色々御感想をいただきました。感謝感激です。
ヒロインはハクオンリーを望む人が多かったですね。
私もそのつもりですが、サブヒロインくらいなら少し出しても問題無いかなー、何て思います。
ですから、ヒロイン増加の要望があったらなるたけ応えていきたいです。まぁ、多くて二人でしょうかね。あくまで“サブ”で。
あと榛名の性格、具体的にはハクが人を殺したことに何も感じていないことについて、御指摘をいただきました。
榛名はあくまで“自称”平凡ひ弱ですし、まぁ、ちょっと変わっています。ていうかズレています。
別に彼は冷淡なわけではなく、目の前で人が苦しめば相応に悲しみます。
唯、あまりにも嘗ての現実からぶっ飛び過ぎて、そして自身から離れ過ぎていて、まるでゲームの世界の話のように感じているだけです。
普通、いきなり転生して、遠くで見たことも聞いたことも無い国の人が死んだところで、号泣したり激怒したりすることはないと思うのは私だけでしょうか?
あとハクのヤン度について。
ハクのヤンデレは、あくまで「マスターの敵は許さない、マスターを狙うものも許さない、マスターとのライフの邪魔はさせない」くらいのもので、主人公を殺すようなタイプのヤンデレとは違います。ていうか、そんなヤンデレだったら物語が終わります。
私自身も、好きな人を手にかけるようなヤンデレは苦手……というより理解不能です。拉致監禁、洗脳は兎も角として、殺すのはどうなんだ? と思います。
第肆話 カレと学園都市
条約が締結されるやいなや、魔法使いを名乗る連中が続々と麻帆良にやって来ていた。
あの後、何も知らされないというのは置いてけぼりを喰わされる気分だったから、ハクに麻帆良で起こったことを全て教えてくれるよう頼んだ。
ハクは無表情ながらに怒っていたけれど(最近はハクの表情・感情が何とか読み取れるようになってきた)、何度も頼むと最後には折れてくれた。
ハクとしては僕を煩わせたくなかっただろうけど、こっちとしても切実なんだよ。
何せ今更だけど、ハクは優秀で万能過ぎるから何でもこなせてしまう。
実際此処に来て、僕が家事をする羽目になったことは一度だって無いし、建築から機械(家電)の製造・修理、さらには農作業から猟まで全部ハク任せだ。
僕も農作業とかを少し手伝ったりするけれど、ハクのそれを“仕事”に喩えるなら僕のそれは“趣味”だ。つまりは、ほんのちょっとだけだということ。
こうなると、僕は飾りの土地管理者としての仕事くらいしかない。
それすらハクに丸投げしたら、完全に従者に寄り掛かりまくるダメ人間だ。暇、ではないんだけど、これはちょっとキツイものがある。
僕だって腐っても日本人なんだ。ワーカー・ホリックとは言わないけどさ、仕事の一つくらいは欲しいんだよ。精神的ダメージが半端ないから。
「現在、ここ麻帆良は二つに分かれております。即ち、マスターの土地と連合に貸している土地です」
紅茶を注いでくれているハクが、そう言って説明してくれた。
この紅茶だって物凄く美味い。僕の舌が肥えていたら、飛びあがって絶賛しただろう。
でも、庶民の味に浸かりまくったこの舌では、「美味い」という言葉しか出て来ない。お礼を言わないわけじゃあないけど。
ハクは褒められるのが好きみたいで、結構ご機嫌になる事も最近分かった。
あとハクは無表情とかじゃあなくて、単に表情に出すのが下手なだけだ、ということに最近になって気付いた。
正確には、“僕限定で”表情を出すのが苦手。
若しかしたら、単に恥ずかしがっているだけかもしれない。いや、それはどうだろうか? 最強万能な彼女に、こんなわかりやすい弱点があるなんて思えないんだけれど。
まぁ、僕だって何もかも全てホイホイ聞くわけじゃあないし、ハクだって僕に隠しておきたい事の一つや二つくらいあるだろう。
対してハクの方は僕のプライバシーなんて知った事かという感じで僕に密着してくるんだけど、それだって不快なものじゃあなく、節度もある。
ハクは、気遣いの面でも万能なんだよね。空気詠み過ぎて怖い感じだけど。
「面積的には麻帆良と言う土地で、マスターの土地が三分の二、連合が借りている土地が三分の一といったところです。
なお、私の結界は現在マスターの土地にのみ展開されております。連合の蟻共を護る必要など微塵もありませんので」
「でも、貸しているだけで
「
私が守護するべきはマスターだけです。
もう一つわかった事なんだけど、ハクは僕以外の人間に対して何故か物凄く辛辣だ。やたらと“凡人”呼ばわりしたり、“蟲”に喩えたりする。
別に僕としてはどうでもいいんだけど、メイド服を優雅に着こなす従者が毒舌の限りを尽くすのは結構、いや正直言うとめちゃくちゃ怖い。雰囲気も怖いし、何か空気が歪んでるようにも見える。
「それにあちらがヘマをやらかして土地が使い物にならなくなっても、再生は幾らでも可能です。
さらにマスターが“世界樹”と御命名された巨木ですが、アレにも大して価値はありません」
「え? 内臓魔力がものすっごいと聞いたんだけど?」
