第四射 帝国の狙撃手
戦争真っ只中というのにこんなマッタリしていていいのかと思う今日この頃。
俺が戦艦を撃墜しまくってから各地で連戦連勝。
正直このままメガロメセンブリアまで到達しそうなの勢いなのですよ。で、軍人さんはというと俺のせいで激減した連合軍の戦力を食い潰す勢いで走ってる、手柄が欲しいんだろうね。
俺が出撃する機会も5.6回に1回。『紅き翼』の情報もまだ出ていないわけでこのまま終わってしまいそうだ。ぶっちゃけ勝てば戦争終わるからね。
おそらく今頃連合軍側に大量の兵器やらが流れていると思うよ?『完全なる世界』は戦争を続けさせて両軍を疲弊させるのが目的っぽいしなぁ。
「おーいシックス〜なんか雑誌にお主っぽいやつの話があったぞ」
あぁ、ついに俺も雑誌デビューか。
ええと、MAGI…いいか別に。あれじゃね、将来タカミチが載るとかいう奴だ。さて俺はどう紹介されているのか。出撃すればするほど戦艦撃墜数が増えていくからな。ちなみに出撃回数全5回で大小あわせて撃墜数179隻(帝国調べ)らしい。
終戦後のジャック・ラカンが130台だったからそれの軽く1.3倍。
連合側には結構恐れられているらしい。
「何々?」
〜今月の特集・帝国謎の狙撃手!その正体は?〜
今巷で噂される帝国謎の狙撃手を今回を追ってみた。
戦時中のため情報が極端に少なく帝国の公開情報にもまったく記されていない、性別年齢も不明。しかし今回なんと彼を見たというとある軍人とコンタクトに成功したのだ!帝国の狙撃手、いよいよその謎解明のときか!?
Q
顔などは見ましたか?見えたならどういう顔でしたか?
A
そうだな…、目が赤かった、な。
それだけしかわからなかった。
怖かったんだよあいつがもつ銃が火を噴くたびによ、仲間が肉片になっていくんだ。
もう怖く怖くて(泣)あいついつもフード被ってるそうじゃないか。ここだけの話だけどさ、俺逃げ回っててね〜その時だったよ。
見えたんだ。
先ほど言ったとおり真っ赤な目さ
Q
噂では複数人物という話がありますが?
A
そりゃねーな、考えてみろよ。
複数人物ということはあの異様に正確で強力な狙撃ができるやつが複数人いることになっちまう。
あいつが出撃したらこっち側の戦艦のおよそ8割が地面とキスしてしまうよ(苦笑)
あいつが出撃する時はな、ひとつの戦艦が妙に出張ってんだ。
そこにアイツがいる。
妙に出張ってる戦艦を見つけたらみんな一斉に避難を始めるんだぜ
Q
戦艦を多く撃墜しているとのことですが、どれほど?
A
あ−、一応連合の公式では92隻だったかな?正直いうとあれは嘘だな。
開戦当初の戦いかなぁ、俺が載ってる戦艦が運よく逃げることができたんだけどよ。
周りにはいまやいまや落ちそうな戦艦が数隻だけだったぜ。
見渡す限りの戦艦が戦意が最高潮にも関わらずにな、アイツの冷酷な狙撃であっというまにお陀仏だ。
あのときはそうだな、50隻ぐらいあったんじゃねーか?あいつが出撃していたのは5回だけらしいが。
あいつがいる限り空には上がれねぇ。
面白い話だがアイツが現れて戦艦乗りが激減だ。(隊員募集中)
等といった彼(彼女?)に関する有益な情報はなかったが、狙撃手の恐ろしさだけは皆にも伝わることだろう。
白フードに赤い目!みんなの情報を求む!!
