第五十四話
「……本当にこんな年端も行かない子供に兵器に乗らせるなんて、ゲスだね」
「最初から否定してないだろ。むしろ肯定しかしてないはずだが?」
MS格納庫で整備士とパイロットとして話すハウンドの様子を見て苦々しくつぶやくシーマ。
そしてその乱暴な言葉使い(遠慮がないとも)に教育的指導を施そうと死角からシンシア少佐が教鞭を振るおうと(教えるという言葉の意味ではなく、本物の教鞭)しているのを抑えて(決して手が柔らかいなぁーなんて思ってはいない)つつ答える。
「ああ、そうだね。そのとおりだよ。でも……あっちにいるよりは……満たされているように見えるから困るね。生き残ることができれば将来も安泰……なんだろ?」
「少なくとも一般人よりは裕福な生活が待っているな」
促成栽培のサンプルに近いような使い捨ての駒だったはずが、思いの外優秀で過ぎて特殊部隊になっちまったからな。
激戦に送り込まれるかもしれんがもし戦後まで生き残れたのならそれ相応の待遇をする。まぁそれまではほぼ無給の無休だけどな。
代わりに戦果次第だが、今のように最新鋭機(試験機も含む)を優先的に配備されることになるだろう。
現状ですらベテランパイロットが旧式のガトルに乗っているんだからどれだけ優遇されているか……まぁヅダは俺の自腹だけどな!
ところでシンシア少佐、その眼鏡似合っているな。いつも以上にキリッとした雰囲気が出ていていいぞ。……でもなんで眼鏡?え?我が家の躾をする時の決まり?……あ、そうですか。
「ところで私もあれに乗れたりするのかい」
「そのうちな。シンシア少佐の護衛を熟しつつ軍人としての最低限の姿勢を身につければ乗せてやらんでもない」
シンシア少佐と同行するとなると公の場でも活動することになる以上、連邦から比べれば幾分か規律が緩いとはいえ、そのままじゃトラブルになりかねないからな。
「というか乗りたいのか、MS」
まぁ護衛としてパイロット技術を修得しておいても損はないだろう……いや、俺もやっとくかな。戦争なんて何があるかわかったもんじゃないし……俺がMSで前線に立つことになったら負け確な気がするけども。
「あんなけったいな兵器は早々お目にかかれないからねぇ」
やっぱり誰でもそんな反応だよなぁ。
こんなアニメでしか出てこなそうなロボットが実際の実現したら興味も湧くし、正気も疑う。
そういえばシーマの職歴の中で1番長かったのは宇宙作業員だったな。だから余計に気になるのか?
「望むなら申請を出しておけ。シンシア少佐が手配してくれるだろう」
「ああ、わか――……こんなところでいちゃつくのはどうなのかねぇ?」
やっと気づいたかと思えばなんて恩知らずな……最初からこんなことで恩を売る気はないが……まぁ庇う動機もなくなった。
ということでシンシア少佐を解放――
「色々言いたいことがございます……が、とりあえず――口の利き方に気をつけましょうか」
そう言い終わるやいなや教鞭が振るわれた、そうだ。
ちなみに俺は怖いのでとっととその場を後にした。