第七十話
ジオン軍ではザクIIの完成で第1次MS開発は完了となった。
もちろんMS開発そのものは止めるわけではない。しかしMSの開発だけに集中するわけにはいかない。
ツィマッド社やMIP社がMS輸送艦や対艦ライフルを開発しているようにMSの武装開発も肝心だからだ。
普通なら同時進行で開発するものなんだが、MS自体が未知の兵器であるためどうしても後手後手になってしまうのだ。
一応はMS……特にザクに関しては想定されるおおよその兵器を装備しても問題なく使えるように作られている。だが、やはり最適解というものに行き着くにはある程度指標ができてからという話になり、その指標がザクIIと定めたということだ。
これからはザクIIをベースに改造、改良がされることはあっても、大きく仕様が変更されることはない。
ちなみにザクIからザクIIに変更する際に、仕様変更が大きすぎてる点でジオニック社は責められていたりする。
もちろん主要兵器の生産メーカーであるため注意や警告程度だが。
ジオニック社も既に生産したザクIに関してはザクIIに匹敵する性能まで引き上げることを約束することで丸く収まった。根本的にはザクIの性能よりも整備性の悪さだから解決にはならないのだが。
ジオン軍が順調に軍拡を進めている中、地球連邦はどうしているかというとジオン軍とは違った技術によってで艦艇用大型ビーム兵器……メガ粒子砲の開発に成功していた。
ただし、ジオン軍のメガ粒子砲と比べると収束が甘いため、有効射程が短い……つまり威力そのものも低く、そもそも粒子加速に使うエネルギーの確保するために発射する際には随分と制約が発生する代物である。
これは当然ながら連邦内でもかなり重要度が高く、軍機レベルはかなり高く設定されている……のだが開発成功してから数週間後にはジオン軍に漏れてしまっていた。政府が腐敗しているからこそ独立を叫んでいるのだから当然といえば当然の結果である。そもそも軍機なんてものは上が定めるものであるから腐っている上の連中が嬉々として賄賂で口を滑らせるのだ。
それにジオン軍がメガ粒子砲を開発、しかも自分達の開発したものよりも高性能なものを実装されているとは思いもしておらず、むしろ自分達の兵器を漏らすことで威信を示し、更に賄賂を要求できると目論んでいるのだ。
自分達が既に通ってきた道を歩んでいることを威張り散らしていることは失笑ものであるが、実際には笑えない事態でもあった。
まだまだリードしているとはいえ、形にはなってしまった以上は開発そのものは加速していくことになる。
ギレンを始めとした軍幹部にとっては戦争へのカウントダウンが聞こえた瞬間であった。