第五十話
ムサイ級や特殊部隊運用方法などを考えた結果、自分が任せられた2隻ととりあえずの1隻のチベ級を1艦隊として編成した。
そしてその3隻は装甲を薄くして軽量化、メガ粒子砲と近接防御火器を減らした代わりに高出力の大型連装メガ粒子に変更し、熱核ロケット・エンジンを増やして速度と加速性を向上させた。
更に内部構造も随分変更した。
元々MS搭載予定であったデッドスペースだったが、それでは足りないと判断して居住空間を削減して更にミサイル系を全て下ろすことで空間を確保。そのおかげもあってMSを8機搭載可能とし、発進用カタパルトも用意した。
まぁおかげで本来火力的に優れているはずの重巡洋艦が軽巡洋艦よりも瞬間火力に劣るなんて悲しいものになっちまったが、火力はメガ粒子砲の高出力化によって威力も射程も向上したから艦種に変更はない……はずだ。
俺の出した結論は、チベ級で艦隊戦は非合理、なら局地戦だとすぐに考えたが地球連邦軍相手に局地戦を挑むなら機動戦力を最大限に活かさなければならないと考えた。
チベ級の強みは『戦時生産を視野に入れていないこと』だ。
ムサイ級は戦時生産……つまり、戦争中に大量生産することを前提とした『簡単な作り』をしている。それに比べ、チベ級は戦時生産を前提にしていない平時に生産された『精密な作り』をしている。
メリット・デメリットがある。
メリットは精密な作りゆえに高性能。デメリットは再設計が難しいこと。
戦時は融通の効かない兵器は使いづらい。現地で改修改良改善は当たり前だ。その点を考慮して設計されているのがムサイ級だ。
反対にチベ級はそんなことを考慮されていない。何もかもが『ある程度の設備がある場所』でしかできない。
修理すらも艦や部品の作りはもちろんだが生産数の関係で難易度が上がる。
なら相応の使い方をしなければならない。
「特殊艦隊……平たく言えば遊撃艦隊か」
8機のMSを搭載できるチベ級が3隻、つまりこの艦隊はそれだけで24機のMSを運用することができる。
これだけの数があれば、空母の役割を担うコロンブス級が不在なら倍する地球連邦軍でも相手することができるだろう。
コロンブス級がいた場合は、そのための無理して手配し無理して載せた大型メガ粒子砲だ。アウトレンジから艦砲でコロンブス級を沈めて機動戦力を潰し、機動戦力で艦隊を沈める。
「これも技術者連中のおかげで成立する戦法だがな」
そもそもアウトレンジから撃てる大型連装メガ粒子砲が開発されなければこんなことはできなかった。
……まぁ戦いかたがムサイ級と似通ってるのがなんとも言えないが、ムサイ級はどう頑張っても4機程度しかMSが載せられないのでこの戦い方はできない。もしくはできたとしても数的有利が作り出せない以上、MSの消耗を激しくさせるだけだろうがな。
そもそも核融合炉の出力自体も差があるため大型メガ粒子砲を使うことができない。
「しっかし、24機もヅダを用意するのは無理だな」
「無理ですね。それほどの予算は流石にギレン閣下もご用意なされないでしょう。ユーリ大佐もこれ以上は難しいでしょう?」
「だな。出せなくはないがさすがに後々に響く。戦時ならやってもいいけどな」