〜特集・帝国の狙撃手の謎〜
「なんだこりゃ」
「いまや連合軍側にとってお主は恐怖の塊じゃ。おぬしのおかげで制空権がとり放題とな」
本当は地上への攻撃もできるが世の中バランスが大切だ。
他の軍人さんにも手柄を残すように『手加減』しないといけないとは。
ドラグーンで敵のサイドからまっすぐ突貫したり地上に置きまくったメタルストームで弾幕張ったりと俺は快調だ。
投影の錬度もぐんぐん伸びる。空に固定したまま撃つこともできるようになった。
「ま、お主がいれば戦争もすぐに終わるじゃろ」
「…あぁ」
それは無いな。まだあいつらが来ていない。時系列は知らないがあいつらは必ず来るはずだ、最強の魔法使いどもがな。
そもそも俺が出撃するたびに何十隻も撃墜するのだ。それなのに一向に戦艦が無くなる気配がない。『完全なる世界』もまだまだ終わらせる気はないようだ。
「む?旧世界のNGOとかいう団体が連合側に参加したらしいぞ?平和団体のくせに戦争を長引かせるつもりなのかのぅ」
NGO…『悠久の風』か!『紅き翼』がいよいよお出ましというわけか、正直怖いな。
あんなでっかい魔法ぶっ放す奴と戦いたくないものだ、何しろ俺狙撃手なもんで。
ベットに寝転がりフンフン言いながら足をばたつかせるテオに萌えながら俺はあいつらとの戦いをシュミレートする。
まだ相性が最悪かと思われるジャック・ラカンなどはいないだろうがそれでもあの…ナギ・スプリングフィールドは恐ろしい。
○
悠久の風所属『紅き翼』を率いるナギ・スプリングフィールドの名はすぐに広がった。
あともう一歩でグレート=ブリッジを陥落させようかと帝国は真の目的であるオスティアへと手を伸ばしていた。が、奴らのおかげでひとまず後退したらしい。しかも超痛手を追った軍団が速攻で撤退してきた。
それに鼓舞されたのか『完全なる世界』の仕業かあらゆる前線を押し上げられ、帝国の軍人どもは異様にピリピリしていた。
「…以上が作戦概要です。なにか質問は?」
「…無い」
俺の出撃命令が出た。
情報によると連合は異様な戦力回復をしたらしい。
誰か怪しんでほしいものだが正直殺し殺される戦争でそこまで考えれることはできまい。
「『連合の赤毛の悪魔』にご注意を」
返事をすることもせず俺は最初に乗ったあの戦艦に乗り込む。艦長の目が異様にキラキラ輝いていて怖い。
今回はあまり期待しないで欲しい。
あぁ『紅き翼』よ。それはそれはおろかなイカロスのごとく。俺の頭上を飛び越えることなど許さんよ。その翼ごと打ち落としてやる。
「シックス殿!今回もあなた様の狙撃を糞ったれ連合に見せ付けてやりましょう!フゥハハハー!!」
どうでも良いが甲板のひびは記念にとっておくらしい。ついでに言うとこの戦艦被弾数が零なのだ。
艦長が少し偉くなったらしい。
ナギが出ていた戦争でもよ?この戦艦のクルーもなんか俺のことを宗教の域に入ってるぐらい崇めてくる。
正直帰りたくなった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「フハハハーーー!我らの戦艦の強さを見せ付けてやるのだー!」
ウォォォォォオオー!!!!
ブリッジに次々とつながる各部署からの雄たけび。耳が痛い、怖いなにこの戦艦怖い。というか我らってお前らただ戦艦縦横カクカク動かしているだけじゃねーか。火力が俺の狙撃(という名の爆撃)だけってどうよ?
「全・力・全・進!ヒャッハーァ!!」
おい画面につば飛んでるぞ艦長。
それにしてもやはりこの戦艦が先頭になるわけなのだな。
インペリアルシップに尻向けてるとかもはや笑えてくる。
「おい貴様!なんだそのウスノロは!?皇帝(インペリアルシップ)に尻の穴でキスする気か!?ヒャッハーァ!」
「ヒャッハーァ!申し訳ございません!!」
いつのまにか掛け声が『ヒャッハーァ!』になっていた。
そして前進を始めて数十分後、相手さんが俺の射程内に入ろうとする。
「ヒャッハーァど…シックス殿!糞どもが『我々』の射程内距離に入ろうとしてますよ!!」
おい何か最初変な風に呼ばれたような気がするぞ?誰だよヒャッハーァ殿って!どこまでテンション狂ってるんだ!というか我々て!俺のだよ馬鹿!つ、疲れるぜこの戦艦。
○
「いつになったらあの帝国の狙撃手に会えるんだ?」
連合軍のとある戦艦での話。
杖を持った赤毛の少年が仲間と思われるフードの男と短い黒髪のメガネの男に言った。
「安心してください。哨戒によると異様に出張った戦艦がいたそうです。あのインペリアルシップよりも前にね」
フードの男がフフフ、と笑いながら返した。
それを見たメガネの男は、やれやれとため息を吐き自らの獲物である『刀』を握り締めた。
「へ!それはいい情報だ!後ろで逃げ回る卑怯者に俺たちの強さを教えてやらねぇとな!」
ダァァァンン!!!!
