第六十二話
宇宙世紀0075年になった。
表舞台に立った俺にとって新年はあまり楽しくない行事が多い。
元々上流階級だったから面倒なパーティーに出席することは多かった……が面倒で退屈なパーティーという意味合いが強かった。
だが、今は海千山千の魑魅魍魎と陰鬱で陰湿なパーティーばかりになった。
「これが一人前になったということなんだろうがなぁ」
今まではお子ちゃま扱い、もしくは見るに値しない存在でしかなかったが今となってはこの若さで大佐であり、ギレンさんの覚えもめでたいとなればそれ相応の扱いをされることになるわけだ。
耳の良い奴らは俺が秘密基地……なぜかこういうと子供っぽいな……であるペズンを預かっていることも知っているようで自分達が食い込める利権はないか探ったり、それを知らなくとも金の入用はないか嫁はいらんか愛人は……と俺個人に貸しを、もしくは恩を売ろうとあの手この手で誘いに来る。
これもしばらくの我慢だろう。
水面下で実績を積み上げて出てきた俺は社交界ではケラーネ家のパッとしない跡取り程度でノーマークだったので探りを入れられているという側面が強い。
付け入るにはこちらが何を欲しているのか知るのが早いからな。
……まぁ嫁、愛人をって勧めてきた奴らは音もなく現れたシンシア少佐の美しい笑顔で追い返したが。
そんなこんながあった中、ギレンさんからまた新しい情報がもたらされた。
「これはまた大物なこって」
重巡洋艦チベ、軽巡洋艦ムサイと来てついに戦艦級を開発に取り掛かるらしい。
ただ、俺はこの戦艦級の価値に疑問がある。
「火力が欲しけりゃチベ、速度が欲しけりゃムサイ……で戦艦級に求めるものは火力、速度、MS運搬能力を高水準にってのはわかるし旗艦にってのもわかるが……」
これ、間違いなく集中砲火食らうよなぁ。
ミノフスキー粒子で有視界戦闘がメインになるっていったってこれほど大きいと広い宇宙とはいえ目立つだろ。それにMSを主軸とすると間違いなく連邦も機動戦力を増員してくる。
そう簡単にパイロットはポンポンと育つわけではないが数が倍程度ならいいが3倍、4倍になればMSの防衛網を突破される可能性が高い。
そして突破されたらいくら対空砲を用意したところで誘導兵器が使えない以上、ただのでかい的になりかねない。
しかも……これ、どうもザビ家と褒美的に使うっぽいんだよなぁ。
戦場で使う気ないのか?ならハリボテでいいだろ。
俺的にはチベ級を再設計してもっと万能性を持たせたもので十分だと思うんだけど。