第六十七話
ジオニック社のザクの改良型?改造型?に刺激を受けた者達がいる。
それはもちろんコンペティションで敗北したツィマッド社のMS開発部である。
まだ教導隊設立して間がなく、主力兵器であるザクの運用に力を入れているが才能あるパイロットは機動力に優れるヅダを愛用していて一定数の支持は得られているが、やはり主力兵器の座を奪われたままというのはよろしくない。だが、現実はまだまだ模索の段階であり、焦って次世代機をリリースしたところでまた新たな基礎を築かなくてはならなくなり、結果的に足を引っ張りかねない。
そもそもいくら俺が仲を取り持つにしてもジオン軍が取り合ってくれるかは疑問もあるしな。ということを逸るツィマッド社に伝えると、あくまで改良に留めると返答があった。
随分簡単に退いたなーと思っていたら、なんか違う方向に振り切ったようだ。
新型MSがダメならこれでどうよ!って感じでMAにメガ粒子砲を搭載させる研究をしているらしいMIP社を巻き込んで艦艇……艦艇?を開発したようだ。
「MS輸送船か」
輸送船というよりも輸送機という方が正しいだろうな。
輸送機は有人はもちろんのことMSから操縦することができ、実質無人にすることが可能……になるらしい。そちらはまだ試作段階なんだと。
んで、メリットはMSによる展開速度の向上。輸送機にはMS2機が搭載でき、しかもカタパルト射出もできる……ようにしたいらしい。まぁつまり希望だな。
これにより機体の推進剤の消費を防げて継戦能力が向上、ブースターを吹かす回数が増えるため運動能力が向上する。
「これも風が吹けば桶屋が儲かるっていうのかねぇ。いや、我田引水の方か?」
ヅダはその高機動の裏返しに鬼のように推進剤を消費する。それを間接的に解決しようと考えたわけだ。
それにこれがうまく行けば今まであまり旨味を得ていないMIP社にツィマッド社は恩を売ることができたことになる。
商売人に恩など……なんていうやつは3流だ。
企業にしろ貴族にしろ血を大事にする。それはなぜかというと信頼、信用できるからだ。恩を蔑ろにするやつは客にしろ同業者にしろ信頼、信用などされない。客だけならず、企業同士であってもだ。
日本企業は割と信頼と信用を蔑ろにするけどな。(上げ底弁当や貼り付けサンドイッチで裏切り続ける某コンビニ、サビ残上等のブラック企業などなど)
ちなみにこのMS輸送機、形がバナナボートみたいで実際ヅダとザクが載っている姿はなかなかにシュールだ。
「……にしても何でもかんでも合作すりゃいいってもんでもないけどな」
手元にあるMS?MA?の設計図を見つつため息を漏らす。
疑問形なのは上半身はヅダ、下半身はMIP社の開発したMAであるMIP-X1というキメラ的な何かだからだ。
1+1して2だから1より強い!という頭の悪い代物すぎる。
もちろん却下しておく。せめてもう少しMSかMAに形を整えるように、と伝えると――ですよねー的な反応が返ってきた。
どうやら2社の技術者が交流会(という名の飲み会)で悪ふざけで作ったものが紛れ込んで俺のところまで来たとか。いやいや、もうちょっと管理ちゃんとしようぜ。相手が俺じゃなかったら色々と面倒なことになってるぞ。ザビ家ならドズル以外はアウトだろ。ドズルなら大笑いして……GOサイン出しそうで怖いな。
……やばい、他の連中が好き勝手してないか心配になってきたぞ。
下手をしたら機密保持だからとかっ言って内密に同じような研究とかしてる可能性がある。そんな非効率なことしていたら国力に劣る俺らが連邦に勝てるわけがない。
「1度ギレンさんに引き締めを頼むかね」
全部ギレンさんの採決が必要ってのはさすがにないが、もう少し部分的にでも風通しを良くしておく必要があるだろう。もちろん俺が知らないだけってんなら問題ないが。