第五十一射 人形
「全ては儚き夢の跡……国破れて山河ありってね」
「良い言葉だ、世の中を体現している」
「フフ、やはり君とは話が合うね」
「あぁ、だからな……」
——お前が先に消えろ
彼が捨てるようにそう呟く。
同時に彼の足下から伸びる影の槍が白髪の青年……フェイト・アーウェルンクスへと襲い掛かった。
フェイトは千へと届くかという無数の影の槍の雨に対して、特に驚くこともなく淡々としたまま手に持っていた鍵状の&何か&で影の槍を薙ぎ払った。いや、薙ぎ払うだけならばまだマシであっただろう。
影の槍は弾かれるわけでもなく、ただ消えたのだ。
まるで火をつけた蝋燭に強烈な風を当てたときのように…、フッと槍の弾幕が何事も無かったかのように。
彼は予想をしていたのか、特に表情を変えるわけでもなく、だがどこか不機嫌な口調で言う。
「ハッ、面倒くさいものを引っ張ってきやがって」
「君のために出力を上げたんだ、恐らく君との戦いが終わったら壊れるだろうね」
現にフェイトの持っていた鍵状の何かには既に小さな罅が入っていた。
例え小さな傷だとしても彼の眼から逃れるわけがなく、物質的にもどこか無理をしていることも見て理解した。
だからこそここで潰す、と決めたのだ。壊れる限界まで出力を上げた武器、あぁまさしく極限の戦争に相応しい武器ではないか、彼は内心で妙な歓喜を覚えた。
誰がどういう武器を使おうとも、それに関して言えば正直関係無い話だったのだ。ならば何故、彼は歓喜を覚えたのだろうか。それは恐らく共鳴に近いものだったのだろう。
己も兵器、対するのも兵器、あぁこれこそ戦争だ、20年前の大戦時において日常の隣にいたものだった。
記憶が削れる彼であったが……、懐古とは言えない摩訶不思議な感情がわき出していたのだ。
「『歯車・起動』」
彼がそう呟くと全身に光が浮かび出す。それはまるで電子精密回路のようで、だが何故か本能的恐怖を覚える虹色の光を放っていた。
彼の肉体を基盤、流れる魔力を電子とし、回路を流路へと。
ゆらゆらと煌めく星空のように薄く、しかし一度見れば脳内にこびり付く茶色のペンキのように。ありったけの魔力を流し込んだ。撃鉄を鳴らし彼は設計図を元に作り出す。
「燃やせ貫け殲滅せよ」
彼が手を振り上げる。
彼の背後の空間に現れた無数の兵器。
全ては目の前に立つフェイト・アーウェルンクスへと口を向けられていた。
彼が腕を振り下ろし、それらは文字通り火を噴いた。だが、フェイトもまた攻撃を開始する。
手に存在する巨大な鍵を振り上げ、鍵の軌道に沿うように数多の杭が生み出された。
もうその数は彼の放つ弾丸と同じように&数多の&やら&無数の&などでは表現出来ぬ数、圧倒的数。視界を埋めつくさんとする弾丸と杭がぶつかり合った。
「……ッ、文字通り火力がすごいね君はっ!」
杭が迫る。
弾丸が破壊する。
弾丸が襲う。
杭が弾け飛ばす。
弾丸が飛ぶ。
杭が交差する。
彼の頬元を擦り血を巻き付ける杭も、フェイトの来ていたスーツをボロ雑巾のようにしていく弾丸も、まったく同じ。
互いが互い、弾丸も杭もまったく違った、しかし互いが互い、杭は文字通り弾丸の如く突き進み、弾丸は杭の如く敵を貫こうとする。だが、時間が長引けば己が不利であることは&互い&が理解していた。それは矛盾かもしれない。
片方が不利になれば片方は有利、それは天命のように正しい。しかしそこには確かに二つの均衡する不利があった。
「灰に戻せば楽だろう?…『歯車・起動』」
キィィィ、と甲高く、されどまるで草原を走る風のように優しい音を立てる儀図。
それから起こるであろうことをいち早く感じ取った彼は、杭の雨をかいくぐりながら魔法を発動した。
