まず一言。
セクストゥムファンの皆様、申し訳ありません。
第拾玖話 カレの日常と妹の再誕
アスナ(アスナ姫と呼ぶなと言われた)を引き取った後、詠春さんの結婚式に御招待された。
関西呪術協会の人たちは、大多数が僕とハクに好意的だ。
この人たちは、“敵の敵は味方”という論理を知り尽くしているし、この人たちから見れば、僕とハクは連合に金を貢がせるという大金星をやってのけたツワモノ——らしい。
でも一番の理由は、ハクに頼んでやってもらった、魔法世界と旧世界を繋ぐゲートの破壊したことみたいだ。
詠春さん曰く、連合は戦時中、文字通りの意味で戦力を
まさに藁にも縋る勢いで、中立組織、果てには仮想敵組織にすら、矢の様な催促を送りまくった。勿論ほとんどの組織は、何の実にならない参戦要請を
呪術協会もその一つだったんだけど、催促は留まるところを知らず、いい加減ウンザリしていたそうだ。
そんな時にゲートが破壊されたんだから、旧世界中の組織は大手を振って喜んだ。
何しろ、連合の要求を断る絶好の口実が出来たのだから。
そして呪術協会の人たちは、詠春さんを通じて、僕(正確にはハク)が実行犯である事を知っている。
おかげで(良い意味で)絡まれ、強烈な日本酒を飲まされてひっくり返る羽目になった。
気付いた時はハクに膝枕されていて、呪術協会の重鎮全員(詠春さん含む)がズタボロにされ、詠春さんの奥さんや巫女さん達に看病されていた。
ちなみにアスナは、ハクの分身体と何か話し込んでいた。
アスナの話だけれど、彼女はハク(の分身体)が教育を担当している。
その内容はハク曰く「
ただこの前、なぜかメイド服で近寄ってきた事があった。
あの時は吃驚したよ。叫ばなかった自分を、誉めてやりたいくらいだ。
ハク曰く「淑女の嗜み」だそうだけど……まぁ、任せた以上は文句は言わない。アスナ本人も、満更じゃあなさそうだったし。
アスナは相変わらず舌足らずで無表情だけど、決して僕とハクの事を嫌っているわけではないみたいだ。まぁ、この性格が一変する事は無いだろうけど、人並みには笑えるような子に育ってほしいと思う。
僕に出来るのは、遊んだり、話をしたりするくらいだけどね。
「……ハルナ、これ」
「ん、有難う」
最近のアスナはこういう風に、ハクと一緒に紅茶を淹れてくれるようになった。
流石に、ハクが淹れてくれるものには到底及ばないけれども、こんなに(見た目は)幼くても、そこそこ美味しい茶を淹れてくれるんだから、文句はない。
「美味しい。頑張ったね」
「……んっ」
褒めて撫でてあげると、無表情ながらも喜んでくれるし……うん、
……今、軽く寒気がした気がするけど、気のせいか?
「……ん?」
魔法世界のとある場所、地下深くに在る施設で、一人の男が首を傾げた。
いつもは仮面で隠れている素顔を曝し、ローブを身に纏っている長身美形男性は、『
デュナミスの主な仕事は、造物主から与えられた権限を用いての、“アーウェルンクス・シリーズ”の開発と管理だった。
ハクの調整により、今のところ
ハクは火星の生命エネルギィの回路を組み替えた際、その一部が、造物主にリアルタイムで流れ、調節できるようにした。
つまり魔法世界への火星からのエネルギィ供給の様子は、造物主でも知る事が出来る。
今のところ造物主は、ハクに三途の川一歩手前まで追い込まれたため、いや、三途の川に腰まで浸かってしまったため、療養に入っている。それは
戦後の混乱による地域紛争は、今後五〜一〇年がピークだろうと思われた。
それまでに回復できれば良い、とデュナミスは考えていた。
別に下っ端の数は揃っているから、完璧に動けないわけでもない。
もっとも、ハクはそんな事は見越したうえで、
瀕死だったが生きてはいた幹部デュナミスが、ハクに怒りの矛先を向けられなかったのも、『完全なる世界』が機能停止すれば、
本音を言うと、ハクはデュナミスにも、地獄を見せてやりたかった事だろう。間一髪のところで、彼は最悪の拷問を免れたのだ。
フェイトが受けた様な、蟲ピンで動くことと死ぬこと、痛みで気を失うことと狂うことを封じられ、二週間……三三六時間嬲られ続ける拷問を。
そうとは知らないデュナミスは、戦火に苦しむことになるであろう人々を、少しでも多く救うため、アーウェルンクス・シリーズの稼働への調整を行っていた。
彼の目の前には、規則正しく並んだカプセルのような、
そしてその中には、カプセル一つにつき一人ずつ、人間が胎児か何かの様に浮かんでいる。
もっとも、その人間は全員、ある程度は成長した姿をしている。
全員が白髪で、だが雰囲気は一人一人違う。容姿も若干異なる。
デュナミスの視線が捉えたのは、その中の一つだった。
中で浮かんでいる人間は、良く見ると顔つきや体形からして女性、いや、少女だとわかる。液体に浸されているが、学生服のような衣服を纏っている。“学生服”といっても、スカートではなくズボンであるが。
そのカプセル、いや、正確には少女の静かに開閉を繰り返す口から、ゴポゴポと音が響いていた。
「——妙だな、まだ自律呼吸を始めるほどの
アーウェルンクス・シリーズは、“人形”であるが、限りなく生命に近い。寧ろ生命そのものだ。
食事は摂るし、呼吸もする。感情は表現に乏しいだけで、無いわけではない。データ上では、それぞれに能力以外の特徴——パーソナルな部分での固有能力、“個性”がある事が確認済みだ。
幾ら魔法世界と、その生命を創造した造物主と部下デュナミスと
稼働させるまでには相応の時間や、微調整が欠かせない。
だから少女——“
が、少女はまだ其処まで達していないはず。ましてや、まだ“
「む……」
デュナミスは小さく唸った。少女の鼓動が激しくなったのだ。
そして——————————————————うっすらと、眼を開けた。
自然とカプセルが消滅し、中を浸していた液体は消え、少女はフワリ、と二本の足で降り立った。
「莫迦な、これ程早く……そして……」
——これ程の
それを口には出さず、デュナミスは数歩後ずさり、少女の様子を窺う。
六番目はボーッとした表情のまま頭を掻き、周囲、さらに天井や床まで一通り見やる。
そして、小さく呟いた。
「……………………兄さん、此の世界に……」
私の想像する「ちょっと人間味のあるセクストゥム」と、オリキャラ綺羅川 子日のキャラがカブっていることに、最近になって気付きました。
それで二人を出して二人ともヒロイン化させると、個性を分けたり、セリフの描写をしたりするのが、とてもややこしいことになると判断しました。
そこで、詳しい説明は次話の番外編で書きますが、子日はセクストゥムに憑依することになりました。
あと、憑依モノのキャラって一回書いてみたかったんです。
性格は、ちょっと人間味のあるセクストゥムと言ったところです。
また、能力も少し追加します。
御意見御感想宜しくお願いします。