第四十六話
俺の目の前で繰り広げられるのはジオニックのザクとツィマッドのヅダによるコンペティション……ではなく、ハウンド達のヅダを専用機化の調整を見ている。
コンペティションがやられているのは間違いないが、俺はそれを欠席している。
正直出来レースだから見る価値はない。それに俺が居ては無用な混乱を招きかねないからねぇ。
「人の妬みというのは厄介だ。上手く飼いならせない未熟者が多くて困る」
嫉妬するなとは言わんがコントロールできて軍人……いや、社会人として一人前だ。
という理由で俺は……俺達はコンペティションには参加せず、自身の研磨に勤しんでいる。
まだ試作量産型ではあるが、完成という形にした以上は改良はするがベースはよほどの欠陥がなければ変更はないので先んじて俺個人でヅダを6機購入した。
まぁMSの個人所有なんて表立って行っては我も我もと他の貴族達が言い始めるから表向きはただツィマッドの試作量産数が増えただけだ。まぁその意図がなかったわけではないがな。
特別な記憶の時代もこの時代も生産数が増えれば単価が下がるのは同じだ。兵器も例外ではないのも同様だ。
ちなみに結局はヅダはザクよりも2.2倍という高コストになってしまったが、性能を考えれば惜しくはない……が、やはりちょっと迷ったのも確かだ。
ヅダを6機揃えるとザク13機と予備パーツが買えるということになる。
ハウンドなら選抜した6人中5人が化け物級のパイロットであるし、残りの1人はパイロットの資質こそ5人に劣るが指揮能力が高く、自由奔放な他の連中をまとめる逸材であるため6対13でもよほどの精鋭でなければ負けることはないはずだが……ただ、ハウンドでなければそれを望むことは無理だ。
つまり普通に運用したんじゃデメリットばかりだ。だからこその少数生産だがな。
「しっかし、今度は特殊部隊ドクトリンの開発とはねぇ。とことん俺は正道で使われないらしいな。まぁ俺はこっちの方が好みだからいいんだが」
ちなみにMSの正規軍用ドクトリンは秘密基地のペズンではなく、ペズンよりも大きくて宇宙要塞としてサイド3を守る壁となるべく建設中のソロモンにて司令官としてザビ家次男、ドズル・ザビが就任することとなった。
いやいや、1年半で士官学校卒業ってどんだけ促成栽培よ……と言いたいが、まぁ箔つけだな。実務は他の人間がやり、ドズルはお飾りをしつつ司令官として勉強することとなる。ちなみに階級は中佐となった。
中佐になった理由はまだドズルはまだ未熟だから……というのもあるがどうもギレンさんは俺のことを配慮してのものらしい。これでもそれなりに功績を積み重ねて来て大佐になっているので功績がないドズルを同格にしないようにしたんだと。
ギレンさんも随分変わったなぁ。昔のままなら俺に上から目線で、大佐にするが問題ないな?と有無も言わさずザビ家による軍の掌握を急いだだろうに。
まぁ本人が俺に配慮したつもりだろうが、実情は俺への配慮というより他の大佐達に配慮となるだろうがな。