第十六話
公私混同甚だしい政策を隠しもせず説明したがギレンさんからはGOサインが出た。
ギニアスは決定してもなおアイナが軍に所属することを渋っていたが、最終的にそんなに心配なら自分の副官なり秘書なり何なりに置けばいいということで話がついた。
というかこれで拒否したら穏便な俺でもキレるぞ。この罵倒を1日中しても足りないぐらい忙しい中で女子専門軍学校なんて関係のない計画まで練ったんだからな。……まぁ結局はダイクン派取り込み……というか反発を防ぐために人質の幅を広げたという側面もあるんだがな。
校舎にヨーロッパ風デザインで螺旋階段とかレリーフを彫ったりとか教官を宝塚風にしてみたり寮は2人部屋を標準にしたり(士官学校では1人部屋が標準だが軍学校では4人、多いところでは10人部屋)と何処のお嬢様学校だ、と言いたくなるような作りになっている。
まぁこんな風にした犯人は俺なんだがな。
ただの軍学校でも良かったんだが、名家の人間から娘さんを預かるとなると問題になるのが婚期の遅れと礼儀作法の未習得などだ。
簡単に行ってしまえば軍人などという野蛮な人種に染まってしまうのではないかという危惧しているわけだ。
それを解消するためにこんな感じに落ち着いた……というか落ち着かせた。そんなわけで授業内容も情操教育にも力を入れることとなっている。
おかげで取り込みはかなり順調で国家体制の変更も受け入れられている。
もちろん受け入れられない者も存在する。
筆頭としてはジオン元首相の熱狂的支持者であったジンバ・ラルがそれにあたる。
ジンバ・ラルは能力的にはそれほど秀でているものはないが、ただジオン元首相に信頼されていた存在で……ジオン元首相の死がザビ家による謀殺であると隠しもせず、むしろ堂々と言い放つ面倒なやつだ。
ただし面倒とは言ってもハッキリと敵視しているから対応は簡単だ。監視していれば頭の悪い敵対者が集まり捕捉も楽だからな。
更に言えばジンバ・ラルが公言しまくっているのは自身を守るためでもあるだろうな。アレだけ目立たれると目障りではあるが暗殺や閑職に追いやったりすればその発言に真実味を帯びる。つまりザビ家の不信へとつながるので蔑ろにもできない。
しかも……ダイクンの遺児であるキャスバル・レム・ダイクン、アルテイシア・ソム・ダイクンという鬼札まで所有している。
だからこそ公言しているというのもあるんだろうな。そうでなければ幼い兄妹を反ザビ家の神輿として担ぎ上げられているはずだ。
「――――ここにジオン共和国を改め、ジオン公国とすることを宣言する」
デギンさんの宣言によって俺の苦労は報われ、安心して肩の荷を……下ろせないんだよなぁ。
なんでかってぇと……俺、デギンさんの後ろにギレンさん、ドズル、キシリア、実は初めて会ったガルマくん、そして次に俺が並ぶ……つまり俺はザビ家の縁者として同じステージに立たされている。
言い方でわかったと思うが俺が立ちたいといったわけではない。だからといってデギンさんやギレンさんからの要請でもない……いや、俺に伝えたのはギレンさんだが、裏に関与した人物がいる。
主犯は俺の親父である。
どうやらケラーネ家の影響力を拡大したいらしいが自分が表舞台に立つと周りが騒いで面倒なことになるので俺で代用したようだ。迷惑な話である。
ちなみにザビ家の皆さんもギリギリまで俺に教えなかったという共犯者だ。
これでハッキリと地球連邦から狙われる存在となったな。
元々降りるつもりはなかったが、更に引くことができなくなった。