第八十四話
さて、フォン・ブラウン市をあっさり制圧されてしまったがどうしようか。
ハマーンよ。やはり自由裁量権ぐらいは欲しかったぞ……何気に束縛系か?いや、その傾向は以前からあったが、さすがに任務に関して……偵察中ぐらいは自由にさせてもらいたいものだ。(ハマーンがこの場にいたら自由にさせたらどうなるかわかったものではないと言っただろう)
しばらくは様子見とするか。
しかし……カミーユ・ビダンのことや金色の機体という目立った存在に目が奪われていたが、ティターンズにも面白い機体がいたな。
どこからどう見てもカブトムシにしか見えない機体や赤いザクの親戚みたいな機体が初見だ。
カブトムシは変形MSで、大型ビームライフルが高出力であること特徴だ。ああ、後、ニュータイプが2人乗っていたことが特徴といえば特徴か。
観測データから察するに一般的な訓練されたニュータイプが使うには良い性能だろうと思える。
もっとも乗っていたニュータイプの1人は私からするとニュータイプと言うには微妙過ぎる能力だがな。
赤いザクもどきの方はただの量産機だろう。強いて言うと構造から解析した限りではフルムーバブルフレームが採用されている機体であることがわかったぐらいだ……まぁフルムーバブルフレームを採用した量産機というのはそれはそれで興味深いのだが。
ああ、そういえばエゥーゴの方にもジムタイプの後継機っぽいものもいたな。
「残骸……こっちに流れて来なかったな」
取りに行こうにも擬態を解除したら存在がバレてしまうし……くっ、なんだ、このお預け状態は!道中で拾ったスクラップで作ったドムとザクIIで回収に行かせるか?しかし、万が一観測されたりでもしたら面倒だ……ああ、本当に面倒だ!!
「いっそアクシズ関係ないってことで独自に動くか?しかし、そうなるとキュベレイIIが使えない……ん?キュベレイIIが使えなくて何か問題があるのか?」
そもそもアッティスだけでどうとでもできる相手……いや、これは油断と欲に負けての視野狭窄、戦闘では何があるかわからないとこの前戒めたばかりだろう。
しかし……しかし——
「触手が疼く!」
「本当に触手を動かすなっ!!」
おっと、無意識の内に触手を本当に動かしていたようだ。プルツー、スマン。
謝罪も兼ねて触手で掴んで膝に乗せ、よしよし、と頭を撫でる。
プルツーは子供扱いされるのは嫌いだから一瞬こちらを睨んでくるが、すぐにプイッと顔を赤くして逸し、されるがままだ。スキンシップは嫌いではないのだ。
……ハァ……最近の悩みはプルシリーズと私の体格……というか身長が変わらなくなったことだ。
いや、私も現在22歳になっているのだから成長は期待していない……していないが……していないのだが……身長が155cmってのはさすがにないのではないか?(実はサバを読んで153cm、ちなみにエルピー・プルの身長は公式データでは150cm、未来であるマリーダ・クルスは……)
まぁ考えても仕方ないのだがな。
そんなくだらないことやザクIIとドムをスクラップで改修してカタログスペック上はガルスJと同等まで引き上げたりして過ごすこと2日、とうとうエゥーゴとティターンズに動きがあった。
どうやらティターンズの哨戒に引っかかった間抜けなエゥーゴが強襲されたようだ。
そこから戦闘になったのはいいが、逆にエゥーゴがなんらかの方法で逆襲したようで、ティターンズ艦隊が撤退を開始……ふむ、こんなに抵抗なく撤退となると……うん、この後、ティターンズが本格的に報復活動に出るんだろうな。
これからが本番、といったところか。待機しておいてよかった。
エゥーゴも追撃、追跡をしない……というか、そんな余裕はなさそうだし、私達が何かを掴めれば手柄とすることができるだろう。
そうすればあのガンダムタイプかシャアの金色の機体を解析させてもらえるかもしれない。ついでに変形するジムタイプ(?)も付けてもらっても構わんぞ。
なんて考えていたら何やら別の艦隊と合流……随分コロンブス級が多いな。大型の何かを用意したということは本格的に何かをするということだろう。
しばらくついていくと放棄されたであろうコロニーがあり、そのコロニーでティターンズが……あー……なんか嫌な予感がする。
いや、この光景を見て察せられないのは無知な人間か、現実を直視しない人間くらいだろう
「どこからどう見てもコロニー落としの準備だな」
コロニーに核パルスエンジンを設置しているのだから間違いないだろう。
まさか軍隊を動かしてまでコロニーを移動させることは……ああ、グリプス2を移動させていたか……しかし、このタイミングでそんなことをするわけがない
ジオン嫌いがジオンの真似事とはどういうことだ。
「よし、コロニー落としが確実視された時に私達の出番だな。ハマーンに連絡を……せっかくだからキュベレイIIの出撃許可もとっておくか」
コロニーは順調に航行中、もちろん月に向かってだ。
コロニーの移動なんてなかなか見られるものではないから希少な光景ではあるが、大質量兵器として移動していることを考えると微妙な気分になる。
コロニー落としが成功するとその恐怖でニュータイプがまた増えるという喜びとその思いは人間としてどうなんだというツッコミ。
総じて特に問題ないということだ。
「お、エゥーゴが迎撃に出てきたか、総員戦闘準備。予定通り、エゥーゴ艦隊が艦砲射撃を始めると同時に擬態をパージ、その後MS部隊の出撃だ」
キュベレイIIの使用許可ももらえたから負けることはないだろう。
……いくらか犠牲が出ることになるかもしれないがな。
ふむ、プルシリーズの材料と設備をエゥーゴを通してルナリアンに要求するのも有りだな。
「コロニーに対して艦砲射撃開始を確認、擬態をパージします」
「続いて第1小隊から順に発進開始」
「ティターンズ艦隊がこちらを察知したようです。こちらにサラミス級2、マゼラン級1が向かってきます」
「Iフィールドを展開、そしてシールドビットも射出しろ。メガ粒子砲は……こちらでコントロールする」
手始めに……狙いやすいサラミス級からにするか。
しかし、外す気がしないな。
「命中確認、小破判定」
「む、有効射程距離外とはいえ、小破か」
私の予想では中破だったのだが……思った以上に耐ビームコーティングが施されているようだな。
これは改修の余地があるな。