それは右手にもたらされる巨大な&筒&であった。右手を肘と肩の間あたりから包み込み、更に腕の二倍はあろう程の砲身。同時に展開される砲台を芯にして円状に滞空する『ライフリング(生命輪廻)』。
——エネルギーライン(生命回路)、全弾直結
杭が腕に刺さる
——ランディングギア、アイゼン、……フルオープン
杭が脳髄を貫く
——チャンバー(薬室)内、異常加圧中
それでも彼は止まらない
——ライフリング回転開始
命の胎動が遮られる、そんなことがあってはならないのだ
「回れ生命、叫べ命の断末魔、燃やせ天上、火の雄叫びを」
「やはり、ダメだ君は。存在してはいけない、アレ以外に生命を操る存在などあってはいけないんだ」
生命が繋がった。生命を増幅させた。彼だからこそ日常的に出来る想像外の荒技である。
たった一つの命でさえ、小さな人間の命でさえ、英雄となり造物主を破壊した青年がいたのだ。
度重なる努力と修練を積み、奴隷であった己を自らの血肉で変えた剣士がいたのだ。そう、それを&しでかした&のは全て命一つ、一つの命を持つ人間、生命体だったのだ。
命という不明確であり確実に存在する概念一つには、すさまじい力を、存在的なモノを持っている。
そんな命を、エネルギーという破壊的火力に変え弾丸で放つなどという奇想天外で破天荒。あまつさえ複数の命を連結し放ったのだ。その威力はすさまじいなどと軽々しく言えるものでははなかった。
「生・命・氣・断」
「『造物主の掟』」
白とも、赤とも、青とも、緑とも、黒とも、何色かもわからない。
命の流れ、大いなる流れ、何事よりも気高く美しく、そして何よりも醜く羨ましい生命の光。
光が空間を走った。
その光は一瞬にして空間を満たし、そしてフェイトを有無も言わさず貫いた。もしかしたら有無を言わさないだけでも幸運だったかもしれない、その光はまさしく光速、感覚が感じ取る前に全てが終わっていたのかもしれなかったのだ……。
○
「ふむ…、来たか……」
人々が騒いでいた。
「さて、本日のメインディッシュというわけじゃが……どう動くのやら」
彼女は……第三皇女テオドラは窓から&ソレ&を見ていた。
彼女の後ろでは人々が逃げまどい、そして混乱し悲鳴を上げていた。それまで優雅讃美を極めていた舞踏会も今や形無しである。
オスティアの都の下に存在する雲海の中から飛び出たソレには少しだけ驚く、と彼女は妙な落ち着きを保ちながら見ていたのだ。
「なな、なんだアレは!?」
「み、みろ戦艦が!」
巨大なソレ、雲海を突き抜け空へと伸びる頭のソレ、黒い巨躯、ただ巨大な存在だった。
二対の腕を持ち、体を骨で構成してありながら、上半身は漆黒の筋肉の鎧で身を包む。
オスティアを見下ろすように複数の眼が輝いている。ちょうど骨盤のあたりには魔力で構成されているであろう多くの尻尾、九尾などが笑えてくる、もう数えることが出来ないほど多数。
メガロメセンブリアの戦艦が小さく見えるほど、尻尾の一つが戦艦へと絡み付き真っ二つに折る。
「ほう、20年前の奴も動いておるか、派手じゃの〜」
「テオ、なにを暢気なことを…」
彼女の側にいた金髪で角の生えた良い美貌の女性がたしなめた。
サングラスに隠れようともしないツリ目、あとおっぱい。彼女はそんな女性の物言いに無礼などと言うわけではなく、フフ、と微笑して返した。
「奴らも同じもんじゃ、20年前の戦略的化け物……我が従者がいるのじゃからな」
「そりゃ同感さ」
フフン、と胸を張って言う彼女に一度安心したものの、よく考えれば問題はそこではないことを思い出した。
「ってそうじゃない。"一応"君の護衛もかねているんだ、安全な場所に——」
「もう来た」
女性の言葉を遮るように彼女は言った。
視線の向こうには、会場で果敢勇猛に戦う戦乙女の騎士達、そしてドレスに身を包んだ神楽坂明日菜の姿。
