第二十射 彼に敗北は無し
パパラッチという言葉に好感を持つ人は極端に少ないだろう。
パパラッチの語源は特に意味の無い人名の「パパラッツォ」とも騒がしいことでヤブ蚊の意味を持つ「パパラッチ」というイタリアの方言とも言われているが定かではない。
そもそもパパラッチとは俗に言うカメラマンの総称の一つであり、よくドラマなどで見ることの出来る「著名人のプライベートを撮影して雑誌や新聞を取り扱う会社に売り飛ばして金を貰う」人間のことだ。
まぁ生活のためど良い印象を持つことはあまり無いだろう。しかしこれらの行動で汚職事件やらが発覚したこともあるのでまとめるわけにはいかない。
「(超能力者!?宇宙から来た正義の味方!?人間界に来た魔法少女、男の子版!?)」
パイナップルみたいな赤紫の髪の毛を持つ少女がトイレで唸る。彼女の名前は朝倉和美。
彼女こそ麻帆良のパパラッチと呼ばれるはた迷惑な存在である。とは言っても彼女にでも良心やら自制心やらはある。
現に教師であるネギ・スプリングフィールドに生徒の宮崎のどかが告白したという話を直接インタビューし、本当だとわかったとしてもそれを表に出すことは無くただ応援したりした。だが、それでも彼女が今顔をツッコミそうな場所はそれと比べる必要がないほど&奇妙&な場所であろう。
「どっちにしろデカいネタに違いは無い、問題はそれをどうやって記事にするか…」
彼女は今までに撮った写真を思い起こす。
今でこそ考えてみれば&異常&ととれる現象はいくらでもあり、それを写真にも収めて来ている。
『麻帆良では特に何も思わなかったこと』がここ、京都では疑問に思えて来たのだ。だがまだ足りない、証拠が足りない。
彼女の記者魂が中途半端な記事を赦さないと燃えていた。
早速彼女は行動に出ることにした、記者(?)として身につけた変装術をここで使わずに何に使う!?
——カポーン
処代わり露天風呂、露天風呂には噂の少年ネギ・スプリングフィールドがいた。
京都に来てから、襲われたり告白されたりと様々な事件が立て続けに起こり少年は既に疲労困憊、肩をがっくりと落としため息を吐いていた。
同じように温泉に浸かっているオコジョが叱咤するも無駄なことであろう。
彼はまだ数えで10歳の子供なのだから。
「ん?誰か来たぜ?」
「あら、ネギ先生?」
先生タイム、ということでゆっくりと浸かっていたネギだったが、そう今は先生タイム。教師なら誰かが入ってくるのだ。
現れたのはメガネ巨乳のしずな先生だった。
風呂にピアスとメガネとは不自然極まりない。少しは考えてほしいものだが…今は置いておこう、なぜなら今
「うふふふふ、実はねネギ先生。私あなたの秘密を知ってしまったの…」
ネギの耳元で言葉をかけるその女性にたじたじな様子。
魔法使いということがバレたためか必死に誤魔化そうとするがダメだった。
魔法を見せてとせがむ彼女、それでも抵抗するネギ。
そこで彼女の最終兵器とも言えるべきかネギを自身の胸に押しつけて一気に攻め立てる(エロくない)大きな胸に溺れて溺死しそうなネギだったが、これが幸いとでも言うべきか。さすがイギリスの変態紳士ネギ・スプリングフィールドだった。
「あれ?しずな先生胸がすごく小さくなりましたか?」
「な、何ぃっ!?失礼ね!これでもクラスナンバー4よ!」
クラスという言葉が決定的だった。
正体を表せとネギは言葉を継げる。
バレたらしょうがないと、ようやく彼女の本性が現れた。
赤紫のパイナップルみたいな髪の毛、そう朝倉和美である。
ネギもまさか自身が受け持つクラスの人間だとは思わなかった。しかしネギも&一応&魔法使いである。
彼女の記憶を消そうと魔法の呪文を唱えるが……
「おおっと待ったー!このケータイが見えないの!?下手な動きはしないで。この送信ボタンを押せば…ふっふっふ」
彼女の手には携帯電話。
携帯電話の液晶には送信直前の画面が映っていた。
