第四十四射 ネギー・ポッターと最後の秘策
ダイオラマ魔法球ってばマジ卑怯だと思う今日このごろ。
皆様はぶっちゃけどうでもいいがテオは今日も可愛いです、ざまぁみろ。
流れ的にも、何かの運命を感じさせる現象の結果、何故か俺も莫迦餓鬼…ネギ・スプリングフィールドの修行に手を貸すことになりました。
不安で不安でもう三日も寝てません。いつ莫迦餓鬼が死んでしまうのかという期た…とにかくダイオラマ魔法球は反則だ。
決勝戦であるラカンとの戦いは三日後、この魔法球を使えば30日にのばせるという。1日を10日だって!なにそれ美味しい、味噌とか速く出来るな。
俺の味噌汁を毎日飲めぇい!とかプロピョーズ出来るぜ。あ、別にエロい意味じゃねーから。というかこの莫迦餓鬼たった30日の修行で勝つ気なのか。いや、密度のすごさは正直俺も驚く。
新世界で五本指に入るトップクラスの教官がネットリドップリヒタヒタになるまで詰め込むんだ。
その上相手は才能のカタマリである血統からチートのネギ・スプリングフィールドだ…まぁ完全にコイツ等カゲタロウさんのこと忘れてやがるけどな!インパクト重視にしてみたけど、影なだけに薄いってか。
「ホレホレ!力を抜くとプチッと逝ってしまうぞ!」
「1480!1481!1482……」
古典的伝統様式にもほどがある光景だ。
莫迦でかい岩を背中において腕立て伏せ。莫迦餓鬼と莫迦狗の二人は今日も死線をくぐってるようです。
畜生、テオが声をかけてやってるというのになんというだらしなさ。
あれ?この二人10歳前後じゃないの。最近俺の中の常識が…テオ以外だからどうでもいいなやっぱり。で、気付けば周りには莫迦餓鬼と仮契約した餓鬼共もうじゃうじゃいるというね。
一体こいつら何が目的なのか、そういえば俺知らないな。
別に知ったから何かするというわけじゃないけど。あー、速く終わらないかなぁと俺は期待をするものだ。
腕立てが終われば、暑苦しいオッサン代表のリカードと徹底的に組んでるし、いやリカードの近接格闘の能力の高さは羨ましいがそれを三日で叩き込むってどういうことよ。
ほら、そこ!莫迦餓鬼共も実際三日で覚えるんじゃない!
「やっぱり飲み込みがいいわね」
「そ、そうですか?」
セラスと魔法を飛ばし合ってる。
セラスも段々老けてきたが、一応アリアドネー魔法騎士団総長だからな。まだまだイケルらしい。
まぁ魔法というものは老体にキツイとかそういうわけじゃないからな。創作とかでいかにもッ!的な高位魔法使いは大体爺だが実際そうなのだ。周りの成長が速いんだよっ、10歳で広域スタンガン(千の雷)を使えるとか聞いたこと無い、いやホント。
あ、俺1歳で影魔法ビュンビュン使ってたわ。
投影に射撃、アンチマテリアルライフルで人を片っ端から分断させてきたなぁ。
なんだろう、この激動の過去は。
8割以上がテオドラで埋まってるのも嬉しい誤算だな。
あまりにも高貴すぎてアルビレオでさえ「イノチノシヘン」による半生の書を処分したぐらいだった。
まったく芸術も理解出来んとは愚かな奴だ、全然たいしたことないな。
「そーら避けるなり防御するなり、死ぬなりしないと死ぬぞー」
「ギャーーー!!!」
「ウオッ!こっち来た!?」
リカード、エヴァンジェリンにより近接格闘。
セラス、エヴァンジェリンによる魔法訓練。そして俺ことダブル・シックスによる対影魔法訓練。
我が愛しの主様は全般的な補佐をしてくれる。もったいないもったいない。というかエヴァンジェリンが色々万能すぎて困る。
体の小ささという問題があるものの一世紀ほど鍛錬した合気道はすさまじい、それに真祖の吸血鬼たるハイスペックがドンッ。
今のエヴァンジェリンは巻物から出てきた劣化コピーだというが…間違って莫迦餓鬼の太ももに影の槍がブスッと……あ。
「ほな治療するえー」
「ホラ。さっさと立て。さもなければ葬式に出すぞ」
マジこの子便利、一家に一台的なアレだ。
怪我をして数分以内なら完全に治すというアーティファクトを所有するとか、なんだこの『白き翼』のメンバー。
読心術師の腹黒ちゃんは言うまでもないし、あのメガネは人の気配を読み取るわ、木乃香嬢に限っては魔力は莫迦(ナギ)を越えている。後は知らん、興味もない、俺に興味を持たせたいならアーティファクトがサテライトキャノンといった辺りを持ってきな、はっはっは。
まぁそんなアーティファクトが当たる奴はいねぇーだろ!……いやそんなのマジでいたら困る。