その時だった。
突如連合軍の戦艦に響いた爆音。
帝国の戦艦との距離はまだあるはずであったのに。
しかし誰もが何が起こったのか理解していた。
帝国の狙撃手(スナイプ・オブ・インペリアル)が戦場にいると!その時点で多くの兵士の戦意は無くなる。
特に戦艦乗りにとって彼の存在は致命傷とも言えるのだ。
「な、なにが起きた!?まだ距離は…狙撃か!?」
「そのようですね、ナギ。行きましょうか。狙撃手をなんとかしないと勝利は得られません」
そう言い戦艦を一気に飛び出した『紅き翼』。
意気高揚と身を乗り出したが既にそこは戦場となっていた。
遥か彼方から飛んでくる紅い閃光が身が震えるほど正確に、戦艦へのブリッジへとまるで吸い込まれるかのように次々へと爆煙を上げる戦艦を後ろにし『紅き翼』の面々は狙撃手のほうへとまっすぐ飛んでいった。
「ナギ!絶対に紅い閃光に当たってはいけません!あたったら間違いなく即死です!」
ドォォォン!!!
「あぁ!わかってるよ!!」
彼らが飛んでいっても魔弾は減らない。
爆音と爆煙を起こすそれはまさしく『死』を体現していた。
ダァァァァァン!!!
「うぉ!危ねっ!?」
赤毛の少年へとまっすぐ飛んできた弾丸を間一髪で避ける。フードの男はその時点で狙撃手が彼らへと標準を向けたことに気づいた。
「いけませんナギ!狙撃手に狙われています!ここは散ったほうが!」
「(弾丸って斬れるのかなぁ)」
「あぁ!だが俺はあえてまっすぐ行くぜ!」
「(なにそれこわい)」
赤毛の少年の言葉に別のことを考えていたメガネの男は頭痛を覚え、こめかみを押さえた。
しかし彼もフードの男も、そんなところが彼の良い場所だと、無理に納得していた。
ダァァン!!!ダァァン!!!
しかし散ったのも無駄であった。
狙撃手はただ一点、赤毛の少年へと標準を向けていたからだ。
気づいたその時には既に遅く、先ほどとは比べものにならない数の弾丸が赤毛の少年へ向かっていた。
「(まずい!むしろ私達を散開させるのが目的でしたか!?)」
ダァン!ダァン!!ダァン!!!
弾丸が赤毛の少年のローブを掠りとる。
掠っただけでローブをボロクズのようにした威力に恐怖を覚える面々。
されど恐怖を感じ取る時間も与えないのか弾丸は更に飛んでくる。
「はっ!後ろからネチネチすることしかできないくせに!うっぜぇーー!!!」
赤毛の少年の右手に魔力が集まり『雷の暴風』が放たれる。
弾丸を巻き込み爆煙をあげながら弾丸が飛んでいった方へと進んでいく。
距離にしてあとどれくらいだろうか。
彼らにとってその一撃必殺の弾丸の雨を超えることはもう二度と経験したくないものであった。
だがその放たれた暴風は帝国の障壁によってかき消された。
さすがに赤毛の少年でも遠距離からの魔法では障壁を越えることはできなかった。
故にある程度近づかないと効果的な損害は与えられないのだ。
彼の狙撃も遠くにいけばいくほど貫通力が下がるのは同じことであるが違う点は彼の狙撃は二発同時に行われることであった。
「チッ!アル!詠春!援護してくれ!」
魔法の効果か狙撃はいつのまにかやんでいた。
これを好機と一気に別の戦艦からの砲撃を潜り抜け先頭の戦艦を捕らえた。
「見つけたぜ!!マンマンテロテロ…」
異様に長い砲身の銃を狙撃体勢で構えていた白いフードを被っている男が見えた。
彼は一向狙撃する気配がなく、赤毛の少年の魔法が放たれようとしたとき。
「ナギ!!罠です!!」
「メリークリスマス(地獄で会おうぜ)」
ダダダダダダダン!!!!