送信のボタンを押せばあら不思議、朝倉和美を通じて全世界に広がるドキドキワールドワイドウェブな作戦である。
朝倉和美の周到の良さにオコジョは怯む。
さすがに英雄の息子といえど全世界に広まってしまえばお終いだ、オコジョにされるのが目に見えている。
何よりオコジョが怖れたのはシックスの存在である。
エロオコジョはエロオコジョなりに彼のファンであり、このような失態をすれば彼が失望するのは目に見えている。
「うぅ、どうしてこんなことを…」
「フフ、スクープよ。全てはスクープのため」
ジリジリと詰め寄る朝倉和美、そして一歩一歩下がっていくネギ。
ネギに至ってはもはや涙目だ。
朝倉和美の野望が今ここで成就しようとしていた。
魔法を使わせようとよグイグイ引っ張っていくが、どうやら時間をかけすぎたようだ。
京都へ共に来ている魔法の関係者はネギ・スプリングフィールドだけでは無いのだ。
「どう!魔法を「ダァン!」と使う…気に……」
プシューと彼女の手にあった携帯電話の液晶部分に思いっきり風穴が空いた。
あまりにも突然なことでネギはもちろんのこと朝倉和美さえ穴が空いた携帯をじっと見つめたまま動かなかった。
バチバチと放電したり煙をプスプス上らせたり、百人が見れば百人が「ダメだなこりゃ」と思う惨状になっている携帯である。
ダダァン!!
「キャッ!?」
あそこまで派手に風穴空いたらさすがに耐えられないか、音とともに破裂してバラバラに為っていく携帯だった。
爆発の規模は小さく瞬時にどこからともなく飛んできた弾丸が携帯をはじけ飛ばし朝倉和美への被害をゼロにした。しかしこのことに気付くはずはない。
彼女からすれば突然携帯に穴が空き、突然爆発し、偶然自分はケガを負わなかった、ただそれだけであった。
「(ミッションコンプリートだ、莫迦餓鬼)」
どこかでこういう声がポツりと聞こえた。だが証拠が無くなっただけで彼女に魔法がバレたことは間違いはなく、妙な奴に知られたものだ、と黒スーツにグラサンの超怖い青年がため息を吐いた。
彼からすれば、バレることは前提なこの修学旅行ではあるが報酬を減らされる建前になってしまう可能性もあるわけで、一度だけスコープの標準が朝倉和美のコメカミと重なった。だがそこで思い直す、3−Aの人間の安全も確定されているのに狙撃するとダメじゃね、という風に。
どちらにせよ学園長に殺意が積もり狙撃手『シックス』であった。
「(俺は知らなかった、莫迦餓鬼の仕業だ、ならば俺は悪くない。悪いのは莫迦餓鬼とこの時代だ)」
「(あわわわわわ、シックスの旦那!?こ、こうなったら…)」
弾丸ということに気付いたオコジョは、いっそのこと朝倉和美を身内(関係者)として扱う作戦に出ることにした。
最初っから知っておけば評価が下がることはあったも最低にはならないだろう。なによりシックスと上手い関係を作っておけば帝国にパイプが出来るということと同義なのだ。
より罰から遠ざかるため、これはしょうがないことなのである。
○
夜になった、なったが俺の仕事は変わらない。なにより確実にアーウェルンクスを狙撃するため昨日と同じように屋根で警戒中なのだよ諸君。
さて、特に今日は何も起こらないことを願う。
矛盾しているが正直今の感想だ。
なぜならば今、超絶に面白いイベントが開催されているのだからなぁ。
楽しみで楽しみでしょうがないのだよ。
「頑張るなぁあの莫迦ネズッチュー」
見れば旅館全体を覆う魔法陣、仮契約の魔法陣だ。
この中にいる限り口づけを交わした者全員仮契約に陥れる変態な事態、しかし俺とはいうとワクワクテカテカが止まらない。
ロマンスティックが上がり続けていると言ってもいいぐらいだ。
他人の恋模様は撃ち殺したくなるが…どうにも口付けをするイベントが開催されるようで魑魅魍魎のごとく入り乱れる(エロくない)ことだろう。
「一人につき5万オコジョ$だったか。所詮ケモノの貨幣だが、これはおいしい」
