第十五射 神鳴流は弾丸を斬る
「ねーねー龍宮さん」
とある教室にてこんな会話があったそうな。
放課後に入り皆部活に行くなり友達とだべっていたりとそんな教室の一角にてマイクを片手に持った、パイナップルみたいな頭の少女が褐色肌の少女(大)に爆弾を落としたのだがきっかけである。
「なんだい?」
褐色肌の少女は龍宮真名、一方マイクを持っている少女は朝倉和美といい、この麻帆良におけるパパラッチとして有名である。
この朝倉和美が動くと大抵やっかいなほうに流れるのが常套であり、なんの因果か朝倉和美に話しかけられたマナである。
特に共通の会話を持っているわけではない二人であるためマナは珍しいと思いながら無難に答えるのだが…
「龍宮さんってさ、彼氏いるの?」
「…は?」
爆弾が落ちた。
それも極大な。
&彼氏&の言葉に教室が一斉に静まりかえり、会話している二人のほうを見ていた。
一瞬の静寂の後、キャーキャーワーワー五月蠅く騒ぎ出す。
下手をしたら教師を潰すこのクラスの元気の良さは麻帆良随一とも言われ、特にこの麻帆良における学生の中で最も歪な生徒達がいるクラスである麻帆良学園女子中等部3ーA、そのクラスには天才はおるわ、忍者がおるわ、ガンナーがいるわ、魔法使いがいるわ剣士がいるわ、色々厄介なクラスである。
「フッフー、ネタは上がってんだよ!」
チラっと二人にしか見えないように写真を取り出す。
マナは声が出ない、出せなかったのだ。
写真には一組の男女、何を隠そう女こそ龍宮真名本人であり男は白髪のスーツ男。
シックスが映っていた。
そこでマナはようやく気付いた、己がやらかしてしまったことを。
「oh」
師匠の口癖が移ったかな?と思う暇はない。
写真を見ようとクラスの人間が集まってくる。
もともとお祭り好きの連中な上、女子中学生という他人の恋愛といった部類に関してはそれはもう砂糖に群がるアリのごとく。
戦場において傭兵たる冷徹さを兼ね備える龍宮真名は今、教室という戦場で儚く散っていった(エロくない)
「うわーーめっちゃカッコイイ!」
「おお!外人さんだぁ!」
写真に写る白髪オールバックの男&シックス&に対して各々の評価を与えるクラスの人間達を見ながら龍宮真名は色々と複雑な感情であった。
『計画通り!!』と言えばいいのか『しくじった!?』と言えばいいのか…どちらにせよ目立つのを極端に嫌う(そのため異様に目立つ)ためシックスにとってなかなか面倒くさいことなのだ。
特にこの3ーAの人間は下手をしたら町中で見かけたシックスをストーキングするかもしれない。
「渋いなぁ、アスナの好みちゃうん?」
「んーー…」
そんな中このクラスの莫迦のリーダー格である少女の品評が始まる。
翠と蒼のオッドアイに長いツインテール、髪留めの装飾としてある鈴がチリンと鳴く。
写真のオッサンをみて、ムムム、と唸るように丹念に見て回り(エロくない)そして出た結果が。
「殴りたい」
「「「!?」」」
「なんでかしらねー、妙に腹が立つわ。結構好みなんだけど…あるぇ?」
自身ですら理解出来ない感情を他人が理解出来るかどうか。
彼女『神楽坂明日菜』は頭をひねるようにして考える。が、考えても考えても腹が立ってくるのは何故なのか。
これが噂の生理的嫌悪という奴なのかまだ彼女にはわからなかった。ただ言うなれば彼女の失った過去が関連しているのだが、これはまた別の話にしよう。
「へへへー、もう逃げられないよ龍宮さん!」
「彼とはただの知り合いだよ…あははは」
目が泳ぐとはまさにこのこと。
明日の方向を見る龍宮真名の目を生粋のパパラッチである彼女が見過ごすわけがない。
次々と質問攻めをする朝倉和美と愉快な阿呆達、まだまだ1日は続く。
「(…本当に誰だ?)」
そしてその写真を妙に熱心に見つめるポニテ少女がいたとかいなかったとか。
○
今夜はとても面白いものが見れるという。
莫迦ナギの息子であるネギ・スプリングフィールドとエヴァンジェリンの決闘が始まるそうだ。
その日だけ警備が異様に強化されながらも、とある部分だけ誰もいなくなるという不思議な警備体制だった。
ジジイの電話によって知らされたことだが…俺にくれぐれも狙撃するなという注意を再三払ってもらった、やかましい限りだ。
「だるい」
実際見ていると非常に面白くないことが判明した。
エヴァンジェリンは経験もあるし、結構前から吸血活動によって魔力を蓄えたらしい。だが見れば、十数発程度の魔法弾で牽制しあってるだけだ。
10歳の子供にしてはなかなかやるがな。魔力の多さ、なにより才能の塊だ。
主人公としての悲しい過去(笑)もちゃんともっている言うことはない。なるほど主人公だ。
ダァァン!!
