切り落とし、2つの触手で対空砲台を操作する。
自分達が爆撃を防いでいるから彼らは生き残っているというのに問答無用で自分達に攻撃を行う姿は現状を把握していないのか、侵略者である自分達を己の命と引き換えにしてまで排除したいのか。
もちろん自分達も命を賭けることに異はないが、明らかに無駄な賭けを仕掛けるのは愚かにしか見えなかった。
「基地を明け渡すぐらいなら諸共、ということか。随分と気合が入っているな」
もっとも連邦にとってそこまで価値がある基地だとは思えないため、やはり愚かなと思ってしまうのだが。
「ちっ、処理が追いつかないっ」
止まぬ銃撃と増える降って来る爆弾やミサイルに、情報連結により連携して効率よく迎撃しているがどうしても、手数が足りず――
「着弾は仕方ないか」
着弾0を目指していたが、現実的ではないと判断し、被害がでないであろうと爆弾は手を出さずに済ませる。