刹那ファンの皆様、御免なさい。
髪が白い刹那を妄想(髪はロング)して、私の中のハク像と比較……「あれ? ほぼ同じじゃん」そう思ってやりました。
子日といい、何か今作では白髪女性=(サブ)ヒロインとなっている気が……。
第弐拾壱話 カレの悩みと京都来訪
どうしたものかな。
僕は別に天才じゃあない。
だから、しょっちゅうコペルニクス的転回が起こって、何でも解決なんてことにはならない。
いや、しょっちゅう起こったら、コペルニクス的転回なんて言わないかもしれないけどさ。
アスナの事は……別に此処にいることが突きとめられても、問題があるわけじゃあない。
祖国で内乱が起こったため脱出させ、保護した。
それで十分通じる。
でもこれが、“姫君誘拐”にすり替えられたらちょっとマズイ。
ていうか、嫌だ。
また賞金首になるなんて御免だ。
幾らハクに護ってもらっていても、“絶対防御”の能力があっても、命を狙われている……その居心地の悪さは、辛いなんてものじゃあない。
どうしたものかな。
……これじゃあ、完璧に
いや、元現代日本人の僕にとってはコレが普通だ。危機察知能力が高いというのは、恥ではない……と信じたい。
アリカ女王やガトウさんに頼まれた以上、そしてアスナ自身が僕を頼ってくれている以上、逃げ出すわけにもいかないよね。
この心労……多分ハクは気付いているだろう。でも、
正確には、“過激なこと”を殆ど言ってこない。
其れが何とも……“嵐の前の静けさ”のようで、凄く怖い。いや、僕は“台風の目”のような存在だから、
自分で言うのもなんだけど、僕はポーカーフェイスが得意だ。でもそんなもの、ハクには全く通用しない。
僕以上に僕を知っている、あの万能従者には。
後ろを見ると、じっと僕を見つめている我が従者。
真っ黒な瞳には何の感情も無い。少なくとも、感じ取る事は出来ない。こういう時のハクは大抵——
「ハク」
「はい、マスター」
取り敢えず呼んでみたら、すぐに反応が返ってきた。
「今、何を考えている?」
「マスターのことを考えております」
「具体的には?」
「マスターの御心労が、少しでも減る方法です」
ドンピシャ。
ハクは、僕に嘘はつかない。言わない事はあっても、嘘はつかない。聞けば、聞いた分だけ——いや、それ以上のことを答えてくれる。
「と、いうと?」
「まず一つ、マスターの懸念材料を全て解決すること。
二つ、此れ以上の懸念材料の
三つ、マスターの御心を癒すこと。
……このくらいでしょうか」
うん、至極真っ当そうだけど……物騒にしか聞こえない。特に一つ目と二つ目。
でも……何かハクの提案を聞いていると、取り乱して悩んでいたのが、莫迦らしく思えてきたなぁ。
或いは……そのために、ハクはこんな言い方をしたのかもしれない。
そんなことを考えながらハクを見つめると、従者はうっすらと笑った。
「マスターを御安心させる方法も癒す方法も、それこそ無数に存在します。幾らでも実行します。マスターのためならば」
そう言って、ハクはそっと僕を抱きしめた。
耳元で、ハクの声が聞こえる。
「勿論……その
思わずゾッとする。
「ハク、
「アスナではありませんよ、マスター。ガトウとかいう蟲でもありません。アレらには、まだまだ使い道がありますから」
無表情に戻った我が従者。
ハクは、アスナがいる(であろう)方角を見やると、暫し目を細めた。
「蟲の起こした
「それはそうだけどさ……」
ハクの意見は正しい。連合に、再び僕らを賞金首にする胆力があるとは思えない。いや、賞金首にする程、頭がイカレているとは思いたくない。
まぁ、信じるしかないか。
そんなことを考えて数年。
詠春さんから、娘が生まれたとの報告があった。詠春さんの奥さんの
血統を重んじる関西呪術協会では、五摂家の一員である近衛家の方が、詠春さんの血族(つまり青山家)よりも形式的には序列が高い。
もっともそんなモノは、大正の時点ですでに形骸していたから、青山家の血を汲む詠春さんも
その代わり木乃魅さんが、長代理として詠春さんを公私ともにサポートしている。
因みに五摂家っていうのは、藤原氏の血を汲む公家のトップ連中のことで、皇室との繋がりも深い。加えて血族独自の神道術や陰陽道の才能を持つ、要は名実ともに名門中の名門。
最近では、何処の血族出身かなど大した評価基準にはならないみたいだ。名門出身だろうが何だろうが、使える人間か使えない人間なのかはまた別次元の問題だし、“使える”といっても、誰にも得手不得手ってものがある。
伝統や格式にしがみ付いていては、生き残れないことだってある。勿論、伝統をあっさり捨てろとは言わないし、僕だって日本人だ。伝統の継承が如何に重要で、如何にナイーヴな問題であるかくらいは把握しているつもりだ。
結婚式の時にはあまり話さなかったけど(僕が酒でダウンしていたからね)木乃魅さんは、高貴な姫様を具現化したような人だった。同時に、とても温和な人だった。
ハクが
そうそう、詠春さんの娘なんだけど、やっぱり赤ん坊というのは見ていて和む。兎に角和む。
おまけに……とんでもない事なんだけれども。
名付け親に、僕が指定された。
それも、呪術協会の幹部達が揃って見守る中で。
Why?