エヴァンジェリンから放たれる冷気の魔法をくぐり抜けたりもろに当たったり、素人全開のくせに中位精霊を召還するわ一体なんだコイツは。
将来有望なのは間違いないな、確かにコイツなら英雄たる存在になれる。
連合の奴らが好みな英雄にな。
「でも子供なんだよなー」
橋まで誘導したエヴァジェリンを罠にかける。
そこまではいい、非常にいい。
持てる力を持って敵を打倒する、それこそ人間が頂点にたった知恵という武器だ。だがその後がひどい、なにこれ莫迦なの。罠にかけただけで勝利を確信するのは二流どころか三流。というか罠を破った敵にだだをこねるとは。
「ごめん正直羨ましい性格だわ」
一体どういう家庭で育っ…父親は行方不明、母親はアレだしなぁ。家庭の件はしょうがない。
環境がどんだけー、っていう話なんだな。だが俺が一度訪れたウェールズのあの村は結構信頼出来るんだけどなぁ、学校のほうに問題があったか、この家庭崩壊野郎。
「師匠、ネギ先生はどうだい?」
ぼーっと観戦しているとマナがやってきたようだ。
一応屋上は俺の家の一部なんだけど…そういう風に買収したとジジイが言っていたが、不法侵入ですね。
勇者しかり魔法使いしかり社会のルールも守れないか、特に勇者!お前タンス開けるんじゃねーよ、ステテコパンツ持っていくんじゃねーよ。
「まぁ、才能はあるな。将来にごきたーい」
「ハハハ」
どうにも聞いたところによると初日で魔法バレ起こすわ、女子寮にて変態行為をかますネズチューが使い魔とか、クシャミで武装解除が起こるとか、なんだお前ここに何しに来てるんだよ。
一応主席プラス飛び級で卒業だろうが、最初に魔力のコントロールさせろよ一応名門だろうが、なんだこのツッコミどころ満載な環境と莫迦餓鬼は。
「なんだあのツインテ…障壁突破…?」
「神楽坂明日菜だね、本当になんだ?」
へーあのオレンジのツインテールは神楽坂明日菜と言うらしいぞ。
真祖の吸血鬼の障壁を跳び蹴りで破る&女子中学生&だ。とういうかどこかで見たことあるような気がする。
よー見たら左右の目の色が違う、何色かよくわからんが…ん?あるぇーどこだっけなぁ。
まぁテオドラ以外の雌のことなんざぁどうでもいいさ。というかマナちゃんあんまり近寄らないでくれる?
「足に障壁突破の術式でも埋め込んでいるのかね」
「そんな、師匠じゃあるまいし。体に埋め込んだ術式は発動すると痛みが発生するもんなんだよ」
「もう慣れた」
「……」
なんだその顔は、まるでゲテモノを見るかのような顔はなんだ。大切なことだから三回目も言っていいですか?あぁ、はい。&慣れる&って結構大変なのよ?そりゃ極地対応型凡庸兵器オレだけどさ、説明書(?)によれば裸で南極横断も出来るらしいぞ。あくまで能力値から算出した結果だけどさ。
どうやって&慣れ&の能力を数字にしたのか一切不明なので信憑性に欠けるがな。
「おい、なんだアイツは」
「ノーコメントで」
結局最後は魔法の撃ち合いで終わらせるのだろう。
あのツインテ…あー、カグラザカアスナだったっか。
そいつはあの莫迦餓鬼にとって色々大切なモノらしいな。
折れかけた心が元に戻すか、ただの中学生が。
それにしても障壁を消すとなー、まるでマッジクキャンセ…あ、アスナ姫だった、アイツ。
やっはー、やっと思い出した。
あれから20年もたつとさすがに忘れちゃうよーなははは。
「持つべくして持つか、そして持つモノのはやはり『ソコ』へ」
「?」
隣のマナが首をかしげた。
いずれコイツにもわかるときが来るだろう。
さて、エヴァンジェリンの『闇の吹雪』と莫迦餓鬼の『雷の暴風』、一見均衡しているように見えるが一体何を遊んでいるのやら。
それにしても10歳で砲撃魔法を使うか、なかなか気合い入ってるなー。
あ、クシャミが…
「クヒヒヒヒ」
「師匠…」
ナニコレ、まじ面白いんですけど。
武装解除がのったクシャミに負ける闇の吹雪(笑)そしてスッポンポンになる幼女の図。
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、幼女の裸とか誰得だよマジで。
どういう原理でクシャミに武装解除を…クヒヒヒ。やっべぇなにこれ録画して『まほ動』に投稿すればよかったかもしれん。ヒャヒャヒャ
「そして落下ヒャヒャヒャする幼女ヒヒヒヒ」
「わ、笑いすぎだよ」
「だってよ?クヒヒ、クシャミに負ける闇の吹雪って、なにそのギャグ?」
エヴァンジェリン(笑)になってきたな。
やはり幼女は幼女か。
無理もないさ、幼女だからな。