「あくまで
「具体的に言うと?」
「私の小指一本分の百分の一くらいでしょう」
「……え? マジで?」
「はい、マジです」
ウチの従者は、やっぱり規格外なんだなぁ。
神様、貴方の“最強”の定義について聞きたいです。大学の一限くらい使って。
「そういえばさ、僕って魔力あるの?」
「それは……」
微妙な表情で、言い淀むハク。
まぁ神様に望んだのは“絶対防御”だけだからね、無い、といわれても仕方が無い。ぶっちゃけ使い道だって無いからね。ハクがいる限り、だけど。
「無いとは言いません」
おぉ、意外だ。魔法も何も無い日本出身者からしてみれば、あると言われる方が予想外だ。
「——ですが、はっきり申し上げますとそれほど高くはありません。
凡人共が身分不相応にも、マスターの内臓魔力を“平凡”呼ばわりするくらいです。
ちなみに、気についても同様です」
「“気”?」
「具現化された生命エネルギー、とでも申しましょうか。要はオーラのようなものです」
「ふぅん。ついでに聞くけどさ、ハクの気は?」
「そうですね……地球上の全生命の総合量を16乗して、
「……あ、そう……」
「ちなみに私は魔力や気の他に神力、妖力なども、同様の量を保有しています」
自慢するでもなく、淡々と真実を語る我が従者。
なんだか自分が惨めに思えてきたんだけれど。
すると、ハクは僕の顔を覗き込んで頬に手を伸ばした。白い手袋に包まれた長い指が、肌をなぞっていく。
「気を病まれる必要はありません、マスター」
「え?」
「私が付いております。私という“最強”を好きに出来るマスターこそが、この世で至上にして究極の御方ですから」
薄く微笑んで、ハクは喋り続ける。
うん、凄くキレイだ。クレオパトラが絶望して首を吊るくらい。
「私はマスターのためにしか動きません。だから、マスターがいてこその“最強”なのです」
「……うん、有難う」
イイじゃあないか。
お礼くらい、言ったってさ。
何か話がものっすごくズレた気がする。
ハクもそれに気付いたのか、再びいつものように、僕を零距離で覗き込んできた。そして、喋り出す。
「連合はあちらの土地に、学園都市の建造をハイピッチに進めています。完成すれば、
「へぇ……興味あるなぁ」
「此方からの干渉は自由ですし、そもそもあちらの愚鈍な脳ではマスターの御姿を捉えることも困難でしょう。マスターが望むなら、そこに行くのも
資金も賠償金と本年度の租借料はすでに支払われております。為替の問題で、金塊で、ですけど」
そう、家の地下室に、今では大量の金塊が置かれているのだ。おまけに相当純度が濃いやつが。
向こうの金を貰っても何ともならないし、どの道この後、此方の世界(魔法側は“旧世界”と呼んでいるそうだ)で恐慌が起こって大変なことになるということはわかっているので、金塊で支払わせた。それが無ければ宝石類。
何故かハクは、金塊や宝石の純度を調べる機材も知識も持っていた。ホントに万能過ぎる。
だから、ニセモノを渡されるなんて事も無い。
勿論ハクの錬金があれば、金塊も製造できるんだけど、やっぱり土地を貸す以上はお金を取らないと体面的にも問題があるそうだ。
後は連合が馬鹿をやらないよう、搾れるところまで搾り取っておくため。
戦争するにも何するにも、やっぱりお金っていうのは一番大事だからね。
ハクはそのことをちゃんと理解していて、連合が財政破綻しないギリッギリの金をせしめた……というわけ。
それを聞いて、ホントに彼女が自分の従者で良かったと思った。
え? 「お前社会学科学生だろ」だって?
経済・金融方面は苦手なんだよ。センター試験で数学ワーストとったんだぞ、僕。
金融どころかエンゲル係数が限界だっての。
ましてや大学生に、お金の大切さやメカニズムを骨の髄まで理解しろ、と言う方が無理だと思うんだ。そういうのは、社会人になってから初めて身に沁みるものだと思う。
バイトもしていなかった僕は、単に消費するだけの金喰い虫だったからねぇ。
「向こうも此方に何か思う事があるでしょうが、そんな事は些事です」
いや、そんな些事の一言で片付けられても困るんだけど。
ていうか、首都を半壊させられたあげく法外な賠償金せしめられたんだから、こっちを恨んでいないわけがない。
まぁ、こればっかりは仕方が無い。
僕の従者を怒らせた向こうが悪いんだ。うん、向こうが悪い。
連合も、藪をつついてサイドワインダー百匹を出すような真似をしなければよかったのに。
ていうか、僕は無関係です。
学校か〜、また行きたいなぁ……。
後になって思った。
これ、
本作の麻帆良学園都市は、原作の麻帆良学園都市の三分の一くらいの面積だと思ってください。
理由ですか?
普通見知らぬ人が土地譲って下さいと言ってきて、全ての土地を譲ったりはしないと思っただけです。
あと、なんとなく麻帆良を弱体化させたかっただけです。いや、小さくなった分護りやすくなったのか……どっちみち、戦力は減ですね。
御意見御感想宜しくお願いします。