今は準備中らしい、トトカルチョも俺は参戦する気マックスなわけだが誰につぎ込むかが問題だ。
誰につぎ込むとしても倍率を考えて、もしかしたら二人…連馬になるかもしれないし、それでも当てやすくするよう単馬か、これは難しい。
俺の勘的にいうとこういうのは武闘派ではなく大人しい(ように見えて牙を研いでるような)奴が勝ちそうな気がする。
《修学旅行特別企画〜くちびる争奪!修学旅行でネギ先生とラブラブキッス大作戦〜!!》
始まったようだ。
タイトルで非常にイラッと来たがここは抑えておこう、所詮餓鬼共に遊びだ。
二十歳になった俺は大人だからな、ここは耐えてやろう。それにしても撃ちたい。
さて、結局俺がつぎ込んだ相手は&宮崎のどか&だ、こいつは絶対に腹黒いタイプだと思う、俺の気のせいだということを願うばかり。
倍率はなかなか高い、というのも忍者やら中国やらショタコンやらが参戦しているのでどうにも影薄くなる。
ダークホース的存在だな。逆に俺は美味しいというわけだ。
「(……莫迦餓鬼?)」
さていざ開戦。ということになったのだがそこで問題発生。
何故か莫迦餓鬼が旅館から出て行った。
杖を所持しているところを見ると警備としてまわるつもりか、なるほどこれは面白い。
今のうちに別のチームを叩きつぶす時間ということだろう。だが最後まで潰しあうとしても教員に見つかってしまえばお終いだ。
なるべく早く莫迦餓鬼が戻ってこなくてはならない。
「クヒヒ」
イヤホンから流れてくる朝倉嬢の実況解説を聞くとどうやら急展開とのこと、やはり忍者中国チームが優勢。
相手が普通の人間ならばさすがに敵うわけがない。
俺がつぎ込んだ宮崎嬢に同チームの綾瀬嬢の様子が流れることは無い。
お、なるほどそういう経路をとるか。
視界に直接映る彼女たち、どうやら窓の外から伝って来るらしい。
非常用階段を開けておいたりと完璧だ、これは将来に期待。だが莫迦餓鬼はいないはずだが…
「んまい!」
炙ったドラゴンミートの塩漬けをつまみに帝国の倉庫から勝手に掻っ払った高そうなワインを飲む、優雅だ。
愚かな子羊共が莫迦餓鬼のくちびるを奪うため互いにつぶし合う。
勝者はもれなく魔法界進出の仮契約カード。
普通の魔法使いが聞いたら卒倒しちゃいそうなイベントだ。
帝国の愉快な者どもはむしろ参加しちゃう勢いだけどな!…ワインのラベルを見たらテオが産まれたときに作られた記念ワインだとさ。死にたくなってきた。
「(莫迦餓鬼が五人?いや、本体も含めて六人か。映像に撮っておけばよかった)」
阿鼻叫喚とはこのこと、ロビーに集合した莫迦偽を奪い合うこの様子。
莫迦餓鬼の分身体がいるみたいだ。全員で5体、途中で綾瀬嬢が気付いて1体を潰したから残り4体。
片っ端から口づけを噛ますが残念、全部偽物ということだ。
口づけをした瞬間自爆するという謎の能力も発動。
この式神のモトを作ったのは桜咲なはずだが、どうやって作ったのか超気になる。
結果としてやはりロビーにいた莫迦餓鬼は全部偽、そこでようやく本物の莫迦餓鬼が帰ってきたわけだが…なんというナイスタイミング。
《本屋ちゃんの勝ちだーー!!優勝宮崎のどか!!》
綾瀬嬢の策略により見事にミッションコンプリート。
俺は一切関与しない、しかし儲かるものは儲かる。
これは美味しい実に美味しい、食券が莫大な数になるっていう。やはりそこは盛大に使うべきだろう。
確か三つ星レストランがあるのでそこを貸し切りにしてテオへの愛の詩を歌うべきか…クヒヒ、今から超楽しみだ、アーウェルンクスの汚い顔面にショット出来るわなんだこの修学旅行。
莫迦餓鬼共は必要ないが来て良かったと思う。
「楽しそうだね、師匠。…あ、おいし」
浴衣を着てきた俺の愚かな莫迦弟子がいた。
俺が魔法界で狩って保存しておいたドラゴンミートの塩漬けだ、美味しいのは当たり前。
どの料理の教本にも載ってないワイルドな料理。