そう聞いても、詠春さんは「キラ君に付けて欲しいのです」の一点張りだったし、木乃魅さんには「旦那様の言うことなら、間違いありませんなぁ」と笑顔で言われた。
ハクは興味が無いのか一言も喋らないし、アスナは赤ん坊の頬を突くのに夢中。
散々迷ったんだけど、結局、木乃魅さんの名前と詠春さんの“春”(花が香る季節)から、“
近衛 木乃香、爆誕。
詠春さん達呪術協会の方々がどんちゃん騒ぎしている中、僕はシャワーを浴びに行った。
何故かって? 命名の時に緊張し過ぎて、背中がぐしょぬれになったんだよ。
……唯、呪術協会の皆様。
ハクとアスナが堂々と浴場に入ってくるのを、止めておいてくださいよ。
そうそう、翌日にハクとアスナと一緒に山で森林浴を楽しんでいたら、烏族(天狗)の一団に出くわした。
しかも全員、敗戦国の兵士の様に歩いていたから、何事かと思って聞いてみた。
そしたら、里の有力な豪族の娘に、“禁忌”とされる
豪族の人(烏?)は何とか庇おうとしたけど、名家が禁忌を犯すのは問題。だからといって、捨てたり殺したりするのはさらに問題だし、親としての感情も許されない。
長く里には置いておけないため、取り敢えず連れだした——ということらしい。
先頭にいる長身の男性がその豪族の人、後ろにいる人がその奥さん、後ろに八人程ずらずら並んでいる(大名行列みたいだ)のが家来らしい。
その子は真っ白な翼を持っていて、髪(生まれて間もないのに何故かフサフサだった)も真っ白、眼は真っ赤だった。肌も白い。
……翼さえなければ、
それにしても、瞳の色以外はハクそっくりだ……と思い始めてしまうと、もう駄目だ。
他人事だと思えないし、僕は赤ん坊に弱いんだよ。
妹のおしめを替えてやっていた時からさぁ。
さっそく(ハクに頼んで)交渉してもらい、僕たちに引き取らせてもらうことになった。
育てることが出来なくなった子供を、許可を貰って引き取っただけだから問題も無い。念のため、豪族さん(
そして、このコ——
……ていうか、何かハクの子供と言ったら通じそうなくらいハクに似ている。絶対口には出さないけどさ。
理由? 襲われそうな気がするから。ハクと、不機嫌そうなアスナに。
京都に行って手に入れたもの。
命名者の称号。赤ん坊。
……あと八つ橋。
木乃香は兎も角、刹那はアスナと同じようなポジションとする予定。
つまり、ハクにこき使われる存在。
赤ん坊の時からハクにしごかれる刹那……唯の虐待ですね、こりゃ駄目だ。
木乃香との繋がりも出来ました。ヒロインというより、「頼れるお兄さん」という関係になる予定です。
刹那の生い立ちや髪の色とかは、完璧に捏造です。御留意下さい。
御意見御感想宜しくお願いします。