赤毛の少年たちの更に上、桃色の龍の形を模したソーサーに乗り黒と白の銃を赤毛の少年へと向ける存在、間一髪それに気づいたフードの魔道士『アルビレオ・イマ』はとっさに叫んだ。
よく見れば狙撃体勢をとっていたのはただの人形であったのだ。
「あ、危なかった…」
ハァハァ言いながら赤毛の少年を救ったのはメガネの男『青山詠春』…彼であった。
赤毛の少年はいまだに唖然としていたがすぐに持ち直し、狙撃手へと見やった。
しかし狙撃手は彼らに興味がないかのように高速で連合の戦艦へと向かって行った。
「野郎!逃げる気か!?」
「やられましたね、今回は撤退したほうがいいかもしれません」
「だーーー!!!糞っ!狙撃手!絶対に覚えていやがれ!!」
赤毛の少年の叫びは、帝国の戦艦の砲撃によって掻き消された。
○
「忍法変わり身の術でござるよ、ニンニン!!」
それにしても危なかった、全然あたら無いんだもの。
まぁ『運』良く後ろの戦艦巻き込んでいたけどね。というか完璧な奇襲だったのにあのフード野郎気づきやがって。というかキャラ被ってんだよ馬鹿。そいつを優先しときゃ良かった。
「おおっと危ね。だがその程度で我がドラグーンにはあたらぬ!当たらなければどうてことはないのだ!!」
連合の戦艦による砲撃、精霊砲だったか?それは帝国か。
どっちだっけ?まぁいいさ。俺の龍は止まらないぃぃぃぃゃヒャッハーァ!!!
「『歯車・起動』」
設計図を引き寄せろ。
作るのはガトリングガンだ。
両翼機首にくくりつけるように投影する。計三門の機銃が戦艦を狙う!さぁ行こう戦争だ。
俺の限界まで加速するこのドラグーンはあっという間に連合の戦艦上空へとたどり着く。
「誰か太陽を背に!?とか言ってほしいな」
そんなことあるわけないので3門のガトリングガンを滑空しながら掃射する。
3門のガトリングガンが戦艦を次々をぶち抜いてく。
あぁ爽快だ…爽快とか何いってんだ俺は。そこら変の雑魚魔法使いが『魔法の射手』をぶっ放してくるが俺には当たらない。
うらやましいな、俺影しか使えないもの。影の倉庫とか便利だけどさ、転移の魔法はまだ錬度が低くずれたりするのであんまり使わない、使わないからうまくならない、なにこの負のスパイラル。
ある程度片付けると撤退の動きがあった。
その気になれば追撃戦も余裕で可能…というか先回りもできるのだが俺は戦闘狂ではないのでそんなことはしない。
どうにも俺はこの戦いで更に有名になってしまったようだ。
もっとも名前も年齢も不明なのだが帝国の狙撃手(スナイプ・オブ・インペリアル)というそのまんまの二つ名で広まっている。
白いフードに赤い目(雑誌情報)と桃色のソーサーにのっている。
それしか情報が出回らないとは連合の阿呆どもは帝国にスパイも送りこめないのか。
『紅き翼』と『スナイプ・オブ・インペリアル』との戦い。
これからどう動くか、ここにゼクトやジャック・ラカンが増えたら俺でも対処できなくなりそうだ。
影の魔法の練習をしとかないといけなくなるな。
身体能力に身をまかせるのも問題があるしな。
気も大量にあるのだが基本的に魔力を使うので無駄になってしまった。
偉い人によれば咸卦法を使えるようになれば問題無し(モーマンタイ)とか言っていたがいつ習得できるのやら。
「あーーー、俺もずいぶん壊れてきたなー」
To be continued