そして落下する幼女をしっぽり助けてフラグをたてるっと。
なるほど完璧だ。
エヴァンジェリンは封印されると見た目通りの幼女だからしょうがないな、魔法薬の補助でなんとか魔法を打ち出すみたいだが…飛行なんて出来るわけもないか。
いや俺も出来ないんだけどね、ずっとドラグーンに頼っているから。
「いいもの見れた、爆笑だなこれ。まほネットでスレ立ててやろう」
「やめときなよ」
タイトルは何がいいかな。
闇の吹雪がクシャミに負けたという事実を全面に押し出すか、結果として幼女がスッポンポンになったことを売るべきか。
迷うな、いやぁー今から楽しみだ。フヒヒ。
○
翌日だったかその日は
トゥルル「ダァン!!」…
五月蠅ェ、時計を見るとまだ5時にもなっていない。
家の電話が鳴るということはジジイからの電話ってことになる。
仕事だけの目的のために来ているが…何か寂しいものだ。
フン、そんなことはどうでもいい。
何はともかく夜の警備しかしない俺だとわかっておるくせにそれ以外の連絡とは…本当に何を考えているのかあのジジイ。
(シックス殿!電話にでんかーい!!!)
(電話にでんわーい)
ジジイからのモーニングコールとか本気で死にたくなるからやめて欲しい。
既に寝むたさとダブルノックで死にたいから。
それでもなおしつこく念話をかけ続けてくるヤンデレジジイの相手をしてやることにしたのだが…朗報と言えば朗報か。妙な仕事を押しつけられたことになったが…
「京都、ね」
「うむ、京都における揉め事解決のエキスパートとして修学旅行に参加して欲しいのじゃが」
なるほど、タイミングとはこのことか、莫迦ジジイ最初からこうするつもりだったのかよ。
なんだかムカツクなぁ、末端が上部のことなんざ考える必要はないが…納得は行かないものだ。
ジジイの部屋に至急来てくれとのことだったか、行ってみればあらこの通り。
「それで?」
「というのは名目で本当はワシの孫の護衛な」
近衛木乃香嬢のことだろう。
こんな後頭部の孫が大和撫子を体現をしているとはな、遺伝子の神秘と言うべきか、そもそもこんな後頭部にどうやってなったのか非常に気になるところだが生憎ジジイの生態系について詳しく知ろうなんざ一ミリも思わない。
「金」
「前300後700」
「引き受けよう…と言いたいところだが」
なかなか羽振りがいい仕事だ。
単位は万、成功報酬として合計1000万貰えるということだ。
1000万あれば大量に株も買える、株主総会にいい話を聞けるかもしれないしな。
話はずれたがこれは中々美味しい仕事だ。
餓鬼のお守りで1000万、いい。
実際本当に護衛は必要なのだが、別の護衛もいるしそこはなとかなる。まぁ一番これが問題なのだがな
「護衛が既にいるだろ、なんでわざわざ俺を?」
俺の質問に対して、ムムム、と唸る莫迦ジジイ。
だいたい予想はつく、というより僅かに覚えている。
木乃香嬢の護衛として桜咲刹那がいる。
初日の仕事でマナの隣にたポニーテールだ。で、桜咲刹那の性格に色々問題があって木乃香嬢の護衛のくせに側に近寄ろうとしないという。何がやりたいんだか。
「それなんじゃがなー、色々あるんじゃよ」
色々ありすぎろ莫迦。面倒なのは嫌だぞ俺。観光する気全開だぞ俺。
本当に揉め事を解決することになったら追加料金は…無理か。暇つぶしのゲームでも持っていこう。
電車で移動だろ?電車といえばゲームだろ、ちゃんと音は出さないように。マナーぐらい守れよな莫迦ども。
ガチャ
「失礼しま…あ」
誰か来た、黒髪のポニーテールだ。ポニテといってもサイドテールだがな!デコ属性もついてるな。とういうか君刀持って校舎うろつくなよ、認識阻害で何も思われないとしてもよ。辻斬りかコイツは。というか俺を睨まないで欲しいなぁ。
結局コイツ誰だよ。ってあぁ、桜ボンバーか、名前と顔が一致しなかったよ。
「学園長…こちらの方は?」
「ふぉっふぉっふぉ、シックス殿じゃ。シックス殿が此度の件で手伝ってくれる。協力して任務にあたるのじゃぞ?」
「護衛は私だけ十分です、こんなどこぞの馬の骨が…あ、マナの隣にいた人だ」
マナの隣?なんの話だ。
飯食いにいった覚えしかないが…その時見られたか?一部以外の関係者に見られるとはしくじったな。
こいつが持っている刀どっかで見たようなある気がするなぁ。
アスナ姫の事もあるし、どこかで見たんだろうけど。
だがなかなかいい傾向だな、主のために俺を馬の骨と言うかリアルに混じってるかどうすればいいのかわからない。
「まぁそう言うんじゃないぞ。実力はこちらが保証するZOY」
ダァン!!
