第六十六話
1対5の戦いは少数側が多少兵器が優れていても大勢にはあまり関与しない。
なぜなら1対5というのはそれだけの国力差が存在するというのと同義だからだ。
戦術的に見れば勝利しているように見えるだろう、
しかし、戦力の回復は国力によって決まる。
つまり――
「腕を上げたな。ノイエン中佐」
「現場で鍛えたにも関わらず後方勤務の多いユーリ大佐に辛勝ではな。もっと精進せねばならんな」
ノイエンの辛勝。
これはシミュレータの結果である。
だが内容的にはノイエンが率いるジオン軍はチベ2隻が撃沈、残り1隻も大破であり、ザクも5機まで減らし、その全てが中破判定。それに比べてユーリ率いる連邦軍は艦艇全滅で勝利判定が出ていたが戦闘機は40機が無事、つまりシミュレータ上では勝利条件に達したから勝っただけで、もし戦闘継続になればジオン軍側も壊滅していた。
それに国力と戦力の回復の関係性を話した通り、連邦の方が補充能力が高いことを考えれば補充能力に劣るジオンがほぼ壊滅判定となっている段階でほぼ敗北のようなものだ。
「まぁ遊びみたいなもんだしな」
本当の指揮だったなら連邦側はミノフスキー粒子散布下でこれほど連携できるわけもないし、俯瞰で状況なんてもってのほかだ。ただ、精度の差はあれジオン側も指揮に大きく影響がでることになる。
しかし、MSを採用した理由の1つである四肢……特に手の存在は連携に貢献している。
原始的情報伝達方法ではあるが戦闘機では不可能な手信号によってある程度の意思疎通が可能なのだ。
厳密には戦闘機も灯火による情報伝達は可能だが、手信号に比べると一瞬で発せられる情報量の差が大きく、侮れない。
こんな小さな大きい違いはシミュレータに反映されない。
故に遊びだとユーリは考えている。
「そもそもこれほどの戦力差なら無理して戦わずに退却すべきだよなぁ」
「それを言ったら元も子もないだろう」
ユーリの言いように苦笑いを浮かべてツッコミを入れるノイエン。
大体120機もの戦闘機はマゼランやサラミスに搭載は不可能、ならその戦闘機はどこから出てきたのかというのと、戦闘の舞台となったコロニーから出撃したという設定だ。
そして敵を倒すためだけの戦闘が目的とした場合、射程に優れるチベによる艦砲射撃で威嚇してコロニーから引き剥がし、しばらくそのまま引き撃ちを行い続ける。
そうすることによりセイバーフィッシュとトリアエーズの新旧混合群は機動力の差から来る編成の乱れが生まれる上にマゼランやサラミスでは搭載することができないことから追撃に推進剤を使わされた上に、更に帰還にも不安が残ることになってシミュレータだから関係ないが、実戦ならパイロットへの圧力にもなる。
「さて、今度は俺がジオン側でやろうかね」
「今度こそ負けんぞ」
シミュレータで遊んでから2ヶ月経った。
あれからシーマが俺に若干ながら敬意を払うようになった。
実戦で通じるかはともかく、少なくとも家柄のみのエリートではないと考えたんだろうな……まぁ若干だけども。
さて、少しMS開発に新たな動きがあった。
現在生産しているザクだが、どうやら近いうちに後継機?改良機?がリリースされるようだ。
毎度のギレンさん情報では動力パイプが装甲下にあると整備性に問題がある……確かに一々装甲を剥いで整備するのは面倒だよなぁ。だからって動力パイプを露出させて解決させるのもどうかと思うが……対案がないから何も言えんけど。
後、核融合炉が改良されたらしく出力が向上したらしい。
というわけで新しくMSが設計されるんだと。