「じゃ次は影の槍千本あたりからなー」
「「エェッ!?」」
まぁそんなわけで。心臓と脳味噌は当たらないようにしている。
テオの命令だからしょうがない、しょうがない。本当に、しょうがないッ。
三日の間にある普通のトーナメント戦に出たり、まぁ俺…カゲタロウも出ているのだが軽い軽い。
そういえば俺自分と戦う相手を鍛えているんだよなぁ。鍛えている感じがまったくしないけど。
影を襲わせる、死にかける、木乃香嬢の治療、の連立形式だ。ただそれだけ、なのになんでこいつら強くなるの?サ○ヤ人の血でも入ってるのかどうかと疑いたくなる。
ナギの奴は本当にサ○ヤ人ぽかったけど。
まぁそれでも正直に言うならば俺が勝つ方法はいくらでも思いつく。それにラカンとの作戦があるからな。
作戦を完璧に実行できる男はテオドラにモテると聞いた、いや頑張ろう俺。
「どうしたぼーや?それで終わりか?」
「まだです!」
このなんちゃって青春物語を燃やしたい。なのに燃やせない、悔しいですッ。
それはそうと『闇の魔法(マギア・エレベア)』だったか、あれ反則。
ホントまじやめてほしい、今から切実に頼み込みたい気分だ。
体を魔法と合成するなんて正気の沙汰じゃない…まぁ俺は色々な生物混じってるけどさ。
俺のはアレだよアレ、グチャグチャにして寒天で固めた的なアレだけど、『闇の魔法』は違う。本当に魔法と一体化するのだ。体を属性化するだと、下手をしたらそれは身を精霊に昇華するという、いやさすがエヴァンジェリンが生み出した個人技能だ。
俺も覚えようかな、あーでも体に変な紋章が出るのは嫌だな、やめておこう。大体面倒臭い。
例え闇の魔法を俺に対して使ってきたとしても俺が英雄たらしめるのはどんな戦場でも勝ってきたからだ、絶対に勝てるとは思うなよ。
「ラカンに勝つ方法、ね」
「はい!」
「兄ちゃんなら何か知ってるやろ?」
そんな修行の合間のこと、莫迦餓鬼と莫迦狗が俺に質問、というかもう核心的なことを聞いてきた。
いや、考えとしては悪くない。というか兄ちゃんて。だがそこで一番厄介な問題が発生する。
確かに俺は、全力の本気でやればラカンは倒すことが出来る。だがそれ以外なら勝てない、という問題だ。
俺の能力と戦法上&殺す&ことに特化しているわけで、ラカンのような莫大とかいう言葉では表せない気を持っているわけでも、ナギのように魔法が得意というわけでもない。ナギはアンチョコ見てたけど。
確かに影の魔法も使えるが、それはアクマで狙撃の補佐、近接戦闘の補助程度だ。
それでもやろうと思えば戦艦でもなんでも落とせるがラカンとか無理だ。
莫迦餓鬼が聞きたいのはラカンの弱点とかその辺りだろう、スネでも殴っておけばいいと思うがな。
「魔力のごり押しでいいんじゃねーの、小手先をアイツにやったって無駄無駄ァ」
むしろ性格的に小手先を使うやつから潰していくからな。
そう考えると小手先を怖れているのか、いやそうだとしてもラカンがそれで負けるとは思えない。
ああいうお莫迦さぁんに限って「正面衝突正々堂々」とか言い出すというね。いや、お前実力考えろよ、と叫びたくなる。
バグ相手に正面から行くとか狂気だ狂気。
あいつ剣が刺さらないことで有名なんだぜ、刺されよそこは。人間的に考えて。
ちなみに俺は刺さりまくるよ?そりゃもう、そういう肉体をしてますから。
脳味噌か心臓を吹き飛ばさないと殺せない再生ボディに、殺しても復活する摩訶不思議ストック制。残機がどうのこうのってな。
○
「魔力のごり押し……」
なるほど、という風の手をアゴにあてて思考するネギ・スプリングフィールド。
確かに大戦時の話を聞いた限り小手先で通用するような相手じゃないことはわかっていた。
ラカンが出した『紅き翼』に関する話の中でも、それこそ図書館の資料にものっていた狙撃主ダブル・シックス、ヒントだけでもと思い質問した少年だった。
少年は実はものすごく頭が良い、10歳で大学卒業レベルの学力を持っているのだ。
狙撃主の一言は少年の脳内を刺激した。勝つ方法、と質問すれば答えは実にシンプル。
相手より強力な魔法を放て、相手より強力な技を使え、狙撃主はそう言ったのだ。それが出来ないから聞いている、と小太郎は返した。だが小太郎は、思考を張り巡らせているネギを見て言葉を失った。
どうした?という問いには、
「なるほど……シックスさんありがとうございます!」
「えっ……あ、あぁ」