「ふげぇ!」
キラッと星を出してウィンクするジジイを撃ち殺したくなった。だが実弾はさすがにやばいのでゴム弾を撃つことにする。
ゴム弾といえど非常に痛い、というか数メートルならば貫通することもある。そう、あるのだ。さすがジジイか、俺が撃つ瞬間物理障壁を張りやがって。
ゴム弾ならば「殺す気なかった」とうやむやに出来そうだ、お金とか使って。
「な!?貴様学園長に何をする!?」
「すまん手が勝手に」
「ふざけるな!」
やっべー、めっちゃ怒っているよこの娘。
相手がジジイだとなんでも許せるような気がするのは俺だけだったか、惜しいものだ。
「いてて…いや、いいんじゃ桜咲君。シックス殿、この娘が木乃香の護衛の神鳴流・桜咲刹那君じゃ。頑張るのじゃぞ?」
「しかし…」
まだ文句を言うかこの莫迦ポニテは。
このままだと俺が京都へ行けないじゃないか。
信用されても滅茶苦茶困るが、このままでも困る。
いいかジジイ、俺は京都へ行きたいんだ。
くいっと合図をジジイに送る、なんとかしろよ莫迦、という意味が通じるか…通じろよ莫迦。
「では聞くが、ずっと木乃香の側で護衛できるかの?」
「…それは」
「そういうことじゃ」
なかなか卑怯だなジジイ、近寄らない理由を知っているくせに。結構好感を持てるぞその態度。
莫迦ポニテも無理矢理納得してくれたのか渋々下がる様子、ジジイが取り出した契約書を細部まで確認し、契約の印を書く。
一応正式な書類なのでヘラス帝国第三皇女テオドラ・バシレイア・ヘラス・デ・ヴェスペリスジミア護衛ダブル・シックスと長ったらしい名前を書かなくてはいけないとは。だが今の俺はテオドラのためなら深海のセンジュナマコでも獲ってこれるよ、ガチで。
「フォッフォッフォ、では頼むぞシックス殿」
「足を引っ張るなよポニテ」
「な!?」
色々負けている捨て台詞を言いながらガチャっと扉を開けて退室っと。
それにしても1000万か、本当に何を買おうか迷うな、こっちで出来た金は基本的貯めないようにしているし。
いっそのこと募金するか?コンビニの募金箱に札束ツッコンでみたかったんだよね。無理矢理入れようとしている姿を見せ付けてやりたい。
あ、エロくないぞ?いやテオドラに貢ぐか、それがいい。早速考えなくては。
○
「おい待て!」
何を買おうか迷っているシックスは幾分上機嫌であった。しかしそれもすぐに終わる。
校舎から出て数歩のところで黒髪ポニテの少女に明らかな敵意を向けられて呼び止められたからである。
仕事の関係上恨み妬みを貰いやすいシックスであったがシックスが帝国における名を考えるとそれをやたら飛ばすモノはいなかった。
敵意を明らかに向けてくるのは愚か者だけということを頭に埋め込んでいるシックスは、故に腹がたった。
株を買わずに1000万全部使って装飾品をオーダーメイドしてテオドラに送ろうという計画における脳内作戦会議を妨害されたのが9割ほどだが。
なおシックス0からシックス9まで満場一致で「第16658回俺の主自慢大会」が開催されるところだった。
「貴様何者だ?」
刀を鞘から抜きギンギン(エロくない)に殺気を送る彼女に対してシックスはその苛立ちを隠そうともせず、だが実際は無表情だから隠れてしまうのだが、やれやれと言わんばかりに手を振る。
「使者が剥き出しの刀を振り回すか、なんだかなぁ」
「答えろ!」
対して彼女の返答は変わらない。
シックスはかすかに覚えている知識からなんとか彼女がただ近衛木乃香のことを想っていると、そのことはわかっているのだが刀を振り回して余計な敵を作ろうとしている彼女の行動は矛盾にしか想えなかった。しかしただ主を想う、シックスの彼女に対する好感度は滝登り(?)であった。
