第六十九話
「さすがジオニック、さすがの速さで改良機を出してきたな」
MS-06ザクIIと名付けられMSを眺めながらつい声に漏れる。
さすがに数が少ないということで1機しか回ってこなかったが、テストも兼ねているんだろうな。
しっかし……なんかザク……紛らわしいのでザクIという名に改められたが旧ザクとも呼ばれている。まぁどっちも通じるぐらいに浸透しているからどっちでもいいが、正式名はザクIとなった……よりもザクIIの方が試作機っぽいな。
出力向上に伴って装甲強化を施されて重量の増加でザクIよりも全体的に丸くなったり厚みが増して整備性の問題で露出することとなった動力パイプが更に試作機っぽさを醸し出している。
とはいえ装甲が厚く、効果があるのかは今の所未知数なショルダーシールドやショルダースパイクなどが付け加えられているにも関わらず、運動性、機動性は以前と変わらず、継戦能力は推進剤の増加で増し、レスポンスはザクIを大きく上回っている。
これらはジェネレータ出力が上昇し、安定性も向上し、核融合炉が小型化されたことによって実現された。
更には生産コスト自体は随分下がっているらしい。
情報によれば重要部品の1つに希少金属を使っていたものが代替部品の開発に成功したことが主な要因らしい。
その希少金属の主要採掘地が地球だったのだからことの重大性がわかるだろ。
とはいえ、その代替部品の開発に成功した要因は先日引き入れたアナハイムから齎された設備だというのだから何の皮肉やら……ああ、キシリアに関してだが『一応』アナハイムの一部の取り込みを功績として資源衛星の責任者となった……全く手つかずの資源衛星だが。
相応の資金を与え、採掘開発を1からやらせる。ただし、戦略資源が埋まっていることがわかっているので他企業からの支援は認められない。
もちろん人材などはある程度融通するが、戦略資源が埋まっているとは言っても現状優先順位はそれほど高くないので上等とは言えない人材が派遣される。
簡単にまとめると、罰としてとりあえず苦労をして来いということだ。
キシリアみたいなエリート気取りには訓練なんてやらせても自分のやることじゃないと思考停止して反省すらしないからな。こういう責任ある立場につけて追い込んでこそ矯正できる……かもしれない。世の中には働かない無能とか働く無能とか働かずに有害とか働く有害とか色々いるから一概には言えんよな。
ちなみに矯正が失敗した場合のことを聞くと――
「是非に及ばず」
――と返ってきた。どこの第六天魔王かな?
まぁそう言いつつも消すことはしないようだが、表舞台……少なくとも政治家や軍人の道を歩むことはできなくなるだろう。
「多分政略結婚なんかに使うとかそんなところか」
正直キシリアを政略結婚に出したところでちゃんと家と家を繋げられるかは疑問だが……兄弟殺しよりはいいか。
話は戻すとしてザクIIの評判だが、改良機……もう既に新型機に近い気もするが……というだけあってハウンドでも随分評判がいい。
ギレンさんが言うには近い内に追加で2機配備してくれるという話だが、その代わりザクI3機と交換だ。
特に異論はない。
「そう言えばMIP社が妙な兵器を持ってきたな」
現状MSの武装は試作中ではあるが本決まりしているのはマシンガンタイプとバズーカタイプの2種類なんだが、MIP社はそこへ持ってきたのがMSで艦艇を堕とすにはマシンガンでは火力不足、バズーカでは弾速が遅いため命中率に不安があるということに目をつけてマシンガンより高火力でバズーカより速度を求めて開発した……対艦ライフルだ。
とりあえずウチでテストすることになっているが、カタログスペックだけ見るととりあえずは艦艇相手に使えそうではある。