袁袁 幼少期
「ねぇ、おちびさん」
「なんじゃ、ぷに腹」
「ぷに?!」
「ん?隠しておるつもりか、袁紹。そんな露骨に体の線を誤魔化すような服を選んでおるのじゃから自覚しておるじゃろ?」
「■▲×●?!~」
そもそもそのボディラインを消す服の開発は吾じゃからの。いくらオーダーで作ったとしてもそのデザインや意匠は大きく変更できん以上は見抜けぬわけがなかろう。
ちなみに吾の目測じゃと……プラス三キロというところか?まぁまだまだ成長期であるし本来ならあまり気にする必要はないと思うんじゃが。
ついでに言えば袁紹ざまぁの体重が増えたのは勉強会の度に吾がお菓子を差し入れしておるからじゃろうな。
袁紹ざまぁは吾と同じでなかなか繊細な舌を持っておるから味見してもらっておるんじゃよ。
あ、吾は太ると嫌なんで遠慮しておるんじゃよ。蜂蜜も食べたいしの。(この頃はいくら食べても体型が変わらない(成長しない)ことを知らなかった)
「そ、それはともかく今日もいいお天気――」
「勉強が嫌じゃからと話を逸しても良いことはないぞ~。ほれ、とっとと計算してたも。ちなみに答えは五じゃぞ」
「そ、そう、ありがとう……って、全然違いますわよ?!また騙しましたわね!」
「うむうむ、答えを教えられたからと確認せずに書かんかったのぉ。成長の証じゃな」
「もちろんですわ!この前はそれで全問不正解なんて不名誉なことになりましたのよ!」
「いや、何も考えずに吾が言った通りにした方が悪いじゃろ。頼るのと甘えるのとは違うぞ?」
カンニングは良くないぞ~。
ルール破りだからというより身のためにならんからの。
「むきー!そんな意地悪ばかり言うなら私がえらくなっても使ってあげませんわよ?!」
袁紹ざまぁの中では吾より偉くなれることが確定しておるようじゃ。色々と残念じゃのぉ。
「それは残念……と言いたいところじゃが、お互いのためにやめておいた方がいいじゃろうな」
「なんでですの?」
「吾がおぬしの上ならおぬしの大事なものまで守ってやるが、吾がおぬしの下ならおぬしの大事なものを犠牲を強いることになりそうじゃからのぉ」
「どこまでも酷いですわね?!」
「上に立つ者とはそれだけ犠牲が付き物で、吾はそれを見過ごすようなことはせんということじゃよ」
(だから本編では平和の引き換えに多くの人達(帝を含む)の睡眠時間と自由な時間を犠牲になっているのだ)
「おちびさん、上に立ったこともないのによくそんなことを堂々と言えるもんですわね」
「ふむ、まぁそうじゃな……あ、今の漢王朝なら無能でも上に立てるか。なら袁紹はそっちじゃな」
「おちびさん?!頭はいいのにお馬鹿さん!そんなこと思っても口にしてはいけませんことよ?!」
「おお、これはうっかりしたの。すまぬすまぬ。お礼にこの新作林檎包み焼きをくれてやろう」
これはうちの料理人に頼んで作ってもらった、○になるリンゴを再現したものじゃ。
「毎度毎度違うお菓子が出てくるのは素晴らしいですけど……おちびさん、私に喧嘩売っているのかしら?」
「ん?買っても良いがそれ相応の覚悟をするんじゃぞー」
「…………まぁ!美味しい!」
誘惑に弱いのぉ。そんなだから太るんじゃよ。
「ところでおちびさん」
「なんじゃぽっちゃり進行形」
「なんですの!その不名誉っぽい呼称は?!……ではなくて、その……(ゴニョゴニョゴニョ)」
「ん?なんじゃ?よく聞こえんぞ?」
「ど、どうやったら効率よく痩せるのかしら!」
「ん?聞こえんかった――」
「殴りますわよ」
「冗談じゃ冗談。だから殴ると言いつつ剣を抜くでない。危ないじゃろ」
主におぬしが。
後ろで紀霊が冷めた目で見ておるぞ。