炙って食う!酒を一緒に食う!これが一番おいしいのだと俺は思うね。というか莫迦勝手に食うな、何よりその格好で近づくんじゃない。
「止めなくてよかったのかい?仮にも魔法使いに分類されるんじゃ…」
俺の隣に座る、俺が横にずれる、莫迦弟子もずれる。という奇妙な光景を映しながら下らないことを聞いてくる。
仮にも魔法使いに分類されるのは確かなことだ。だがでっていう。魔法使いだからといって秘匿を大切にするというのもおかしなものだ。
俺的にはどっちでもいいが、正しいわけだがバレて困ることなんか…銃刀法違反程度だ。
ぶっちゃけ魔法関係ないね!武器を生み出すのは魔法だけど。
「わたしの きおくに ございません」
日本の政治家の得意技を発動する。あんまりやると信用を失うので気をつけよう。
俺みたいにテオ以外の存在なんかどうでもいい奴が使うことにしろよ。
テオ以外の信用とか仕事に関するもの以外は本当に入らないから、戦場において…昨日仲間だった奴が今日敵として殺し合い、そして明日ゲイになっているというワケの判らないこともあり得るこの社会なのだから。
「なるほど。お、ワインもおいし……第三皇女誕生記念のモノじゃないか」
この莫迦弟子が人をありえない存在を見たときのような顔をして見てくる。失敬だな君は、失敬だな!俺にだって失敗はある。
いいか?人とは失敗を糧に成長していくものだ。ならばしょうがないのだよ。
俺が人間じゃないということを考えなければ、更に加えると混ざりモノだ。
総合的に見て9分の1程度はヒトガタかもしれん。
「ばかやめろ」
死にたくなるから、飲んだものはしょうがない。
人は言えない妄想を持ちながら飲むことにしよう。
記念ワインだからといって一本しか無いというわけじゃないしな。
帝国に帰ったらパクって永遠に所持しておくことにする。
飲めないようにコルクのところを針金と封印術式で固定して一生見て楽しんでやる。
毎日写真を撮って成長記録でもとるべきだろうそこは。ワイン相手に。
「(隙がないなぁ)」
キラーンと莫迦弟子の目が光っているような気がする…まぁいつもの事だ。
この莫迦弟子はいつも何を考えているのかサッパリサッポリだ。
俺の弟子なせいなのか元々なのか。
面倒なものだ、莫迦な弟子を持つというのは。
「フフフ」
「なんだ気持ち悪い」
突然笑い出した莫迦弟子に若干引きながら俺はあることに気付く。
この時ばかりは俺の眼力を呪いたい。だが俺には勇気が足りなかった。
いまこの時目を潰しておけば汚物が目に入ることもなかったのに…決して美味しいとか思ってませんから。
俺はいつだってテオが全てだから。テ
オのためなら死ねるよ俺?百回ぐらいだけど。で、結局
——なんでこいつ下着つけてないのだ?
という疑問に帰るしかない、誰か俺を助けろ。
悪魔が襲ってくる悪魔怖い。
俺の脳内で戦争が起こっているるるるるる。
邪神めついにココまで来たのか!?俺とテオの仲を切り裂こうとする魔王め。
俺が&いつか&成敗してやる。
ひとまずここは撤退を所望するべきだろう。
戦略的撤退だ、決しては俺は負けはしない。たとえ今負けたとしても&いつか&かならず勝ってやる。
「(ちなみに戦争の結果、シックス4が裏切って、シックス9が日和見主義になってしまった。なんという……なんという!貴様達のテオへの愛はその程度か!?)」
「どうしたいんだい師匠?そんなにジロジロ見て?フフ、恥ずかしいなぁ」
上目遣いをやめろ莫迦大女!負けはせぬ!負けはせぬ!たかだが褐色おっぱいごときに俺は負けない!素肌に浴衣という一種のお決まりパターンがここまで強力だとは。
俺の脳内の戦場の跡地を見れば…その激しさ(エロくない)がすぐにわかる。
俺にとって造物主よりも強い存在だ。テオよ、俺は無事に帰ってこれるだろうか?
「テテテテッタイ」
月と星が輝く空を見やる。
テオドラが笑顔で手を振ってくれているような気がした、フヒヒ。
To be continued
「(チッ!)」