女性から見れば遠き麻帆良で同じ仕事をしていた同僚(魔法生徒)の姿もあった。
こんな遠い、加えて上流階級のトップの人が集うような場所で見るとは面白いものだという。
もう一つ、窓の縁に隠れるように連隊を組んで飛行してくるインペリアルシップを筆頭した帝国戦艦連隊が見えていた。
それを見ていた彼女をたしなめるつもりなのか、大きな——人が壁に叩き付けられたかのような——音が彼女の耳に届いた。
バッ、振り向けば神楽坂明日菜が召喚魔に拳を入れられているところだったのだ。
中身が色々あるとはいえ、旧世界で中学生の一人として過ごしてきた少女の無防備な拳が腹に刺さる。
そんな様子から、コンマ一秒以下による思考で現状を把握した角の生えたヘラス族の女性が動き始めた。
「おや、クラスメートを守らないと。私は雇われた身だからねィ、精々死なないでくれよ」
「ほざけ小娘、妾は死なないのじゃ、なんせ最強のわ・ら・わ・の騎士様がおるからのぅ。のー馬鹿弟子?」
「フフフ」
「クフフ」
ゴゴゴゴゴゴ、と今は非情で非常、そして卑情なまでにまったく関係の無い戦いがおこなわれていた。
周りの人たちは、突然現れた謎の攻撃に戸惑うばかりだが、この瞬間のみは違っていたという。まるでブリザート、どこから見てもツンドラ艦隊(寒帯なだけに)である。
その時のみ、周りの人は凍り付き、襲ってきた魔物の影、闇の魔法で組まれた人形と影の中間的召喚魔ですら、動くことが出来なかったという。
実はその女性、とある人物が化けているのだが……恐らく誰もが既にわかっているだろう。
「やれやれ、師匠から聞いたけどさ、護衛の任務ほど面倒なものはないね」
「……ほぅ。ま、いいかのぅ後でゴニョゴニョすれば。さて妾も行くかの〜」
実は最後に"テオドラ以外"という有り難い言葉もあったのだが、あえてそこを言わなかった女性である。
「手伝おうか?神楽坂明日菜?」
「え?……って龍宮さん!?」
召喚魔に吹き飛ばされた神楽坂明日菜を庇うように、女性はたった。
言葉とともに頭に手をやり、金髪のカツラをとる。
長く鮮やかな黒髪を揺らし、スーっと白かった肌が元の褐色に戻っていく。でも胸は変わらない、あいかわらずカーニバッてる。
「な、なんでここに?」
「おや、ここに私の師匠曰く偉大なる主様がいるんだ、弟子たる私がいないはずもなく、まぁぶっちゃけるとただの任務だ。J・ラカン氏に君たちの護衛をね、ちょっと高かったもんで」
つい受けちゃったぜてへ、なんていう擬音が無機質に消えてきそうである。
神楽坂明日菜の疑問に答え、満足気味な真名は目の前に群をなしている召喚魔に目を見やった。中には3メートルをはるかに越えるという体を持っているもの、どこかの使途っぽものから天使っぽいものまで様々。
「さて、面倒だからどうしたものか。依頼内容に含まれてないし——」
「そんな!?あんな小さな子までいるのよ!?」
真名の言葉を遮るように神楽坂明日菜は言った。
明日菜は彼女たちの背後にいる小さな少女——間違いなく招待されたものの子女——に指を差し手言った。だが真名が返したのはごく単純な拒否、依頼以外はしない、傭兵に求められる基本的な事項だった。
傭兵が金より満足に働けないのならただの邪魔、それ以上に働くのなら正規兵の邪魔、与えられた事以外をしないのが、それをどれだけ手抜きして出来るか、それこそ龍宮真名がダブル・シックスより受け継いだものなのだ。無論、それに神楽坂明日菜は怒鳴る、見事にハマったように…
「じゃ私が雇う!」
「ほぅいいのか?新聞配達程度のバイトの身で……私の弾丸は"莫迦"高いぞ?お姫様」
「しゅ、出世払「ダダダダダダァン!!!!」で!…え?」
「了解、君は出生しそうだ。大歓迎さ」
