第四十七話
コンペティションは特に問題なく、予定調和的に終わった。
審査にはほぼ全て勝り、模擬戦にも勝利したヅダ。
逆にほぼ全てが劣ったザク。
事故事件などは起こらなかった以上当然の結果だな。しかし、全てが上回ってなお主力兵器はザクと決まり、ヅダは特殊機扱いとして少数生産に決まった。
まぁヅダのコスト高もそうなんだが、そのコスト高の中に希少金属を多く使うというのが決定打だろうな。
細かい変更はあるだろうが主力兵器であるMSの仕様がある程度決まったことで次はMSを載せ、援護する艦艇の開発に入るらしい。
少し前に就航したチベ級は対艦を意識した重巡洋艦であるためMSを搭載できるようなスペースは表向き用意されていない……が、チベ級が開発された段階でジオン公国の主力がMSかどうかはともかく、機動兵器が主力になることがわかっていたのでそれ用にわざとデットスペースを作った設計にしていたので改修することが比較的容易にできる……というかチベ級の改修設計、作業はペズンでやれって言われた。
こっちもドクトリン開発で忙しいが……そのチベ級2隻をこっちにくれるって言うんだから断るわけにゃいかんよなぁ。そもそも軍人に断るという選択肢がないけどな!
ちなみに俺への優遇というわけじゃないぞ?特殊部隊のドクトリン開発に必要だろうと回してくれることになっただけだ。
「しっかし通信が使えず、誘導兵器が使えず、近接防御システムまで死んだ艦艇ってのはでっかい棺桶みたいなものだな」
「ええ、これほど心細いとは思いませんでした」
現在は改修前のチベ級2隻でミノフスキー粒子散布下での戦闘を想定しての戦闘訓練をしている。
一応それぞれのチベ級の運用データをもらってはいるが当然だがMSを伴っての運用データはないからな。こっちで行うしかない。
んで俺は大佐、そして将来は将官になる可能性が高い以上は艦艇、艦隊を指揮することもあるだろうから経験しておくためにチベ級の艦長を今しているわけなのだが――
「とてもではありませんがチベ級が1隻では相手になりませんし、3隻編成でもハウンド3機編成相手には時間稼ぎだけで手一杯でした」
シンシア少佐が言うようにハウンド3機相手にはチベ級3隻でカバーしあっても効果が薄かった。
対機動兵器の経験を積もうと思ったが相手が悪かった感は否めない。
「特に誘導兵器が使えないのが問題だよー。攻撃は最大の防御って言うけど本当なんだね。艦艇が防御してもジリ貧だね!」
楽しそうにメイ軍曹が言うが艦橋の空気は反比例するかのように重い。
船乗りにとって自分の家とも言える艦を棺桶だの頼りないだのと言われていい気分ではないだろう。
「ただ、ハウンド相手じゃなぁ」
ていうかお互いを蹴り合って回避とか成長を見てきた俺でもわけわからんぞ。それに絶対後でメカニックに起こられるだろうな。そんなことができるほどまだMSは成熟してないってのに……。
「対空砲火を充実させる必要があります。誘導兵器の類が使えないのですから数を減らしてそちらに割いてしまいましょう」
「後、ヅダだからわかりにくいけど多分ザクだと加速性能の関係で戦闘速度に達するまで結構時間がかかるんじゃないかなー。そうなると大艦隊だと発進するときにMSが混雑して大変そうだし、不意打ちされた時とかノロノロで狙われちゃうかも?それにMSの推進剤を使っちゃうのはもったいないよね」
「さすがメイ軍曹、良い意見です。発進装置の必要がありそうですね」
そういえば連邦軍はコロンブス級を補給船兼空母の役割をさせていたな。完全分業と言えば聞こえがいいが、偵察とか巡回とか小規模運用する場合はどうする気なんだろう。コロンブス級は足が鈍いから効率悪いだろうに。