第四十八話
チベ級の改修設計はまだだがペズンで行われることは決定しているので就航していたチベ級が続々と集まってきた。
その数は7隻、まだ訓練航行中の1隻、計8隻だ。
実はそのうち4隻は航行能力こそ他と同じだが、武装はハリボテ、艦内設備も劣っていたりする。
連邦と違って人、金、資源が有り余っているわけではないので繋ぎでしかないチベ級を全て戦力化するには無理があったがそれでも見掛け倒しの戦力が必要だったのだ。主に連邦軍と戦うためではなくジオン公国が内部から崩れないようにするために。
幸いそのハリボテ戦力は十全と発揮され、国内が大きく崩れることはなかったし、これのおかげかどうかわからないが連邦軍が動くこともなかった。
つまり今回はそのハリボテを含めて全部仕上げようってわけだ。
ハウンドと模擬戦を繰り返し、機動戦力に対しての無力さを嘆きながらも改善しようと試みている最中にある情報がもたらされた。
「ギレン閣下もなかなか思い切った方針を……」
MSを運用、支援する軽巡洋艦の素案が打ち出されたんだが――
「だねー。まさか機動兵器には機動兵器で対処して艦は対艦を重視させて近接防御を全部オミットしちゃうなんて……これ、機動兵器が突破してきたら大変なことになるんじゃないかなぁ」
メイ軍曹のいう通り、素案には近接防御火器を施さず、主砲、副砲、ミサイルの3種だけでミサイルも対艦を意識しての比較的大型のものが選ばれている以上、乱戦にでもなったら酷い目に合いそうではあるが――
「まぁデータを見ると近接防御の必要性に疑問を感じても仕方ない部分はあるがな」
チベ級は重巡洋艦で、今回の軽巡洋艦よりも旧型であったとしても能力としては上位に位置するはずだ。それなのにチベ級が3隻編成であったとしてもヅダ3機に翻弄されたのは事実だし、そのチベ級よりも軽量級だとお察しだろう。
ただし――
「それにしてもやっすいなー」
「ですねー。よくもここまで!って感じですよね!これ、武装以外の船体価格って輸送船と一緒ぐらいですよね」
「だな」
これほど安価なら艦の数を補い、そうなると主砲、副砲だけは連邦軍のものよりも多く揃うので艦隊戦も十分できるだろうし、MSの運用数も増やすことができ、そうなればこちらが優位となる。
そういうドクトリンを組もうとしているわけだ。
となるとチベ級の役割も自ずと決まってくるか?
「同型艦による特殊艦隊……か」
元々単価が高いチベ級は数を揃えるのは難しいだろうしな。建造できて後5隻程度か?それに高速艦なため、おそらく軽巡洋艦とは航行速度や距離が合わないだろう。
対機動兵器とするにはチベ級ではコストが掛かり過ぎる。どうせならパプワ級を改良した方が効率的だ。一応これも具申しておくかな。
「良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏な艦になりそうだが俺らには丁度いいかもしれんな」
2隻と言わず5隻ぐらいもらって俺らの艦隊にさせてもらえんか聞いてみるか。