「(これが若さか…それにしてもなんと素晴らしい餓鬼だ、将来有望だな)」
「答える気はないか…ならば斬る!」
「(なるほど、斬ればわかる、か。みょんな名言だ)」
斬りかかってくる少女を適当にかわしながら余計なことを考えるシックス。
相変わらずな余裕の表情(無表情)の相手に苛立ちを積もらせる少女だが、刀を振れば振るほど&ブレ&ていくことはシックスは見抜いていた。
「貴様…ッ!」
「やれやれ…うざったい莫迦ポニテだ」
シックスは己の得物たる拳銃を取り出す。
相手は気を使うことにおいて右に出るものがいないと言われる神鳴流の剣士である(ラカンを除いて)だからこそシックスは、使う弾丸こそゴム製であるが、比較的威力が高いものを取り出した。
ダァンダァンダァン!!
様子見程度で放った弾丸は真っ直ぐと少女の心臓と脳天と顎を狙う。だが所詮様子見程度でありシックスの予想通り、というわけではないか少女の持っている刀が弾丸を切り裂く。
結果はもちろん無傷である。
「我が神鳴流に飛び道具は効かんぞ!!」
「へー、すごいね」
首を横に90度傾けて相手を莫迦にしてるとしか思えない口調で褒め称えるシックス、対して少女はコメカミに怒りのマークを浮かべてプルプル震えていた、悪くないとか良い奴とかそういう話じゃない。
声を上げて勢いよく斬りかかってくる少女、そしてシックスは少女が持っている刀のことを思い出していた。
「あぁ、詠春の刀かそれ(そういえば詠春も飛び道具云々いってたな)」
「長のことを知っているのか!?」
「まぁどうでもいいか…飛び道具ね、じゃこれは?」
もぞもぞとスーツのポッケから取り出したのはガトリングガン。
小さいポッケの穴から2メートルはある大きさのソレを取り出した光景とソレそのものに若干引きながらも、しっかりと刀を構える少女。だがシックスが彼女の手が震えているのは見逃すわけがなかった。
「毎分6000発の飛び道具はいかがかな?」
その兵器はM61バルカン。
その信頼性によりアメリカ空軍における戦闘機ほぼ全てに搭載されているロマンと実力を重ね備える兵器である。
「いや、あの…」
刀の先を若干下げながら「わけがわからない」状況をなんとか打破しようと少女は思考を張り巡らせる。対して「ヒャッハーァ!」と言いながら弾丸は出してはいないが砲身をギュインギュインと回すシックス。
その時の音が非常に心地よい。
少女は考える、だが生憎考えて答えが出るほど頭が良いわけでもなかった。
「そこまでにしてくれないかなシックスさん…」
「高畑先生!」
「ケッ、なんだよタカミチ、いまから面白いとこだったのに」
そんな時に救世主(メシア)たるタカミチが現れた。
変な汗をかきながら急いでやってきたらしい。そして知り合いっぽい二人に対して特にシックスのほうにだが、驚きを隠せない少女は説明を求める。
「あー、桜咲君。彼は僕の知り合いでね、悪い人じゃないよ(たぶん)」
『紅き翼』に所属していたタカミチの言葉通りなら彼の知り合いを斬ろうとしたということになり、結構やばいことである。そしてそれに気付いた少女に謝罪の嵐を貰うのだが…「ならばM61バルカンと神鳴流勝負しようぜ!」という悪魔の交換条件を取り出したシックス。だがタカミチの懸命なお願いに渋々とそれをポッケに入れてひき下がった。
なおこのときポッケに2メートルはあるガトリングガンが入るという異常光景を見て、少女と同じようにドン引きしたタカミチであった。
「(よい子のみんなはマネしないでね!)」
To be continued