真名はほくそ笑みながら弾丸を放った。
真名の放つ迫り来る召喚魔の脳天を貫き吹き飛ばす。そこには弾丸の無駄撃ち一つすらなく、瞬動を使い敵の背後に回った、かと思うと既に蜂の巣となり真名は次の敵へ。
召喚魔の攻撃を体を反らしただけで回避し、最低限の動きで最上級の働きを。
「おや?さすがにコレじゃ無理か」
ふと真名の目に入った大きな体を持つ召喚魔、拳銃の弾丸ではさすがに貫けそうにない。ならばより強力で大きな得物を、そして彼女は揺れる(←重要)胸元に手を伸ばし、何かをヒッパリ出した。
バレットM82、シックスお手製強化術式を組み込まれた対(怪)物ライフルである。
師弟揃って大好物な一品、君も是非。
「ひゃー…すごっ」
「なんだこの人間台風…」
その余りに光景、戦闘のすさまじさもあるが主に胸元からライフルを取り出すということに神楽坂明日菜は感嘆の声しか出せなかった。
ガチャン、とライフルを鳴らしたかと思うと、目の前には何もなくただ龍宮真名が暴れ、そうなったという記録しか残らなかった。
真名は彼が組み込んだ物を使ってまで戦ったというのに、軽く全滅したことに消化不良気味なのか不満を覚えたようだった。
「なんだ、案外脆いな。これじゃただの"動く的"だ」
周り一同からは"ただの動く的"という言葉に疑問というか、驚きしか表すことは出来なかった。
○
もはや光とはいえない、生命という確かな正な力でありながらな絶対的な破壊と負の結果をもたらす閃光が無限閉鎖空間を走った。
キュィィィン、と音を響かせ、閉鎖空間に存在する造形物をすれ違っただけの圧力のみで崩壊させ無に返し……そして空間に限界が来た。
「ふぇ、フェイト様!」
「あ、ありえない…」
その光景を見ていたフェイト・アーウェルンクスの従者の少女達が声を上げる。
1秒前後の光が世界を包んだと思えば、真っ直ぐと空間を走り抜ける正負混濁の光が空間の&壁&に突き刺さった。そのまま光は本来内包していた破壊力の全てをぶちまけた。
——カァァァンン!!!!!
「キャアッ!?」
「うッ!?」
まるで巨大な狼の体当たりを喰らったのか、そう思うほどの衝撃が空間を巡り、再度目を開けることが出来ないほどの光が発生した。
その空間を呼び出した少女はすぐに理解した。もうこの無限閉鎖空間はダメだ、と。
オスティア平和記念祭にてジャック・ラカンをこの空間に閉じこめ、そして今の彼と同じように圧倒的パワー、ただ純粋なる力のみでそれをこじ開ける英雄達に、そしてそんな彼らが同格と認める少女達自身の主を、もうそこには畏敬しかなかった。
——だが…
「クッ、あの筋肉達磨と同様やっぱりデタラ……め?」
「あ……え?アレ?ここどこッ!?」
「てゆーか服まで!?」
光が過ぎ去った。
もうそこには無限閉鎖空間は無いはず、オスティアの街の中にいるはずっだった。だがしかし、今はどこだろうか。
見渡す限りの草原、花が咲き蝶々が舞い、風が走り草は歌う。
どこまでも続く蒼い空にただ流れる沈黙の白き雲海が遙か彼方に。オマケ程度に、先程までローブを着ていた少女達は何故かメイド服を完備しているというサービス精神、お腹いっぱいだぜ。
「……チッ、実に不愉快だ」
一方彼は、言うとおり不愉快を感じていた。
彼は今これが何なのかを知っていたのだ。
忌々しそうに、片方の目を歪ませソレを隠そうともしない。
彼の目線の先には、透き通るような青い水が張ってある池の小さなオープンテラス、その一角にて優雅に座りながらコーヒーを嗜む白髪でスーツの青年、フェイト・アーウェルクンスがいた。
彼との戦闘で見るも無惨であったはずのスーツはまるで新品のごとく、彼との戦闘で流れているはずの血も無かった。
「ようこそ狙撃手、コーヒーでもどうだい?」