「一体どうしたんや〜?」
わかんねぇ、と頭をひねる小太郎。その疑問に答えたのは背後からの声だった。
あ、あなたはっ!?風な感じで振り返るとそこにはアリアドネー魔法騎士団総長セラスと、彼女の足下からネギのほうへと走ってきたオコジョ。そして腕を組んで頭を捻っている狙撃手のほうへと近寄るテオドラ第三皇女だった。
「魔力のゴリ押し、これ以上にない戦法じゃな」
「生きるバグキャラに何をしても無駄でしょうね。正面からぶつかり合って勝つしかないわ」
「そこで!考えたのが『仮契約(パクティオー)』っす!」
さすがシックスの旦那!とオコジョが褒め称える。
フードの奥の彼の表情はいつも以上に何も映してなく、それとなく不機嫌そうだった。
その件に関して第三皇女はもちろん気付いており、何事か、と質問をするのだが、何でもない、と狙撃手は返した。
実のところ狙撃手自身も何と表現したらいいのかわからない不愉快感を感じていたのである。
「妾は立場上「絶対にノゥ!!」…シックスもおるしの。妾は無理じゃが…」
「そこで私ね。さすがに負けるけど、魔力も一級品だと自負はしているわ」
「魔力の譲渡、ってやつやな!」
その通り、とオコジョは小太郎に返す。
あーなるほど、と誰にも悟られないようのした人物がいたのだが、それは一体誰であろうか。
セラスの魔力量は皇族であるテオドラよりは少ない、しかし彼女もまた、かつての『完全なる世界』との戦いを生き抜いた最高位の魔法使いなのだ。
ただでさえ莫大な魔力を保有する、しかも全て譲渡すると考えるならそれが二人分。魔力が多い、戦いにおいてこれは非常に有利なことであるのだ。
増大した魔力にエヴァンジェリンから授かった闇の魔法、そして少年が極秘に研究している&モノ&が組み合わされば&ラカン&の勝てる、必ず勝ってみせると意気込む少年だった。
「じゃ宝石に血を垂らすわね」
「え?」
仮契約なんじゃないんですか?とネギは頭を傾げた。ちなみにネギの肩にピョコンと座っていたオコジョは変な汗をタラタラと流している。
おいまさか…と声をかけたのはテオドラだった。10歳だからこそまだ許せる範囲であるものの彼が後数年成長してたら、と思うとゾッとする。
シックスが内心「さすが莫迦ナギの息子だな」と思ったのだが、それはナギのことをよく知るテオドラもセラスも思ったのであった。
一番厄介なのがネギにやましい感情が一切無かったことである。
一体どれだけの乙女が犠牲になったのかっ、半分以上は意外とのっていたのだがそこはここだけの秘密である。
「どうしたの?……まさか今までずっと接吻してきたとか?」
「………あはははは」
「やるじゃないかネギ・スプリングフィールド。特にそこのオコジョ」
「はひっ!?」
テオドラ以外ならばどうでもいい、というわけでむしろもっとやれ、と言うシックスにスパンッとテオドラが頭を叩く。
セラスは大戦のころから変わらない二人を見て上品に笑っていた。ただ、シックスの右手に握られたオコジョな存在が一匹。
上は天国、下は地獄、という感じの状態で少年とセラスの仮契約は終了していった。ちなみに魔法陣を書いたのもセラスであるため、オコジョには仲介料は入らなかったことは余談である。
「必ず勝ってみせます!」
「さて、まだまだ修行を続けるわよ」
「はい!」
「おう!まかせとき!」
少年二人の&対ラカン&の特訓はまだまだ続いた。
時々シックスによりカゲタロウ対策として影魔法使いとの模擬戦も行うのだが、それは通常の特訓と比べ比重が少ないようだ。
不幸か、幸いか、怪人の存在は頭に残るものの、そこまで重要視していない現状に。置いておけるからこそ集中できるのか、集中したあと、それを後悔してしまうことになるのか、それはまた今後のお話であるのだ。
大戦時の英雄『紅き翼』—人にして千の刃のジャック・ラカン、そして正体不明の怪人カゲタロウ。
二人のコンビはほぼ不戦勝という立場で闘技大会のトーナメントを勝ち進んでいった。同じくネギ・小太郎ペアも特に苦戦することもなく勝ち進む。
そこで苦戦などしておけばそれこそ彼らには勝つことは出来ないだろう。もとより多くの専門家達が、そのカードを予想していた。
——そして当日、決戦の日はやってきた
「テオ、すまんが用事が入った。少し場を離れる」
「むぉ?そうか、むー、それは残念じゃが……どこにいくのじゃ?」
「あぁ、 ちょっくら潰しに」
To be continued