「ハッ、俺は牛乳派だ死んでろ」
やれやれ理解出来ないね、とフェイトは首を振った。
ある意味重要なことをカミングアウトしたような気がする彼に対して少女達は、この空間ということも含めて驚きを見せた。
「君はあまり驚かないようだね、いや、直接何度も喰らった君は知ってたのか」
「……ご生憎、どうでもいいことは覚えない主義でな。だがこの程度だと欠伸しかでらん」
「そりゃ残念だよ、……君とはもう少し語り合いたかった。でももうダメなんだね、君の体は…」
フェイトの背後には例の鍵が発光しながら浮かんでいた、がそれはもう限界だったのか崩れさった。
二人はもう鍵には関心がないのか鍵の様子を見ようともせず会話を続ける。
「フン、まさか刺されるとは思いもしなかったぞ?……あぁ、正しい鍵の使い方だがな」
——パキリ、パキリ
そんな音が響いた。
依然としてフェイトはカップに入ったコーヒーを飲むだけ。
対する彼は立ったままだった。
彼の体が崩壊していた
「汚染とはひどい言い草さ、これは"救い"だよ」
かつて三番目を狙撃し、陶磁器のようにバラバラに砕いたように
「救いなどあるはずがないだろう?それはただの行為であり、本来ヒトは"救くわれる"ものだ」
だが血が流れることもなかった
「言いたい放題だね君は、そこまで嫌いかい?」
ヒビが顔に走る
「いーや、大好きだ、潰したくなるほど」
ガラガラ、ガラガラ、彼から右腕が消え去った
「それは結構、実にいいことだよ」
だが、彼は笑っていた
「あばよ、酔っぱらい——」
「……」
——ガシャン
崩れ去った。
彼の体は岩のごとく崩れ去り、そして砂のごとく風に乗り散っていく。
フェイトの従者達がフェイトに近寄る。
もう終わった、と少女達は思っていた。
これで終わり、だと。
最強の一角を崩した、己が主が一番、そう信じ&たかった&のだ。
誰もが想像すら出来ないだろう。
「行こうか、そろそろ始まる」
「え?フェイト様?……ってアレ!?」
フェイトが立ち上がった。
もうすでに草原が広がる世界など無く、夜空が広がるばかり。
フェイトは無言で空をじっと眺めていた。
その行為に何の意味があるのか、始まるとは何のことか、疑問をぬぐえない少女達はソレを聞く。
「倒してこそ英雄、か……、少しだけ羨ましいよ君が」
——あばよ、酔っぱらい、また会おうぜ?
■
大地が揺れる、大気を喰らう。
■■
天を揺らし、空を割る。
■■■
海を砕き、道を裂く。
■ギ■■■
満たせ血の底、閉じよ地獄の門。
■■■■ギ■
我こそ思想家、全てを破壊し喰らう者。
ギ■■■■ギギ■■■ギ■■■
歌え唱え謡え唄え謳え詠え英雄の賛美歌を。
■■■■ギ■■■■■■■■■■ギ■■■
個人にて、群体にて、集団にて、固有にて、一人完全す。
「な、何が……」
「君たちは出来るだけ遠くに、まただけどね。どうやら彼はご立腹のようだ」
フェイトがそう告げた。
何のことがサッパリわからない、しかし少女達はフェイトの言に従った。もう本能で理解できたのだ。
——あれはやばい、と
空が揺れていた。
空が歪んでいた。
まるで空の&向こう側&には&何か&がいて、その何かが空の裏から、空を押しつけているように。空が膨らんでいた。
何かが空から出ようと、何かが封印を解こうと、ミシリミシリ、ミシリミシリ、ミシリミシリミシリミシリ——…… ‥‥ ・ ・
例えるならソレはガラス。未来に人は語る、空が割れた日、と。
To be continued
「生命氣断」
生命氣弾の誤字ではない。こっちは放射状、向こうは弾丸状。今回は限界まで"溜めた"破壊光線、でも反動とか無い(普通の人間が出すならミンチもいい所)らしい。ライフリング回転で伝導率マックスロマン溢れる。